『THE RED LANTERN』を遊んで、心が締めつけられました。プレイ中、ずっと心にあった感情はただひとつ、“失いたくない”。この言葉を何度反芻したか数え切れません。
本作は5匹の犬と共にアラスカの雪原を走り抜けるゲームです。ですが、ただ楽しくお散歩するわけではなく、「新たな住処」を探すために危険が伴う世界を命がけで駆け巡ることになります。
過酷な自然に住む動物たちは、他者の命を奪い、ときには奪われる世界で生きています。そんな動物たちと命のやり取りをしていくなかで、隣に「誰かがいてくれる」ことの尊さ、儚さを体感していくことになります。
知らない関係から、プレイ開始30分で家族になった。知ってしまえば他人には戻れない
雪原に飛び込めば、犬たちと強い絆が生まれていきます。なぜなら、彼らとの距離がとにかく近いからです。
このゲームの犬たちは、強くたくましいです。ソリに乗って雪原を駆けている最中、犬たちはプレイヤーを連れてものすごいスピードで走ってくれるんです。画面に映る背中がとても頼もしい。
休憩のためにキャンプに入ると、今度は犬たちがすぐそばでリラックスしています。仕事をきっちりこなす彼らですが、しゃがんで撫でている時は存分に甘えてくれるのです。しかも、一匹一匹甘え方や好きな撫で方など愛情表現が異なっていて、それがまたカワイイ。
ふと一匹撫でてしまえば、「一人だけしてあげるのは他の子が可哀想だな……」といたたまれない気持ちになり、時間をかけて全員撫でてしまいます。
このゲームの主人公はめちゃめちゃ犬に話しかけ続けるので、聞いているうちに、実際に操作している自分もこの犬たちに話しかけているような気分になっていきます。
食事の配分を決める場面では、自分が食べるのがリソース的には一番効率的だとわかっているのに、つい頑張ってくれた犬たちに多めに分け与えたくなってしまう。生きるために走っているのに、なぜだか、合理性より愛おしさを優先してしまいます。
肉をお皿に乗せると、本当に良い表情をしてくれる
彼らは頼もしいだけでなく、かわいくて愛おしい。そんな旅の合間の楽しい時間の中で、この先彼らを“失うかもしれない”怖さが、じわじわと迫っていきます。
弾が一発しかないのに撃ってしまった。“失う”感覚が現実になると、冷静な判断は難しい
その怖さは唐突に現実になりました。ソリで走っている最中に、野生のオオカミがプレイヤーに向かって飛びかかり、庇ってくれた犬たちが戦いに巻き込まれたのです。
犬はケガを負っています。素早く選択しなくてはいけません。犬を助けるか、物資を守り、温存するか。この時、手持ちの弾は残り1発。ここで使えばこの先、食料を得るための狩猟ができなくなってしまいます。また、クマなどの大型の野生動物に遭遇したら対抗する手段がありません。
それでも、迷わず撃ちました。犬がやられそうな瞬間を目の当たりにして、考えるより先に手が引き金を引いていました。
撃った直後、「この先どうしよう」という思いが押し寄せてきました。あれだけのリスクを頭ではわかっていたはずなのに、それでも撃ってしまった。この先の旅路は絶望的です。冷静に考えれば、良くない判断だったかもしれません。
ですが、撃ったこと自体には後悔していないことに気づきました。彼らが死ぬくらいなら、自分が辛い思いをしたほうがいい。不思議と、そんな感情で心が満たされていました。
死んでしまったのは「夢」だった。犬たちを守るチャンスがもう一度与えられる
道中で力尽きてしまうと、最初からやり直しとなります。普通なら面倒に感じる仕様かもしれません。ですが、本作では逆に救いに感じました。
残酷な結末を迎えたと思っていたら、それは「夢」だったというオチで、朦朧とした意識のなかで、ゆっくりと目覚めていきます。車には5匹の犬たちを乗せていて、これから新天地に向かうようです。犬たちは当然死んでおらず、元気な状態で生きています。
「夢」で何かを察したのか、メモ書きには内容が追加されていて、初期物資が少しだけ豊かになっています。失敗は無駄にならず、もう一度犬たちと駆け回るチャンスが与えられます。次はきっと、もっとうまくやれるはずです。

アラスカの雪原での命のやり取りは、あまりにも淡々としています。シカやウサギを仕留め、犬たちが小動物を狩る姿も見届ける。そこにドラマはなく、ただ静かに、あっけなく進んでいきます。そして、そんな姿を見つめている中で頭によぎるのは、自分たちもまた、同じようにあっけなく消えうる存在だということです。
好意をよせて甘えてくれる犬たちも、この容赦ない世界のなかでは、いつ失ってもおかしくありません。だからこそ、彼らがそばにいてくれることが嬉しく、愛おしいと感じられます。
『THE RED LANTERN』は「一人じゃない」ことが当たり前じゃない世界で、支え合って生きることの尊さを身にしみて体感できる作品でした。











