現実世界と架空世界の曖昧な境界線に、独自の物語性を紡ぎ出すことを得意とするクリエイター集団の第四境界。同チームによる初のリアルイベント『東京侵蝕2025 supported by SANKYO』(以下、『東京侵蝕2025』)が、4月15日~20日の5日間、東京・品川にある寺田倉庫 B&C HALLで開催中だ。
『東京侵蝕2025』は、作り混まれた世界に入り込むことで非日常の体験ができる「イマーシブタイプ」のイベントではなく、フィクションの側が参加者たちの日常を侵食していく「イロージョンタイプ」の体験イベントとして企画されたものだ。
本イベントには、総監督の藤澤仁氏を始め、多数のクリエイター陣が参加。大きく分けて5つのコンテンツが用意されており、さらに物販コーナーなども設置されていた。
こちらの記事では、関係者向けに開催された初日の模様をレポートしていく。


他人が入れたコインロッカーの中身を見る罪悪感がたまらない。『残置物展』エリア
会場入り口付近に設置されていたのが、全国残置物保管協会が主催する『残置物展』のエリアだ。同団体は、人々に忘れ去られてしまった「残置物」を回収し、保管することを目的としている。そんな「残置物」を展示しているエリアとなる。

この展示では、なんとコインロッカーを開けてその中身を覗くことができる。一見なんの変哲のないものであっても、勝手に扉を開けて中に何が入っているのかを見るのはちょっとした罪悪感が生まれる。普段あまり体験する行為でもないこともあってか、そのなんともいえない感覚が、妙に病みつきになる。
といっても、すべての扉が開けられるようになっているわけではなく、中身を調べることができるのはあくまでも鍵が付けられているものだけだ。その中に入れられているアイテムも多種多様で、ドラマを感じさせる。



『残置物展』のエリアだけでなく、今回の『東京侵蝕2025』では会場内のあちらこちらにQRコードが貼られており、そちらをスマホで読み込んで様々な情報や音声情報などがチェックできるようになっている。こちらの『残置物展』では、データベースにアクセスして、情報を正しく入力することでそのアイテムの情報を確認することができるようになっていた。
この『残置物展』で展示されているコンロッカーの中身は、それぞれ「東京都新宿区」、「愛知県名古屋市」、「秋田県いちはた村」の3ヵ所から集められたものという設定だ。
実際に展示されているものがどんな由来のものなのか調べたいときは、このデータベースから場所と品目、特徴を入力することでアクセスすることができる。しかし、3つ目の特徴が正しく入力できないとページが表示されないようになっていた。
たとえば血の付いたようなシャツについてデータベースで調べてみたところ、恐ろしい犯罪が行われたのかと思いきや、データベースで調べてみるとまた別の事実が判明。見た目だけでは判断できない、いろいろな人間ドラマが見えてくるのも面白いところだ。


『残置物展』エリアでは、もうひとつ「いわく」つきとして「秋田県いちはた村」から集められた「残置物」が展示されている場所があった。
こちらはカーテンで覆われた場所にあり、中には赤いライトで照らされてロッカーの中身が判別しにくい。そのため、入り口付近で小型のライトが係員から渡される。さらに1分間という制限時間も設定されおり、短時間で中をチェックしていくことになるのだ。
ロッカーの中をライトで照らすという行為は、フィクションの世界に入り込んだかのような気分が味わえる。先ほどのエリアとはちょっとした違いではあるものの、体験としては少し異なる印象になるのは面白いところだ。

会場内でヒントを見つけて「緊急プログラム」を発動せよ!『交錯≠少女(CLOSSOVER GIRL)』エリア
イベントが開催されるよりも前の4月1日より、リアルタイムに物語が進行していったプレイヤー数無制限のリアルタイムアドベンチャーゲームが『交錯≠少女(CLOSSOVER GIRL)』だ。本作では、プレイヤー自身が登場人物のひとりとなってほかのプレイヤーたちと協力しながら謎を解明していくという内容になっている。

ストーリーとしては、現実世界に迷い込んでしまった未完成のマンガキャラクターである「金澤かな」を、仮想世界に戻すというもの。しかし、かなは組織的誘拐グループを壊滅させ、自分と同じように捕らえられている少女たちを救い出したいと考えている。そのために、「緊急プログラム」を発動させるというのが、このリアルな会場内で課されたミッションである。
そして、そのミッションをクリアしたもののみが、敷居で囲われたエリアで上映されるエンディングが楽しめるようになっていた。

