エヌシージャパンのMMORPG「タワー オブ アイオン」(以下、AION)のクラシックサービスで、大型アップデート「光と大地、そして新たな奔流」が8月20日に実施される。
クラシックサービスとは、AIONのサービス初期のゲーム内環境を再現した、特殊仕様のサーバーである。
AIONは2009年のサービス開始以来、膨大な量のアップデートが行われ、MMORPGとして進化し続けてきた。その一方で、昔のゲーム環境を懐かしむ人も一定数おり、そういった人に向けてクラシックサービスが提供されているのだ。
ちなみに当時は、『リネージュ2』『World of Warcraft』『EverQuest』など、ワールドワイドで人気を博している長期運営MMORPGで、クラシック仕様のサーバーを展開することがトレンドとなっていた。日本において、その試みが最も成功したタイトルがAIONで、2021年のサービス開始以来、“本家”をしのぐほどの盛り上がりを見せている。
話を戻すと、今回のアップデートは、AIONのクラシックサービスが始まってから最大のものとなっている。というのも、歴代もっとも活気を見せたPVPエリアの「ティアマランタ」が、リニューアルされてクラシックサービスに実装されるのだ。
さらにこのタイミングで、クラシックサービス全体でもリニューアルが行われる。
なかでも特筆すべきは、育成環境が劇的に変わり、その気になればゲーム開始から3時間程度で一人前になれること。たとえ新規や復帰プレイヤーでも、無料でAIONをインストールしたその日にティアマランタに飛び込んで、死ぬまで(※文字通り)PVPに明け暮れられるのだ。
今回電ファミは、リニューアルを迎えるAIONをたっぷりと取材してきたので、まずは本稿で先行プレイレポートをお届けしよう。
また、取材当日はAIONの歴代運営スタッフを招いての座談会企画も行っており、こちらの記事も後日掲載予定だ。“あの頃のMMORPG”にこだわりを持つ人にとって、必見の内容となっているのでお楽しみに。
取材・文/kawasaki
PVPが必ず勃発する激戦区「ティアマランタの目」
AIONのライブサービスでティアマランタが登場したのは、2012年4月に実施された大型アップデート「Episode 3.0 キミのドラマ」である。
このアップデートは当時非常に盛り上がり、また、AIONの歴代でも1、2を争うくらい激しいPVPが繰り広げられていた。
だが、その数年後に行われた大型アップデートで、従来エリアが大陸ごと崩壊するというとんでもない大事件が勃発し、ティアマランタでは遊べなくなっていたのだ。
そのエリアが、クラシックサービスで約10年ぶりに復活する。PVP好きの荒くれ者どもにとっては、もうこの時点で拍手喝采、狂喜乱舞、見敵必殺なのである。

では、そんなティアマランタはいったい何がすごいのか?
その答えは、中枢エリア「ティアマランタの目」にある。
ここは、お宝がザクザク得られるのをはじめ、クエストの報酬がめちゃくちゃウマい。しかし一方で、エリアとしての面積はそれほど広くないのだ。
そのため、ここで活動していれば、敵対種族のプレイヤーとの突発的なPVPが必ずといっていいほど勃発する。

しかも本エリアでは、AIONならではの自由飛行が禁止されており、基本的に徒歩で移動せねばならないため、逃げ切るのはほぼ不可能。赤ネームの敵キャラを発見したら最後、お互い覚悟を決めるしかないのだ。
そのことは皆分かっている。むしろ1秒でも早く、そして1人でも多く敵対種族をボコりたい者同士が、ここで激突するのだ。このときの双方の心境をたとえるならば、「死ぬまでやろう」「OK♥」といったところか。

さらに、エリアの両端には両種族の拠点があり、援軍もかけつけやすい。
実際のゲーム内では、敵対種族の位置情報がエリアチャットで報告されると、それを見た血の気の多い連中がわらわらと集まってくる。最初は数名程度の小競り合いだったのが、双方続々と参戦し、数百名規模のライン戦にまで膨れ上がることも珍しくない。
このような状況が毎日当たり前のように発生するMMORPGは、筆者は後にも先にも見たことがない。
AIONというMMORPGは、すべてのゲームシステムがPVPに行き着くように設計されている。それが極まったのが、このティアマランタの目なのだ。




