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定価33万1000円!! 超高額家庭用ゲーム機の正体とは? 2024年に発売された超イカしたゲーム機にエンタメの未来をみた

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PS5も値が張るなぁと考えているアナタにも、ゲーム知識にはちょっと自信ががあるぜというアナタにも知ってほしい、つい最近33万円のゲーム機が一般販売されていたという事実を

このままゲーム史に登場することなく埋もれさせてしまうにはあまりに惜しい。あなたもゲーム大好き野郎(あるいは大好き淑女も可)を自負するならば、このイカしたマシン、『超ディスクアップ』を知るべきです。私とともにボタンを押して気持ちよくなりましょう。

みなさんは高額な家庭用ゲーム機といえば何を思い浮かべるでしょう。

人によって想像するものは異なると思いますが、一般的に高額機と言われたものは1991年発売のネオジオ(定価58,000円)、1994年発売の3DO(定価54,800円)、2003年発売のPSX250GBモデル(定価99,800円)あたりが有名でしょうか。

私も子供の頃はネオジオを所持していた同級生、サハラ君をうらやましく思ったものです。なにしろネオジオはその弁当箱みたいなバカでかいソフトだけで2~3万円するものの、ゲームセンターのゲームがほぼそのまま遊べる仕様。ゲームキッズの間でサハラ君は圧倒的な存在感を放っていたことにもうなづけます。

もっともゲーム機本体としては現在プレイステーション5が当時のネオジオ以上の価格で流通していますし、ゲーミングPCで本格的な環境を整えるために費用を惜しまないプレイヤーも存在しており、ハード性能の向上とともにゲーム機としては高額とされた価格も妥当と考えられる世の中になったのかもしれません。

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(画像はPlayStation 5 本体ラインナップ | PlayStationより)

さて、そんな令和の時代にとんでもなく高額な家庭用ゲーム機が発売されていたことをご存じでしょうか。

その価格はなんと定価331,000円。アーケード用筐体でもなければ、限定仕様の特注品でもありません、誰でも購入して遊ぶことができる一般流通品です。ゲーム系の情報サイトや雑誌にはほとんど掲載されていなかったので、業界情報には詳しいぜという方もご存じないかもしれませんね。

サハラくんの家で遊んでいた当時の私に33万円のゲーム機が出るよといえば、ひっくりかえっておしっこくらい漏らすかもしれません。

文/岡井モノ
編集/竹中プレジデント


定価33万1000円!! 超高額家庭用ゲーム機の正体

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サミー社より発売された『超ディスクアップ』お値段331,000円!!

こちらがそのゲーム機、『超ディスクアップ』です。

なんだパチスロか、それならネットショップで探して買えるじゃん、などと考えるのは早計。確かに似ている、というか見た目はパチスロそのものですが、その実態はアミューズメント機とは異なります

いわゆるアミューズメントパチスロや家スロと呼ばれるものはパチンコ店に設置された機種を改造・転用したものです。対してこの『超ディスクアップ』は転用品ではなく家庭用として製造されたものであり、パチンコ店への設置はありません。そもそも遊技のためにメダルを投入する必要もありませんし、図柄を揃えても払い出し機能がありません。純粋にゲーム性を楽しむマシンとして誕生した機械なのです。

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一般的なパチスロには存在しないスコア要素が!?

超ディスクアップがパチスロ機ではないと説明しましたが、一方で誕生の背景にはパチスロが密接に関わっています。

かつてぱちんこ店には『ディスクアップ』というパチスロ機が設置され、人気機種となっていました。いわゆる“勝てるパチスロ”という面もありましたが、それ以上に注目・支持されたのがその奥深いゲーム性

素早く狙った位置に図柄を揃えるタイミングを見切る「目押し」に代表される超人的なプレイは単純に勝った負けたに収まらない人気を博し、パチスロの枠を飛び越え純粋に技術を競う大会であるディスクアップ選手権が開催されるなど多くのプレイヤーの注目を集めました。

そんなディスクアップの血を受け継ぎ、よりゲーム性と競技性に特化したマシンが超ディスクアップなのです。

ちなみにサハラくんは大学時代パチスロにハマりすぎて留年してました。

猶予1フレ以下!! 0.002秒の見切りがスコアを分ける

この超ディスクアップ、基本的なゲームの流れは一般的なスロットマシーンやパチスロの停止図柄パターン、いわゆる「出目」の課題が出るとイメージしていただければOK。

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画像は「サミー公式サイト」より引用

1.筐体左部のレバーを動かしてゲームスタート。
2.盤面のリールが回転すると同時に、液晶部に図柄の組み合わせとなる「出目」が示される。
3.課題の出目パターンに合致するよう、タイミング良くボタンを押してリールを止める。
4.制限時間終了までプレイし、素早さや正確性をもとに算出されたスコアを競う。

