地下が舞台という設定からくるイメージも壊しまくり。『ドンキーコング』シリーズファンへの目配せも随所に存在する
そんなドンキーコングとポリーンが冒険する地下世界も、設定からくる先入観を壊しに壊しまくる。

ところで、ここまでの画像を見ていてこんな風に思った読者の方もいるのではないだろうか。「なんか、地下の割には色鮮やかだな」と。
本作は、青空と綺麗な水が広がる貯水湖、原生林、雪に覆われた氷河や夕焼けの美しい荒野、リゾートなど、「ここ本当に地下? 地上じゃないの?」と困惑せずにはいられないロケーションが冒険の舞台として続々と現れる。
しかも、ほんのちょっぴり地下らしい場所も混ぜ込んで、さらに混乱を際立たせるおまけ付き。「確信犯(誤用)でやっているな」と筆者は思ったとか思わなかったとか。
また、地下世界には過去の『ドンキーコング』シリーズの小ネタ、オマージュも至るところに仕込まれている。特に『ドンキーコング』シリーズのファン、何らかの作品を経験したことのある人の興味を強く引き付けるのが「化石」だろう。
化石は各階層の至る所に埋まっている収集アイテムのひとつで、ドンキーコングとポリーンの見た目とステータスが変化する「ファッションアイテム」を購入するために必要になる。この化石は「ノーマル」「レア」「Sレア」でランク付けされているほか、階層ごとに異なる種類が用意されている。
序盤こそ「アンモナイト」を始めとする、いかにもな化石が発掘されるが、特定の階層に到達して以降から明らかにヘンな化石が発掘されるようになる。それが過去の『ドンキーコング』シリーズをネタにしたものとなっているのだ。

どのような化石が発掘されるのかは見てのお楽しみだが、化石のイメージを根底からぶち壊すと同時に、『ドンキーコング』シリーズファンの心をくすぐるラインナップに思わず吹き出してしまうだろう。ちなみに筆者は本編中盤の階層で手に入るSレアの化石に対して、「どんなチョイスやねん!?」と思わず声を出してツッコんだという。それほどマニアックというか……まさしく“レア”だった。
化石以外では、各階層に用意された「チャレンジコース」もそのひとつ。さまざまなアスレチック的構造のコースが用意されているのだが、その中には『スーパードンキーコング』シリーズを思わせる横スクロールのコースも存在する。
これが元ネタである『スーパードンキーコング』シリーズを忠実に再現したものになっている。バックに流れる音楽も同作の楽曲のアレンジという徹底ぶりで、そのなかには「マジかよ!」と筆者自身、声をあげてしまうアレンジもあった。
例によって、何があるかは聴いてのお楽しみだが、きっと『スーパードンキーコング』シリーズが好きな人なら歓喜してしまうはずだ。
ほかにもバナモンドを手に入れた時には『ドンキーコング64』が脳裏をよぎる「Oh,Banana!」というコールが流れたり、アクションのひとつ「ハンドスラップ」で離れた位置にあるアイテムを自動回収できるシステムが『ドンキーコング ジャングルビート』【※】の「クラップキャッチ」を彷彿とさせるものだったり。
※ドンキーコング ジャングルビート:2004年にニンテンドーゲームキューブ向けに発売された横スクロールアクションの『ドンキーコング』。「タルコンガ」なるリズムゲーム向け周辺機器でドンキーコングを動かすユニークな操作が特徴。本作『ドンキーコング バナンザ』と同じ任天堂の東京制作部(現 第8プロダクション)が手がけた。

また、地下世界のいたるところで「クランキーコング」とアニマルフレンドの「ランビ」と出会えるほか、ある階層ではドンキーコングの親友「ディディーコング」とそのガールフレンド「ディクシーコング」も登場する。
特にディディーコングとディクシーコングの2匹は、『ドンキーコング』シリーズのファンなら「おおっ!」となる会話を聞けるので要チェックである。
コングファミリー以外のキャラクターたちの存在感もバツグンだ。

