みんな、破産したことある?
「してたまるか」って感じですよね。
現実じゃ、まずありえない経験ができる。
それがゲームの面白いところ。
今回は、そんなありえない体験のひとつ、「破産」ができるゲームについて書きます。
その名も『シャインポスト Be Your アイドル!』。
Nintendo Switch 2のローンチタイトルとして出てきたこのゲーム、アニメ版を見ていた自分としては、いろいろな悲喜こもごもがあるのですが……まあ、知らない人は「ニンダイでチラッと出てたけど、他のアイドル育成するやつと違うの?」くらいに思っているでしょう。
全然、違います。
このゲーム、ハードコア事務所経営シミュレーションなのです。
アイドルをちゃんと育てないと、解散します。
会社をちゃんと経営しないと、破産します。
どんなに頑張っても、「現実」という厳しい壁が立ちはだかってきます。
ホントです。こんなにかわいいビジュアルして、いざ突きつけてくるのは「ガチの経営シミュレーション」なのです。このゲームの異様さ、みんなにも知ってほしい。
ということで、「シャインポストで私が破産に至るまで」を書いてみました。
破産してるところを見たい方、ぜひ楽しんでください。
※この記事は『シャインポスト Be Your アイドル!』の魅力をもっと知ってもらいたいKONAMIさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
「小夢さんが言ったんじゃないか!会社を育てろって!」「経営に夢中になってアイドルを病ませるなんてダサすぎるんだよ」「大人はみんな嫌いだ!!」
このゲームは、アイドル育成ゲームに見えるようで、本質は経営シミュレーション。
そんな感じのことを言ったけど、実際に「プレイヤーがアイドル事務所を設立する」ところから話は始まる。ちなみに、主人公の一人称を「朕」にすることもできる。皇族がプレイすることも見越しているなんて、さすがKONAMIですね。
せっかくなので「朕」にしました。
さっそくゲームを開始してみる。
が、なにをすればいいのか全くわからない。
いや、正確に言えば、「どこから手をつければいいのかわからない」だ。
このゲームの主な行動は4つある。
事務所を強くする、「事務所運営」。
運営のためのお金を稼ぐ、「資金調達」。
メンバーとの信頼を高める、「所属メンバー(との交流)」。
ライブ会場を抑えるための、「ブッキング」。
パッと説明した限りでは「まあ普通じゃない?」と思うかもしれない。
しかしこのゲーム、ゲーム側で「どうすればいいか」のアドバイスをほとんどしてくれないのだ。いまの育成ゲームは、右上なんかに「次は○○をしましょう!」といったTIPSやガイドを出してくれたりする。『シャインポスト』にそんなものはない。すべての選択が、プレイヤーに委ねられている。
もう、すでに「無骨さ」を感じる。
いきなり社会という広大なフィールドに放り出されて、あとは何の説明もなく「じゃ、頑張ってね」と言われているようなものだ。これがアイドル事務所の現実。これが社会だ。
とはいえ、ウンウン唸っていても仕方ないので、とりあえずアイドルと交流したり、事務所の運営をしてみる。ある程度整ってきたところで、ライブを開こうとした……が。
まず壁として立ちはだかってきたのが、「ライブのハコ代」。
このゲームの最終目的を端的に説明すると、「ライブでどんどんユニットを強くして、最後は武道館に行こう」というもの。武道館に行くには、とにかくライブをしなきゃいけない。
ただ、ライブを開くために、大前提「ハコ代」を払わなきゃいけない。
しかもこのハコ代、バカにならない。1回開くたびに、平気で数百万~数千万を持っていかれる。そんな額、立ち上げ直後の弱小事務所が払えるわけもない。
そのせいもあってか、ライブを開こうとすると「このままライブを予約し開催した際に破産する可能性があります。」という信じられない警告が出てくる。なんでアイドル育成ゲームでライブを開こうとしたら破産するんだ? そもそも「ハコ代」の概念なんて必要なのか!? なぜライブするか否かで苦しまなくてはいけないのか?
