「人の心に潜む闇」を取り扱った作品は、長きに渡って多くの人の心を魅了してきました。
「自分にもこんな部分がある」という共感と、「他人の心は実はこんな風になっているのか!」という驚き。他人からも、自分からも見えない「心」だからこそ、人間はそこに尽きぬ興味を持ち続けてしまうのでしょう。
そんな心の内部へ迫る作品が、『Pain Pain Go Away!』(以下、『ぺぺごあ』)です。「痛いの痛いの飛んでいけ~!」を英語にした感じのタイトルですね。
そんなタイトルどおり、本作においてプレイヤーは心療内科の先生となって、患者の心を調べ、問題を解決していきます。
そのために使用されるのが、革新的な治療器具「P2GA」。

どこからどう見ても“カニさんカチューシャ”ですが、これを患者の頭部に装着すると、患者の心へ直接アクセスでき、まるで問診をおこなうかのように、その心とタイピングを通してやりとりができるのです。
そう、本作は心療カウンセリングタイピングゲームだったのですね。
タイピングゲーム、結構好きなのでこうやって新作が出てくれると嬉しいです。
というわけで、今回はそんな期待の新作タイピングゲームのデモ版をプレイして分かった、本作の魅力について紹介させていただきます。
ちなみに本作は、7月18日から7月20日にかけて京都市勧業館・みやこめっせにて開催中のインディーゲームイベント「BitSummit the 13th」にもプレイアブル出展されています。興味のある方はこちらもチェックしてみてください。
ほんわかした絵柄にちょいちょい差し込まれる不穏さの配分がイイ!
本作のビジュアルをみて真っ先に思ったのは、「ほんわかした絵柄だなぁ」ということ。こういうゆる~いタッチの絵、いいですよね。心が温かくなる。

ただ一方で、一見ゆるふわな絵柄だからこそ、その内実を不穏にしてギャップを出すというのも、もはや定番。本作はその定番にしっかりと乗った作品となっています。
本作では、その不穏さの出し方がちょっと面白い。
画面全体に派手にエフェクトが入る割に、作中の人物が特に何の反応も示すことなく、あっという間に元に戻るんです。遊んでいて「あれ? モニターの不調かな?」と焦っちゃいました。

意図しない映像の乱れを意図的に引き起こす、いわゆる「グリッチ表現」のひとつですが、一瞬プレイヤーがゲームから意識を外すぐらいの派手さと、「ゲーム演出か~」と安心させることもしない大胆なスルーを見て、僕はグッとこの作品に引き込まれました。
こういった本作の不穏さは、これだけに留まりません。たとえば、主人公の営む診療所は海辺に存在していますが、なんと名前も看板もなく、ワケあり患者だけを取り扱う「裏の心療内科」なんだそうです。

いやー、本作、良いですよ。
ほんわかした絵柄に反するような不穏な設定を織り交ぜる、そのバランス感覚が僕の好みとマッチしています。
いざ、トラウマの原因と直接対決!……思ったよりコワイのが出てきたな?
さて、そんな本作のデモ版で主人公が診療する患者は櫻井風々香(サクライ フフカ)さん。どうやら家出癖があるようで、心配した家族に連れてこられたご様子。
心配そうなお母さまには一旦別室で待機していただきつつ、診療を始めていくわけですが……。
その際に用いる器具こそ、先ほど紹介した“カニさんカチューシャ”の「P2GA」。
こんな見た目の割に、装着者の精神へ働きかけ、相手のトラウマに直接干渉できるという優れモノです。
いや、すごすぎてちょっと怖い。

そんなわけでいよいよカウンセリングモードがスタートし、ここから本作のタイピングゲームとしての本領が発揮されていきます。
序盤は、実際の診察でもよくありそうな「名前は?」とか「年齢は?」といった当たり障りのない話から始まります。そして次第に、相手の心へ強く働きかけるキーワードが判明していき、そのワードを相手へ突きつけることで、ステージが進行します。
まあ、このあたりはよくあるタイピングゲームです。
ゲームとしての個性をそれほど出せる部分でもないので、気持ちよくタイプしつつお話を進めていくと、次第に患者が苦しみ始めました……。
どうやら会話でのカウンセリングには限界があるらしく、「P2GA」はダイブモードに移行。いよいよ患者の精神へダイブし、そのうちに巣食うトラウマとご対面することになるのですが……、
ちょっと待って!
怖い!! 思ってたよりだいぶ怖い!!
トラウマの名に恥じぬ恐ろしい見た目に、プレイ中はかなりビビってしまいました。

とは言え、ゆるふわな絵柄とは真逆の、奇怪で恐ろし気な絵柄が同居するというのも、ある種定番の演出ではあります。しっかりとそこを抑えているのは、本作の魅力と言えるでしょう。
ともかく、ついに患者の心のトラウマと直接対決することに。
ふたたびタイピングを駆使して、トラウマの核となっている言葉を文字通り「打ち消し」、ようやく患者の心を救うことができました。
心のトラウマを解消し、無事ハッピーエンド! めでたしめでたし!
……と、そうは問屋が卸さないのが本作です。具体的にここからどうなるのかは、ぜひご自身の目で確かめてみていただければと思います!!
そんな本作『ぺぺごあ』も試遊することができる日本最大級のインディーゲームイベント「BitSummit the 13th」は7月18日から7月20日にかけて、京都市勧業館・みやこめっせにて開催中です。
また、本作のSteamストアページでは無料体験版も配布されています。会場に足を運べないという方は、ぜひこちらを触ってみて、少女に巣くう恐ろしいトラウマと対峙してみてください!