ウォーキングシミュレーターを世に広めた歴史的作品『Dear Esther』がiOSでもリリース決定。戦闘も選択肢もなくただ島を歩き回るだけのゲームは多くの作品に影響を与えた

 The Chinese Roomは、一人称視点アドベンチャーゲーム『Dear Esther』のiOS版を2019年内に発売すると発表した。いわゆる“ウォーキングシミュレーター”と呼ばれるジャンルを世に広めた歴史的作品が、ついにモバイルでも楽しめるようになる。

 『Dear Esther』は、当初は『Half Life 2』のMod作品として2008年に配信された作品で、2012年にPC向けの製品版、そして2016年にはコンソール版が発売された。一切の説明がないままに、とある不思議な孤島でゲームはスタートする。プレイヤーはエスターという女性への手紙を読み上げる男性の声をときおり聞きながら、宛もなく島を探索し続けることになる。

 本作が特徴的なのは、ただ孤島を歩くということにフォーカスしている点だ。作中には解くべき謎も倒すべき敵もいない。ゲームをクリアしても島やプレイヤー自身の正体も明確には明かされない。プレイヤーは、島で見て聞こえるものに感じ入り、ときおり聞こえてくる男の独白を紡ぎ合わせて、自分なりの答えを求めることしかできない。

 もともとイギリスのポーツマス大学を拠点にしたThe Chinese Roomが、芸術・人文科学研究会議の支援を受けて開発したという、めずらしい経緯を持つ本作。そんな実験的な作品は、はたしてゲームであるのかどうかという議論を巻き起こし、当時は“ただ歩くだけのシミュレーター”として「ウォーキングシミュレーター」とも批判された。

 だが、ただ歩き回りストーリーを追うだけの「ウォーキングシミュレーター」は、美しいビジュアルおよびサウンドと意味深な作品構造を持つ『Dear Esther』での議論を経て、その後ジャンルとして一定の確立を得ることになる。2003年には『Unreal Tournament 2003』用のModとしてメアリー・フラナガン氏が開発した『[domestic]』という似た作品が発売されているが、後にリリースされる『Gone Home』『Firewatch』『The Stanley Parable』といった作品は、『Dear Esther』に連なる作品であると言えるだろう。

(画像はSteam『Dear Esther』より)
(画像はSteam『Dear Esther』より)
(画像はSteam『Dear Esther』より)
(画像はSteam『Dear Esther』より)

 なお今回配信されるiOS版で大きなネックとなるのは、おそらく日本語版はリリースされないだろうという点だ。PC版ではPLAYISMより日本語版がリリースされていたが、現在は購入できず、コンソール版となる『Dear Esther: Landmark Edition』も日本では未発売だ。

 しかし、Mod版のリリースから10年が経ったいま、本作をプレイしたことがないという方も少なくないだろう。言語の壁はけっして低くはないが、『Dear Esther』のiOS版リリースを機に、ぜひ一度プレイしてみてほしい。

ライター/古嶋 誉幸

ライター
一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
Twitter: @pornski_eros
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