8月23日は『ゴールデンアイ 007』が発売された日だ。
『ゴールデンアイ 007』は任天堂より、NINTENDO64向けに発売されたファースト・パーソン・シューター(FPS)。パッケージには3Dガンアクションというジャンル名が記されている。
本作はイギリスの作家イアン・フレミングの小説を原作とし、1962年上映の『ドクター・ノオ』以降、長きに渡って劇場版シリーズが上映され続けているイギリスの人気スパイアクション作品『007(ダブルオーセブン)』シリーズの第17作『ゴールデンアイ』(1995年上映)をゲーム化したタイトル。開発は『スーパードンキーコング』シリーズで知られる、イギリスのレア社が担当している。
1人用と最大4人まで参加可能な対戦の2つのモードが収録されており、1人用は主人公ジェームズ・ボンド(007)になって原作劇場版のストーリーを元にしたミッションに挑む。進行はステージクリア方式で、基本的に各ステージで課せられるミッション……警報装置の破壊、人質の救出、時限爆弾の設置といったものをこなしていく。すべてのミッションを完了させ、ゴール地点となる場所まで到達できればクリア。逆にひとつでもミッションを失敗した状態でゴールに着くとクリアにはならず、最初からやり直しになる。
ミッション中には敵兵との銃撃戦も発生するが、なるべく消音機(サイレンサー、サプレッサー)付きの銃火器を用い、音を立てずに倒すことが試される。
もし、大きな音が鳴るライフルやマシンガンなどを使ったり、爆発物を破壊してしまうと、その音を聞きつけた別の敵兵がやってきてしまう。敵兵も身をかがめて回避行動を取るなど、人間臭い動きをすることもあって手ごわい。スパイらしく、なるべく力押しを控えることが求められるゲームバランスとなっている。
ステージも化学工場に秘密基地、果ては雪原にジャングルと多彩。いずれも原作劇場版のロケーションを忠実に再現しているが、一部、オリジナルのステージも用意。また、原作劇場版由来のステージも、ゲーム向けに地形や構造がアレンジされている。とりわけ最初のステージ「ダム」は、原作劇場版と観比べてみると、その違いに驚かされるだろう。
そして、本作の代名詞とも言えるのが対戦モード。分割された画面でキャラクターを操作し、様々な銃火器と007ならではの秘密兵器を駆使して戦うというものだが、相手と鉢合わせになるたび、混戦になりがちなこともあって白熱しやすい。ルール、出現する武器、制限時間の設定などのオプションも充実しており、工夫次第では延々と遊べてしまう面白さがある。
対戦モードに関しては、発売前より「The 64DREAM」や「電撃NINTENDO64」といったNINTENDO64専門のゲーム誌でイチオシポイントとして紹介され、注目を集めていた。実際に対戦モードは評価点として上がる傾向が極めて高く、本作をもってFPSというジャンルを知ったプレイヤーも少なくなかったと推測される。
また、海外では日本国内を大きく上回るヒットとなり、最終的に全世界で800万本以上【※】を売り上げた。家庭用ゲーム機で発売されたFPSとしても上位に君臨する売上で、FPSというジャンルの歴史を語るに当たっては、決して外すことのできないタイトルと言ってもいいだろう。
※2011年発売の『ゴールデンアイ 007』(Wii)のパッケージ裏に記載。
世界的な大ヒットから、2000年には本作のゲームエンジンを引き継いだ事実上の続編『パーフェクトダーク』が発売。
世界観とキャラクターなどはオリジナルのものに差し替えられたが、ミッションを遂行しながらステージを攻略していく1人用モード、4人参加可能な対戦モードといった好評を博した要素はそのままで、それぞれ大幅なパワーアップが図られている。
2011年(海外は2010年)には、時代設定を21世紀へと置き換え、ジェームズ・ボンドのモデルを6代目のダニエル・クレイグへと改めた現代リメイク版『ゴールデンアイ 007』がWiiで発売された。開発はレア社ではなく、『007 ナイトファイア』(PlayStation 2)を手がけたEurocomが担当している。
Wii版はゲームシステムや操作系は『コール オブ デューティ』シリーズに近しいものに一新されたが、ミッションを遂行しつつステージの攻略に挑む1人用モード、対戦モードはそのまま。また、NINTENDO64当時は技術的に難しかった原作劇場版のシーンが忠実に再現されていたり、ストーリーの構成はNINTENDO64版を踏襲しているなど、やり込んだファンほどニヤリとさせる要素がちりばめられている。
2024年現在、NINTENDO64版は『Nintendo Switch Online + 追加パック』の加入者で、18歳以上のプレイヤーのみダウンロード可能な『NINTENDO 64 Nintendo Switch Online 18+』でプレイ可能だ。
ゲームエンジンを継承した続編『パーフェクトダーク』も2024年6月19日から遊べるようになったほか、両作品はフレンド限定の形になるが、オンライン対戦も楽しめる。また、Xbox Game Pass加入者、『Rare Replay(レア・リプレイ)』所持者であれば、海外版ではあるがXbox One、Xbox Series X|SのHDリマスター版を遊べる。
