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人は、インターネットが禁じられた状態で旅行を楽しめるのか? スマホもない、ホテルもない、行き先も決めてない……文明の利器が一切奪われたまま佐賀県を攻略してみた

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ロマンシングサバって何?

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翌朝。ちょうど日曜日だし、意外と企画に余裕もあるし、ホテルの朝食を食べながら優雅にニチアサでも決めてやろうかと思っていたのに……ヨッピー氏に叩き起こされた。ヨッピー許せねえ。

どうやら、ここで「強制イベント」が起きるらしい。

そんなRPGみたいな……と思いながら、やってきたのはさっきの県立博物館。やっぱここイベント関係あったんじゃん! 「ここなんかあるんですかね?」とか揺さぶりかけたのに県庁の人「どうなんすかねー?」とか言ってたじゃん! 12時間の間に二度も博物館来てるよ!!

この日、「ロマンシング佐賀10周年アニバーサリーセレモニー」が行われた。

登壇者は、河津さん※、市川さん、コラボ陶磁器を作った徳永さん、佐賀県知事……そう、ここで「県知事に会え ※高難度」のミッションを達成できるようになっていたのだ! まぁ私は県知事より「キャ──河津さ──ん♥」って感じでしたけど!

※河津さん……河津秋敏さん。スクウェア・エニックス所属のゲームクリエイター。「サガ」シリーズの生みの親としても知られる。

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セレモニーが終わってから県知事と話しました。
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左の方が県庁の人。

そろそろ痺れを切らした私は、もう県庁の企画担当の方に「これどうやって解けばいいんですか?」と直接聞く禁じ手を打った。別にいいだろ、思ったより早く全クリして終わりそうなんだから!!

残されたミッションの中で、全く見当がついていないのは「ロマサガ2をプレイせよ」「せんせいのステッカーを入手しろ」のふたつ。このふたつ、パンフレットにも全く情報が載っていない。企画的にもこのふたつを最難関として設定したらしい。

もう普通に答えを教えてほしい勢いで質問したのに、それぞれ「ロマサガ2はコラボメニューのとこにある」「ステッカーはSAGAアリーナに行ってみてほしい」とヒントを教えてもらった。もう普通に答えを教えてほしい勢いで質問したのに。

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……と、その前に。

難関ふたつの前に、ちょうど「“電球ボトル入り閃きふりかけ”と“ロマンシングサバ”を入手せよ」は達成することができた。県立博物館から駅までの帰り道に、ピッタリ「佐賀工房」というロマ佐賀関連のグッズを販売しているお店があったのだ。

そこで無事に「電球ボトル入り閃きふりかけ」と「ロマンシングサバ2」を購入。
ロマンシングサバって何?

しかも、県庁の人に聞く限り、このロマサバ2は「唐津Qサバ」という完全養殖のかなりいいサバらしい。どおりで4400円もすると思ったよ。ただのダジャレグッズの割に、やたらと気合が入っている。ますます意味がわからない。なぜロマサバ2にここまで真剣なのか。

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佐賀県 唐津市 公式サイトより

インペリアルタコスって何?

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県庁の人から「コラボメニューのところにある」と教えてもらった「ロマサガ2をプレイせよ」というミッション……実は佐賀市内にコラボメニューを食べられるところは5箇所あり、最悪ローラー作戦で全部回ってしまうのも脳裏によぎった。

しかし、そんな中で最も気になっていたのが、この「インペリアルタコス」。
メニュー紹介が怪文書だから。

これもロマサバ2に続いて、ただのダジャレメニュー。
というか、そもそも「ロマ佐賀」というイベント自体がダジャレで始まったものなのだから、それを取り巻くメニューやグッズがほとんどこじつけだったところで、何の文句も言えない。うーん、結構狂ったイベントですよね。

とにかく、『ロマサガ2』のファンとして、このインペリアルタコスを食べに行かなければならない気がする。他にも美味しそうなメニューは無数にあるけど、もうここに行ってわずかでも撮れ高を確保しなければいけない気がするッ!

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よいかジェラール。我々はインペリアルタコスを提供する。
防御力の高いニンジンが前衛、両脇をムラサキキャベツとタマゴが固める。レタスはトマトの後ろに立つ。決め手は佐賀県産野菜を使ったサルサソースだ。どこから食べても美味い。安心して食せ。

ラピッドストリームタコスとかだったらもっと強かったんですかね……とか思っていると、なんとこのお店の2階にリメイク版『ロマサガ2』の試遊台を発見。本当に店の一角に『ロマサガ2』がポツンと置かれている。なんなのこれ……。

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どうやら、「継承」が重要な『ロマサガ2』にかけて、ロマ佐賀にやってきた人たちでひとつのセーブデータを使い回してゲームクリアを目指す企画をこの店舗で実施しているようだった。

企画は悪くないけどこんな店の一角で堂々とやるの!? もうミッション達成の喜びより「どういう建付けなんだ」という困惑が上回ってくる!!

