それは、ゲームを開始してわずか20秒のことだった──。
メインヒロインが、首を吊って死んでいた。
おい、大丈夫か……?
いや、もう死んでるから大丈夫とかないか……?
まさか鬱ゲーなのか?と思ったのも束の間。
首を吊っていても、平気らしい。
な〜んだ、平気なんだ!よかった〜!!
いや、よくない。
なんだ?この開幕クレイジーな女の子は……。こんな姿で話しかけてくるのも変、普通に話聞いてる主人公も変。自分だったら走って逃げるし、もうここには二度と近づかない。通勤路ならルートを変更する。
私はホラーゲームが苦手だ。特にジャンプスケアが、マジで苦手だ。だが、今回紹介する『久我山栞の死様手帖』は、ホラー系ミステリー・ビジュアルノベルゲーである。タイトルに「死様」ってあるし。
ビビりながらも気合を入れて本作をプレイしてみたところ、もちろん演出は不気味で怖いし、恐ろしい怪異も出てくる。急に電話がかかってくるシーンでは、心臓が止まりかけた。
でも……でも……
女の子が、マジで、かわいいんだ!!!!(全員幽霊だけど)
本作はたしかに怖いのだが、彼女たちが幽霊であるがゆえに繰り出される、ブラックなオカルトコメディは笑える。「ヒロインの死の真相に迫る」というミステリー要素もあいまって、どんどん先に進みたくなる。
今回は私が『久我山栞の死様手帖』から受けた衝撃を記し、私のように感情が乱れてほしいという願いを込めて、ありったけの思いを綴ろう。
※この記事は『久我山栞の死様手帖』の魅力をもっと知ってもらいたいラプラシアンさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
久我山栞ちゃん、その死様かわいいよ
本作のヒロインは、久我山栞(くがやま しおり)ちゃん。冒頭で記したとおり、出首吊りで登場というかなり変わった女の子だ。
ま、また死んでる……!
ちなみに、彼女の血がピンクなのは幽霊的な体質の問題ではなく、「表現フィルター」がオンになっているためだ。デフォルトではオンになっているが、オフにすると普通に赤い鮮血が描写されるので、お好みにあわせて選択してほしい。
なんなんだ……なにこの……なに?
「埋まったわ」じゃないよ。
生首じゃなくて埋まってるのか、それ?
絵面は普通に女の子の死様なので、ツッコんでいいものか、反応に若干困る。
そう、こうしてさまざまな死様で死に芸(死に芸?)を魅せてくれる彼女が、今作のメインヒロインの「久我山栞(くがやましおり)」なのだ。
「なんでそんな真似を?」と思うことだろう。
この子、なんとすでに亡くなっていて、「幽霊」になっているのだ。
しかし、自分の名前以外なにも覚えていない。自分はどういう人間なのか、なぜ死亡してしまったのか──どれもわからない。そこで彼女は「もう一度死んでしまえば成仏できる」と考えたのだが、何度死のうとしても成仏できないとのこと。
そんな彼女がプレイヤーの“あなた”と出会い、ふたりで彼女の死の真相を明らかにする──それが本作の目標だ。
普通、アドベンチャーゲームで真相へ近づくためには、調査をしたり聞き込みをしたりするだろう。もちろん、本作ではそれ“も”やる。
彼女は、自身の記憶を取り戻すために思い入れのありそうな場所、主人公との待ち合わせ場所……町のあちこちで、「あったかもしれない死様を再現する」という、奇抜すぎる方法で自身の真相を追い求めるのだ。
そう、こんなブラックジョークすぎる振る舞いができるのも、彼女自身が幽霊だから。
最初はドン引きしていたが、栞ちゃんが主人公を驚かせるために創意工夫を凝らした死様を考え、実行するさまは……なんというか、「ブラック健気」で、どんどん愛着が湧いてくる。

そしてもうひとつ、重要な要素がタイトルにもなっている『死様手帖』だ。
これは栞ちゃんの死様をまとめたノート。数々の死様を主人公と共に記録するなんとも異常なノートだ。彼女が新たな死様を見せてくれると、新たな記憶が蘇り、真相の究明に近づいていく。

人は「押すなよ!絶対に押すなよ!」って言われると、どうして押してしまうんだろう
本作にはヒロインの久我山栞ちゃん以外にも、ギャル子さん、司書さん、地雷系女子、儚げな女性など様々な女の子が登場する。ぱっと見タイプの違う女の子とお話しできるギャルゲーみたいなムードがあるが……忘れてはいけないのは、「みんな幽霊である」ということだ。
しかも、本作の幽霊ちゃんたちは、もれなく恐るべき特徴を秘めている。会話の選択肢をミスると、嫌われるどころか「呪い殺される」。たったワンミスで死ぬ。本当に死ぬ。

