謎をたっぷり詰め込んだ、意外性のブリコラージュ(寄せ集め)。噛めば噛むほど味わい深い、考察の余地があり過ぎる世界におぼれよう
ではその肝心のストーリーはどのようなものなのかというと……これは非常に説明が難しい。
実を言うと私自身、本作のストーリーがどのようなものなのかイマイチ掴みきれないでいる。というのも、この作品はあまりストーリー自体をプレイヤーに語ってくれない。あるのは途切れ途切れの会話を読み解くことと、画面上で起きている「何か」をひたすら見つめて考えることのみ。
さらにゲーム後半では予想外の展開が次から次に目まぐるしく移り変わっていくため、プレイヤーは驚きと混乱を常に浴び続けることになる(そこが本作の魅力でもあるので、ぜひ詳細はご自身でプレイして体験してほしい)。
しかし、それは本作のストーリーが無秩序であったり「意識高い系」の退屈なものであるということではない。
むしろ、本作のシナリオは咀嚼すればするほど味がするタイプの「深み」を備えている。
作中にたびたび現れる宗教的モチーフや愛に関するテーマ性は、それぞれ一貫性を備え考察勢を唸らせるものであるし、海外のネット掲示板「reddit」などでは「本作はある種のARG(代替現実ゲーム)なのではないか」という議論も起きている(これは本作があまりに謎の多いゲームである故だ)。
また、場面転換の度に挿入されるポップカルチャーも取り込んだブリコラージュ的な表現は、一種のギャグパロディであると同時に、本作のインディー精神を象徴する役割も果たしている(筆者の持論だが、ホラーとギャグは意外にも相性がいい、名作ホラー映画には必ず「ちょっと笑えるバカっぽいシーン」があるものだ)。
これらの要素が後述する高難度アクションをクリアした「ご褒美」として、次は何が起こるんだろうとプレイヤーをワクワクさせてくれる。
しかし忘れないでほしいのは、あくまで本作のメインは「ホラー」であるということ。物語全体を通してみれば、やはりべっとりとした不気味な雰囲気が作中の大半を占めている。
見知った家族がいきなり他人のように性格が変わってしまうというような展開や、自分以外誰一人まともな人間がいないような感覚、夢か現実かも分からなくなってしまうような恐怖など……サイコホラーとしての質の高さも十二分に備えているので、インディーホラー好きにはたまらない作品であることはお約束しよう。
ゲーム性は、マジでムズい。でも上質なホラー演出や予想外の展開が気になりすぎて、エンディングを見るまで止められない!
ここまで、本作の難解なストーリーやセンスあふれる演出について語ってきたが、もちろん本作のゲームジャンルは「2Dプラットフォーマー」であり、その観点から見ても、本作は魅力にあふれている。ここからは本作のゲーム部分について少し語ろう。
と言っても、ゲームシステムについては解説するような部分はあまりない。基本的なシステムは「ジャンプ」と「重力反転」の2つ。
重力反転は文字通り、ボタンを押した瞬間に重力の上下が入れ替わるというもので、起動すれば主人公が天井へ落下し、そのまま着地する。一度着地すれば、ふたたび能力を起動できるようになり、今度は床へと落ちてくる。
重力の上下を瞬時に切り替えながら、上手く足場を渡っていくのが本作の基本となる。重力反転は一度使うと次の着地までは使えないが、ある程度ゲームが進むと重力反転の使用回数を一度追加するアイテムが登場する。レベルデザインの変化としてはたったこれだけ。非常にシンプルだ。
また、レベルカーブも非常に丁寧で、アクションの出来だけで見ても100点のクオリティであり、純粋にアクションを求めて本作を買うのもおススメできる。
ちなみに、難易度についてだが、まあこれが本当に——めちゃくちゃ、すさまじく、ありえないぐらい——難しかった。個人的には2Dプラットフォーマーの中でもかなり歯ごたえのある方に分類されると感じる。
本作は俗にいう「死にゲー」なのでリトライは爆速なのだが、キャラの挙動にかなり独特な慣性が働くので、慣れるまではフラストレーションが溜まることも多い。
また、パズル要素・寄り道・アシスト機能なども無く、純粋なアクションの上手さでエンディングを目指すストイックな作りになっている。
なので、プレイ中はほんとうに何度もギブアップをしそうになった。もうここで諦めてしまおうか……「すみません、クリアできませんでした」と記事に書こうかとも思ったが、それでも私が心を折られず、むしろ意地になってクリアできたのは、ここまで述べてきたナラティブの存在があったからである。
次のカットシーンを見るまでは終われない……そうした気持ちが常にモチベーションとなって、プレイヤーの背中を押してくれる。「アクションが苦手」という人には少々手厳しい作品になるかもしれないが、ミニマルでありながら決して労力を惜しまない、本作の上質な演出に心惹かれる方であれば、トライしてみる価値は十分にあるだろう。
ミニマルさを極めたハイセンスなビジュアルと音響。とにかく謎に包まれ驚きの連続が続くストーリーテリング、じっとりとプレイヤーを怖がらせる「不快さ」マシマシの恐怖演出。そして、時にはホラー以上にあなたの心を蝕む高難度……。
これらは必ずしもすべてがユーザーフレンドリーではないし、間違いなく一目でわかりやすいゲームでもない。
しかし実際にエンディングに辿り着いた私に言わせれば、この作品が遊んだプレイヤーの中に「何かを残す」タイプのゲームであることは間違いない。それほどまでに『ラブエターナル』で得られる体験は独特で、唯一無二のものなのだ。
私がこの記事であまりストーリー上のネタバレをしなかったのは、(理解できていないのもあるが)何よりこれから遊ぶ“あなた”に対し、この体験を初見で味わう面白さをスポイルしたくないからだ。
これから5年、10年後も確実に語られることになる強度を持った作品、それが、『ラブエターナル』だ。どうかこの謎多き作品に、あなたも触れてみてほしい。




