過去作への愛にあふれた名作『ベア・ナックルⅣ』
先述のとおり『ベア・ナックルⅣ』は、人気を集めたSEGAのベルトスクロールアクションゲーム『ベア・ナックル』シリーズの25年ぶりの続編。往年の名作ゲームの久々の新作という意味で、『SHINOBI 復讐の斬撃』と非常によく似た境遇のタイトルです。
ゲームを起動して早速驚かされたのが、本作のオープニングムービー。そのアニメーションは往年のアメコミ的でありながら日本的な要素もある、懐かしさが感じられるもの。
私個人としては、ゲーム本編への期待感を大いに高めてくれるオープニングムービーが大好きなのですが、『ベア・ナックルⅣ』のオープニングは間違いなくそのタイプ。この時点で、名作の予感がしてきます。
そして、いざゲーム本編で遊んでみると、ものの1分もしないうちに、アクションのスタイリッシュさと爽快感がガンガンに伝わってきました。
操作方法などの説明をろくに見ずに、とりあえずボタンを押して操作感を確認しているだけなのに、地上で、空中で、コンボがつながるつながる!

そもそも、ベルトスクロールアクションというものは、画面内に出現した敵をすべて倒さなければ次のエリアに進めない場面が数多く存在するゲームジャンル。プレイヤーがキャラクターたちの繰り出す戦闘アクションと向き合う時間が必然的に長くなるため、アクションそのもののおもしろさが、ゲームのおもしろさに直結してくることになります。
なにもわからず適当にボタンを連打しているだけで簡単に爽快感を得ることができた『ベア・ナックルⅣ』は、その点において非常に優れていると言えるでしょう。
また、『ベア・ナックルⅣ』のアクションの中で個人的に好きなのが、通常攻撃よりも高性能な “スペシャル攻撃”。
ベルトスクロールアクション界隈においては、高性能なスペシャル攻撃を乱発できないよう、それらの技を繰り出す場合はキャラクターの体力の一部を犠牲にすることがお約束なのですが、本作のスペシャル攻撃は少し仕様が違います。
『ベア・ナックルⅣ』のスペシャル攻撃は、繰り出すと体力が減りはするのですが、敵を攻撃することによって、削られた体力を回復させることができるのです。ただし、その回復が終わる前に敵から攻撃を食らってしまうと、回復できるはずだった部分ごと体力を削られてしまう。
スペシャル攻撃によって回復の余地なくプレイヤーの体力が削られていく場合、気がついたときには一発攻撃を食らったらゲームオーバーという状況になってしまうこともしばしば。そのため、心情的にどうしてもスペシャル攻撃に手を出しにくくなることが私は多いのですが、このシステムならば話は別。
自分の頑張り次第で体力を元の状態にまで戻せるわけですから、「ここは一発、戦局を変えるためにスペシャル攻撃を使ってみよう」などといったような、ギャンブルに近い気持ちで技を繰り出すことができるのです。
このような、リスクのあるアクションに対して一歩足を踏み出しやすくなるようなシステムからは、本作のプレイヤーに対する細やかかつ丁寧な気配りが感じられ、「ただ普通にベルトスクロールアクションの新作を出すだけじゃ終わらないぞ」という気概さえも伝わってくるような気がしてきます。
そして、『ベア・ナックルⅣ』のアクションに爽快感を生み出している大きな要因のひとつが、キャラクターたちの滑らかな動き。「このぬるぬるなアクションはもしや?」と思い調べてみると、どうやら本作においてもゲームのビジュアルは手描きによって作り上げられているとのこと。
先述のとおり『SHINOBI 復讐の斬撃』は手描きのアニメーションが売りの横スクロールアクション。『ベア・ナックルⅣ』のような手描きアニメーションアクションの成功例があるとなると、より一層期待が高まってきます。
手描きアニメーションのなにがいいって、「独特のリズムや重み」ではないでしょうか。ぬるぬる動くだけではなく、独特のテンポ感があると思います。たとえば『SHINOBI 復讐の斬撃』のトレーラーでも攻撃モーション前に「一瞬の間」(力を込める感じ)があり、動きの強弱や緩急にすっかり目を奪われてしまいました。
エフェクトや動きの変化を細かく調整している感じが伝わってくるので、ついつい見入ってしまう魅力があるように思います。
開発スタジオ「Lizardcube」の実績
また、『ベア・ナックルⅣ』を通して『SHINOBI 復讐の斬撃』を考えるうえで、アクション以外に見ておきたいポイントが、『ベア・ナックルⅣ』は過去の名作ゲームの久々の続編であるという点。
そうなると気になってくるのが、登場するキャラクターのデザインです。同じデザインのままなのか、はたまた違うデザインなのか。完全なる素人目線ではありますが、人気シリーズの久々の続編タイトルでは、この塩梅や線引きが非常に重要なポイントなのではないかと感じます。


