2024年11月のある日、アメリカ・ロサンゼルスにて。
日本から約10時間のフライトを経て、筆者がやって来たのはなんだか高級そうなホテル。ロビーの端にさりげなく残された手がかりを頼りに、向かった先にあったのは……
デン!!
ドン!!!
『Path of Exile 2』だ~~~!!!
会場内には世界各地から集まったメディア関係者やインフルエンサーが集結し、そわそわとした様子でアナウンスを待っている。何を隠そう、今回お招きいただいたのはアーリーアクセス配信直前の『Path of Exile 2』を丸々1日試遊できるというミートアップイベント。みんながもう早く遊びたくて仕方ないのだ。
『Path of Exile』(以下『PoE』)といえば、アップデート直後には同時接続者数が20万人を超えるほどの世界的に大人気なハクスラ系オンラインアクションRPG。基本無料で遊べるうえ、ビルドの自由度の高さやアイテム集めの”沼”などが魅力の作品であり、『Path of Exile 2』はその待望の続編だ。
という訳で前置きもそこそこにして、本記事では『Path of Exile 2』(以下『PoE2』)先行体験と、ゲームディレクターのジョナサン・ロジャーズ氏に現地で直接お伺いした情報を、実プレイの所感と共に書いていこうと思う。
フラスコがライフとマナの2つで固定に!?自動発動する新アイテム「チャーム」も登場
前作の『PoE』をプレイしていた人は、これを見て「どういうこと?!」と思ったかもしれない。ひとまず、この画像を見てほしい。そう、フラスコの装備欄が2つしかないのだ。
前作『PoE』をプレイしていない人のために説明すると、『PoE』ではライフやマナを回復するフラスコに加え、強力な特殊効果を持つ「ユーティリティフラスコ」などさまざまなフラスコが存在した。
しかし、『PoE2』のフラスコは体力を回復する「ライフフラスコ」と、アクティブスキルの発動に必要なマナを回復する「マナフラスコ」の2つのみに統一。装備欄もそれぞれ1つずつで固定となった。その分それぞれのフラスコの容量が大幅に拡張され、1つのフラスコを使える回数が増加している。
ジョナサン氏へのインタビューによれば、『PoE』のフラスコシステムは強力でありながらも複雑であったため、今回の変更はそんなフラスコシステムの使いやすさの向上を狙ったものであるそうだ。筆者も実際にプレイしてみて、フラスコを使い損ねて死亡するようなことは無く、とっさの判断で使いやすくなっていると感じた。
「ユーティリティフラスコ」がなくなった代わりに、『PoE2』では新アイテム「チャーム」が登場。こちらはプレイヤーが攻撃を受けるなど特定の条件を満たすことで自動的に発動するアイテムで、一時的にプレイヤーを強化する効果を付与してくれる。たとえば画像のチャームであれば、プレイヤーが火ダメージを受けたのに反応して火ダメージへの耐性を付与してくれるのだ。
フラスコとチャームを使用するにはそれぞれの持つ「チャージ」を消費する必要があり、貯められるチャージの容量はアイテムのレアリティなどによって異なる。チャージはフィールドで敵を倒すと少しずつ溜まっていくほか、街などの拠点マップに存在する「井戸」で最大まで回復することができる。
本作では戦闘状態でなければ、1ボタンでいつでもフィールド上に街に戻るポータルを開くことができる。前作に存在した「ポータルの巻物」のような消費アイテムも必要なく、どこからでもタダで街に帰れるのだ。
フィールド上のポータルはその場に残るため、街からフィールドの探索中だった地点に戻ることもできる。冒険中に一瞬だけ街に戻ってフラスコの補充やアイテム整理をするなんてことも可能となっており、大変に便利だった。
フラスコやチャームには他の装備アイテムと同様、モッド(特殊効果)が付与されることがある。『PoE2』には前作に存在した「クラフト」機能も引き続き実装されるとのことで、上記のフラスコやチャームもクラフトの対象にできるようだ。
