みなさま、こんばんは。黒木ほの香です。
GWも終わり、気温もぐんと上がってきた五月の後半。
気温の数字が大きくなればなるほど、背中は丸まって小さくなっていきますね。
体調はお変わりないでしょうか?
わたしは五月病になる暇もなく、せかせかと働いておりました。

何故かというと、しっかり休むため!
そう、このエッセイが公開されているころには、わたしはもう東京にはいないでしょう。(旅行に行っているだけ)
その旅行のことはまた来月以降にみなさまにお届けするとして、今回のエッセイでは「『なんでもない日』の記憶が、たまに刺さる」という楽しそうなテーマをいただいたので、わたしの記憶の中で生き続けるワンシーンたちをご紹介したいと思います。
・我が人生で一番最古の記憶
みなさんは、どこから記憶がありますか?
わたしはおそらく、幼稚園の年少さんの頃が一番古い記憶です。
幼少期のわたしは惚れっぽく、当時好きな男の子が二人いたのですが、その内の一人と、実家の玄関で飼っていたカブトムシを観察するというデートをしました。
カブトムシに興味津々な彼の横顔を、ずっと見つめていたのを覚えています。

ちなみに、この出来事を何度か母に話したんですが、知らない、といつも言われます。
そして「一番古い記憶はお母さんの柔らかい胸の中ちゃうんかい!」というツッコミが飛んできたりもします。
なんだその気持ち悪いツッコミは…。
モイキーは、遺伝。
・未だに忘れられない一言
投げかけた言葉より、投げかけられた言葉の方が圧倒的に記憶に残るといいますよね。
余談ですが、これを知ってから、軽口をたたいて相手を傷つけたかもしれないな…とよぎってしまった言葉は、自分の中でも残るようになりました。
わたしは小学四年生から携帯電話を持っていたのですが、周りのお友達はまだ携帯を買ってもらっている子が少なく、メールのやり取りができる子がほとんどいなかったんです。
ただ、親同士も仲が良くてよく一緒に過ごしていた女の子(Aちゃん)が、同じタイミングで携帯を手に入れたことで、何気ないメールを送りあうようになりました。
わたしは、携帯電話を買ってもらったことは嬉しかったものの、公園で遊ぶのも楽しかったから、メールの返信速度はまちまちで、五分おきにメールをチェックしている日もあれば、携帯を全く見ない日もありました。
そんな携帯を見なかった日の翌日、学校に行くと、Aちゃんがめちゃくちゃ不機嫌で、わたしは困ってしまいました。
理由を聞いても教えてくれず、ただただブスっとしているだけ。
それでも負けずに「なんで怒ってるん?うち何かした?」と問い詰めると、こう言われたんです。
「自分の胸に手ぇ当てて考えてみーや!!」
一言一句このまんまです。語気が強すぎるよAちゃん。
メロドラマのワンシーンのようなこのセリフ、しびれました。いつか言ってみたいセリフランキングの上位に食い込んでくる、そんなお気に入りの言葉です。
・祖母との買い物での一コマ
わたしは幼少期から二十年以上、祖母と一緒に出かける度に服を買ってもらい続けていたんですけど(衝撃の事実)。
わたしが声優としてまだ駆け出しのころ。いつも行くお店でお洋服をいくつか選んで、試着室で着替えていると、外から「お孫さんとお出かけですか?」という店員さんの声が聞こえてきました。
祖母は明るい声色で「そうなの、いいでしょう」と答えていて、なんだか楽しげな雰囲気が伝わってきます。
「(おばあちゃんに話しかけてくれてる、優しいなぁ)」と、二人の会話を聞きながらのんきに着替えていると、祖母がこう続けました。
「うちの孫は、芸能人なの」
「この間、新聞にも載ったのよ」
おいおいおいおい、勘弁してくれグランマ、かなりやばい行動してるってそれ。
わたしは常日頃から祖母に対して、声優という仕事はどういうものかと説明していたつもりでしたが、それでも伝わり切ってはいなかったらしく「歌って踊ってるし、テレビに出たこともあるから芸能人だわ」と解釈していたみたい。
このあと試着室を出るのがどれ程気まずかったか、思い出したくないくらいです。
改めて私の顔を見た店員さんも「え~、知らない人だな…」って気まずい思いをしたと思います。
わたしが服を着替えるのが早いのは、もしかしたらこの経験からかもしれません。
今回は三つほどあげてみましたが、よく考えてみるとまだまだありそうです。
忘れたくても忘れられない苦い(?)記憶シリーズになってしまいましたが、楽しいこともちゃんと思い出しましたよ。
修学旅行で海外に行った際、学年の生徒みんなでフォークダンスをした光景とか(なんで海外に行ってまでフォークダンスなんだ、というツッコミはしないでください。修学旅行委員のみんなが決めました。ちなみにわたしも委員だったので、止めなかったわたしのせいでもあります)。
普段の体育の授業なら適当に流しながらやったであろうフォークダンスも、海外で夕暮れ時にともなれば、真剣に取り組むものです。
気温が高い地域で踊ったので、みんなが汗だくだったのを覚えています。あれはかなり異様で、かつ青春でした。
苦い経験も黒歴史も、何故だかガツンと記憶に刻まれたまま、忘れさせてくれない。
若いころの経験だから、鮮明に覚えてられるのでしょうか?く~、若さが憎いぜ。
少し先の未来の自分が恥をかかないように、よく考えて行動したいものです。
それでも失敗を繰り返してしまうのが人間というものだけど…。
願わくば、失敗話で一緒に笑えるような、昔からの友達がそばにいるといいですね。
わたしにはいませんけど。トホホ!
編集:川野優希