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「とにかくバディを摂取したい」アナタに捧ぐビジュアルノベル『Lilac』は、総勢6組のバディが織りなすアツさと尊さメガ盛りな最高のゲームだった。魔女嫌いな人間と魔女が目的のため嘘のバディを結成(やがて真実の絆で結ばれる)とか、全員好きなやつじゃん!

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本作のバディはエミルとアンリだけじゃない! 性格や背景もそれぞれ異なる、多彩な組み合わせのバディを堪能しよう

ビジュアルノベル『Lilac』レビュー・評価・感想:「とにかくバディを摂取したい」アナタのための、珠玉のバディ6組_012

もうひとつの『Lilac』のすばらしいポイントは、主人公だけでなく、様々な組み合わせのバディの物語を楽しめるということです。

これはどれが良いとか悪いとかいう話ではなく、あくまでアツさの質が違うという話で、コンビそれぞれに千差万別の尊さやエモさがあるというのがバディの魅力です。

つまり、バディには、バディの数だけ心を揺さぶられる「推しポイント」があるということで、好みの違いこそあれど、そこに貴賤はありません。
このバディごとに見られる景色の違いというものが、私の中では「バディもの」というジャンルをついつい追いかけてしまう原動力にもなっています。

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そして、『Lilac ~side Witch~』には、バディ養成学校たるライラックアカデミーが二人一組で実戦授業を進めていく形式であることから、主人公以外のアカデミー生徒だけを見ても、性格や境遇が異なる5つのバディが登場します。

本作は、恋愛シミュレーションゲームのような、主人公が誰をバディにするか選ぶという形式ではなく、ストーリー分岐をしないビジュアルノベルです。そのため、主人公以外の視点を持つバディたちを鑑賞者として楽しめます。

主人公を含めた6つのバディたちは、抱える問題点やコンビ結成時点での仲の良さ、仲の深まり方がすべて違っていて、バディごとに「2人が最高のバディとして完成していく過程」が異なるため、この一作だけで、バディものの旨みが6パターンも味わえるのです。

それでは、ここからは、バディもの好き垂涎の『Lilac ~side Witch~』に登場するバディたちとその魅力を簡単にご紹介していきたいと思います。

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パトロ(左)、ライラ(右)。

まずは、ライラとパトロ。

「人懐っこく大胆で楽観的」なタイプが大部分を占める魔女という種族において、「内気で臆病で悲観的」な魔女らしくない魔女であるパトロは、常にオドオドしていてコミュニケーション能力が終わり切っています。

そんな少々クセが強すぎるパトロを優しく包み込むのが、人間クラスのリーダー的な存在のライラであり、彼女が言葉をかけることでパトロは心を落ち着かせることができます。

このバディのアツいポイントは、ライラは、パトロが心を開ける数少ない相手の一人であるというところ。優しいけれど、「これ、日常生活にだいぶ支障あるんじゃないか……?」と思ってしまうくらいに対話が苦手なパトロがライラと心を通わせているシーンは、やはりグッと来てしまいますね。パトロには安寧で幸せになって欲しい。

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ヴァイオレット(左)、オーブリー(右)。

続いては、ヴァイオレットとオーブリー。

尊敬する父親の功績と家柄の凄さを常に自慢している、プライドが服を着て歩いているかのようなヴァイオレットは、父の教育により魔女至上主義的な考えを持っていて、人間という種族を見下しています。

ヴァイオレットの刺々しい物言いに一切動じることなく、彼女と行動をともにしているのが無口で無表情なオーブリーで、彼女のノーリアクションっぷりや真っ直ぐな言葉が、次第にヴァイオレットの心を開いていきます。

上の画像から醸し出される空気感からも汲み取れるかもしれませんが、彼女たちは分かりやすいツンデレとクールキャラ。特にヴァイオレットは王道のお嬢様キャラなのですが、とにかくオーブリーがクールすぎるのが印象的で、基本的にほぼリアクションが変わらないので、ヴァイオレットのツンの部分もデレの部分もどっちも効いてない感じがたまりません。