例えばこちらの「ギャル子さん」。セクシーでかわいい、栞ちゃんのお友だちだ。一通り相談も終わり、立ち去ろうとしたところ、呼び止められた。
ん?俺のこと気になってるのかな……?へへ……。

あっすいませんすいませんすいません
こんな感じで「幽霊の女の子たちと仲良くなってきたかな?」と思ったら、突然豹変することがあるのが、今作の面白いところ。
もうひとつ例を紹介しましょう。メガネの女性、司書さん。
いや、理性的な霊は「ブチ切れる」なんて言わないんじゃ……。
思わずここで引きたくなるが、そんなあからさまに「押すなよ、押すなよ」って要素見せられたら……。
ねえ?
あー終わったわこれ
しかし、この豹変っぷりが、不思議とクセになってしまうのだ。
新しい女の子と出会うたび、ヤバいポイントを踏み抜いたときにどういうリアクションをするのか気になっちゃうのが、このゲームのワルい(すごく良い)ところだ。こんな一面を見せられたら、なかなかヤバいポイントが見当たらない子にも何かあるのだろうか?……と気になってしまう!
ゲームを進めていくにつれて、さまざまな幽霊が迎えてくれる。彼女たちのヤバいポイントを踏むも踏まないも、もちろんあなた次第だ。

鬱ゲー……「じゃない」オカルトコメディ
最後に本作をプレイするハードルを下げるためにも、ひとつ誤解を解いておきたい。私がしてしまった勘違いでもある。
本作は、鬱ゲーでは「ない」。
プレイする前にSteam上の「過去にプレイした類似ゲーム」を確認したところ、某『DDLC』が引っかかっているのを確認したために、私は本作に対する警戒レベルをMAXにあげていた。
ジャンプスケアが来そうなタイミングでは目を背けるし、ウィンドウサイズをフルスクリーンから小さくするのは当たり前。
だって、怖いもん!!
プレイの前にこんな警告文が出るし、「自殺」や「死」といったかなりセンシティブな話題に触れているし……どの程度のグロ表現が飛び出してくるかもわからない。どんな鬱ゲーなのかと、ビクビクしながらプレイを始めた。
だが、蓋を開けてみればそれらはほとんど杞憂だった。
もちろんホラー演出やジャンプスケア的な要素は一部あるが、どこか笑える軽妙さや登場人物たちの魅力が上回る。「怖くて進めない!」という気持ちよりも「続きが気になる!」という気持ちの方が強くなっていったのだ。
本作の独特なバランス感の軽妙さの例を出してみよう。死様手帖のこのページでは、栞ちゃんが、交通事故の死様を再現をするために轢死(れきし) しようとしている。
しかし、さあ車に飛び込むぞという直前になって、「車にぶつかると、運転手さんにも衝撃がいってしまって危険なのでは?」とか、「じゃあ止まってる車にぶつかればいいんじゃない?いや、車を弁償しなきゃいけなくなる」とか、幽霊のくせに、あまりにも現実に即した心配をしているうちに、なんと、轢死の再現を実行できていなかったのだ。
幽霊なのにひと様の迷惑をかけてしまうことを気にしてしまう、変な方向に常識があるお茶目な一面が、このページからは伝わってくる。幽霊なのに……。
「死」はセンシティブな要素ではあるが、本作においてはヒロインの久我山栞が幽霊であることが前提であり、自身の記憶を取り戻すという目的があるからこそ、この題材とコミカルさが、不思議なバランスで成り立っているのだ。

あと、今更だが、主人公も大概だ。
唐突に首吊り姿で現れた栞ちゃんに怯まず翌日に待ち合わせの約束を取りつけ、メリーさんに「かかってこい」と抜かす。
胆力やばすぎないか……?
本作はマルチエンディングの作品なので、プレイの中で複数のエンディングに辿り着くことができたのだが、小ネタが仕込まれてることも多かった。こうなってくると全エンディングを回収したくなるし、先述のとおりテキストは軽妙で読みやすい。
そうなると……未読のテキストは全回収する勢いでプレイしたくなってしまう。いつのまにかホラーにビビっていた私は消え、すっかり『久我山栞の死様手帖』に、久我山栞ちゃんの魅力に、取り憑かれてしまった。
すこし怖くて、でも魅力的で不思議。今日も公園で待ち合わせをすると栞ちゃんが必ず死んだふりをしているのだろうなと、物思いにふけるのであった。




















