突然ですが、『沙耶の唄』【※】とコラボするカードゲーム、ヤバくないですか?
グロ、狂気、純愛、クトゥルフ。発売から20年以上経っても語り継がれる『沙耶の唄』のあの空気感を、そのまま受け止められるカードゲームが現実に存在する。それが今回紹介する『忘却前夜』です。
何かって言うとこのゲーム、カードゲームなのにストーリーが重すぎるんです。
※『沙耶の唄』(さやのうた):2003年にニトロプラスから発売された成人向けPCノベルゲーム。脚本は『魔法少女まどか☆マギカ』や『Fate/Zero』で知られる虚淵玄氏が手がけており、いわゆる「鬱ゲー」として知られる。
4人パーティでデッキを組んで戦うガチのターン制カードバトルを楽しんでいたかと思えば……
その合間に、孤児院の若き女性院長の頭がパーンしたりする。カードゲームなのに。
それもそのはず。本作はいわゆる“クトゥルフ系”の世界観を採用した「コズミック・ホラー系カードRPG」なのです。
ストアページの記載によるとメインストーリーの総テキスト量は80万字超え。もはやノベルゲームとカードゲームの「よくばりセット」状態。
一般論として、カードゲームの面白さといえば、自分で構築したデッキで戦う戦略性、相手との駆け引き、そこにスパイスを加える運要素……プレイ中ずっと脳を酷使しながら脳汁を出し続ける、唯一無二のワクワク感にあると思います。
しかし『忘却前夜』は、それだけでは終わりません。脳汁ドバドバのカードバトルを終えた直後に、血あり内臓ありの激重描写が容赦なく襲ってくる。プレイヤーの脳とSAN値を、交互に削りに来るのです。
そこで今回は、その「激重ストーリー」と「ガチカードゲーム」を中心に、『忘却前夜』の魅力をご紹介していきたいと思います。
ひと言でいうなら……このゲーム、情緒がおかしくなる。
※この記事は『忘却前夜』の魅力をもっと知ってもらいたいオルトプラスさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
「クトゥルフ群像劇ADV」なストーリーが重すぎ! だけど美しい
カードゲーム『忘却前夜』の大きな特徴のひとつ、それは、「陰鬱かつ美しいストーリー」。
……カードゲームなのに、です。
注目してほしいのが、公式ストアページ等にて確認できる本作のコンセプト。繊細な絵柄のキャラクターたちが印象的ですが、どうやら「~クトゥルフ群像劇×深遠な世界観~」といった雰囲気の作品らしい。
なんだか嫌な予感がするぞ……
本作の舞台となるのは、「融蝕」と呼ばれる災厄に脅かされている世界。
「融蝕」とは、侵された人間の肉体だけでなく、周囲の人々の記憶からもその存在を完全に消し去る恐ろしい現象。生きた痕跡がこの世界から跡形もなく消滅する結末は、肉体の死よりも残酷と言えます。
本作は、世界全体をも「忘却」させようとするこの未知の災厄に対し、主人公が「守秘者」として関連事件を調査しながら、抗う術のない無謀な戦いに挑んでいく……というあらすじです。
……重すぎじゃない? これってカードゲームだったよね?
たしかに、カードゲームの中には、宿屋の経営者として宿泊客を殺して金品を奪い、最終的にいちばんお金持ちになれたプレイヤーが勝ちという、土台のルールからエグいぶっ飛び方をしているようなものもいくつかあります。
しかし、そういったゲームは大抵、エグい設定をブラックジョークとして笑い飛ばしているようなデザインであるため、『忘却前夜』のように、どこまで行ってもとことん暗い雰囲気が支配しているというカードゲームには、あまりお目にかかったことがない気がします。
そして、融蝕に関連する事件を調査していくメインストーリーでは、ショッキングなシーンも頻繁に登場し、物語の暗さに拍車をかけています。
中でも、孤児たちを引き取り養うワークハウスの院長として、子どもたちのために甲斐甲斐しく働いている、身も心も清らかなお姉さんの頭が、

突然、つぼみが大輪の花を咲かせるかのように破裂したシーンは非常に衝撃的でした。
さすがに、頭がパーンしてしまったお姉さんの様子がイラストなどで具体的に描写されるということはないものの、その代わりにテキストがその様を丹念に描いていて、想像力を刺激してきます。
ちなみに、頭が完全に花開いてしまったお姉さんですが、この状態でも生きています。
しかし、ひとくちに生きているとは言っても、無事に元の姿に戻ることができたという話ではなく、彼女の頭は破裂したままです。そんな状態でもなぜか意識はある……という、ただ死ぬよりも残酷かもしれない描写が、恐ろしさを増幅させます。
……これ、カードゲームだよね?