これらの流れは言ってしまえば「タイミングよくボタンを押してスコアを競う」というシンプルなもの。

一度目にすれば誰もが遊び方が理解できるゲームですが。ただシンプルなだけではなく、タイミングよくボタンを押す要素の特化具合が凄まじいのがこの超ディスクアップのポイント

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画像は「サミー公式サイト」より

そのスコアを分けるタイミング判定は高速回転する図柄の1/16刻みでカウントされます。これは秒数で換算すると約0.002秒、60fpsゲームでの1フレームが約0.016秒だと考えると、1フレームよりもはるかにシビアな判定世界での闘いといえるでしょう。

「〇フレ発生の中段は見えるか」などと格闘ゲーム談義の経験があるゲーマーは多いと思いますが、1フレよりシビアな判定を競うゲームは今までそう無かったでしょう。

超細分化された判定により、熟練プレイヤーでもゲームの度に点差が開くことが多いのもポイント。ルール自体はシンプルですが、いかにミスを減らし点数を稼ぐかというわかりやすいポイントにゲーマーの血がたぎることうけあいです。

実際にプレイすればわかると言いたいところですが、このゲームのすごいところは見ていると一度自分にやらせて欲しいと自然に思えるところ。シンプルなルールゆえに自分にもできそう、自分もやりたいとなり、終了後はもう一度と再チャレンジしたくなる魅力があります。

速さと正確性どちらに重きを置くかという戦略、狙うべき図柄がどこにあるかを探る判断力、狙い通りの図柄がバシッと停める気持ちよさ、それらを小気味よく鳴るSEやエフェクトが盛り上げます。難易度は徐々に上がるシステムなので、初心者はまずわかりやすい図柄をひとつ停めることから目標にすればOK。

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画像は「サミー公式サイト」より

このゲームには誰かを攻撃・妨害するといった直接的な対人要素は存在しません。自分自身のテクニックの限界を仮想敵とし、それを乗り越えるストイックなゲームとも言えます。ハイスコアを競うゲームジャンルとしてシューティングゲームやレーシングゲームのタイムアタック感覚に近いでしょうか。

もっとも現在ではアクションゲームのみならず、RPGや育成シミュレーションといったジャンルでもRTAが競技として成立する等遊び方の幅は広がっているので、そうしたジャンルの壁も無くなってきているのかもしれません。

専用デバイスで広がる可能性

超ディスクアップの特徴はその本体、筐体そのものにあります。

ゲーム機本体と一体化し、直感的に操作できるレバーとボタンはハードな動きにも耐え、タイミングをはかるために叩きつけるようにボタンを押してもヘタることはありません

さらに視認性も良く、ゲームを盛り上げるエフェクトも鮮やかな液晶。家庭用の音響には無い、身体を震わせる低音も楽しめるスピーカー。それらが一体となった業務用のアーケード筐体を思わせるクオリティです。(そもそも基本がパチンコ店設置機の設計ではあるのですが)前述の1フレームを上回る判定も、デジタル液晶ではなく実際にリールを回しているからこそ実現できた部分でもあります。

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画像は「サミー公式サイト」より

操作体系が変化することにより新規性を生み出し、ヒットに繋がったゲームは多く存在します。

アーケードゲームではセガ社が生み出した『ハングオン』をはじめとした身体全体を使って操作するいわゆる“体感ゲーム”が1990年頃にブームを起こしました。さらにはリアルな操作感で電車運転が楽しめるタイトー社の『電車でGO!』や、擬似的にDJプレイを楽しめるコナミ社の『beatmania』等、現在でも後継シリーズが展開され定番化したものも存在します。

家庭用ゲーム機の多くは30年以上前の時代からディスプレイと本体を接続し、ソフトを入れ替えて遊ぶ形式のものがスタンダードとなっています。しかし『ファミリートレーナー』『wii』、近年でも『リングフィットアドベンチャー』等新たな操作体系を伴うヒットゲームも度々誕生しています。それらはスマートフォンへの移植ではなく、その筐体・デバイスで遊ぶことで価値を増すゲームと言えるでしょう。

ここで紹介したいずれのゲームも、その内容自体は「タイミングを合わせてボタンを押す」ゲームです。しかしそれらをプレイすることの楽しさは本物であり、熟練者のプレーに歓声が上がることもしばしば。複雑化するばかりがエンターテイメントでないことを証明してくれました。

