VRゴーグルに求められるものとは一体何か。
単体での処理性能? 仕事や家事が捗る便利なMR機能?
否──答えは“軽さ”である。
私は普段からVRゴーグルを被って生活しているVRゲーマーの一人だ。『ビートセイバー』から『VRChat』でのコミュニティ活動、そして寝転びながらのネットサーフィンに至るまで、年がら年中頭に変な機械を付けながら過ごしている。
そのような身から言わせてもらうと、VRゴーグルに求めるものとして、私たちのようなVR廃人が最後に辿り着くところは、やはりゴーグルを被ったときの「疲れにくさ」なのではないかと思う。
もちろん人によっては性能や目新しい機能が一番と考える人もいるだろうけれど、常に身につけて使う道具である以上、身体に対する快適性と言うのは何よりも優先される要素ではないだろうか。
そんな「快適性」を最優先するVRゲーマーにとって、これ以上ない選択肢がいよいよ市場に登場する。Valveの「Steam Frame」である。
このVRゴーグル、とにかく軽い。その重量は440g。現在日本で多くのユーザーが使用しているであろうQuest 3が515g、Pico 4 Ultraが580gであることを考えると非常に軽い。
さらに重量バランスも良いので着けていてとにかくストレスや痛みが少ない。長時間の使用にも耐えうる設計になっているので、まさに快適性を追求したゴーグルと言えるだろう。
また、バッテリーが後頭部側にあるので重量バランスもよく、着け心地も抜群。頭頂部側にストラップがないのでゴーグル特有のゴテゴテ感もなし。さらに無線接続に関するセットアップも専用のアダプターをPCにブスっと刺すだけの簡単接続なので、無線で遊ぶのにも非常に適している。
色々と要素を挙げたが、まあ一言で言うと「とにかく快適な機体」なのである。
間違いなくこれからのVRユーザーにとってはゴーグル選びの有力な選択肢になるであろうこの「Steam Frame」。その具体的な使用感を、この記事では製品レビューと言う形でお届けしよう。
「V睡」も余裕。装着したときの圧倒的快適性
最初にもお伝えしたが、「Steam Frame」はとにかく軽い。もちろんもっと軽いものも世の中にはあるが、少なくともスタンドアロン型のゲーム用VRゴーグルとしては、着けたときに圧倒的な快適性を持っている。私も最初に本製品を頭にかぶったときには思わず「かるっ!!」と声を漏らしてしまった。
頭を振っても全く重くないし、色んな方向に対して素早く振り向くことができる。これはもはや革命と言ってもいいのでは?
本体の重量は440gで、現在主流のQuest 3と比べると75g軽い。文面だけで見ると「たかが75g?」と考える方もおられるだろうが、私の体感だとこの75gの差はあまりにも大きいと感じる。
頭は意外と自分にかかっている重さに関して敏感だ。文字だけだとどうしても全てを伝えることはできないが、少なくとも私の体感ではQuestシリーズなどと比べると遥かに軽くて取り回しやすい印象を受けた。
また、この機器の優れた点は軽さだけでない。まず、Steam Frame本体には頭頂部にかかる上部のストラップがなく、全体としてはダイビングゴーグルのような装着感になる。
ゴーグルと銘打ってるのに「被る」という表現を皆が使っていることからも分かるように、これまで登場したVRゴーグルの装着感というのは、実際のところゴーグルと言うよりもヘルメットとかフェイスガードとかに近い。
しかしSteam Frameでは被っているという意識は低く、頭にかかる圧迫感も非常に少ない。「フィット感が減るのでは?」という意見もあるだろうが、少なくとも私が使用している最中は上下にずれるということもなく、ストラップを調整すればかなり激しく動いてもフィットしてくれた。
あと地味に嬉しいところとして、接顔部分のフェイスカバーがマグネットでの着脱になっているのが良かった。これによってフェイスカバーを洗ったり交換したりするのがめちゃくちゃ楽になるだろう。
さらに冒頭でも述べた通り、本体のバッテリーはPico 4と同じく後頭部側にあるので、重量バランスに気を取られることもない。これらの点によって、VRゴーグルであるあるとなっている「頭が痛くてずっとは着けてられない」という問題はかなり減るだろうと思う。
しかも、Steam Frameに採用されているレンズはパンケーキレンズとなっているので、VRゴーグルを被ったときのスイートスポット(一番きれいに見える位置)がかなり広い。
これが上記の装着感と相まって、Steam Frameを装着したときの快適性は他のゴーグルから一歩抜きんでたクオリティになっている。軽くてシンプルなので直ぐに着けられて、なおかつずれにくく見やすいので長時間遊べる。なんとも素晴らしい体験だ。
VRゴーグルを被らなくなる理由第1位「しんどいから」は、このゴーグルで解決する人がかなり多そうだ。(主に健康面で)危険なのであまりおススメは出来ないが、24時間着けてても苦じゃない、と思える。そんな安心感さえ感じた。

