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「花王」がいきなり無料配信したお掃除ホラゲ『しずかなおそうじ』は、ネタではなく “ガチのホラーゲーム” だった。「敵がいる空間でお掃除する」という謎の緊張感がいい

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あの「花王」がまさかの無料ホラーゲームをリリースしたそうです。

えっ、どういうこと?

なんでも、マジックリンやクイックルワイパーといったお馴染みの清掃用品を使い、不気味な別荘を掃除しながら謎を解いていく3Dホラーアクション × 清掃シミュレーションゲームだそう。

『しずかなおそうじ』レビュー・感想・評価:完成度が高すぎて、もはやゲームより “花王の本気” が怖い_001

作中では、汚れが落ちていく爽快感と敵に⾒つからないようにこっそり掃除を進めるスリルを同時に楽しめる体験をとおして各アイテムの特⻑から使い⽅まで⽣活に役⽴つ⾖知識も得られるとのこと。

ちょっとさすがに、独自性がありすぎる

いまの時代、どんなに尖ったゲームを出してもどうしたって「ほかのゲームでもそういうの見たことある」みたいなことが起こってしまうと思います。そんななか、だれもが知っているであろう花王の商品を駆使して謎を解いていくという花王にしかできないゲームが出てきたわけで。

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花王の商品が普通に出てくる
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そして普通に使う

もうこれだけで最強すぎませんか。やらない理由がありません。

ということで本稿では、Steamで無料配信が始まった花王のホラーゲーム『しずかなおそうじ』の魅力をネタバレなしで紹介しようと思います。

「無料のゲームだからすぐ終わるっしょ」と軽い気持ちで挑んでみたら、初回クリアまで3~4時間ほどかかりました。しかもマルチエンディングだそうで、筆者はゲームより花王の “本気” が怖いです。

文/柳本マリエ


普通は、敵がいる空間で掃除なんてしない

最初にお伝えしたいことは、「ゲームとしてめちゃくちゃおもしろかった」ということです。具体的には下記3つのおもしろさを感じました。

・ホラーゲームならではの緊張感
・自社製品が出てくるおもしろさ
・敵や謎などストーリーの整合性

やっぱりいちばんおもしろかったところは、ホラーゲームならではの緊張感がしっかりあったところです。

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筆者はホラーゲームが大好きで、10歳で初代『クロックタワー』と出会ってから現在にいたるまで約30年間にわたりさまざまなホラーゲームを遊んできました。

なかでも、敵と戦えない(あるいは戦えてもプレイヤーが圧倒的に非力な)いわゆる “逃げゲー” が好きなタイプ。本作も敵と戦うことはできません。プレイヤーができることは、『しずかなおそうじ』というタイトルのとおり、静かに掃除をしていくことです。

この「⾒つからないようにこっそり掃除をする」って、想像するだけですでにおもしろくないですか?

どういう状況かというと、たとえば「コンロの油汚れをちゃんと落としたい……けど、念入りに拭いてたら摩擦の音で敵に見つかっちゃう……!」とか「便座はなるべくこすりたくないから泡パックしたい……けど、待っているあいだに敵が来ちゃう……!」とか。

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普通は、敵がいる空間で掃除なんてしないじゃないですか。だからこそ、いままで経験したことのない緊張感を味わうことができました。こういう、新しい緊張感に出会えたことがうれしい!

もちろんホラーと掃除をテーマにしているゲームはほかにもあるかと思います。しかしながら「だれもが知っているであろう花王の商品」がいざ出てくると、絵面も字面もおもしろい

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現実世界では「30秒待って流すだけ」でも、ホラーゲームになるとその30秒が緊張感を生み出す演出になっているところが、すごくおもしろいと思いました。

そこでここからは本作の内容について紹介していきます。といってもこれから遊ぶ方の楽しみを奪ってしまうことは書かないのでご安心ください。

こんなにもマジックリンを欲したことはない

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物語は、亡くなった父親から相続した別荘を長いあいだ放置していた主人公が、不動産業者に売却するための清掃をしようと別荘を訪れるところから始まります。しかしそこには、音に反応して襲ってくる “ナニか” が徘徊していました。別荘のなかには父親のメモや暗号が残されており、それらを集めて別荘に秘められた謎を解き明かしていく、というもの。