「だったら、ライブの回数を減らせばいいのでは?」と思ったそこのアナタ。甘い。甘すぎる。そんなんじゃアイドル事務所としてやっていけない。
ユニットとして活動している彼女たちも、「人間」なのだ。
チームとしてなんの成長もないと、彼女たちも段々不安になってくる。
端的に言うと、「ライブを開かないと、アイドルが病んでしまう」のである。病んでしまったアイドルは、ライブでのパフォーマンスもガタ落ち。しかもメンタルを回復させるために、貴重な1ターンを消費する。
アイドルが病むことに、基本なんのメリットもない。
だから、それだけは回避する必要がある。
つまり、ライブ開催には「ユニットとして成長させるためのライブ」と「適度に実施してアイドルの精神を安定させるためのライブ」という2つの役割がある。だから、どんなにハコ代がキツくてもライブを開かなきゃいけない! ライブをするたびに赤字だったとしても、ライブを開かなきゃいけないんだ!!

こうなると、次から次へと問題が降りかかってくる。
・最終目標を達成するためにライブを開く必要がある。
・ライブ会場を抑えようにも、お金がない。
・そのために資金調達をすると、アイドルも会社も育たない。
・放置されたアイドルが病み始める。
・お金がない。ライブもできない。
会社も全然育ってない。アイドルはみんな病んでる。
事務所なんて作らなきゃよかった。
そして、私はようやく気がついた。
これは、「かわいいアイドルとたわむれる育成ゲーム」なんかじゃない。
本物の「アイドル事務所経営シミュレーション」なのだと。
朕は悪くねえ!朕は悪くねぇっ!!
『シャインポスト』、まだまだこんなものじゃない。
これはまだ、「1チーム目を育てているだけ」なのだ。
さきほど挙げた、「アイドルを武道館に連れていく」という最終目標。
これは、別に「1チームだけ武道館に連れていけばいい」わけじゃない。なんと、事務所の運営が2~3年目に突入すると、「2チーム目と3チーム目」が加入してくる。つまり、一時的に計3チーム総勢15人のアイドルを抱えることになるのだ!!
そして最終的には、この3チームをみんな武道館に連れていかなくちゃいけない。
ただでさえ首が回らないのに、同時に15人の面倒を見ろって?
そんなの常人の仕事じゃない!!
無理だ。やっぱりアイドルのマネージャーなんてできっこない。しかしグダグダ言っても拒否権なんてないのだから、覚悟を決めて3ユニットを育てるしかない。
もう薄々察しているかもしれないけど、3ユニット加入してくるということは、タスク量もほぼ3倍なのである。1年目は1ユニットのご機嫌を取っていればよかったけど、今度は3ユニットの体調を見つつ、ライブをセッティングして、時にはメンタルケアをする必要がある。
ダメだ、手が回らない。
これは、本当の意味で「社長の気持ち」を味わえるゲームなのだ。
ただ会社を強くすればいいわけじゃない。
単純に利益を出せばいいわけでもない。
「社員を大切にしつつ、会社を存続する」。
それこそ、『シャインポスト』に求められるプレイング。
そして、さっきの「ライブをしないとアイドルが病んでいく」問題が顕著になるのは、この「3ユニットが揃った段階」である。1ユニットを必死に育てていたら、相手にされていない残りユニットのメンタルがどんどん追い詰められていく。かといって2~3ユニットに気を回していると、1ユニット目も病む。
なんというか、「あちこちから出火する火の車を、とにかく場当たり的に消化して回っている」ような感じのプレイングになっている。これは、私が下手なだけなのか? 一応これ「※個人のプレイングです」とつけておいた方がいいのか? うん、少なくとも私は経営者になってはいけない。
ただ、別に最後まで3チームを回し続けるわけじゃない。
それぞれのユニットは、「3年契約」だからだ。
どうあがいても最初のユニットは3年目で卒業していく。
つまり、その「3年目」までに武道館を達成しなければいけない。
そのために、いろいろ頑張った。
でも、なにもかも慣れてなさすぎて、お金が一向に増えないし、会社も育たない。アイドルは病むし、事務所が全然上手く回らない。そうこうしているうちに時間がすぎて、1ユニット目はそもそも武道館を抑えることすらできなかった。
1ユニット目、解散決定。
まあ、そうだよね……。
解散、か……。人気なかったもんね……。
しょうがないよね……。あ、ううん! 人気が出なかったのは私のせいだし、解散ライブまでは頑張らないと! つらいのはファンのみんなもだもん! せめて、私達を応援してよかったと思ってもらえるライブにしないと……!
