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『ポケモンGO』はもはや社会現象である!  開発元Nianticのお膝元サンフランシスコでのリアルな『ポケモンGO』事情をレポート

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 いよいよ日本でもローンチ間近と噂されるスマートフォンアプリ『Pokémon GO』(以下、ポケモンGO)。ひと足先にローンチしたアメリカでの評判を耳にして、その余りの流行りっぷりに驚いている人も多いだろうが、あれはだいたい本当だ! iOSでもAndroidでもランキングは1位を独占しているし、街を歩けばそこら中にスマホをスワイプしてポケボールを投げてる人に出くわす。WWEのスーパースターだって、夜のトークショー番組の司会だって、みんな『ポケモンGO』の話をしている。

 全米を巻き込んだ『ポケモンGO』ブームは、それだけにとどまらず、本物の社会現象であるからこそ、嘘が交じるほどのレベルだ。さっき「だいたい本当」って書いたが、個人のSNSへのジョーク投稿はもちろん、嘘ニュースサイトやいわゆる“虚構”なパロディニュースが『ポケモンGO』をネタにしまくり。それに見事に踊らされるメディアなんかもちらほらいたりするが、まぁそれは「そういうことが起きそうだ」と思わせるだけの規模があることの裏返しでもある。

Viceによる『ポケモンGO』のニュース記事
ちなみにエッジの効いたニュースを扱うことで定評のあるViceは、早速それらの嘘ニュースの元締めにインタビューを試みている。まだ『ポケモンGO』自体が配信から1週間しか経ってないのに、もうそのサイクルまで行くなんて早すぎるよ!
VICE News

 筆者ことわたくしミル☆吉村は、普段ファミ通.comをメインに超大作から個人製作のインディーゲームまで海外ゲームを専門に書いている記者であり、洋ゲー好きが高じて日本を離れ、サンフランシスコに住んでいる。
 サンフランシスコは、それ自体は意外と小さな街だが、北はマリン郡から南はシリコンバレーまで含む経済圏“サンフランシスコ・ベイエリア”の中心地であり、最先端のIT企業やベンチャーが集まるデジタルの都。そして、『ポケモンGO』の開発元であるNianticのお膝元でもある。というわけで、長い前置きになったが、ここサンフランシスコでの『ポケモンGO』のリアルな実情をお伝えしたい。

公園で集団ポケモンハンティング
公園で集団ポケモンハンティング

 さて。結論から言ってしまえば、新しもの好きが多いサンフランシスコでは、『ポケモンGO』は流行りまくりである。サーバーが安定してきた今週頭あたりからは、道を歩けばスマホを持ちながら歩いたり、胸のあたりで大きくスワイプしているプレイヤーを見かける(どちらも『ポケモンGO』プレイヤーの特徴。前者はGPSが動いているか確認しながら移動しているため、後者はポケボールを確実にヒットさせるため)。

Twitter本社前でポケモンゲットだなう(死語)。ちなみにTwitter本社はサンフランシスコ市街に、Facebook本社が南のサンマテオに本部がある
Twitter本社前でポケモンゲットだなう(死語)。ちなみにTwitter本社はサンフランシスコ市街に、Facebook本社が南のサンマテオに本部がある

 さらに先日はジャパンタウンでうどんを食いながらプレイしていたら「よう、やるねぇ!」と声をかけられて、ポケモンゲットの瞬間の写真を撮られたし、交差点ではすれ違いざまに「お前どこチームよ!」なんて言われたりするような状況だ。今日も取材先で「今日はわざわざご足労頂いて……」という挨拶に対して、「『ポケモンGO』プレイヤーには外出は大歓迎ですよ」と英語で答えたら掴みはオーケーとなるなど、会話の話題にもなっている。

SF名物のケーブルカー乗り場はポケモンジム
SF名物のケーブルカー乗り場はポケモンジム

 またNianticの地元だからなのか、サンフランシスコのダウンタウンにはポケストップ(重要拠点。アイテムを貰ったり、Lure Moduleというアイテムを使ってポケモンを引き寄せる【※】ことができる)が一区画ごとに一個あるんじゃないかというレベルで存在する。バー、レストラン、アパートの壁画に描かれたストリートアートまでポケストップになっており、そのため、ポケストップになっているバーやレストランで営業時間中にLure Moduleを挿してプレイヤーを迎えるのが新しいマーケティングテクニックとして、地元メディアSFistに掲載されたほど。Lure Moduleはポケモンだけでなく、プレイヤーも引き寄せるのだ。

※ただしポケモン自体はポケストップじゃないと手に入らないわけではなく、自宅だろうとどこにでもランダムに出現してゲットできる(ただし出現するポケモンには地域や時間帯で傾向がある)。この点、日本ではやや誤解されているようなのであしからず

