あの『死霊館』シリーズがついに完結するらしい。
『死霊館』といえば、実在した心霊研究家ウォーレン夫妻の怪奇事件(実話)をもとに映画化され、「死霊館ユニバース」と呼ばれる関連作品もたくさん出ています。筆者はこのシリーズの大ファン。
『死霊館』(2013年)
『アナベル 死霊館の人形』(2014年)
『死霊館 エンフィールド事件』(2016年)
『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)
『死霊館のシスター』(2018年)
『アナベル 死霊博物館』(2019年)
『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2021年)
『死霊館のシスター 呪いの秘密』(2023年)
どうやら10月17日から公開されている最新作『死霊館 最後の儀式』で完結を迎える? とのこと。
……でも、どんな話だったっけ?
どんなに大好きなシリーズでも、これだけ続いているとうろ覚えになってしまいます。筆者は昨日の夕飯さえもすぐに思い出せない記憶力なので、映画館に行く前に上記8作品をまとめて視聴してみました。
そこで本稿では各作品ごとの登場人物や出来事を整理しつつ、見どころなども含めて振り返ってみようと思います。完結編の前にこの記事でざっとおさらいしていただけたら理解が深まるかもしれません。
といっても、ゴリゴリの考察というより「ここよかったよね」と振り返りながら魅力を伝えられたらと思っております。どうかあらかじめご了承くださいませ。
文/柳本マリエ
主要登場人物の紹介
筆者は基本的にこういったシリーズものをおさらいするときは公開年順に見ることが多いですが、今回は “最後の儀式” に向けて物語を整理したいため、下記のように時系列順に視聴してみることにしました。
①『死霊館のシスター』(2018年)
②『死霊館のシスター 呪いの秘密』(2023年)
③『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)
④『アナベル 死霊館の人形』(2014年)
⑤『死霊館』(2013年)
⑥『アナベル 死霊博物館』(2019年)
⑦『死霊館 エンフィールド事件』(2016年)
⑧『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2021年)
先んじて、主要登場人物の紹介をしておきます。
ウォーレン夫妻
悪魔耐性が強すぎる夫婦。夫のエドは非聖職者でありながらカトリック教会が唯一公認している悪魔研究家で、妻のロレインは透視能力を持っている。上品な見た目に反してめちゃくちゃ体を張る肉体派。
悪魔が大暴れする怪現象と平行してふたりの馴れ初めや結婚前のエピソードが断片的に明かされ、筆者にとって本シリーズにおける最大の “希望” となっている。
アイリーン

