牛乳が好きな方も絶対に飲まない方もこんにちは、ウツロギノアと申します。
今回は、何かよくわからないけど大好きなゲーム『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』とその続編『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』の2作品について紹介させて頂きます。
このゲーム、良く分からないけど、とにかくビジュアルが魅力的なんです!
まず簡単に紹介すると『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』は、
精神疾患を持つ少女と会話しながら牛乳を買いに行く“だけ”
というシンプルなビジュアルノベルゲームです。
『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』はその続編。
前作で牛乳を買いに行って帰ってきたところから始まり、
今度は彼女の部屋で蛍を探すポイント&クリックゲームになっています。
どちらもダークで不気味ですが、ホラーというより独特の世界観という感じ。
個人的には『serial experiments lain』の雰囲気が好きな方にも刺さるのではないかなと思っています。
「何かよくわからないけど大好きなゲーム」ってなんだ?と思われるかもしれませんが、
このゲーム、最近の作品としては珍しく、最後までクリアしても明確にストーリーや設定が説明されません!
なのにおもしろい。
人によって面白いと思う理由はさまざまだと思いますが、
私は、この作品のビジュアルが「精神疾患を持つ彼女の視界そのもの」になっていて、プレイすることで彼女の世界を一緒に体験できるところが大きな魅力になっていると思っています。
そんなビジュアルの良さについて紹介していきたいのですが、
記事内ではスクショ画像で多少なりともネタバレが含まれます。この時点で気になった方は、このまま各種ストアページに飛んで購入することをお勧めします!
Steam版は『inside』だけなら176円、両方買っても1,100円ですよ!
文/イラスト ウツロギノア
編集/りつこ
以下の内容は『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』および『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』のネタバレを含んでいます。あらかじめご注意ください
不気味な配色、ピクセルアートだからこそ立ち上がる不気味さ
この作品はメインカラーが赤と黒、そして差し色に『inside』ではマゼンタ、『outside』では緑を使っていて、色数を絞ることで不気味な雰囲気を演出しています。
おしゃれでインパクトも抜群です。
しかしこの配色、ただ不気味だからという理由だけではなく、主人公である少女の実際の視界の色なんです。
それにくわえて、彼女の赤に染まった視界での物や景色のディテールなどがよくわからなくなっている感じとピクセルアートの不鮮明さがマッチしていてとても良い。
ホラー系のジャンルにおいて、高クオリティな3DCGはもちろん怖いです。
いっぽうで、初代『クロックタワー』やツクール系フリーホラーゲームのように、低解像度のドット絵を用いることで、想像の幅が広がり怖く感じることがありますよね。
また、窓の外や壁など、背景の一部がランダム生成になっており、独特の画風になっています。
この仕様により、同じシーンですが周回するたび背景が違う面白さがありますし、抽象的で「背景に何が描いてあるかよくわからない」からこわい。
スーパーの店員も、お母さんもクリーチャー。アニメーションが高める臨場感
こちらは牛乳を買いに行ったスーパーの店員さんです。
全然人じゃない。なんだかよくわからないクリーチャーになっています。
かわいいようなキモいような……。
面白さとシュールさが融合したデザインですが、
こちらも主人公の視界には‘’本当に‘’クリーチャーのように見えているんですよね。
インパクトを重視しただけじゃなく、彼女の精神疾患が引き起こす症状の苦しさや恐ろしさが一目でわかります。
お母さんもこんな感じ。人とは言い難い、カオナシのような見た目をしています。こわい。
アニメーションでの世界表現(続編追加要素)
アニメーションについては続編の『outside』からの新しい表現なのですが、
OPが追加されていたり、『inside』では1枚絵だったゲーム中の赤と黒のイラストが動きます。(事前情報なしで『inside』からプレイしたので、かなり感動しました)
このOPアニメーションは『inside』での出来事のダイジェストのようなものになっており、
第三者の視点で描かれるため世界は赤色ではなく、私たちが見ている世界と同じフルカラーです。
『inside』で見ていた世界の本当の姿を知ることが出来ます。
牛乳売り場もこの通り。
周りの人もクリーチャーではなくちゃんと普通の人間です。
この現実との対比が、彼女の見ている世界の異質さを一層引き立てています。
また、ゲーム中でのイラストの動きは、シーンにあったアニメーションが用意され、各場面でより臨場感がが味わえます。
細かいところだと会話中の少女の口が動いたり、まばたきしたりしていて、
彼女と会話しているような感覚がより強くなっています。
ホラーならではの構図・カメラワーク
これも主に続編の『outside』からの要素になってしまうのですが
イラストのカメラワークがとてもいいんですよね
たとえば寝転がってる天井を見上げるシーンでは、天井から少女を映すカメラワークに加えて、少女の目線から見た「天井のみのイラスト」が描かれていました。
また、洗面台の鏡を見るシーンでは、鏡に映った少女を中心として、実像の少女自体は背中しか見えない。さらに、ちょうど首のところで画角が切れていて、不安を煽るような構図になっていました。
映画やホラーゲームのムービーにおいて、何も起きてないのに怖いカメラワークってありますよね。誰もいない廊下の突き当りをずっとアップにしていくような。
そういう不気味さ、不安さへのこだわりや、恐怖や不安によってプレイヤーを飽きさせない工夫を感じます。
それぞれ作風が違うED。ついつい集めたくなるけど、謎は残されたまま。
このゲームには、少女が見る悪夢として複数のEDが存在します。
夢だからかどれもテイストが全然違っていて、それぞれが作品として面白い!
こちらのEDはかなりコメディ寄りになっていて個人的に一番好きです。
目がびょーんってなっちゃってる。
何を食べたらこんなシーンが浮かぶんでしょうか?
見た目が面白いのはもちろんのこと、シナリオも少女の過去に関係するものだったりするので抜かりなし。
他にもコズミックホラー小説のようなエンディングもあって、振り幅が本当にすごい。(ネタバレになるので割愛)
どのEDもアーティスティックなビジュアルと内容で「見たことないものが見れる」期待から、全エンドを回収したくなります。
でも、あくまでも悪夢として何かが投影されているだけなので、すべてのエンディングを回収しても明確にストーリーを補足してくれるわけではありません。
そこがお洒落でめちゃくちゃ好きなのですが、ここは好みが分かれるかなとも思います。断片的な情報から物語を考察することが好きな方にはおすすめです!
このEDが悪夢であるという手法も、彼女の見ている世界そのものを見るという体験です。本作はビジュアルノベルゲームですが、読むというよりは「見る」「体験する」という側面が大きく、この性質が本作をより面白くしている要因だと私は思っています。
今回はビジュアルアートを中心に紹介しましたが、他にもテキスト自体が独特の会話で面白く、BGMも不気味且つおしゃれでめちゃくちゃ良いです!!!!
少しでも興味を持った方は、ぜひご自身の目で彼女の世界を体験し、異常な日常を送る彼女に寄り添ってみてはいかがでしょうか。