そして、『忘却前夜』をプレイしていて、もうひとつショックを受けたのが、事件調査の過程で訪れた、とある地下室でのワンシーンです。
そこには、元々は普通に日常生活を送っていたであろう人々の身体が、蜜蝋で表面を覆われた状態で転がっているという、あまりにもおぞましい光景が広がっていました。
「蜜蝋人形の館」とでも言うべきその部屋に置かれた蜜蝋人形たちは、もちろん既に人間の形をしてはいません。それにも関わらず、彼らは苦しそうにもがき蠢き続けているだけでなく、その体の表面には、蜜を求めてやってきた大量のアリたちが群がり這いずり回っているという惨憺たる有様。その光景を頭の中に思い浮かべたとき、そこには絶望感しかありませんでした。
やっぱ怖すぎるって!
このように、徹底的に陰鬱な世界観が魅力である『忘却前夜』では、ホラー映画のような驚かされる恐怖感というよりは、心にダメージを受けるような「精神的恐怖」がゲーム全体を支配していて、常にこちらの感情を揺さぶってきます。
「この精神的にくる感じ、どこかで体験したことがあるような……?」と思い出されるのが、冒頭でお伝えした「クトゥルフ」の文字列。
なるほど、このSAN値が減少しそうになる深遠な空気感は、確かにクトゥルフ神話のそれですね。
しかし、本作はただ陰鬱で残酷なだけでは終わりません。
クトゥルフの空気感をまとった暗くてじめっとしたストーリーをプレイする中でときどき垣間見えてくるのが、人間の美しさです。
ネタバレとなるため詳しくは言えませんが、本作には「優しさ」や「大切な思い出」といったような、人間ならば誰しもが持っているであろう脆く小さなきらめきが感じられるシーンがたびたびあり、これがまた心を大きく揺さぶってきます。
それらの美しいシーンが持つ輝きは、物語の暗さすべてを照らすには、正直心もとないもの。
しかし、『忘却前夜』が、ストーリーのほぼすべての場面が暗くて重い雰囲気に支配されているゲームであるからこそ、その対比として、このわずかな光がいつも以上に綺麗で神聖なものに感じられ、感情が大きく動かされるのです。
また、少し話は逸れてしまいますが、本作は背景のイラストにも美しさを感じます。上手く言葉で表現することは難しいのですが、基本的に薄暗い背景ばかりの本作の中で、ときどき差し込んでいる光がすごく綺麗なんです。
この光の加減というのがまた絶妙で、その輝きは、物語の世界観に深みを与えていて、感動的なシーンをよりいっそう重厚なものにしてくれている……そんな気がします。
このように、『忘却前夜』では、人間の醜さも反映された陰鬱なシーンと、人間の美しさが描かれた爽やかなシーンが交互にはさまるため、それぞれの場面がより際立ち、胸にグサッと突き刺さってきます。
こんな風に本作はカードゲームでありながら、没入感の高いストーリーも大いに楽しむことができるのです。
ストアページの記載によれば、「メインストーリーは総テキスト量80万字超えの大ボリューム」とのこと。もはやノベルゲームじゃん!