ちなみに本作では「金貨」を利用してNPCショップからアイテムを購入したり、アイテムを売却して金貨を得ることができるようになった。「カレンシー」と呼ばれる装備品を強化するためのアイテム類は、消費アイテムとしてそのまま実装されるようだ。
ちなみに、入手した装備品などのアイテムは鑑定しておくとNPCへの売値が少し高くなる。ゲームを始めたばかりのうちは装備できないアイテムもたくさん拾うことになるが、ショップならフラスコなどの有用なアイテムも狙って手に入れることができる。序盤はいらない装備を売って金貨を集め、そのお金で装備を整えるのも良いかもしれない。
1キャラで2つのツリーを使い分けられる、広大なパッシブスキルツリー。アクティブスキルの性能を変化させる「サポートジェム」も
『PoE2』の目玉といえば、やはり圧倒的な自由度を誇るキャラクタービルドだ。特に注目すべきは、500ものノード(解放可能なスキル)を持つ巨大なパッシブスキルツリーだろう。
このパッシブスキルツリーは全キャラクタークラスで共通のものとなり、ツリーのスタート地点はクラスごとに定められているが、育成を続けてツリーを伸ばしていけば、他のクラスから伸びるルートのスキルを取得することもできる。
前作と同様、本作のパッシブスキルツリーにもひときわ特殊な効果を持つ「キーストーン」と呼ばれるスキルが存在。ビルドの方向性を大きく変えることができるものが揃っている。スキルツリーの形も遊び心のあるものとなっており、ツリーを眺めるだけでも時間が溶けてしまいそうだ。
また、『PoE2』では各キャラクターごとにパッシブスキルツリーを2つ保存することが可能。両手武器と片手武器&盾を持ち替えて戦う「ウォリアー」のように、使う武器や戦闘スタイルでパッシブスキルツリーを使い分けることが可能だ。
戦闘のメインとなるアクティブスキルについては、『PoE』のように「スキルジェム」を装備に装着する形ではなく、キャラクターが直接スキルジェムを装備する方式に変更。スキルの習得についても、敵のドロップなどから入手したスキルジェムにプレイヤーが好きなスキルを選んで「彫刻」し、スキルジェムを作り出す形になった。
彫刻前のスキルジェムにはレアリティが設定されており、彫刻するスキルはジェムのレアリティ以下のランクのものしか選択できない。スキルジェムは新たなスキルを習得するほか、既に習得したスキルのレベルを上げるのにも使うことができる。レアリティの高いジェムを使えばスキルのレベルを一気に上げられるため、使い慣れたスキルを強化していくか、新たなスキルを習得するか悩むところだ。
アクティブスキルに関連して、新アイテム「サポートジェム」も登場。これは彫刻済みのスキルジェムに装着するアイテムで、装着したスキルの性能を大きく変化させるものだ。こちらもスキルジェムと同様、サポートジェムのレアリティ以下のランクの効果の中からプレイヤーが選択したものを「彫刻」することで使えるようになる。
サポートジェムは1つのスキルに最大5つまで装着することができるが、装着するためにはキャラクターが一定のステータス条件を満たす必要がある。また、1つのスキルに同じサポートジェムを装着することはできないほか、参照するステータスごとに装備できるサポートジェムの個数に制限があるようだ。
スキルジェムやサポートジェムは戦闘中でなければいつでも付け替えることが可能で、戦況や敵の種類に合わせてビルドを変えていくことができる。筆者は大量の雑魚敵が出てくる場所では範囲攻撃スキルを強化して連射できるように、ボス戦では単体攻撃スキルを強化して継続ダメージをたくさん付与できるように、といった形でビルドを使い分けていた。
ちなみに、筆者のお気に入りはマーセナリーの「分裂弾」というリロードごとに1発しかボルトを装填できない強力な範囲スキルに、「40%の確率でボルトを消費しない」というサポートジェムを付ける“運任せ連射ショットガン”ビルド。確率が上振れすれば、爆速で5~6発もの散弾をお見舞いできるのだ。楽しい!
