「まるで『鳴潮』の世界がそのまま現実に飛び出してきたかのような雰囲気が広がっている」
そう感じたのは、中国広州で開催された「KUROFEST 2025」の『鳴潮』ブースに足を踏み入れたときのことだった。
とにかく驚かされたのは「原作再現」へのこだわり。ゲーム内で見たことのある背景が実物化されており、公式コスプレイヤーたちが陣取る構え。『鳴潮』の世界が再現されていた。

このイベントは、『鳴潮』や『パニシング:グレイレイヴン』(『パニグレ』)の開発・運営を手がけるKURO GAMESによるオフラインイベントで、2025年8月9日と10日、2日間にわたって中国広州で開催された。
日本ではそこまで情報が出回っていなかったため、イベントじたいを知らなかった『鳴潮』ユーザーもいるかもしれない。しかし、現地ではイベント開始前からSNSを中心に「チケットが取れない!」と話題になるほどの人気っぷり。
今回、電ファミニコゲーマーでは、KURO GAMESさん(『鳴潮』チーム)からご招待を受けてイベントに参加したのだが、その熱気とクオリティの高さに圧倒されるばかりだった。
本記事では、ブースの写真とゲーム内スクリーンショットを見比べながら、それぞれの舞台での『鳴潮』の思い出を振り返っていく。広州は豊かな土地。KUROFESTでいいゲーム再現がたくさんありましたよ。
今州編 ── 旅の始まり
『鳴潮』の主人公「漂泊者」が記憶を失った状態で目覚める最初の舞台、それが「今州」だ。
ここで出会う「秧秧(ヤンヤン)」と「熾霞(シカ)」に導かれ、最初の都市「今州城」へと足を踏み入れることになる。ブースにはその街並みがしっかりと再現されており、当時の記憶が一気に呼び起こされた。
「今州」ブースのトップバッターは最初に訪れる重要拠点の「中枢信号塔」。いわゆるワープポイントのような機能を持ち、マップを解放する役割を果たす施設だ。
この「今州」の最初の思い出といえば、とにかく「オープンワールドを探索するのが楽しい!」ということ。ストーリーそっちのけで色んな「信号塔」や宝箱を開放して回った思い出が思い起こされる。
また、序盤の「秧秧(ヤンヤン)」の話す専門用語に戸惑うこともあったが、1章5幕以降のストーリーに一気に引き込まれた記憶も鮮明に覚えている。
『鳴潮』はストーリー面でも高い人気を誇るゲームだ。これからプレイする方は、序盤で少しわかりづらさを感じても気にせず、ぜひ物語に身を委ねてみてほしい。後述のブースの思い出でまた語るが、筆者自身も何度も『鳴潮』のストーリーには涙腺を刺激された。
さらに「攀花(パンファ)食堂」や、あの悪名高い(?)「馬和(マーフー)雑貨店」もブースでしっかり再現されていた。
とくに「馬和雑貨店」といえば、序盤でシェルコインを料理のために食材に注ぎ込み、後から「なんでこんなに高いんだ!?」と気付く、ある意味プレイヤーの登竜門。
今でも新規プレイヤーに向けて「馬和雑貨店でしか買えないもの以外はブラックショアやリナシータで買うべし」というアドバイスが飛び交っている。
もちろん「ブブ物流」も忘れてはいけない。ブース内ではイベントでの配送車の展示があった。キャッチコピー「ブブ物流、届けるまでが配送!」を思い出した人も多いだろう。
プレイヤーとしてもイベントや期間限定任務でガチャ券や石を届けてくれて感謝してもしきれない存在だ。
そして物語の舞台は、Ver1.1で追加された「乗霄山(じょうしょうさん)」へ。
今までと変わった美しい雪原の雰囲気、儚くも綺麗な音楽で『鳴潮』のアップデートにかける本気を感じたアップデートだった。
ブースについても背後にそびえる「龍纏いの崖」の岩肌の景観がよく作られている。
この舞台の1章7幕は筆者にとってとくにお気に入りのストーリー。「今汐(コンシ)」の覚悟と信念、そして歳主「角(カク)」との関係性が描かれたエピソードは今でも思い出すたびに胸を熱くさせてくれる。
ブラックショア編 ── 人々を感動の渦に巻き込んだ一人の女性
ブースで大人気だったのが「ブラックショア」の展示だ。
「テティス中枢部」と「漂泊の終着点」を組み合わせたようなデザインで、実際に「ショアキーパー」のコスプレイヤーによるピアノ演奏がなされていたこともあり、訪れたファンを釘付けにしていた。