あと、子どもっぽいヴァイオレットと大人っぽいオーブリーの組み合わせって、シンプルに良いですよね。尊い。

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ピオニ(左)、ビビ(右)。

ライラックアカデミーの魔女クラスには、ビビとピオニという双子の魔女もいて、彼女たちはとにかくイタズラが大好き。

魔法で色々なことができてしまうがゆえに、その能力がイタズラに全振りされてしまった彼女たちは、ときにやりすぎなくらいのイタズラを仕掛けてしまうこともあるのですが、まったく悪気が無いため、反省することは一切なく、新たなイタズラのアイディアを考え続けているというのが厄介なところ。

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そんなツインズとバディを組むのは、魔女のこととなると信じられないレベルの熱量で語りだし、魔女の事を知るためなら軽犯罪も厭わない熱狂的な魔女マニアであり、『Lilac ~side Witch~』の狂言回し的な役割を担うローラと、

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アカデミーでもトップクラスの記憶力を持つノア。

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ほぼ同じ性格をしている双子ちゃんですが、バディを組むローラとノアの向き合い方は大きく違っていて、魔女オタクのローラはイタズラに乗っかる形でピオニの良さを引き出し、ノアは時に厳しく、時に優しく振る舞い、ビビと信頼関係を築いていきます。

詳しく話してしまうとネタバレになってしまうので、多くを語れないのは残念ですが、メンバーの片方は態度や性格がほぼ同じだけれど、組む相手によってバディとしての見え方が大きく変わるというのは、これまでに意外と味わったことのない体験でした。

バディには、バディの数だけ推しポイントがある。彼女たちを見て、あらためてこのことを実感することができました。

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リン(左)、イータ(右)。

そして、最後のバディは、人間クラスの元気印であり、握手をするだけで相手の骨を折ってしまいそうになるくらいのアホみたいな怪力を持つリンと、お菓子作りが趣味な食いしん坊で、争いを好まないホワホワした性格の魔女のイータ。

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先ほどの双子ちゃんたちがそうであったように、魔法が使える魔女と魔法が使えない人間のコンビであるため、魔女が主導権を握って保護者サイドの人間が振り回されるというバディが多い本作において、このバディは逆に大人しい魔女がぶっ飛んだ人間に振り回されているというのが面白いところです。

ただ、リンも力の制御が苦手というだけで、決して悪い子ではなく、むしろみんなから愛されるタイプだというのもこのバディの良いところで、愛されキャラの2人が織りなす癒しのオーラは、他のバディたちと比べても圧倒的です。尊い。

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こういった感じで、本作に登場するバディたちはそれぞれに関係性が違っていて各々の魅力を持っているため、ストーリーを読み進めていくうちに、気が付くと全員を応援している自分がいました。

この6組のバディの物語が同時進行しているというのが『Lilac』のいいところで、あの2人の関係が急接近したと思ったら、次はあの2人で、その間にも別の2人の仲が少しずつ深まっている……と言った感じで、ダレることなく物語が展開するため話が読みやすく、続きが気になるような没入感も生まれているのです。

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『Lilac ~side Witch~』のアンリ。
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『Lilac ~side Wizard~』のアンリ。

冒頭でも軽くお伝えしましたが、今回紹介している『Lilac ~side Witch~』には、バージョン違いとして『Lilac ~side Wizard~』があります。

これらのバージョンの違いは、登場するキャラクターが女性か男性かというところにあり、ストーリー展開は多少異なっているものの、キャラの名前や性格はほぼ同じです。

しかし、実際に『Lilac ~side Wizard~』で遊んでみると、同じようなキャラクターのはずなのにバディの見え方が少し変わってくるというのが驚きでした。未だに開拓され続けているバディ物の底の見えなさに少し触れられたような気がします。ぜひプレイして「知っているのに知らない」、本作のパラレルなバディたちにも出会ってみて欲しいですね。

専門用語を取っ払った、テーマを届けるためのシンプルな世界観設定が巧み。ヨーロッパ風の景色のなかで平然と「正露丸」が出てくる、この生活感がたまらない

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さて、冒頭で、「『Lilac』は、バディものの旨味を真正面から味わえる作品だ」というお話をしましたが、この旨味がストレートに心に届いてくるのは、世界観設定の巧みさにもその理由があるように感じます。

