カリフォルニア州のバイロン・ベサニー灌漑地区1の理事を決める選挙で、勝者をテーブルトークRPG『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ』の20面ダイスで決定する珍事が起きたことが発表された。これは理事会の一席をめぐり実施された候補者ふたりの選挙で、得票数がまったく同じになったため起きたのだという。
1850年に設立されたカリフォルニア州コントラコスタ郡の170年の歴史の中でも、選挙で得票数が同じになったことはほとんど無い。そして、おそらくアメリカ合衆国の歴史を紐解いたとしても、選挙の勝者を20面ダイスの出目で競ったというのははじめての試みだろう。
その模様はFacebookのライブストリーミング動画のほか、KPIX 5によるインタビュー動画もアップロードされている。
この勝負に臨んだのは、7年間現職の理事を務めているラリー・イーノス・ジュニア氏と、対立候補のミリアン・ペトロビッチ氏だ。この地区の有権者は147名。票を投じたのはその中の110名。そして、両候補はそれぞれ51票ずつを得ている。
勝負は3回のダイスロールの合計値で競われ、先攻は挑戦者であるペトロビッチ氏。勝負とはいうが、終始和やかな雰囲気の中進んでいった。2回ずつ行われたダイスロールでは、32対31でペトロビッチ氏がわずかにリード。両者の差はたったの1ポイントという接戦を繰り広げた。
しかし、最後のダイスロールでイーノス氏が最高値となる20を出して得票数と同じ51ポイントを獲得。ここ一番で勝負強さを発揮し、45対51で見事な逆転劇を演じた。イーノス氏は、さらに4年間当地区の理事の椅子に座ることとなる。
今回のダイスロールによる勝者の決定はコミカルに見えるが、実はれっきとした法律に則って行われている。「選挙において複数の候補が同率首位の得票を得た場合、直ちにその候補を招集、その場で抽選によって勝者を決定しなければならない」(要約)というカリフォルニア州選挙法第15651条の決定によって行われたものだ。
抽選方法に規定はなく、コイントスやカードによるくじ引きより、この選挙を公平に終わらせられると考え、このダイスロールを採用したという。選挙補佐官のスコット・コーノ―パーセック氏は、このダイスも職員の誰かの私物だと答えている。また、他の選挙でも得票数が同じになる事態は起きているとし、今後この選挙区でも起こり得るだろうと話している。
なお、コントラコスタ郡とアラメダ郡にまたがるバイロン・ベサニー灌漑地区3の理事は対立候補が居ないため、ティム・マジョ―リー氏が続投となったという。
このような事態は日本でも起きており、まれにそういったニュースが報道されることがある。特に有権者が少ない地区では起こりやすい問題であり、決定方法は各自治体に任されているというが、棒くじによって勝者を決めることが多いという。
このニュースが広く知られれば、くじに比べれば運だけでなくテクニックも必要となる20面ダイスロールは、日本でも一般的な選挙のタイブレークとして使われることになるかもしれない。
文/古嶋誉幸