とにかく、お店の一角で『ロマサガ2』をプレイして無事ミッション達成。
どうやら佐賀市内に『ロマサガ2』が置かれているのはここだけらしく、たまたま私がアタリを引いた感じですね。でもそんなことよりイベントの奇妙さが気になる。

ちなみに、数年前にオリジナル版の『ロマサガ2』でも似たようなイベントを佐賀県で実施したらしいです。その時は無事にクリアしたらしい。皇帝の名前は「ひろし」だったとか。なにからなにまで珍妙なイベントだ。これ、現在だとクリアされてるんですかね……?

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最後のミッションである「せんせいのステッカーを入手しろ」を達成するべく、またしてもSAGAアリーナにやってきた。そして地味に移動距離が長くて疲れてきた!

いや、昨日と今日とで佐賀市内の大通り2往復してるんですよ。しかも同じ場所にも2回行ってるし。端の県立博物館から、端のSAGAアリーナまで何度も移動してるんですよ!!

この日、SAGAアリーナではバスケの試合が行われていた。どうやらこのバスケの試合と、「せんせいのステッカー」に関係があるらしい。今になって思い返すと、朝のセレモニーといい、ピッタリ重なるバスケの試合といい、相当上手いことスケジュール調整してもらった気がする。完全に佐賀県の接待だ。

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もう最後のミッションなので、恥も外聞も捨ててアリーナ受付に突撃する。

どうやら、このアリーナにて「佐賀バルーナーズ」という佐賀県のバスケチームのLINE公式アカウントを登録することで、バルーナーズせんせいのステッカーがもらえるらしい。いやこれノーヒントでわかるワケないよー。まさに「人(NPC)に聞かないと解禁されないイベント」ですね。

どうやら、あの「ロマサガ2をプレイせよ」と「せんせいのステッカーを入手せよ」の難関ふたつは、企画的にも「人に聞かないと攻略できないもの」として設定していたらしい。え、これってメタ読みとかカッコつけたこと言いながら私のコミュ障っぷりが露呈しただけ? 最初から人に聞いてたらこんな何往復もせずに済んだの?

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とにかく、これで7つのミッションを達成!!!

やったー都内に帰れるぞ──!!!!!

……と思ったのもつかの間、そのままバスケの試合を見ることに。

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お察しの通り、私は「いや……自分は別にバスケの試合とかいいっすよ……」と思ってしまう根暗タイプの人間なのですが、なんかSAGAアリーナの設備がすごすぎて単純に演出に圧倒され続けてました。

なんかアイドルのライブみたいな光量で試合前のショーとかやってるんですよ。意味がわからん。でも、たしかにこれは佐賀県の威信をかけたアリーナだと思う。東京でもここまで設備強いハコなかなかない。

一応、県庁の人には「ここにアイマスとかラブライブ呼ぶのもかなりアリだと思います」とお伝えしておきました。何様……?

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しかも、試合中に選手がゴールを決めると、ロマサガの閃きSEとともに専用の演出が出てきたりする。もうバスケとサガ絶対関係ないよね!? 佐賀県民の人たちは普通に受け入れてるの!?

怖い、段々この「ロマ佐賀の浸透度っぷり」が怖くなってきた。

コラボメニューや特別展示はまだわかるけど、あっちを見てもこっちを見ても市内に「ロマ佐賀」が潜伏している。「流石にもうロマサガ関係ないでしょ」という場所にまで入り込んでいる。もう試合というより、「佐賀県内におけるロマ佐賀の異様な浸透度」に恐怖していました。

ロマ佐賀、もはや「刷り込み」なのではないか

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だいぶ失礼なことを言ってしまうけど、私はこうして実際に佐賀県に行くまで、ロマ佐賀のことを半分くらい「おふざけで始めた、物好きがやってくるイベント」だと思っていた。だって……いくらゲームとしてのサガが好きでも、わざわざ佐賀県まで行くことないでしょう!?

