定命の者の一員として、「死」について考えたことのない者はいないだろう。
死が避けられないのならせめて、苦しまずに死にたいと思うのもまた自我ある生命としての性である。眠るように穏やかに息を引き取れるなら最高だし、それがダメならいっそミサイルとかビームでジュワッと一瞬で蒸発するのも苦しくなさそうで、まあ悪くない。
いちばんイヤなのは、「死」の実感だけはあるが死にきれず、「詰み」の状態でジワジワと苦しむこと……。
東京ゲームショウ2025、ホール11のインディーゲームコーナーで試遊することができたゲーム『勇者パーティはぜんめつしました。』はそんな状況からスタートするダンジョン探索ファンタジーだ。
地下ダンジョン探索で消息を経った勇者パーティ一行。
彼らを救うべく大所帯の捜索隊が組織されるが、度重なるモンスターの襲撃によって平凡な「兵士」である主人公ただひとりとなってしまう。
それでも主人公はなんとか勇者たちに出会うのだが──
彼らは「ぜんめつ」していた。
絶望的「詰み」状態の勇者パーティからひとりを選び出し、地上に帰還するのが本作の目的だ。
※画像はすべて開発中のものです。
ザクザクしたタッチのポップなイラストの魅力
ここまでのスクリーンショットを見てもらってもわかる通り、ザクザクしたタッチのポップなイラストが本作のキャッチーな魅力だ。
そこにクラシックなダンジョンRPG特有のグロテスクで容赦のない描写と、シニカルな語り口が組み合わさってユニークな食べ合わせが実現している。
勇者パーティは勇者、魔法使い、戦士、僧侶…とお手本のような4人編成となっているが、敵の手によって壊滅的な被害を被った結果、肩書から受けるイメージとはかけ離れたクセの強い個性を持っている。
「勇者」は勇者らしく万能の戦闘能力を持つが、正気を失ってしまったらしく「はい」と「いいえ」しか話せなくなってしまっている。
そのうえ苔を貪るように食べる、ツボやタンスを破壊するなど衝動的な行動が目立つ。

「戦士」はその身体を球体関節の人形へと移し替えられてしまい、自慢の怪力と表情を失ってしまった。
残ったのは戦士らしいバカ豪放な性格と、新たに得た器用な手先である……いやそれ戦士っていうより盗賊だろ!

「魔法使い」はパーティの中で唯一まともに話ができる聡明な人物であるが、魔力を失ってしまっているうえ、諦観に囚われていてだいぶネガティブな印象。
魔法が使えない代わりに素早い身のこなしや知識を生かして罠や抜け道を見つけてくれる。……いやだからそれ盗賊!

「僧侶」は少なくとも試遊版時点ではもっともアクの強い人物。
僧侶なのに神への信仰を失いどうやら邪神に心奪われてしまったようで、事あるごとに捜索隊の遺体を使って儀式を開こうとしたり、邪神の甘い誘惑でこちらを籠絡しようとしてくる。

僧侶と会話するとテキストに色収差のようなものが現れたりブロックノイズのグリッチが現
れたりと世界が「壊れ」ていく。怖い。でも顔はいいね……。
こんなクセのあるメンツ全員を率いては帰還は不可能。そこであえてひとりのパートナーを選び、地上へ抜け出すためのダンジョン探索はスタートする。
ブラックでシニカルなストーリーが気になる!
ゲームプレイは、分岐するルートを選択し、ランダムで手に入るカードでデッキを構築し、自らを強化しながら少しずつ進んでいく……というローグライク風味のシステムとなっている。
戦闘中で特徴的なのは攻撃時に左から右へスライドする「ゲージ」が用意されていること。ただ攻撃方法を選択するのではなく、ゲージに併せてタイミングよくボタンを押すことで攻撃を命中させたり、敵からアイテムを奪ったりなどすることもできる。
瀕死の敵に、ゲージ上のオレンジの部分に合わせてボタンを押すと…
武器を奪い取ることができる!
また、探索途中では選択した仲間との会話やカットシーンも挟まるなどストーリー的にもソソられるものがある。
今回の試遊版ではその魅力をチラリとしか味わうことができなかったが、本作のブラックでシニカルなストーリーがどこに収まるのか、製品版の発売を楽しみに待ちたいところです。
『勇者パーティはぜんめつしました。』は東京ゲームショウ2025、ホール11-C44の「Flashlight Games」ブースにて出展されている。
また、2025年10月のSteam Nextフェスにて体験版が一般配信されるとのことなので、興味のある方はウィッシュリストに登録して続報を待とう。