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暗号は上記のように汚れを落とすことで出現します。ちなみに新しくゲームを始めるたびに数字部分がランダムで変わっていくので上記の数字は必ずしも答えになっているとは限らないのでご安心ください。

これらの暗号を集めていくと、金庫を開錠できるようになり閉ざされた扉を開けることができるなどマップがどんどん解放されていきます。

しかし、汚れを落とすには用途に合った洗剤や掃除器具などが必要となるため別荘を探索してそれらを入手しなければなりません。たとえばお風呂には「バスマジックリン エアジェット除菌EX」、トイレには「トイレマジックリン こすらずスッキリ泡パック」といったように。

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用途が違うと使えない

筆者はなかなか水アカ用の「マジックリン EXPOWER 水アカ用スプレー」を見つけられず、「いま(現実世界で)ドラッグストアに行けばすぐ手に入るのに!」と思いながら進めていました。

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現実世界ならすぐ手に入るのに

つまり、本作はいかに清掃用品を見つけられるかが鍵になってきます。こんなにもマジックリンを欲したことはありませんでした。本作をクリアするころには、多くの人がマジックリンの種類と使い方に詳しくなっていると思います。

ストーリーの背景にやたら説得力がある

本作は、ホラーゲームとしての緊張感もあり、自社製品が出てくるおもしろさもあり、そのうえでさらに、ストーリーの整合性も抜群だと感じました。

詳しく書くとネタバレになってしまうので控えますが、徘徊している敵や亡くなった父親が残しているメモなどから想像できる背景にやたら説得力があるんです。

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清掃用品(キッチンハイター)を買ったであろうレシートの裏に残されたメモ

これたぶん(ぜったい)花王のなかに、ガチゲーマーがいる。

じつはどうやら花王グループカスタマーマーケティング株式会社さんが、2023年の冬からバーチャルマーケット(通称Vket)【※】に出展していたそうなんです。そこでも、「花王の商品でヨゴレを退治するディフェンス無双ゲーム」「不気味な日本家屋を舞台に迫り来る日焼け鬼から身を隠しつつ月のパワーを集めて脱出を目指すゲーム」などを展開。

『しずかなおそうじ』で初めてゲーム事業に参入したわけではなく、花王グループ全体として見るとすでに実績は積んでいたとのこと。過去のゲームを知っている人からすると今回の『しずかなおそうじ』も「実績のある花王なら安心」と思っていたそうです。

※バーチャルマーケット
メタバース上にある会場で、アバターなどの3Dアイテムやリアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いできる世界最大級のVRイベント

この、ホラーゲームとして押さえるべきところを丁寧に押さえつつも花王ならではの遊び心がふんだんに入っている感じは過去の経験によるものだったわけですね。ゲームに対しての愛と自社製品に対する愛を感じました。


クリアすると掃除の達成度や脱出に要した時間などに応じて評価が⾏われるのですが、筆者の初回クリア時の評価は「C」。達成度は100パーセントだったものの、時間がかかりすぎてしまったようです。

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『しずかなおそうじ』を終えて、筆者は高い満足感を得ました。というのも、筆者がゲームに求める “生活感” が詰まっていたからです。

ホラーゲームとしておもしろかったところはもちろんなのですが、生活感のある別荘に興奮してしまいました。生活感がいかに好きかについては過去の記事に書いているのでご興味があればぜひ読んでください。

上記の記事にも書いたとおり「生活感をより高めるのは建築物やオブジェクトの “使用感”」だと思っています。掃除をすることが前提のゲームなので、まずあらゆるところが汚れていて見どころがありました。

そしてそれを現実世界にもある花王の商品で掃除していくという、生活感 × 生活感な設計に脱帽

だって、「五徳の汚れをマジックリンで掃除する」という “生活感しかないゲーム” がほかにあるでしょうか。

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最初は「ネタゲーなのか?」とも思ってしまったのですが、本当に本当にゲームとして楽しかったです。Steamで無料配信しているので、気になった方はぜひご自身で体験してください。

編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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