名作アドベンチャーゲームの構造はこうなっている──『428』イシイジロウ氏によるアドベンチャーゲーム制作のヒント解説 “ニコニコ自作ゲームフェスMV作~る放送”第一回

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良いアドベンチャーゲームは良いリズムゲームである理論

MC:
 次は「アドベンチャーゲームを作るうえで、シナリオ以外には大事なものはないのでしょうか?」という質問です。

イシイ氏:
 皆さんプレイしていて感じると思いますが、アドベンチャーゲームには、眠くなるものと眠くならないものがあるんですよ。あれはすごく簡単な理屈で、じつは物語に左右されているわけではないんですね。あれはリズムなんです。僕がいちばんすばらしいなと思っているのは、『逆転裁判』の1作目です。じつはサウンドノベルにしてもアドベンチャーゲームにしても、リズムゲームだという話をスタッフのあいだではしています。つまり「タン、タタン。タン、タン、タン。タタン、タン」というようにリズムを作ることによって、物語が読みやすくなります。このバランスがすごく重要だと思っています。

 ここができているかいないかで変わるので、そのためにセリフの長短をいじる必要もありますし、句点読点のコントロールも重要になってきます。このポイントを考えるだけで、だいぶアドベンチャーゲームは読みやすくなるし、楽しくなります。

MC:
 『逆転裁判』ってボタンを押してるだけなんですけど、アクションゲームみたいですもんね。

イシイ氏:
 そうそう。あの画面のブレ方などもそうですね。CGになってから、そのあたりがコントロールしづらくなって、苦労されているんじゃないかと思います。

ゲーム実況との今後の付き合い方は?

MC:
 これは2010年に『428』が出たとき、ニコニコのゲーム実況がちょうど盛り上がっていて、そのときに「これ以上のネタバレはちょっと……」とご発言をされていたことがあったんですよね。そのときはゲーム実況のコンセンサスが決まりきっていない時代だったので、少し騒ぎになったという経緯がありました。

 一方で2016年のいまは、ゲーム実況があるのが当たり前になったり、物語の中にも取り入れられていったりするような状況だと思うのですが、この状況下でアドベンチャーゲーム制作者の立場から、ゲーム実況をどうお考えになっているのでしょうか?

イシイ氏:
 単純なアドベンチャーゲームを最後まで見せてしまうのはダメだと思いますが、なんだろうな、まったくダメというのは、個人的にはもったいないかなとも思っています。『428』で言えば、たぶん13時台など、物語がガッと動くところ……たとえばアニメで13話でひとつのストーリーの場合、2話までは無料で公開するなど、形はいろいろありますよね? 映画でも冒頭15分など。そういうイメージの実況動画なら、ありなのかなと思っています。

 あとは、プレイした人たちで感動を共有したりなどは、「実際買いましたよ」とわかるIDを共有することなどで、なんとかできるといいなと。でもそこは難しいですよね。「買った人だけが、実況を共有できるような仕組みがあるとよかったよね」と昔から言っているんですよ。

MC:
 確かに、「『P5』が完全に実況禁止なので、もどかしい」とプレイしている人が言っていました。

イシイ氏:
 感想の共有は、買った人たちのあいだだったらありなのかなと思いますが、システムとしてすごく難しいので、何かしたいなと。プロモーションとして冒頭を実況するというのは、僕はありなのかなと思っていますし、「そういう意識であれば『428』などを、みんなでやってもらってもいいのかな?」という、個人としての線引きはありますね。

 当時は、メーカーさんがどうのという話ではなく、「小売の方々がどういうスタンスで、そういう実況を見ているのか?」などがまったく共有されておらず、わからなかったので、なかなか踏み込んだ発言ができませんでしたけどね。

MC:
 ちなみに、インディの世界を見ていると、もはやゲーム実況をされることが前提の物語などが出てきています。ゲーム実況においては、わりと意味ありげなシーンだとか、ユーザーに入力させる要素が、おもしろさを生むんですね。「名前をちょっとヘンに変えてみましょう」など、そうしたものが活かされていたりします。多くの人にプレイされるよりも、「実況されればいいじゃん」という前提のものも結構増えています。人気実況者とゲームの組み合わせをもって消費される、という形もわりとあるなと思っています。