「ティアマランタ メサ」には360度飛行可能な上空エリアも
上述の「ティアマランタの目」は、広域エリア「ティアマランタ メサ」の種族拠点から入場可能となっている。名前が似ていてややこしいが、続いてはティアマランタ メサを紹介しよう。
ここは、キャラレベル60から入場可能の広域エリアである。エリアの左右両端には、天族と魔族の巨大船がそれぞれ停泊しており、ここから翼を広げて冒険へと旅立っていく。
エリアの規模はかなり大きく、そのため敵対種族との遭遇率は「ティアマランタの目」ほど高くはない。基本的にはPvEやクエスト、そしてレベル上げに向いたエリアだ。
各所には「監視の目」と呼ばれる龍族(モンスター)の拠点が点在しており、これを制圧することで報酬が得られるなど、さまざまなギミックも用意されている。
注目すべきは、エリアの4隅で毎日21時に開催される、「アヴタール」と呼ばれる龍(レイドボス)の討伐戦だ。しかもこの周辺では、天族と魔族が共闘(PVPが不可能)するという、かなり珍しい仕様となっている。
敵対種族のプレイヤーは親の敵のような存在である。そんな相手と非PVP環境で一緒になって、いったい何をすればいいのか正直よくわからない。AIONでは敵対種族とのチャットは行えないし。
……バザー(売り子)を行うときの看板メッセージで煽り合うのだろうか?
まあともかく、アヴタールは出現する場所によって強さが違っているそうだ。レベルキャップに達していなかったり、PVPへの参戦をまだ遠慮していたりする人にとっても、ちょうどいいプレイ目標となるだろう。

そしてもうひとつ、ティアマランタの地下には、最強のドラゴン「司令官 スナヤカ」も出現する。AIONライブサービスでは「ティアマランタの目」のド真ん中に君臨するラスボス的な存在だっが、クラシックサービスでは外へ引っ越ししたようだ。
このスナヤカが出現するときは、エリア内の全プレイヤーに通達される。
普通に討伐するだけでも、フォース(24名のレイドチーム)以上の戦力が必要となり、激戦は必至だ。
そして、そんなギリギリのバトルを行っている最中に、敵対種族が黙って見ているはずがない。そんなことはありえない。断言してもいい。


また、ティアマランタ メサの上空には、ライブサービスにはなかった新たな広域エリアが追加されている。こちらは全域で飛行可能となっているのが大きな特徴だ。大小さまざまな島も浮かんでおり、全体的な雰囲気は、従来のAIONでいうところの「アビス」に近い。
ここにはウマいクエストが多く、「闇の商人」と呼ばれるボーナスNPCもレアポップするなど、さまざまなメリットがある。そして、これらを目当てにやってきた天族と魔族が遭遇し、PVPが発生するわけだ。
AIONライブサービスにおけるアビスは、サービス開始時の目玉となっていたPVPVEエリアである。それから16年のサービスを経て、AIONの空中戦がどこまで進化したのか。それを確かめるのに最適なエリアといえるだろう。
爆速レベリング環境により3時間程度でレベル60に
続いて紹介するのは、今回のアップデートで劇的に変わった育成環境についてだ。
まず、ミッション報酬の獲得経験値が、一律で4倍になった。
さらにクエストなどの目的地まで、ボタンひとつでワープ可能となっており、イマドキのスマホ向けMMORPGのプレイヤーでも遊びやすそうだ。
実際にプレイしてみたが、ミッションやクエストを達成するたびに、経験値のバーがギュンギュンと伸びていく。2~30分もプレイすればレベルが10上昇し、次の広域エリアに移動できるくらいのハイペースだ。
操作に慣れている人なら、新規キャラを作成してから3時間程度でレベル60に到達し、ティアマランタにも到達できるとのこと。3時間って……。
取材時は説明を聞きながら、思わず変な笑いがこみ上げてしまった。
さらにミッション報酬で、ヒーロー級の武具も次々と獲得でき、アイテム面も抜かりはないという。かつては全プレイヤーにとって垂涎の逸品だった「ルドラ装備」「パドマシャ装備」も含まれているそうだ。
そんな話、ライブサービス当時に聞いても絶対に信じない。