生まれつき、母親譲りの強い霊感を持つ。しかしその母親は霊感を持っていたために精神病院に入院させられ離れ離れになっている。
特筆すべきは、アイリーン役を演じるタイッサ・ファーミガさんがウォーレン夫妻の妻ロレイン役を演じるヴェラ・ファーミガさんとじつの姉妹という点。本当に『死霊館』ファミリーだったんだ。
アナベル人形
捨てても捨ててもなぜか戻ってくる人形。ときにはベッドのなかに入り込んでくることも。あんまりこういうことは言いたくないですが、捨てられる理由って “そういうところ” なのでは???
ヴァラク
召喚されてしまった悪魔。上記のとおり、だいたいうしろにヌッと立っている。マリリン・マンソンでその形相は見慣れているため、むしろ親近感しかない。
このように個性溢れる人々がたくさん登場する本シリーズ。それではさっそく振り返ってみましょう。
2018年公開『死霊館のシスター』
<ざっくりストーリー>
オカルトに興味を持った公爵がルーマニアの聖カルタ修道院で悪魔召喚の儀式を執行したことにより、悪魔のシスター「ヴァラク」をちょっとだけ呼び出してしまう。ヴァチカンの使者たちの健闘でなんとかいったん封じ込めたものの、第二次大戦中に受けた空爆で封印が壊され復活。なんてこった。
復活したヴァラクのせいで多くのシスターが犠牲となり、ヴァチカンはその調査のためにベテラン神父のバークと見習いシスターのアイリーンを派遣する。現地に着くと、そこは城のような修道院だった。「フレンチ」と名乗る近所に住む青年が案内役となり、3人は調査を進めていく。
<見どころ3選>
・明らかに危ない調査に対する前向きな姿勢
・「邪悪な力」でざっくりまとめる
・アイリーンの毒霧
シリーズの原点といわれる本作。まず、3人とも単独行動に躊躇がありません。明らかに危ない調査に対する前向きな姿勢に驚きました。とくにフレンチは、修道院に物資を届けに行った先で自死したシスターの第1発見者になってしまい案内役を任されるという完全な “巻き込まれ側” なのに。
バーク神父にいたっては棺に閉じ込められて生き埋めにされかけたにもかかわらず「邪悪な力が働いているようだ……」と冷静に分析。たしかに邪悪な力なのかもしれませんが、ざっくりまとめすぎでは? もっと騒いでいいと思います。これが人生経験の差なのでしょうか。
そして、なんといっても見どころはアイリーンの毒霧【※】。このシーンのためにこの映画を見てもいいと思います。やっぱりこの雰囲気の、しかもシスターが毒霧するとは思わないじゃないですか。
※毒霧:
主にプロレスラーが口から液体を霧状に吹き付けるパフォーマンス
どう考えても毒霧する顔に見えない。必見です。
2023年公開『死霊館のシスター 呪いの秘密』
<ざっくりストーリー>
アイリーンの毒霧から数年後、ルーマニアの聖カルタ修道院を起点に神父やシスターが凄惨な死を遂げる事件が多発していた。バーク神父はすでに病死しており、アイリーンに再び調査の要請がかかる。キッパリ断るアイリーンに対して司教は「前回なにがあったか知らん」と一蹴。さすがにかわいそうすぎる。
いっぽう、アイリーンと窮地をしのいだフレンチ(モーリス)は世界中を旅しながらとある寄宿学校の雑用係として働いていた。教師でシングルマザーのケイトに好意を抱き、いい感じの仲になっている。しかしその学校の校長が謎の死を遂げる事件が発生。怪奇事件の調査をしていたアイリーンと再会を果たす。
<見どころ3選>
・バリエーション豊かなヴァラクの登場シーン
・虫(G)の恨みは虫(G)で返す校長
・「神のお恵みを」の汎用性の高さ
注目すべきはヴァラクの登場シーンです。前作はヌッと背後に立っているだけのことが多かったのですが、今回は壁やら絵画やらに入っていて遊び心(?)がありました。