そうした背景を考えると、超ディスクアップは高額で奇抜なだけのゲームと考える必要は無いでしょう、市場の受け皿はすでに用意されています。

ゲームの進化、多様化、そして特化

現在「ゲームは進化を止めた」と話す人も一部に存在します。それは前述した体感ゲームブームや『バーチャファイター』『ファイナルファンタジーⅦ』といった映像表現の進化を経験したゲーマーに多くみられます。

かつてドラクエを買うために無断で学校を抜け出し、激怒した担任教師にこっぴどく叱られたサハラ君もあの頃の驚きが今は無いよなぁと言ってました。

娯楽の多様化、生活様式の変化と言ってしまえばそれまでですが、たしかにかつてのドラクエ発売日に行列ができる社会現象のようなムーブメントは近年あまりみられません。人間の想像力に技術が追いついたことで、誰もがスゴイと思える表現は限られてきたのかもしれません。

しかしながらゲーム市場は拡大しています。家庭用機の堅実なヒット、ゲームアプリの広がり、オンラインプラットフォームで注目されるeスポーツといった様々な要素で成長を続けています。

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画像は「経済産業省webページ」より

ゲームそのものが娯楽として定番化したことも見逃せません。ブームとして盛り上がるのではなく、ゲームが生活の一部になる、またゲーム機の存在が当たり前になるといった現象は過去には考えられなかったのです。

かつては子供の遊びとみられていたゲームが、時代の流れとともに大人も楽しめる娯楽となりました

新たな可能性を切り開く“競技用マシン”

多様化が続くゲーム界ですが、誕生背景にパチスロを持つ超ディスクアップを異端と感じる人もいるかもしれません。これまでパチスロはゲーム要素を持ちながらも“ゲーム機”とは遠い存在だったからです。

メダル獲得を目的としたゲーム性、景品交換を伴う遊技システムといった特殊性、さらにパチンコ店には18歳未満は入場禁止という部分も大きかったのではないでしょうか。ファミコンと共に育った子供はいても、パチスロと共に育った子供はかなり限られ、良くも悪くも馴染むことのない存在だったと思います。

ちなみにサハラくんは馴染み過ぎて留年した結果、おかあさんに朝の4時まで怒られてました。

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転用機を含め、パチスロはビデオゲームと一線を画す

しかし令和の時代となり、超ディスクアップという独立したゲームとして成立するマシンが誕生しました。

己のテクニックを競う硬派なゲーム内容。チャレンジ意欲をかきたてるスコアシステム。景品交換要素のない純然たるゲームとして誕生したこの超ディスクアップは、ゲーム界、そしてパチスロ界の新たな1ページとなる可能性を秘めたマシンなのです。

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超ディスクアップでP-SPORTSの発展なるか!?

そしてその歴史は既に動き始めています。

発売メーカーであるサミーが主催した超ディスクアップのゲーム大会には大勢の来場者が訪れました。そこで繰り広げられた大会の様子は、技術、体力、そしてメンタルといった部分が多大に影響するなどまさにスポーツの世界。

サミーはこれをe-SPORTSならぬP-SPORTSと定義しており、トッププレイヤーの“目押し”技術は一見の価値アリ。格闘ゲームの“見切り”や、シューティングゲームの“避け”にも劣らぬ盛り上がりポイントです。

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白熱する超ディスクアップ選手権の一幕

ゲームたるもの

スマホからゲーミングPCまで、さまざまなスタイルでゲームを楽しめるようになった昨今、なにをもってゲーム機と定義するかは難しいかもしれません。ストップウォッチを丁度10秒で止められるかサハラ君と盛り上がったあの時、それはもうゲーム機になっていました。

とりあえずゲーム好きの仲間に331,000円で一般販売されたゲーム機があるよと言えば興味をもってもらえそうです。サハラ君に買ってくれといったら離婚の慰謝料でカネねぇよと焼酎を傾けていました。今度一緒にネオジオやろうね。

そして超ディスクアップの後継機、超ディスクアップ2もすでに発売されています。そう、令和五年に一般販売された据え置きゲーム機でもっとも高額なものはといった場合、超ディスクアップ2が有力候補なのです。

残念ながら現在販売終了となっていますが、先代の超ディスクアップ含めパチスロ系のゲームセンターやバーなどで遊べるところもあるようなので興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。単純ながらすぐに盛り上がれる、そんな超ディスクアップを是非体験していただきたいと思います。

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超ディスクアップのサミー社は、かつてギルティギアを世に送り出した現セガサミーのサミーです
画像は「競技専用機:超ディスクアップ2」より
ライター
寿司屋に擬態したライター編集者。幼少期におばあちゃんと対戦した『プロ野球ファミリースタジアム'88』でコールド負けを喫したくやしさからゲーマーとしての才能が開花。半年の猛特訓を経て再戦した際には5分でコールド負けをしたほどの実力を持つ。
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美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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