なお、サポートジェムで付与できる効果はアーリーアクセスの時点でも大量に存在しているが、本作には「お勧めのジェムを表示」という機能があり、スキルジェムを選択するとそのスキルに合うサポート効果を表示してくれる。スキルジェムとサポートジェムはそれなりにドロップするので、最初はおすすめに従ってプレイ感を把握し、慣れてきたら自分で効果を選んで組み合わせていくのがいいだろう。
これらの変更や新要素について、ジョナサン氏は「新しいプレイ感を追及しつつ、よりカジュアルに戦闘を楽しめることを意識した」と語った。前作からのプレイヤーはもちろん、『PoE2』からシリーズ作品を遊ぶという新規プレイヤーでも直観的にビルドの楽しさに触れ、爽快なアクションが体験できるように調整されているようだ。
アーリーアクセス版では6つのクラス&各2つのアセンダンシークラスが遊べる。エンドコンテンツ「トライアルズ」やトレード機能も実装
ジョナサン氏へのインタビューによると、『PoE2』アーリーアクセス版では3つのAct(3章分のメインストーリー)がプレイ可能なほか、エンドコンテンツに当たる「トライアルズ」がプレイできるという。また、4つのリーグ要素(サブコンテンツ)や特殊なボスなども実装されるそうだ。
キャラクタークラスは正式版で予定されている全12クラスのうち、半分の6クラスを選択可能。正式版では各クラスに3つのアセンダンシークラスが実装される予定だが、そのうちの2つをアーリーアクセスで使うことができる。クラスの一部は前作『PoE』に存在したものだが、ジョナサン氏いわく、『PoE』から続投されているクラスもプレイ感は変わっているとのことだ。
アセンダンシークラスは前作同様エンドコンテンツに紐付いており、解放するためには「トライアルズ」に挑戦する必要がある。トライアルズはランダム生成のダンジョンを進んでいくコンテンツで、種類によってそのメカニクスが異なるようだ。現地のプレゼンテーションでは、階層を進むごとにプレイヤーに“縛り”が追加されていく「Ritual」などのトライアルズが確認できた。
また、本作ではアセンダンシークラスを解放すると特殊なアクティブスキルの習得が可能になるようだ。筆者は試遊時間内に解放まで辿り着けなかったため詳細は不明だが、現地のプレゼンテーションではクラスの1つ「ウィッチ」が悪魔のような姿に変身し、継続的なライフ減少と引き換えに強力な力を手に入れる様子が公開された。
『PoE2』ではゲーム全体を通じて100体のユニークなボスとの戦闘が用意されており、アーリーアクセス版でもその面白さを存分に体験することができるとのこと。ジョナサン氏は本作の製作にあたって『ELDEN RING』などフロム・ソフトウェアのゲームに影響を受けたと語っており、一筋縄ではいかない緊張感のあるバトルが楽しめそうだ。
余談だが、筆者は6クラスすべてのキャラクターでボスに挑み、合計で10回以上は死んでしまった。最初から歯ごたえ抜群である。
ジョナサン氏によれば、アーリーアクセスの期間中は新要素の拡張に集中し、リーグ要素の追加などは正式版で行っていく予定であるとのこと。また、『PoE』で好評だったプレイヤー間のアイテムトレード機能もアーリーアクセスの時点からサポートするそうだ。
ここまで読んでいただいた読者の方には、『PoE2』がいかに深い沼のようなゲームであるかを理解していただけただろう。
先に述べたように、筆者は試遊において6つのクラスすべてでキャラクターを作成して2体目のボス討伐まで進めたのだが、どのクラスにも固有のプレイ感とそれに合わせたビルドの面白さがあり、どのクラスで攻略を進めるか本気で迷ってしまった。キャラクター間でアイテムを共有できる「スタッシュ」という機能もあるので、正直なところ、時間が許すなら全クラス並行でやりたかったくらいだ。
本作はキャラクターボイスが非常に豊富なのも特徴で、戦況や敵の種類に合わせて多彩なセリフを喋ってくれる。さらに、選択したクラスによってはメインストーリーの会話にまで差分が発生することも。日本語の翻訳も違和感なく、各キャラクターの性格が魅力的に描かれていた。そういった点でも、複数のキャラクターで遊びたくなるのは当然かもしれない。
ちなみに、ジョナサン氏はキャラクタークラスの中でも「モンク」と「マーセナリー」がお気に入りだそうだ。『PoE2』からの新クラスであるマーセナリーはSTGのような独特な操作感を持ったクラスで、初心者にもおすすめしたいとのこと。実際、見下ろしSTGを良く遊ぶ筆者の手にはよく馴染んだため、筆者も本格的に攻略するにあたっては彼を選んだ。
最後に大事な情報をお伝えしておくが、アーリーアクセスのキャラクターデータは正式版に引き継ぐことが可能であるとのこと。アップデートの過程でバランスが変わっていく可能性はあるが、集めたアイテムや習得したスキルは引き継がれる。
つまり、正式版を待たずに、今から本気で『PoE2』にのめりこんでもいいということだ。
『Path of Exile 2』の早期アクセス版はPC、PS5、Xbox向けに12月6日に開始される予定。基本プレイ無料で遊べるため、前作プレイヤーもそうでない方も、興味を持ったならぜひプレイしてみてほしい。