イシイ氏:
 それはテレビなどに似ていますよね。無償であっても、次のビジネスの仕組みがあればいいのかなと感じます。

いま流行しているゲームって、ストーリーがない気がするんですが

MC:
 これは抽象的な質問ですが、これは僕がお尋ねしたくて入れました。ゲームの物語には、先ほどフローチャートで説明されていたように、構造そのものが新しくて惹かれる部分があるんですよね。ですが、たとえば映画やアニメのようなほかのリニアな物語にも、サウンドノベルから進化したものの中には、オープンワールド的なものがあったり、ほかにも“人狼 ザ・ライブプレイングシアター”という、なりきり『人狼』モノの舞台があったりします。それらもゲームと言えばゲームですし、『ラブライブ』や『アイドルマスター』など、音楽の物語をゲームの中で貯めていき、アニメーションにしていく消費スタイルのような、いろいろな新しい取り組みが出てきています。この現状をどういう風にお考えかをお伺いしたいです。

イシイ氏:
 そうですね。オープンワールドが、もうひとつ残念な感じではあるんですよね。サウンドノベルなどは、ループワールドや分岐など、「分岐することによって生まれた並列な物語を、ひとつメタな位置からまとめたときにどうなるか?」というような発明が基本だったんですね。それが“システムと物語の出会い”だったのですが、オープンワールドには、そういう発明が残念ながらいまのところまだゲームデザイン上で起きていないんですよね。

 これは何故かと言うと、ゲームブック的な分岐する物語のゲームマスター(GM)をプログラム化したからです。テーブルトークRPGのGMをプログラム化しただけなので、いまのような形なんですが、次はプレイヤーのプログラム化が行われていくと思っています。プレイヤーのプログラム化をすれば、さっきの“人狼 ザ・ライブプレイングシアター”のようになる。『人狼』もGMは必要なんですが、システムでしかないんですね。テーブルトークRPGのGMは物語をコントロールするために機能していますが、『人狼』のGMはシステムの判定しかしていないのに、物語を生む機能を持っている。これがスゴいんです。そのため、プレイヤーをAI化すれば物語は生まれてくるんですよ。

 次はプレイヤーのプログラム化、デジタルゲーム化ができれば、新しい物語の発明があるだろうと思っています。それがひとつ目。

 もうひとつは、シミュレーションゲームの復権、つまりゲームにおける残像の復権です。アドベンチャーゲームは、やっぱり物語をオープンにしてしまうんですけど、シミュレーションゲームが持つゲームの残像による物語というのは、まだそんなに追求されていません。

MC:
 行間というかなんというか、『ガンパレード・マーチ』などがそのあたりを魅力的に描いていますね。

イシイ氏:
 『ガンパレード・マーチ』もそのあたりの可能性をとても追求したのですが、やはり難しい。でもそこをなんとか再評価できないかなということをすごく考えています。

MC:
 たとえば『刀剣乱舞』や『艦これ』には、それに近いものを感じますが。

イシイ氏:
 ソーシャルゲームのカードゲームベースのものはそうですね。先ほども話題になった『アイマス』で言えば、どちらかというと『シンデレラガールズ』の話ですよね。つまりキャラクターというのは、カード1枚程度の情報量しか持っていないんです。「それがどんな物語を持つか?」という部分は、先ほどの残像や想像を二次創作的にユーザーに投げている。これは考え方としてはそれほど新しくないんですよ。残像を勝手に作っていくシステムを持ってないといけないんですよね。その物語性やシステム性というのが、次のテーマかなと思っています。

 僕個人が、決してブラウザゲームやソーシャルゲーム的なものを嫌がっておらず、いっしょに作っていこうと思っているのは、「その仕組みをどういう風にユーザーに提示すれば、おもしろい物語が作れるか?」を考えているからです。たとえば『モンスターストライク』のアニメーションも、じつは『モンスターストライク』というキャラクターの強いゲームに対して、外部にアニメーションで物語を作ることで、「その差分が何を生むのか?」というような個人的な実験をしている側面もあります。そうした考え方でいろいろやっているんですね。だから可能性はまだまだあります。ただ、いまデジタルゲームやテレビゲームがシステム的な袋小路に入っているのは確か。なんとか打破したいと思っています。

小規模ゲーム開発で成功するには?