この会場内での遊び方については、イベント参加時に渡される冊子にも記載されており、会場内で「ギビングリリーフ」のはっぴを着たスタッフにヒントをもらったり、あるいは会場内のあちらこちらに置かれている段ボールの中から、「ギビングリリーフ」のものを見つけてQRコードを読み取ったりしながら、探索をすすめていかなくてはならない。
一応、なかなか謎が解けない人のために冊子にはヒントページにアクセスできるQRコードも記載されていたのだが、参加している人の会話を近くで聞いていると「なかなか難しい」といいながら悩んでいる姿を多く見かけた。



音声ガイドをヒントに隠された闇を暴き出す!『ぼくらの表現祭』エリア
順番が前後してしまうが、『残置物展』エリアから会場の中に入り、『交錯≠少女(CLOSSOVER GIRL)』エリアにたどり着くまでの間に用意されていたのが、『ぼくらの表現祭』エリアだ。こちらは、再犯率0パーセントをウリにした「かがみの特殊少年更生施設」の作品が展示されている。
入り口付近には受付が用意されており、こちらでスタンプが教えてもらえるようになっていた。また、施設の健全な活動をアピールするためのものか、オリジナルキャラクター「シナイドリ」のぬいぐるみなども展示されていた。
それぞれの作品には音声ガイドが用意されており、QRコードと作品に書かれている4桁の番号を入力することで説明が聞けるようになっていた。展示物としては、今回の表現祭に関する挨拶から始まり、マスコットキャラクターの紹介や作文、絵画などそれほど奇抜なものはない一般的なものばかりといった印象だ。
ここまでなら、よくある普通の展示物といったところなのだが、実は表からはわからない、深い闇が隠されている。
たとえば、この音声ガイドは4桁の順番に並んでいるハズなのだが、なぜか欠番になっている部分があることを発見。そちらの番号を入力して音声ガイドを聞いてみると……といった感じで、展示物の中から目に見えないヒントを見つけ出していく遊びが楽しめるようになっていた。






船上でガチな試験を実施。『事故物件鑑定士試験』
イベントで開催されるほとんどのコンテンツは寺田倉庫 B&C HALLで行われていたのだが、唯一異なる場所で実施されていたのが『事故物件鑑定士試験』だ。寺田倉庫の道路をはさんで反対側は水辺になっているのだが、そこに設置されている船の中で試験が行われた。


コンテンツとしては、第四境界がこれまで提供してきた『人の財布シリーズ』や『幽拐シリーズ』に続く、ARGシリーズ「禁忌肢」第一作目となっており、試験自体もマークシート方式で1時間掛けて行われるなど、想像以上にガチ目に行われていた。
試験項目では事故物件にまつわる不動産トラブルの解決や霊的なインシデントの対処方法なども含まれており、通常の試験とはひと味違う体験ができる。また、試験後は寺田倉庫 B&C HALLの2階で合格発表も行われ、事故物件鑑定士の資格をもらうことができる。
この1年間の活動を振り返る展示エリア『第四境界ヒストリー』
ここまで紹介してきた4つのコンテンツは、いずれも何かしらの謎解き要素が含まれているようなものばかりだ。それとは別に、同会場の2階で行われていたのが『第四境界ヒストリー』である。
こちらは、2024年3月31日から本格的に始動を開始した第四境界の1年間を振り返るとともに、同チームが制作した作品の展示やイラストレーターとのコラボ作品の展示を行うコーナーとなっていた。
この『第四境界ヒストリー』の中央にガラスケースで入れられているものが、同チームが手掛けてきた『人の財布シリーズ』などの作品だ。こちらもQRコードで音声ガイドが読み込めるようになっており、声優・鬼頭明里さんによる説明が聞けるようになっていた。
この『第四境界ヒストリー』で飾られていたイラストには、望月けい氏やcoalowl氏などを始め、18名のアーティストたちが参加している。
物販コーナーも充実
展示エリアに負けないぐらいのスペースをで、様々なグッズの販売が行われていた。こちらには、「東京侵食2025パーカー」や「東京侵食2025Tシャツ」などのアパレルから、ぬいぐるみに缶バッジ、クリアファイルにステッカーといった一般的なアイテムもラインナップ。
ちょっとした変わり種としては、「誘拐カレー」や「READY TO STORY(コーラ)」、「READY TO STORY(ビール)」、などの飲食関連のアイテムも売られていたことである。イベントを思いっきり楽しんだ後は、こちらのコーナーにも寄って片っ端から買いたくなってしまうかもしれない。
冒頭にも触れたが、こちらの『東京侵蝕2025』は4月20日まで寺田倉庫 B&C HALLで開催中だ。
今回は開催期間も限られているため、残念ながら現地まで直接行くことは出来ないという人もいるかもしれない。そうした人のために、オンラインチケットも用意されている。こちらは『事故物件鑑定士試験』を除いたすべてのコンテンツが体験出来るようになっているので、少しでも興味を持ったならば合わせてチェックしてみよう。