そう、まるでカードゲームとノベルゲームが融合したかのようなゲーム、それが『忘却前夜』なのです。
それでは次は、気になる「カードゲーム部分」についてご紹介しましょう。
ガチカードゲームで脳汁体験……からの激重ストーリーで情緒おかしくなる
先ほどは本作の魅力を「カードゲームながら重厚なストーリー」という風にご紹介しました。が、何を隠そう本作は、カードゲーム部分も「ガチ」になっています。
ざっくり言うと本作は、4人1組のパーティを編成してモンスターたちと戦うターン制のカードゲーム。次のターンに敵が仕掛けてくる攻撃内容をチェックしながら、手札のコストと相談して攻撃や防御などの行動を選択し、敵の撃破を目指します。


本作で重要となるのはパーティ編成。各キャラは「攻撃型」「防御型」「支援型」などの役割と5枚の固有カードを持ち、誰を選ぶかで戦闘で使う20枚の基本デッキが大きく変化します。
そして、タイプのバランスも重要ですが、編成の最大の面白さは戦い方が大きく異なる4つの「界域(勢力)」にあるのではないでしょうか。
- 混沌: 主人公の固有スキルを活かしたシンプルな戦い方
- 深海: 攻防に使える「触腕」を召喚する
- 狂魔: 専用カード「胚胎」を使いこなす
- 超次元: 扱いは難しいが、条件を満たすと追加ターンを獲得
パーティには最大2つの界域を組み合わせることが可能です。この奥深い仕様により、一度クリアしたステージでも「あの組み合わせだったら、もっと上手くやれてたのかな?」「あのキャラ面白そうだから、それを軸にパーティ組んでみようかな」という好奇心を掻き立てる中毒性を生み出していると感じました。
さらに、基本デッキの構築に加えて、『忘却前夜』の戦闘とパーティ編成をさらに面白くしてくれているのが、カードセットとは別に、各キャラクターに用意されている固有スキルです。
この固有スキルは「狂気」と呼ばれるゲージを最大まで貯めることによって発動可能になるもので、その威力は絶大。基本のカードセットでは非常に難しい、強力な効果を得ることができるため、使い方次第では戦局が大きく変わることもあります。キャラごとに設定された「必殺技」といったところでしょうか。
たとえば、主人公の相棒役であるラモンナが持つ固有スキル “世界演繹法” は、山札か捨て札にある好きなカードを手札に加え、そのカードをコスト0で使用することができます。
……ん? 山札か捨て札にある好きなカード? ……それってもしかして、デッキ全部じゃね?
なんとこのスキル、自分の好きなカードがどこにあっても手札に引き戻せるうえに、それをすぐさまノーコストで使えちゃうんです。
これがあれば、強力な効果を持っているけどコストが高くて使いにくいカードも気軽に使えますし、そういうカードを手札から使ったあと、すぐに手札に戻して1ターンで2度使うこともできます。
もし普通のカードゲームにこの効果を持つカードがあったとしたら、おそらく許されないであろう、かな〜りぶっ壊れた性能のスキルです。
キャラクター固有のカードセットに、キャラクター固有のスキル。これらの要素を上手く組み合わせて、効果的なコンボやシナジーを生み出せるようなパーティ、デッキを作ることができれば、ゲーム自体の難易度も大きく変わってきます。
たとえば、敵から攻撃を受けた際にダメージを返す「反撃」というカードの使い道。
敵が強力な技を繰り出してくる場面では、スキルで防御を固めながら「反撃」で攻勢に転じることが可能です。
一方、敵が攻撃力の低い連続攻撃を予定している場面では、あらかじめ敵の攻撃力を下げて完全にガードしつつ、受けた攻撃の回数分だけ「反撃」を浴びせて大ダメージを与える、といった戦い方もできます。
そのほかにも、条件を満たすと追加ターンを得られる「超次元」のキャラを組み込み、高火力な攻撃カードを連続使用して大ダメージを与えることも可能です。
また、固有スキルの発動後に味方の「狂気」を大きく蓄積するスキルを重ねることで、通常は発動が難しい固有スキルを短いターンで再発動させるといったプレイも楽しめました。
私は正直、じっくり時間をかけてコンボや戦略を練るのが得意ではないため、ここでご紹介した例はかなりシンプルなものです。