FPSの歴史に名を刻んだ名作をこの機に遊んでみてはいかがだろうか。
特別付録:劇場版『007』シリーズ簡易入門ガイド
冒頭で紹介したように『ゴールデンアイ 007』は、1995年上映の劇場版『ゴールデンアイ』を原作としている。そのため、本作を実際に遊んで、原作である劇場版を観たい気持ちが湧くプレイヤーも少なからず出てくると思われる。
ただ、劇場版『007』シリーズの作品数は2024年現在、25本と多く、「どれが入門に適しているのか?」と迷いやすい。
また、実際に劇場版シリーズに関心を向けてみると、作品ごとに主人公のジェームズ・ボンドを演じる俳優が違っていたり、ストーリーが続いているかのように見える作品が一部に存在する。
そんなゲームを通して劇場版シリーズに関心を抱いたプレイヤーに最適な作品は何か?最後に付録として、実際に『ゴールデンアイ 007』を通し、劇場版シリーズにデビューした筆者の独断と偏見による、入門にお薦めの5作をピックアップする。
◆『ゴールデンアイ』
言わずと知れたゲームの原作となった作品。ゲームから劇場版シリーズに関心を抱いたプレイヤーが最初に観るなら、やはりこちらがオススメである。
作品としては5代目ジェームズ・ボンドこと、ピアース・ブロスナンのデビュー作で、登場人物の設定などが過去作から一部、一新された内容となっている。
ゲーム経験者なら本編全てが見所と言ってもいいが、その中でも特にと言われれば、サンクトペテルブルク市街地で繰り広げられる戦車によるカー(?)チェイス。ゲームを知る人なら、思わず唖然としてしまうシーンになっているので必見だ。
◆『リビング・デイライツ』
『ゴールデンアイ 007』では、対戦モードのルールのひとつ(フラッグ戦)とされている作品。1987年上映のシリーズ第15作で、4代目ジェームズ・ボンド、ティモシー・ダルトンのデビュー作。ソ連の将軍と国際武器商人の企てる陰謀にボンドが迫るというストーリー。冷戦時代の緊迫した空気感が反映されたシリアスなストーリーと、身体を張ったアクションシーンの数々が見所。奇天烈な装備満載のボンドカーによるカーチェイスもある。本作も過去作とはストーリーの繋がりが薄いので、入門編としては最適である。
余談だが、対戦モードのルールのひとつ『消されたライセンス』(一撃必殺戦)は、『リビング・デイライツ』の次に上映された作品で、『ゴールデンアイ』の前作に当たるシリーズ第16作。ボンドが独断で復讐劇に走るという、異色のストーリーを描いている。
◆『ゴールドフィンガー』
『ゴールデンアイ 007』の対戦モード専用キャラクター「オッドジョブ」が登場する作品。1964年上映のシリーズ第3作で、初代ジェームズ・ボンド、ショーン・コネリーの主演作。西側諸国の金価格を暴騰させ、自らが所持する金の価値を引き上げて利益を得ようと目論む大富豪「ゴールドフィンガー」の陰謀にボンドが立ち向かうというストーリー。
初期の作品ゆえ、演出などにおいて古臭さが滲み出ているが、ボンドカーによるカーチェイスに終盤のオッドジョブとの戦闘など、見所が多い。また、本作のストーリー構成と登場人物の設定は後年の『私を愛したスパイ』、『ムーンレイカー』、『美しき獲物たち』といったシリーズ作に多大な影響を及ぼしている。
◆『トゥモロー・ネバー・ダイ』
『ゴールデンアイ』の次回作となるシリーズ第18作目。本作も『ゴールデンアイ』に引き続き、ピアース・ブロスナンがジェームズ・ボンドを演じる。イギリスと中国の間で戦争を起こし、その放送権を獲得して莫大な利益を得ようと目論むメディア王の野望にボンドが挑むというストーリー。
『ゴールデンアイ』以上にアクションシーン多めの内容で、スパイ要素は控え目なのだが、その分、最初から最後までテンポよく進行する作りが特徴(上映時間も119分とゴールデンアイよりも短い)。携帯電話による遠隔操作で動かすボンドカーと、それによるカーチェイスも見所。
◆『カジノ・ロワイヤル』
6代目ジェームズ・ボンド、ダニエル・クレイグのデビュー作。2006年上映のシリーズ第21作で、国際テロ組織の金銭ネットワークを断つため、若き頃のボンドが彼らの資金源である男ル・シッフルに迫っていくというストーリー。
設定や登場人物などが過去作から一新された、新シリーズとも言える内容となっている。荒々しさあふれるアクションシーン、マッツ・ミケルセン演じるル・シッフルとの緊迫したポーカー対決が見所。なお、本作のストーリーは単体では完結せず、次作『慰めの報酬』へと続く。
ちなみに本作は1967年にも劇場版が制作・上映されているのだが、そちらはコメディとシュールギャグに振り切った番外編となっている。
ピックアップした各作品は「Amazonプライム・ビデオ」を始め、配信版も展開されている。また、YouTubeチャンネル「James Bond 007」では、一部劇場版作品のワンシーン(※日本語字幕なし)を視聴可能だ。(本稿でのリンクは控える)
興味があれば、実際に本編を鑑賞してみてはいかがだろうか。