でも、この「ロマ佐賀」は今年で10周年を迎えている。

その10年という年月の積み重ねもあるのだとは思うけど、本当にこれでもかと街中に「ロマ佐賀」が浸透しているのだ。ポスト、電車、マンホール……生活の中で目に触れるところのあちこちに「ロマ佐賀」が潜伏している。佐賀県に、もう何食わぬ顔で「俺の故郷ですけど?」とロマサガが居座っている。

割とマジに、「佐賀県くん…今までロマサガさんにずっと助けてきてもらったこと忘れちゃったの…?」「佐賀県が発展してきたのも…スクエニが続いてきたのも…全部ロマサガさんが居たからじゃないか…!」みたいな態度で、ロマサガが居座っている。怖い。

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ロマ佐賀の最大の特徴、それが「別にコラボ期間とか関係なく存在し続けてる」こと。

つまり、コラボ期間が終わっても、マンホールやポストはそのまま街中に存在し続けているし、なんなら「ロマ佐賀」仕様の電車だって毎日県民が利用しているらしい。もっと言えば、「佐賀駅」の発車ジングルすら『ロマサガ2』のアバロンの音楽が流れる。一度コラボしてからずっとそのままらしい。

もはやこれは、ある種の「刷り込み」なのでは?

率直にそう思った。
もはや「刷り込み」のレベルで県内にロマ佐賀が入り込んでいる。サブリミナルとかそんなレベルじゃない。毎日アバロンの発車音を聞きながら学校に通い、ロマ佐賀の電車に乗って遊びに行き、ロマ佐賀が潜伏する街中で遊ぶ。

そうして元気に育った佐賀県の子どもたちにとって、なんかもうロマ佐賀は「いつも生活の中にあるもの」という当たり前の存在になっているのでは? 怖い、これはスクウェア・エニックスの壮大な刷り込み計画なのだろうか?

これが佐賀県にゆかりのあるゲームなら、まだ理解できる。
最も恐ろしいのは、ただ「サガと佐賀で被ってて面白いですよね(笑)」という理由でここまで馴染みきっていることである。たとえるなら、誰との血縁もない人が、毎日家族の食卓に平然と参加しているような状況なのではないか。怖っ!!

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だから、私はふと思った。
「ロマ佐賀があと20年くらい続いた時に、全くロマサガ(ゲーム)に触れず20年間佐賀県で育ったお子さんに、いきなりロマサガを遊ばせたらかなり面白いのでは?」と。

20年生きてきて、ようやくこれが佐賀県とスクウェア・エニックスによる壮大な陰謀だったことに気づく。なにもかも刷り込まれていた。そんなお子さんが出てきてしまっても本当におかしくないのでは!?

いきなり『ロマサガ2』を遊んで、「えっ、駅の発車ジングルと同じ音楽流れてるんだけど……」と感じている佐賀県民の人、完全にゼロじゃないのでは!? 目を覚ませ僕らの世界がロマサガに侵略されているぞ!!

だから、あと10年続けてほしいです。
10年経ってから、また「20年ロマ佐賀に触れて育った佐賀県民にいきなりロマサガを遊んでもらう」という企画を一緒にやりましょう。いや、本当に刷り込まれてる人いると思う。賭けてもいい。

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街中の看板すら、ロマ佐賀仕様。

……で、この記事面白かったですか?

わたし、超絶不安です。

これ、当初の趣旨と明らかに違くないですか?
きっと「苦しめ!」と思われていたはずなのに、攻略に躍起になった結果、想像以上にパーフェクトデュエルを決めてしまった気がする。企画担当者だって「ミッション全部は難しいんじゃないかな?」とか言ってたよ!?

この「みんな思い通りに行ってない」感じがロマサガらしいと言えばそうかもしれないけど、果たしてこの記事は面白いのだろうか? 不安しかない。たしかに佐賀県をパーフェクトに楽しんで都内に帰ることには成功したと思う。だが、旅の成功はこの記事の成功とノットイコールなのでは?

「インターネットがなくても導線がしっかりしてるので楽しめる」ことは証明できたけど、その証明に躍起になりすぎて塩試合だったのでは? 完全に企画クラッシャーになってしまったのでは?

あの……私が不安なので、どうかこの記事から佐賀県に行ってください。
そうじゃないと私が報われない! サガファンの人、佐賀行ってください!!

©SQUARE ENIX

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
ライター
自称“無職”のボードゲーム好き。 ライターとしてさまざまな媒体で面白記事を執筆。 現在はメディア運営のアドバイザーやWEBライター塾の講師としても活動している。
Twitter:@yoppymodel

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