それでも、「そこそこ戦いにはなっているんじゃないかな」と満足ができるような連携を構築することができたことは嬉しかったですね。
モンスターに戦いを挑む前の準備の時間もクリアに大きく関わる『忘却前夜』は、先を見通して戦略を組み立てられる“カードゲームガチ勢”なプレイヤーであれば、もっと強力なシナジーを生み出し、ゲームを楽しむことができるのではないでしょうか。
ちなみに、『忘却前夜』にはカード以外に攻撃力や防御力といったステータスも存在します。
そのため、基礎的なレベルアップなしの戦略だけでは非常に厳しい戦いを強いられるというのは注意しておく必要があります。
それでも、パーティ構築やスキル発動のタイミングなど、プレイヤーの思考を挟む場面は多く用意されています。プレイング次第で多少のレベル差は覆すことができる「戦略性の高さ」が本作のカードバトルの魅力だと感じました。
しかし、戦略性の高さの一方で、『忘却前夜』は運も大きく絡むゲームであり、頭の中で組み立てたコンボが上手く決まってくれるかどうかは、カードの引きの良さに大きく左右されます。
それまでは、上手く手札が回って最高に気持ちいい感覚を味わえていたのに、たった1ターンの手札の事故が大惨事を招き、あっという間に窮地に追い込まれてしまう。死が常に隣に寄り添っているかのような緊迫感、理不尽な展開がいつ顔を覗かせるか分からないハラハラ感が刺激的で、プレイヤーの感情を大きく揺さぶります。
この脳汁が出ている感覚、いわばギャンブル性がターン制カードゲームの醍醐味のひとつと言っていいでしょう。
しかしながら、いくらターン制カードゲームで遊ぶうえで運ゲーとの真っ向勝負は避けて通れない道とは言っても、ギャンブルには負けがつきものです。
特に、手札と敵の攻撃を見比べて、どう頑張ってもゲームオーバーが避けられないことに気が付いたとき、いわゆる「負け確」の瞬間を見て苦い顔をするのはカードゲーマーなら「あるある」の状況なのではないでしょうか。
絶体絶命の状況に陥った時、仲間が敵に蹂躙されてゲームオーバーになる場面を見届けることなく静かにゲームを終了し、今回のプレイを忘却の彼方に追いやりたくなることもしばしば。
しかし、『忘却前夜』において「ゲームオーバーの瞬間を見届けない」という行為は、悪手中の悪手です。
なぜかというと、なんと、なんと本作は、もしも体力が0になる攻撃を受けたとしても、一定確率で「死亡抵抗」が発動し、ゲームオーバーにならずに生き残ることができるのです。
まぁ、「生存できる」とは言っても、残る体力はたったの1だけですし、プレイヤーの体力が0になるたびに、生存確率はどんどんと下がっていくため、状況的にかなり厳しいということに変わりはありません。
しかし、ほんのわずかな糸口であったとしても、希望が見えているという状況は、気持ちにかなりの余裕を生み出してくれます。
実際、この生存のおかげで勝つことができた戦闘もかなりありますし、負け確の状況をひっくり返して勝てたときは、歓喜の雄叫びが腹の底からマグマのように噴き出しました。
絶望しかない場面では、小さな光も大きく綺麗に輝いて見える。これは、陰鬱なストーリーの中では、わずかな優しさが胸に深く突き刺さるという、本作のメインストーリーとまったく同じ構図です。
『忘却前夜』の戦闘においては、本当のゲームオーバーになる瞬間をこの目で見届けるまで諦めの感情がわいてくることはなく、むしろ生存すればするほど、画面から目が離せなくなっていくのが面白いところ。
事前準備として戦略を立て、出来る限りのことをしたあとは運に任せる、人事を尽くして天命を待つというゲームバランスが絶妙で、本作はカードゲームとしての魅力をしっかり味わえるタイトルになっています。
そして、戦略にギャンブルに脳をフル回転させながら敵を撃破した先に待ち構えているのが可愛い絵柄のキャラたちが容赦なく酷い目に遭ったりする激重なストーリーなのですから、これはもうたまったもんじゃありません。
こんだけ頑張った後にこんなの見させられたら、情緒おかしくなりますって……。
ストーリーが激重かと思えば、カードゲームも激重。それが『忘却前夜』なのです。





