「ブラックショア」で描かれるのは、「悲鳴」と呼ばれる大災害を防ぐために、苦痛を背負いながら「悲鳴」のシミュレーションを繰り返す人型生命体「ショアキーパー」の物語。
この1章8幕は物語の核心に繋がる部分も多く、彼女の一途さと健気さ、そして演出と音楽が重なり、『鳴潮』屈指の人気ストーリーとなった。
事実、このストーリー更新のタイミングで、『鳴潮』は中国のSF文学大賞「第35回銀河賞」において最優秀SFゲーム賞を受賞している。
軽く読んだだけでもいい物語ではあるのだが、深く読み込むほどに完成度の高さに唸らされる、まさに名作と呼ぶにふさわしいエピソードだ。
リナシータ編 ── 新たなる舞台へ
2025年1月、『鳴潮』の舞台は中国モチーフの「今州」からヨーロッパ風の「リナシータ」へと一新された。
建築物や劇団、音楽隊などが彩る明るい雰囲気に加え、空を自由に飛べる「ソアー」機能が実装され、『鳴潮』が爆発的な人気を得たのがこのVer2.0がきっかけという印象だ。
「KUROFEST 2025」でも、もちろんこのリナシータの展示は充実していた。
まず目に入ったのが「中枢信号塔」。写真で見るだけでも雰囲気ががらりと変わり、プレイヤーが新天地に降り立ったときの衝撃を思い出す。
ここでストーリーがわかりやすく進化したのも、一気に『鳴潮』が人気がでた理由のひとつの要因だろう。
主人公と「モンテリファミリー」がカルネヴァーレ(カーニバル)開催を目指す中、「フィサリアファミリー」「隠海教団」の思惑とは? そして、ボス「鳴式」の侵略とそれに対抗する手段とは?
……など、シンプルかつドラマチックに描かれたことで、多くの新規プレイヤーを惹きつけた。
アトラクションとして話題になったのが、公共音骸「タブドッグ」に実際に入れる展示。
朝に大音量でトランペットを鳴らす音骸「ミスター・オクトパス」のオブジェや、門のアーチまでしっかり造形されており、このブースをスマホで撮影する来場者も多数だった。
さらに「アヴェラルド金庫」ブースでは、ゲーム内の武器や歴史が展示されていた。
この金庫に入ることができるようになったVer2.1では『鳴潮』のグラフィックの目覚ましい進歩を感じたのが記憶に新しい。
それは『鳴潮』のPC版のレイトレーシング対応だ。特にこの金庫は床の映り込みが素晴らしく『鳴潮』で歩き回って景色を見るのがより楽しくなったことを鮮明に覚えている。
そしてこちらは「セブンヒルズ」の「中枢信号塔」のブース。こうして見ると「信号塔」も場所ごとにデザインがしっかり変わってるのを感じる。
この「セブンヒルズ」とその少し前の2章4幕周辺は冠を付けた金髪の少女「カルテジア」を中心としたストーリーが展開された。
予想をしてなかった衝撃の展開に、4幕のタイトルである「聖なる者、逆らう者、死を告げる者」に隠された意味、鳥肌物の演出とこれまた鳴潮屈指の人気ストーリー。
「カルテジア」のかわいさを含めてここで『鳴潮』にドはまりした人も数多くいるはずだ。
そして最後は「セブンヒルズ」のコロッセウムのブース。ここで歌を披露したり、コスプレショーを披露したりする場となっていた。
「KUROFEST 2025」の『鳴潮』ブースは、ただの展示ではなく、プレイヤーの記憶を鮮やかに呼び覚ます仕掛けに満ちていた。
タイトル画面の「漂泊の始まり」から始まり、「今州」、「ブラックショア」、「リナシータ」、そして「セブンヒルズ」へ──。会場を巡ることで、まるで自分自身がもう一度冒険を追体験しているかのようだった。

新しい舞台だけでなく「今州」や「ブラックショア」などを再訪することで、色々な気づきや素晴らしい景色を再発見するかもしれない。
特に最新のVer2.6にて「ソアー」でこれらの舞台を飛び回れるようになったため、是非ともご自身でまた色々な地に足を運んで欲しい。「秧秧(ヤンヤン)」も首を長くして待ってるぞ。
『鳴潮』はこれからもプレイヤーを感動させ、そして魅了し続けてくれることだろう。次の舞台がどう描かれるのか、期待は高まるばかりだ。
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