MC:
 今回の“ニコニコ自作ゲームフェス”は、あくまで少人数体制の開発者に向けてのものです。イメージは3人ぐらい、予算は10万ぐらいという規模です。いまは“インディ”という言葉の意味が広くなっていて、小島秀夫さんがインディだとすると、誰も太刀打ちできないという(笑)。

イシイ氏:
 小島さんご自身がインディって言っているんだもの(笑)。独立系ってことですね。

MC:
 ここでは予算10万円ぐらいの、僕らが作る程度の規模のときに「成功するにはどうしたらいいのか」といういうことをお聞きしたいと思っています。

イシイ氏:
 なるほど。少人数は何がいちばんいいところなのかということですね。個性というのは、人数が多くなればなるほど、けっきょくドンドン埋もれていくわけです。だからこそ成功したのが、『Fate/stay night』や『月姫』であり、『ひぐらしのなく頃に』でありという。つまり一点突破するしかないんですよ。

 僕自身も自主制作の映画(『女流棋士の春』)をこの前発表しましたが、ほとんどひとりで編集しました。カチンコの音合わせから自分でやっていますから、僕の個性などが出まくるわけです。ふつうの編集の方が観たら、「その編集はおかしいだろう」となるわけですよ。「でもこれがいいんだから」と言えるところが少人数のポイントであり、強さです。個性が埋もれず、人と同じであることをあまり考えずに済む。「これは合っているのかな?」などと考えなくてもいいから、好きに作って、人に何か言われても「これがいいんだよ」と言えるのが少人数だし、逆にそれを認めず、「これおかしいんじゃない? どこそこのゲームだったら、こんなことしないよ」と言い合うのではなく、「いいんじゃない、おまえがそれで良ければ」という関係で作れればいいと思います。

 そりゃ、ひどいものができることもありますよ。ひどいものができたら、自分の才能が足らなかったと思えばいい。でも「ひどいものかな?」と思っていたら、スゴいものになることがあるっていうのも、やっぱりインディ。映画『シン・ゴジラ』も完全にインディ的な概念で、庵野(秀明)さんが作ったわけですよね。ふつうの映画の文法だと「ダメだ」と言われそうなものを、庵野さんの文法を持ち込んで独裁でやったから、アレだけ尖ったものができたのであって、ああいう考え方が大成するのがインディだと思います。

MC:
 ありがとうございます。「アドベンチャーゲームの作り方」ということで、かなりのボリュームでお話をお伺いしました。めっちゃいい話が聞けておもしろかったです。というわけで、我々は今後もインディゲームの制作を応援していこうと思っていますので、よろしくお願いします。


 この日は、人気ゲーム実況者のkson氏が登場し、実際にゲームを制作したこともあり、引き続き大いに盛り上がった放送となった。

 放送のベースとなっている“ニコニコ自作ゲームフェス”は、今回で7回目を迎える、ゲームを自主制作する人々を応援するニコニコ主催の祭りのひとつ。今回は『RPGツクールMV』で作ったゲームを投稿するというルールだったが、今回から賞金総額が50万円に引き上げられている。選出部門も「その発想はなかった部門」、「その発想はいらなかった部門」、「謎の技術部門」、「期待の新人部門」、「ガチ部門」など多彩。制作のための素材配布なども行われており、この場で取り上げられた『クロエのレクイエム』、『クリーチャーと恋しよっ!』、『Hero and Daughter』などの作品が、現在はゲーム実況などで盛り上がりながら、小説になったり、漫画になったりと、いろいろな方面へ羽ばたいている。興味を持ったなら、ぜひ参加してみよう。

関連サイト、関連記事:
ニコニコ自作ゲームフェスMV

イシイジロウ氏ら第一線で活躍するクリエイターがアドベンチャーゲームを語り尽くす!――「弟切草」「かまいたちの夜」から始まった僕らのアドベンチャーゲーム開発史(前編)
(情報元:4Gamer.net)

イシイジロウ氏ら第一線で活躍するクリエイターがアドベンチャーゲームを語り尽くす!――「弟切草」「かまいたちの夜」から始まった僕らのアドベンチャーゲーム開発史(後編)
(情報元:4Gamer.net)

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