ゲームを実時間でどれだけ早くクリアできるかを競うリアルタイムアタック(RTA)において、世界でもっとも早くクリアできるゲームは何だろうか?
その答えのひとつとしてコミュニティ内で挙げられるのが、Windows用ゲーム『Clue: Murder at Boddy Mansion』である。今から70年前にイギリスで考案されたボードゲーム『Cluedo』 (Clue)を元にした本作は、豪邸で起きた殺人事件の犯人を推理して捕まえるゲームとなっている。
本作は運さえ良ければ非常に短時間でクリアできるゲームとして英語圏のコアプレイヤーの間で有名だ。本作のRTAの世界記録はわずか0.583秒、タイムリーなことに2019年11月30日に更新されたばかりである。本記事の文章をここまで読み終えるまでに、すでに数十回はクリアできている計算となるくらいの凄まじいタイムだ。
※0.583秒でクリアされた際の映像。まばたき禁止。
どうしてこれほどまでに本作のクリア時間は短いのか? そもそも『Clue: Murder at Boddy Mansion』は、ランダムで設定された殺人事件の犯人を容疑者の中から見つけ出して捕まえることで、ゲームクリアとなる。犯人を捕まえるにはメニューを開いて手錠のマークをした告訴ボタンを押し、ゲーム中で見つけた手がかりを元に“容疑者”、“凶器”、“犯行が行われた部屋”を提示する必要がある。
本作の本来の遊び方は、ターン毎に限られた時間内で豪邸を巡り、推理を重ねて他のプレイヤーより早く犯人を特定するといものだ。犯人を告訴するための告訴ボタンは最後に押すものとなっており、告訴の中でひとつでも間違いがあったらゲームオーバーとなる。
そして、この告訴ボタンは、実は何の証拠も見つけていないゲーム開始直後からでも選択できる。そのためRTAにおいては、何も証拠を得ていない状態で“容疑者”、“凶器”、“犯行が行われた部屋”を提示し、それが運良くすべて当たっていることを祈る究極の運ゲーとなっている。
RTAにおいて計測区間をどこからどこまでにするかというのはゲームによってさまざまだが、『Clue: Murder at Boddy Mansion』においては、プレイヤーごとの配役を決めて実際のゲームが始まったときに計測を開始、犯人が確定してゲームの動きが止まったときに計測を終了する形式を取っている。
世界記録達成の動画時間は31秒となっているため早くクリアできているように見えないかもしれないが、この動画内ではほとんどの時間がゲームの前の準備とエンディングで占められており、実際のゲームの計測区間はこの動画内でわずか0.583秒となっている。
ここまで読んで興味が湧いた方に本作で最速クリアを目指すための攻略法を伝授したいが、RTAを含むスピードランの記録集積サイト「speedrun.com」に掲載されている本作の攻略法は、「ゲームが始まったらできるだけ早く告訴ボタンを押してメニューから3回クリックし、その選択が的中するのを祈れ」と書いてあるくらいでまるで参考にならない。
容疑者と凶器と犯行が行われた部屋の組み合わせはゲームが始まるたびに変わるため、最速クリアを目指すには相当な試行を重ねる必要がある。その組み合わせにも法則や乱数制御と言ったテクニックは見つかっておらず、過去の挑戦者にはクリアまで10時間近くかかったとコメントを寄せている者もいる。
本記事を最後まで読み終える間に既に数百回はクリアできている計算となるくらいすぐ終わることもある本作だが、そのコンマ数秒のクリアを目指すために掛かる時間は本記事を数百回繰り返し読むくらいの時間がかかるかもしれない。
ライター/もか