普通に立っているよりだいぶいい。
なかでも、路上に立てかけられた雑誌がペラペラと風にめくられて次第にヴァラクが現れる演出はお見事でした。明らかに前作よりサービス精神が向上しています。
……あれ? この感じどこかで経験したような?
そうだ、『クロックタワー』の “ハサミ男” こと「シザーマン」だ。彼の登場シーンも目を見張るものがあり、主人公のジェニファーを執拗に追いかけ回しながら体を張る姿にプロ根性を感じました。過去に記事にしているのでご興味のある方はぜひご覧ください。
本作でいちばん恐怖を感じたのは、Gから始まる虫だったかもしれません。寄宿学校の生徒が、あろうことか「Gを校長室に放って驚かせる遊び」をしていました。大罪だよ。
そんな校長が謎の死を遂げるわけですが、死後にその生徒に対してしっかりGでお返ししていたところがよかったです。Gの恨みはGで返す、校長の執念を感じました。
また、思わず吹いてしまったシーンとしてはアイリーンたちが急いで寄宿学校に向かうとき。ほかの人が乗ろうとしているタクシーを奪って乗り込んだのですが、先客に対して「神のお恵みを」と言いながら去っており、礼儀正しく奪う姿に笑ってしまいました。その言葉って、もっとこう厳かな場面で使うものなのでは?
こんな感じで要所要所に笑ってしまうポイントがありながらも、最後はけっこう泣いてしまいました。『死霊館のシスター』『死霊館のシスター 呪いの秘密』と続けて見ることでより理解が深まったように思います。
2017年公開『アナベル 死霊人形の誕生』
<ざっくりストーリー>
人形職人とその妻は交通事故で幼い娘を亡くしてしまう。それから12年後、夫婦は閉鎖に追い込まれた孤児院のシスターと6人の少女を自宅に受け入れ、共同生活を始める。しかし家のなかには、入ることを禁止されている部屋もあった。
ジャニスはある夜「私を見つけて」というメモに誘導されるように禁止されていた部屋に立ち入ってしまう。そこは亡くなった娘の部屋だった。そこでクローゼットの鍵を開けてしまい白いドレスを着た人形を見つけると、その日から怪現象に襲われるようになる。
<見どころ3選>
・子どもが標的にされる恐怖
・リンダ役のルル・ウィルソンちゃん
・人形がどう見ても怖がらせにきてる
孤児の少女たちは小学生くらいから高校生くらいまでの年齢差があるのですが、小さい子たちが怪現象に巻き込まれると思うとその状況だけで胸が痛い。しかもそのうちのひとりは足が不自由なんですよ。さすがに免除されていいはず。
ホラーにおいて、「子ども」「動物」「妊婦」が出てくるとメンタルの削られ方が加速しませんか?
少女たちのなかでとくに印象に残ったのはリンダ役のルル・ウィルソンちゃん。この子が『ホームアローン』のマコーレー・カルキンくん並みに表情豊かで癒しでした。

ところで怪現象の元凶といえるこの人形ですが、人形職人がひとつひとつ丁寧に作っている様子が冒頭で描かれていました。購入者が納品を待ち望むくらい人気の人形です。そこで疑問というか、こんなことを言ったら職人に失礼であることは承知のうえで、
不気味すぎない?????
たとえ怪現象が起こらなかったとしても、子どもが見たら泣いちゃうでしょうに。しかもけっこう大きいんですよ。公開当時に来日していたアナベル人形を見たのですが、大きさに驚きました。

まあ、人形全般においてそういった “怖さ” も含めて魅力なのかもしれませんが。そういえば日本人形もちょっと不気味なところが美しかったりしますもんね。
2014年『アナベル 死霊館の人形』
<ざっくりストーリー>
ジョンとミアは第1子の誕生を控え、出産準備をしていた。今後のことについて軽く揉めたあと、夫は妻にアンティークの人形をプレゼントする。どうやらミアが探していた人形らしい。
しかしその夜、隣の家で殺人事件が起こりジョンとミアも殺人鬼に襲われる。犯人は隣の家の娘とその恋人で、悪魔に関わるカルトの一味だった。女はミアの人形を抱えたまま自殺を図り、壁に血で謎のマークを残す。そこから、捨てても引っ越しをしてもどこまでも追いかけてくる人形がミアを蝕んでいく。
<見どころ3選>
・妊婦がが標的にされる恐怖
・執拗に追いかけてくる人形
・アンティークで不気味度アップ
だからさ、妊婦はやめてと言ったじゃない!

なあ悪魔さんよぉ、さっきも言ったけど「子ども」「動物」「妊婦」は免除してくれよぉ。だって普通に殺人鬼にも物理的に襲われて、そのうえどこまでも追いかけてくる人形のストレスも加わったら母体と子どもに悪影響すぎる。
捨てても捨てても戻ってくるエネルギー、なにか別のことに利用できませんか? その “戻る力”、せっかくならなくしやすい財布とかスマホに搭載してよ。
捨てられ続けたからなのか、ご覧のとおり全体的に黒っぽくなって不気味度が増しちゃっています。ここまでくると歴戦の猛者の顔つき。なんか、強くなっている感じがしますね。
こうしてようやく第1作目の『死霊館』へ繋がっていく、と。