ストーリーを読み進める中で印象的だったのは、魔法のある世界という異世界を描いている本作ですが、異世界ものによくある専門的な用語がほとんど出てこず、小難しい設定がほぼないということ。

現実世界の中で使われている言葉や考え方を発展させる形での説明が多いため、前提となる話がスッと入ってくるようになっていて、頭の中で理解する時間を多く必要としない設定の組み立てが上手いと感じました。

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また、本作の世界観設定には説得力と納得感もあります。
たとえば、外見こそ何ひとつ違いがないように感じられる人間と魔女ですが、その中身は大きく異なる種族であり、魔法が使えるかどうかだけでなく、物事に対する価値観も大きく違っています。

この価値観の傾向の違いが生まれている理由として、「魔法が使えるかどうか」ということが挙げられていて、魔法が使える魔女は、ある程度の失敗をしても魔法で元の状態に戻すことができるため、細かいことを気にしない、大雑把で楽天的な性格が多いとされています。

一方で、人間は魔法を持たないがゆえに相手の心の小さな変化を感じ取ることに長けていて、慎重で繊細なタイプが多いんだとか。この設定を最初に聞いた時、心の中で「なるほど!」と大きくうなずいてしまいました。

さらに、心の小さな動きを読み取るという人間の精神的なエネルギーは魔力に変換されるため、魔女と人間が魔力を共有することは非常に理にかなった行動であるという説明もあり、この設定にも唸らされました。本当に話がうまくできています。

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こういった異世界的な要素が多い一方で、セリフで急に現実的なワードが出てくるというのも『Lilac』の楽しいところで、それまでずっと魔法の世界でやってきたはずなのに、「結局、正露丸がいちばん効くんですよ」というセリフが出てきたときには、あまりの唐突さに声を出して笑ってしまいました。

正露丸は、この世に数多くある単語の中でも生活感がありすぎて、特にファンタジーから遠いワードなんじゃないかなと思います。

その他にも、「チゲ鍋作りました」といったような何気ないのにちょっと引っかかるような単語がときどき出てきて、これがまたストーリーの良いスパイスになっています。
こういうリアリティのあるタイプの単語が出てくると、「『Lilac』の世界は、日常の延長線上にあるんじゃないか?」と感じられるんですよね。

……それにしても、「シュークリーム作りました」「スコーン作りました」と言われてもまったく気にならなかったんですが、「チゲ鍋作りました」だけは気になって仕方がなかったのが今でも不思議です。

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閑話休題。
異世界を舞台にしている『Lilac』ですが、その根幹にあるのは、「考え方の違う相手を理解し、信頼することの大切さ」という、現実世界でも普遍的なテーマです。

『Lilac』では、これまでにお話してきたような、王道的な設定やストーリー、現実世界の延長線上にあるかのような世界観設定などによって、「バディ物のうまみを堪能する」ためにはノイズとなるような情報の多くがシャットアウトされているため、バディ物としての魅力とともに、作品のテーマが非常に分かりやすくなっています。

このシンプルな分かりやすさがあるおかげで、余計な感情を抱くことなく「友情」と「平和」への思いと願いがストレートに胸に届き、心が大きく揺さぶられるのです。

「友情」と「平和」というテーマを両手に携え、「魔法 ✖ 学園 ✖ バディ」という王道のど真ん中を突っ走る『Lilac ~side Witch~』は、バディもののアツさと尊さをこれでもかというほど味わえる作品となっています。

バディものが大好きな方、スカッとするような爽快感を味わいたい方は、是非プレイされてみてはいかがでしょうか。

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ライター
レトロゲームから最新ゲームまで、面白そうだと感じた家庭用ゲームを後先考えず手当たり次第に買い漁る男。500を越えてから、積み上げたゲームを数えるのは止めました。 ディズニーアニメ・お笑い・音楽・漫画などにも広く浅く手を伸ばし、動画投稿者としても蠢いています。
Twitter:@DuckheadW
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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