その視点から『ベア・ナックルⅣ』を見てみますと、まず、主人公のアクセル・ストーンは、それまでの作品にはなかったあごひげや口ひげを蓄え、タンクトップの上に上着を羽織っているなど、雰囲気が過去作と比べて変化しています。
しかし、トレードマークの青いバンダナなどといったキャラクターとしてのアイコンはしっかりと残されているため、「アクセルが順当に年齢を重ねたらこうなるだろうな」と、こちらを納得させるような説得力のあるデザインになっているのです。


アクセルが雰囲気を変えた一方で、シリーズを通して登場する女性キャラクターのブレイズ・フィールディングの場合は、見た目の雰囲気に若干の違いはあるものの、アクセルほどの大きな変化はありません。
長い年月を経て新作を世の中に出すにあたって、雰囲気が大きく変わったキャラクターとそこまでは変わらないキャラクターがいる。このさじ加減は絶妙で、本作は新規ファンも古参ファンも受け入れやすい続編になっているのではないかと感じます。
緻密に描かれた手描きのアクション、ゲームシステムのアップデート、キャラデザの変化。これらの要素をかき集めることによって見えてきたのは、“過去作への愛”。
その最たる例が、ゲームをやり込んで通算スコアを伸ばしていくことで、これまでの作品に登場したキャラクターたちが、その当時のグラフィックのまま使用可能になっていくこと。この隠し要素には驚きました。昔からのファンにとって、とてもうれしいサプライズなのではないでしょうか。
あまりの画風の違いのせいで、まるで合成かのように見えますが、こちらの画像もれっきとした『ベア・ナックルⅣ』のプレイ画面。
しかも、これらのキャラクターたちは、ナンバリングによる細かな技の違いもしっかりと再現されているとのこと。ファンを喜ばせるためにここまでやるか。制作スタッフたちの『ベア・ナックル』シリーズに対する並々ならぬ愛情を感じます。
『忍』シリーズにおいても数多くのシリーズが展開されてきましたが、本作のジョー・ムサシのデザインもうまく落とし込まれており、期待しかありません。


現代っぽい見た目になったけど、ジョー・ムサシであることはすぐにわかります。復讐心がより増しているかのようなキリッとした目元が純粋にかっこいい。おそらく今後紹介されるであろう味方や敵のデザインも気になります。
結論として、『ベア・ナックルⅣ』は、『ベア・ナックル』シリーズへの大いなる愛とリスペクトをもって作られたゲームであり、シリーズのいいところは残した状態で一部要素をアップデートすることで進化を遂げた、理想的な続編タイトルと言えるのではないでしょうか。
Lizardcube、すごいゲームを生み出すスタジオです。
……ちなみに、Lizardcubeが手掛けたタイトルというと、『モンスターワールドII ドラゴンの罠』のリメイク作品である『ワンダーボーイ:ドラゴンの罠』もオススメです。こちらも、キャラクターの動きやデザインが丁寧に作り込まれた名作ですので、この機に軽く布教させていただきます。
さて、Lizardcubeが非常に過去作への愛を感じる続編を制作するゲームスタジオであることがわかったところで、改めて過去作『ザ・スーパー忍』をプレイし、その直後に『SHINOBI 復讐の斬撃』のトレーラーを見てみることにしました。

それによって感じられたのは、やはり過去作へのリスペクト。『SHINOBI 復讐の斬撃』は、ひと目で『忍』シリーズの新作であることがわかるような、『ザ・スーパー忍』を感じさせる画面デザインでありながら、そこで繰り広げられているアクションは『忍』シリーズのどれとも異なるもの。
『ベア・ナックルⅣ』と同じように、過去作のよさを残した状態でさまざまな要素をアップデートさせたゲームに仕上がっていることがうかがえます。本作もまた、過去作への愛に溢れた作品となるのではないでしょうか。
いまはまだトレーラーしか公開されていないですが、今後はより詳細な情報も解禁されていくはず。個人的にはバトルシステムなども含め、アクション部分をもっと見たいです。発売予定の8月までまだ少し時間があるので、こういうときはSteamのウィッシュリストへ追加しておくといいかもしれませんね。