なかでもドンキーコングと共に冒険するポリーンは、最初こそ自信の無さからオドオドしたり、怖がる振る舞いを見せるが、物語が進むたびにどんどんイケイケゴーゴーな性格になっていくのが非常に面白くて可愛らしい。
「バナンザ変身」を手に入れる過程で出会う「長老」たちも、色んな意味で先入観を壊すキャラクター付けがされている。
おそらくこれから本作を遊ばれるという人は、威厳がありそうなイメージを持っていると思う。だが実際は……まあ、例によって出会ってのお楽しみだが、想像していたアレやコレやが音を立てながら倒壊することをお約束しよう。
今回、ドンキーコングとポリーンが敵対する「ヴォイドカンパニー」の面々も非常に魅力的。「星の中心」を目指そうとするドンキーコングとポリーンを邪魔してくるが、実は意外に好感を抱いてしまう部分を持っている。

特に巨大な戦闘兵を作り出す「グランピーコング」は、最終的に今回初登場の新キャラクターでは(ホントにまさかの)筆者イチバンのお気に入りになってしまった。いかにも凶悪そうな雰囲気なのだが、実は……これ以上は直接出会ってお確かめを。
残るポッピーコング、ヴォイドコングも妙に共感してしまう一面を抱えた悪役として描かれているので要注目だ。
この冒険の果てにアナタは“破壊的なサプライズ”を目撃する
そんな不思議な地下世界を舞台に描かれるストーリーにも、主に『ドンキーコング』シリーズのファンを震え上がらせる(文字通り)破壊的なサプライズが用意されている。

どれぐらい破壊的かといえば、前述した過去作の小ネタ、オマージュ諸々が吹っ飛んで粉々に壊れてしまうぐらいである。
詳細は例によって割愛する。言えることはただひとつだ。
どんな困難に直面しようが、意地でも「星の中心」へとたどり着くんだ!
さすればすべてが分かる。そう……そこに至るまでのいろんな“すべて”が。
ちなみに、本作は全体のボリュームも非常に大きく、とりわけバナモンドのコンプリートは物量的にも相当な時間を要する規模となっている。詳細な数は伏せるが、易々とやり切れる規模ではないことを言っておこう。やりごたえは抜群だ。
また、難易度も思いのほか歯ごたえがあり、中盤の終わりになると敵から受けるダメージも重くなったりして、結構手を焼く場面が出てくる。ただ、バナモンドで体力の最大値を上げたり、ファッションアイテムを活用することによって、ある程度の緩和は可能だ。
オプションから「おたすけモード」という、受けるダメージを半減したり、目的地を常時教えてくれるようになるやさしい難易度へもいつでも切り替えられるので、辛く感じたら設定を変えてみるのも手だ。

全体的に見どころ満載の本作だが、いくつか引っ掛かりを覚える箇所もある。中でも操作はアクション面で使うボタンが結構多いのと、デフォルトのジャンプボタンがAボタンということもあって、慣れてない内は困惑しやすい(Bボタンは下方向へのパンチに割り当てられている)。
オプションから、ジャンプをBボタンに割り当てる(Aボタンを下パンチへと切り替える)こともできるので、違和感を覚えたら変えてみるのがいいだろう。
ほかでは壁を掘り進んだりするとき、カメラが見えにくくなることがあったり、カメラ処理の関係で地中から地上へ出る際に一瞬ながら背景が消える(単色になる)現象があるのも少し気になった箇所だ。
また、詳しくは言えないが、大量のお金が必要になる場面が本編後半にあり、そこでルーチンワーク的なゲーム体験が生まれてしまったのは少し残念だった。
階層切り替わり時のロード時間はそこまで気にならない程度だが、降り立つたびに階層の名前が出るカットシーンが毎度挿入されるのはテンポ的に引っかかるところ。ただ、これ自体は+/-ボタンの長押しでスキップできるので、迅速に進めたい場合は積極的に使うのがオススメだ。
わずかにクセのある部分もあれど、3Dアクションゲーム好き、そして『ドンキーコング』シリーズのファンなら要プレイの傑作なのは間違いない。
特に『ドンキーコング』シリーズのファンなら、是が非でも遊ぶ意義がある。本記事の執筆時点でも品薄が続くNintendo Switch 2本体の購入という高いハードルを越えなくてはならないのが少々辛いところではあるが、それを乗り越えるだけの価値と衝撃がある。
あらゆる意味で破壊づくしな3Dアクションゲームがここに爆誕した。マッチョなドンキーコングとなり、破壊に次ぐ破壊の快感と、筋肉が不可能を可能にする真理を存分に味わおう!これはまさしく文字通りの力作であり、傑作だ。
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