Valve Corporationは、自社が運営するPCゲーム販売サービスSteamを通じて得たハードウェアデータから、PCゲームに利用されるコントローラーの統計データを公表した。共有可能なキーマッピングをSteamを介してさまざまなゲームに適用するSteam Input【※】を使い、3年分のデータからSteam利用者がどういった入力機器を使っているのかを紹介している。
※Steam Input:SteamではBig Pictureモードと呼ばれる、コントローラーだけですべての操作が完了するモードがある。Steam Inputでは、特にコントローラー操作に対応していない古いゲームのボタン設定を共有したり、Steamへの入力を一元的に管理したりすることができる。
Steamでは統計データを取り始めた2015年から、3000万人の利用者がひとつ以上のコントローラーを登録し、そのうち1500万人がふたつ以上を登録している。登録されているコントローラーの組み合わせ総数は6000万にものぼるという。
特に使用されているのがXbox 360とXbox Oneコントローラーで、合わせれば4000万と全体の64%をXbox系コントローラーが占めている計算になる。
エントリーでも言及されているように、Xbox系のコントローラーが大きなシェアを得ているのは、マイクロソフトが2005年に発表した入力規格「XInput」が普及した点が大きい。従来までの「Direct Input」から代わってDirectX 9とともに登場したこの規格を採用した作品は、当時発売されたXbox 360のコントローラーを容易にPC上で動作させることが可能だった。
特にPCゲームの標準化などを目指すブランド「Games for Windows」の作品や、PCとXbox 360のマルチプラットフォームタイトルは、積極的にXInputを導入するようになる。Game for Windowsブランドは2013年に廃止され、DRM認証の問題などもありPCゲームファンからも特に惜しまれることなく消え去るが、XInputはその後もPCゲームファンがいまなおXbox 360コントローラーを使い続けることに繋がった。
とはいえ、Steamブログの記事でも驚きとともに伝えられているが、PlayStation系コントローラー(DUALSHOCK)の普及率も高い数値を誇っており、そのシェアは27%にのぼる。XInputではなくDirectInputを採用しているPS3とPS4のコントローラーは、これまで単純にUSB経由で接続してもPC上で使えるものではなかった。
PS4に標準対応しているSteam Inputの存在や、PCとコンソールのマルチプラットフォーム化の増加によって、DUALSOCKをPC上で利用するシーンも増えてきたのかもしれない。
ほかにも3年ではなく先月のみの統計を確認すると、Xbox Oneコントローラーが20%と上位だが、Nintendo Switch Proコントローラーの利用率も高いことが分かる。
Nintendo Switch Proコントローラーは、はじめからパソコンにコントローラーとして認識されることが判明して以来、PCゲーム用コントローラーとしての人気も高まっていた。使用者数は45万人と他のコンソールコントローラーと比べれば少なめだが、先月だけに限ればXbox 360コントローラーの利用率とほぼ同じだ。今年5月にはNintendo Switch ProコントローラーがSteam Inputに全面的に対応し、今後も利用者はさらに増えることが予想される。
また、Valve自身がリリースしているSteam コントローラーは柔軟な設定が可能なことから、コントローラーをサポートしていないゲームへの利用率が特に高いという。デュアルトラックパッドによりマウス&キーボードでの操作をコントローラーでも実現するというデバイス自体の柔軟性の高さが、利用されるゲームの総数の差に如実に現れていると言える。
なおコンソールの方へと目を向けると、公式にはサポートされてこなかったマウス&キーボードの対応が進みつつあり、先日にはマイクロソフトがXbox Oneにおいて正式にマウス&キーボードを採用するデベロッパーをサポートすることを発表した。SteamはBig Pictureでよりコンソールライクなインターフェースを目指しているが、Xbox Oneは逆にPCとの境目をなくそうとしている。入力機器の差によるプラットフォーム間の違いも、もう少しすればほとんど無くなるのかもしれない。
文/古嶋誉幸