奥の滝にLureがささったんで人が集まりだす(犬連れもポケモンプレイ中)
奥の滝にLureがささったんで人が集まりだす(犬連れもポケモンプレイ中)

 またサンフランシスコでは、地価や家賃が急騰していて家族持ちは郊外に逃げていっているため、ゲームなりアニメなりでポケモンにハマった経験があり、自由な時間の使い方ができる若い独身者が多いのも加熱具合に拍車をかけていると言えるかもしれない。なんせ記者の住んでいる地域はダウンタウンでも治安の悪さで上位に入るエリアだが、明け方になってもポケモンジムの奪い合いが終わらない。
 誰かが集団行動を仕掛けたのか、なんと朝5時に一キロメートル圏内のポケモンジムが一瞬ですべてTeam Mystic(通称青チーム)に制圧された時は、自分のチームのことながら、喜ぶよりも思わず目を疑った。うちの近所の路上といえば、ひったくり程度は当然のこと(スマホを見ながら歩くのは絶好のカモ)、しばしば路上で刺殺体が出るような所なんですけど……。

 ちなみに。「小学生とかの間でも流行ってるの?」と、本記事の寄稿依頼をしてきた電ファミ編集長のTAITAI氏に聞かれたのだが、少なくとも、筆者が住んでいるサンフランシスコのダウンタウンではあまり見かけない。なんせ専用のスマホを与えられてる子が限定されるし(外出先なんかで子供に貸して遊ばせる程度が普通)、ダウンタウンでは小学生がひとりで出歩くことなんてほとんどない。ちなみに正確な年齢はわからないが、ティーンエイジャーの兄妹が午後8時に遊んでてスマホをパクられたという事件も実際に起きていて、(サンフランシスコの事件だが)LAタイムズが報じている

LATimes
‘Pokemon Go’ ends abruptly for teen siblings in San Francisco after robber snatches their smartphone

 他の都市に目を向けると、カリフォルニアを代表するもうひとつの大都市ロサンゼルスでは、ラプラスをゲットするために深夜に何百人(一説には1000人単位)もの人が、近郊のサンタモニカの桟橋に集まったという。ここも普段は深夜にひとりで歩く人なんてほとんどいない所なので、まぁ都市圏は似たような感じなのだろう。

 なお、Lure Moduleを使って人をおびき寄せたり、ひと目のあまりないポケストップで事件が起きている点については、Nianticが報告フォームを設けており、プレイヤーによって改善されていくだろう(新たなポケストップ/ジム候補の提案フォームも兼ねている)。

ポケモンGOの報告フォーム:
https://support.pokemongo.nianticlabs.com/hc/ja/requests/new?ticket_form_id=319928

 ちなみにロスに負けず、サンフランシスコでもポケモンGO・バークロウル(バーをハシゴすることをバークロウルと言う)が非公式のオフ会として予定されており、Facebookページで「興味あり」とチェックを入れた人の数は2万4000人を超え、参加予定と表明した人の数は6000人も超えている。なにせ個人が立ち上げたイベントなので、いろいろ大丈夫なのか?と心配になってしまうが、『ポケモンGO』の熱狂がうかがえる出来事の一つと言えるだろう。

現地時間7月20日18時より開催される「ポケモンGO・バークロウル」
現地時間7月20日18時より開催予定の「ポケモンGO・バークロウル

 ともあれ。繰り返すが、日本で伝えられている『ポケモンGO』のフィーバーぶりは“本物”である。一つのゲームがここまでの社会現象を巻き起こしたことは、近年では記憶にないレベルだし、それがポケモンというキャラクターがあってこそという点にも注目したい。

 本作の土台になったIngressというゲームは熱狂的なファンを生み出したが、あくまでプレイヤーが中心(しかも対戦が前提だ)のゲームで、キャラクターという側面はなく、それが故に記者はあまりハマれなかった。しかし、『ポケモンGO』ではそこにポケモンのキャラクターが入ってくることで、爆発的なパワーを生み出している。
 なんせ今回は、対戦(ジムバトル)を避けて単独でポケモンを収集し続ける人も存在できるのだ。それがコミュニティにさらなる分厚さを生み出しているのは間違いないだろう。

 少し前、任天堂がキャラクターIPを活用していくと聞いた時は、恐らくは皆さんと同じように、筆者も「映像ビジネスやマーチャンダイジングにキャラクターを貸し出していくんだろうなぁ」というぐらいの話を考えていた。だが『ポケモンGO』では、キャラクターによってIngressというゲーム自体を進化させ、さらに現行のビデオゲームから離れている人も遊ばせている。まさに任天堂が目指してきたゲーム人口の拡大でもあり、「こういうことだったのか」と脱帽するしかない。

 北米での加熱ぶりが、果たして日本を初めとした世界各国にも広がっていくのか否か、今後も注目していきたい。

取材・文/ミル☆吉村

 

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