『428 封鎖された渋谷で』(以下、『428』)のPS4版とPC版(Steam)が2018年9月6日に発売されることが発表となった。海外版も、これにて初リリースとなる。
本日は何しろそれはもう色々とお知らせがありますので、順番にご紹介いたします。まず、PS4/PC版『428 封鎖された渋谷で』の発売日が2018年9月6日に決定いたしました。https://t.co/Az1AAjV7zY
— スパイク・チュンソフト (@spikechunsoft) June 28, 2018
『428』は、もともと2008年にWii用ソフトとして発売された実写サウンドノベル。これまでPS3、PSP、 Android/iOS版が発売され、長く愛されてきたゲームだ。
10年目の今回の発表は、ファンには嬉しいサプライズとなった。
10年ぶりの大復活。「428」開発時には10年後も話題になり続ける作品を目指しました。その夢が叶って嬉しい。是非多くの人にプレイしていただきたい。
— イシイジロウ (@jiro_ishii) June 28, 2018
PS4/PC『428 封鎖された渋谷で』ゲーム紹介トレーラー https://t.co/U2AemLnodK @YouTubeさんから
実写サウンドノベルというジャンルはフォロワーも少なく、知らない方はプレイするまでのハードルを若干高く感じるかもしれない。しかし、食わず嫌いするのはちょっと待ってほしい。
渋谷での4月28日のある事件を描いた『428』(428はしぶやの語呂合わせにもなっている)は、実写のサウンドノベルだからこそできる表現の完成形とも言える作品だ。複数の主人公の運命を交錯させながらひとつの物語を紡いでいく本作は、発売から10年たった今でも『街 〜運命の交差点〜』と並んでサウンドノベルの最高傑作として語り継がれている。
今なお愛され続けている『428』の魅力を、10年目にして語り直してみよう。
文/しば三角
そもそもサウンドノベルとは?
サウンドノベルとは、アドベンチャーゲームの一種であり、スパイク・チュンソフトの登録商標。
画面全体にテキストが表示される、というのが最もわかりやすい特徴と言えるだろう。ノベル(=小説)に音や絵、選択肢、ループ構造といったゲーム的な要素を加えることで、独自の体験を生み出している
『428』は、現実の渋谷で役者の演技を撮影するという“実写ゲーム”という方法を使って、このサウンドノベルの限界を目指した。
「彫りが深い」役者にとにかく雰囲気がある
実写の静止画で見せる演出は、ゲームとは異なる趣がある。また、今『428』をプレイすると、当時の渋谷がどのような町並み、風景だったのかを垣間見ることができるため、資料的な価値も有している。
もちろん、実写であるからこそ、グラフィックが古く見えることもあまりない。
キャスティングについては、イシイ氏は4gamerのインタビューで以下のように答えている。
ウメ:
役者さんを選ぶための選定基準などはあったんでしょうか?
イシイ氏:
コンセプトが二つあって,一つはテレビや映画で見られないキャスティングにしようということでした。有名無名は関係なく,モデルさんやアーティストといったところで固めようと。
もう一つは,写真がメインなので写りのいい人を選びました。芝居の上手さはあまり出ないので,とにかく絵の写りをリッチにしたかった。そのために彫りの深い方を意図的に選んで起用しています。
(4Gamer×ゲーマガ連動企画第1弾! 今だから話せるサウンドノベル「428 -封鎖された渋谷で-」の秘密を,総監督イシイジロウ氏に直撃!より)
ゲーム自体は複数の主人公の物語を並行して進めていくことになる。ゲームは奇妙な身代金誘拐事件のシーンから始まり、新米刑事、ヤンキーチームの初代ヘッド(脱退済み)、ウィルス研究者、フリーライター、ネコの着ぐるみなど、一見なんの関係もなさそうな主人公たちが関わり合っていく。
数々のバッドエンド(コミカルなものも多い)を回避し、キャラクターごとの物語がつながっていく気持ちよさは、「これぞゲーム!」という他では得がたい経験になるだろう。
しかも、影響を与え合う部分はゲーム内の1時間ごとに区切られているので、出来事が絡み合う面白さをわかりやすく楽しむことができる。
ささいな行動を積み重ねて運命をなだれ込ませる
「複数のキャラクターを同時に動かす」という手法の鍵を握るのが「タイムチャート」だ。タイムチャートでは、主人公たちの行動が時系列順に並んでおり、プレイヤーはテレビのチャンネルを切り替える(ザッピングする)ように、任意に特定の場面に移動することができる。5人の物語が同時に進行している場面では、5本の線が並んでいる画面となる。
ひとりの主人公の物語を進めていると、「KEEP OUT」と表示されて進行がストップしてしまうことが。こうなったときには、他の主人公の物語から「JUMP」し、状況を打開するポイントを探す必要がある。
この「KEEP OUT」と「JUMP」というシステムによって、事態が同時に進行しているという臨場感を生んでいるわけだ。
イシイ氏:
街はまずシナリオありきで,それをゲームでリンクしていく作り方だったんです。それがどういうことになるかというと,“誰も他人に関わらないほうが人生は変化しない”という考え方になってしまうんです。つまり人助けができないんですね。428では逆の作り方をしていて,誰かが他人に関わるほどいい方向へ向かっていくので,人助けができちゃう。
(4Gamer×ゲーマガ連動企画第1弾! 今だから話せるサウンドノベル「428 -封鎖された渋谷で-」の秘密を,総監督イシイジロウ氏に直撃!より)
10年前の渋谷を記録した資料的価値
『428』の写真の総撮影枚数は約12万枚。
あらゆる場面が写真で表現されているので、その撮影の苦労たるや……。(後述のTYPE-MOONシナリオを除く)
渋谷をここまで撮影したものはゲーム以外の分野でも皆無。前述したとおり、ゲームではヒカリエの竣工前の10年前の渋谷の風景を見ることができるので、かつての渋谷を知っていた人には懐かしく、知らない人には新鮮に感じることだろう。
隠し要素は「集合知と戦った」
オリジナル版の隠し要素である、推理作家の我孫子武丸氏と、『Fate』シリーズでお馴染みのTYPE-MOONが担当するボーナスシナリオも収録される。
ボーナスシナリオの解放条件は非常に難しく、発売当時のことをイシイ氏は後にこう語っている。
イシイ氏:
だって、チュンソフトも『428』で2chと戦いましたから。僕らは、『かまいたちの夜2』が発売当日に解かれてしまったという事件があって、『428』は徹底的に難しくしたんです。その結果、1週間は彼らを出し抜けた。もう「集合知」を使わないと解けないような作りにしましたからね。
――えっ、『428』って一人では解けない難易度設定だったんですか。
イシイ氏:
隠しシナリオの解放条件は、なんですけどね。もう個人とは戦ってないです(笑)。僕らは、あの時点でもう「集合知」と戦ってました。(【インタビュー】『428』イシイジロウの、TVドラマをゲームに変える新挑戦。「謎解きLIVE」最新回の本格ミステリ史における文脈とは?【今週土曜:NHK19時】より)
発売から10年たった現在、ネットで調べれば、ボーナスシナリオ解放条件はすぐにわかるだろう。だが、これからプレイする人は「「集合知」を使わないと解けないような作り」という難度の高さを、ぜひ味わってみてほしい。
10周年を記念したスペシャルプライスとなるPS4/PC版。PS4版はパッケージ版、ダウンロード版ともに4104円(税込)、PC版は3960円(税込)となっている。