事務所の会議室を使って、
水盃ならぬジュースで乾杯し、冷凍ピザで彼女達をねぎらった。春は高校も卒業済みだが、身の振り方も決まっていないようだ。
しばらく自分を見つめ直すと言っていた。杏夏は難関大学を目指すらしいが、アイドルの間にかなり成績が落ちていて、現役での合格は難しいかもしれなかった。
理王は教育学部を目指して勉強するらしい。
保育園で子供達に歌を教えたいそうだ。
もうステージに立つ気はないという。
なんでこんなことになった?
アニメ版『シャインポスト』は、私のせいで解散を余儀なくされた1ユニット目の「春・杏夏・理王」の3人がメインキャラとなっていた。アニメ版は、そこそこ未来に希望を感じる終わり方だった。私は、ゲームで絶望の未来を生み出してしまったのだ。
春はニートになった。
おキョンはツラい大学受験の道へ。
理王様はもうステージで歌うことはない。
「人の人生を預かる」とは、こういうことだ。
アイドルをやめても、ユニットが解散しても、人生は続いていく。でも、彼女たちの3年間はなんだったのか? お前のせいで、彼女たちの3年間は水の泡になったのでは? そんな事実を突きつけてくる。
朕は悪くねえ! 朕は悪くねぇっ!!
しかも事務所が育ってないせいで、解散後の打ち上げも「水盃ならぬジュースで乾杯し、冷凍ピザで彼女達をねぎらった」という寂しい情景描写が行われる。余計なひと言が多いんだよなこのゲーム。いちいち傷口に塩を塗りこんでくる。
この無念をバネに、どうにか2~3ユニットを武道館に連れていくことはできた。
うん……1ユニット目はダメだったけど、2ユニットも武道館に連れていけたぞ! これって大成功じゃない!? もう十分頑張ったんじゃない!?
が、しかし。
最後の総決算時、ずっとサポーターとしてついてきてくれた小夢さんから、1年目のことを蒸し返される。
だけどあなたは、彼女達と一緒に夢を追ってくれなかった。
……ごめんね、今さらこんなこと言って。
責めてるわけじゃないんだ。
正解なんてないもんね。
だから、これはただの考え方の違い。ただ、私がこれ以上、ここではやっていけないってだけ。
さよなら。
事務所、うまくいくといいね。
なにを今更!?
いや……だって2ユニットも武道館達成したじゃないか!
アイドル事務所としては大成功じゃないか!!
それだけで!? 5年も一緒に頑張ったのに!?
そう、ここで思い出した。
このゲームの最終目的は、「5年間で3ユニットを武道館に連れていく」こと。つまり、最初のユニットが武道館に行けなかった時点で、私は敗北していたのだ。1ユニット目の夢を叶えられなかった時点で、勝負は決まっていた。夢を追わなかった。その時点で負け。
そして、そのままノーマルエンドっぽい流れに突入。
主人公がマネージャーを志したきっかけでもある「螢」という伝説のアイドルが登場し、「夢のない人生なんて退屈でしょう?」という呪いの言葉を残して、1周目は終了。
このゲーム、1回のプレイを終えると、最後にはリザルト的に「ユニットの活躍」をまとめてくれる。武道館に行けたユニットは、それはそれは輝かしい戦績が称えられる。
一方、解散したユニットはボロカスに言われる。
アイドルではなく、主に事務所がボロカスに言われる。
1ユニット目に寄せられた、ファンからのコメントがこんな感じ。
「事務所がもっとライブをさせてあげていればこんな思いしないで済んだのに」
「育成計画がなかったとしたら大いに反省してほしい」
なんなんだこのゲームはああああああああ!!!!!!!!!!
朕は悪くねえ! 朕は悪くねぇっ!! 朕は……!!
うっすら、トゲのあるゲームだとは思っていた。
もう、1周目を終えたからこそ言わせてほしい。
なんなんだこのゲームは?
1周目、世紀の惨敗です。