ちなみに、上記のような非常に快適な装着感を持っているので、VRChat等で頻繁に見られる「V睡(ゴーグルを被ったまま寝ること)」もかなりしやすいゴーグルと言えるだろう。実際に被って横になってみたが、後頭部のバッテリーによる若干の高ささえ気にならなければ、余裕でV睡も可能だと思う。
というよりも、着けてる感じで言えば本当に水中ゴーグルのような軽い装着感なので、寝転びながら気軽に着けたり外したりするのが一番良い使い方なのだろうと思う。これで寝転びながらVRChatにインするのがまた捗ってしまう……。
ちなみに
ここからはVRChatプレイヤー向けの余談。本製品に関するウワサで「ゴーグル単機でもPC版VRChatが遊べる」というコメントをいくつか見かけたが、実際に単機でVRChatを起動したところEAC関連のエラーで起動できなかった。本体のOSがLinux/SteamOSであることを考えるとProton等で動きそうだが、私の設定がダメだったのか、テスト段階では動作確認できなかった、すみません。
しかし実際SteamVRユーザーの大半はVRChatで遊んでいるだろうと思うので、これについては後々Steam Frame向けに何かしらの対応やアップデートを期待したい。
もちろん、従来通りのSteamリンクを介する方法を使えばPC版は遊べる。本体メニューからソフトを選んで直接ストリーミングを選択できるので、他の機器に比べると起動までの手順が少し減っているのが長所だ。
ドリフトなし、フィンガートラッキングあり。神のコントローラー爆誕
装着感以外で言えば、コントローラーの出来も良い。というか正直言ってしまうと、着けたときの快適性よりもこっちがメインで本機を買うという人がいてもおかしくないくらい、Steam Frameのコントローラーは神だと思う。Indexコントローラーの正統進化であり、これからのVRコントローラーのスタンダードになる可能性を秘めている。

まず優れた点の一つとして、Steam FrameのコントローラーはスティックにTMRという磁気式のスティックを採用している。このスティックの特徴はなんといっても「ドリフトのしにくさ」にあり、TMRではないスティックに比べてドリフトに悩まされる心配がほとんどない。これまでドリフト問題で悩まされてきたVRChatプレイヤーを数多く見てきた私としても、ここは非常に大事なポイントだ。
次に、このコントローラーにはフィンガートラッキング機能が付いている。五本指の開きぐらいをコントローラー内蔵のセンサーが感知し、さながら実際の手をゲーム内に取り込んだかのように指単位でスムーズに反応してくれる。つまり仲のいいフレンドに中指を立てて遊ぶことが可能ということだ。
実際に使ってみたところ、ライトハウス方式で読み取っているわけではないので正確性はIndexほど完璧ではないものの、簡単なジェスチャーなら綺麗にこなせるので、フィンガートラッキングを求める人やIndexコントローラーのトラッキング機能が気に入ってた人にとっても嬉しい機能だろう。
そして個人的にかなりアツい点が、各ボタンの配置が従来のVRコントローラーからかなり変わっている点だ。具体的には、これまで左右コントローラーに二つずつ割り当てられていた「ABXY」ボタンが全て右のコントローラーに集約され、左には十字キーが追加で搭載されている。一般的なゲームパッドに近い配置だ(というかほとんどゲームパッドだ)。
これはSteam Frameを被りながら多くの非VRゲームを遊べるようにするための措置だろう。実際このコントローラー単体で見れば左右に分かれたゲームパッドとして使うことが出来るほか、本機はSteamライブラリ上のどのゲームも本体にインストール可能となっている。
つまりスタンドアロンでこれ自体がひとつのゲーム機として完結しているので、「ディスプレイがゴーグルになっている持ち運びゲーム機」としての運用もかなり現実的なものになる。
そういう意味では、このコントローラーはこれからVRを始めるゲーマーにとてもおススメしたいものだ。普段使ってるパッドからスムーズに移行できるので、ポインティング等に縛られない従来のゲーム的な操作がVRでも楽しめる。
ドリフトなし、フィンガートラッキング可能、そしてゲームパッドとしての運用も可能と、まさしくVRコントローラーに求められる全てを満たした神コントローラーと言えるだろう。
ちなみに
またまた余談。
本製品はValveが作っているということもあり、Valve製のVRタイトルやいくつかのサードパーティタイトルでは「Steam Frame」における動作の検証が行われている。そういったタイトルはライブラリにSteam Frameでの快適動作確認済みタグが付くので、そうしたタイトルを遊ぶ際には快適な体験ができる。また、本機で快適に動作するタイトルはSteamの「Great on Frame」ページで確認できる。これからの対応タイトル数によっては、Steam FrameがVRゲームにおいては最強……という未来もあるかもしれない。






