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7歳で亡くなった娘をバーチャル・リアリティで再現、母親がVRヘッドマウントディスプレイを装着して再開をはたす。韓国で放送されたドキュメンタリー番組が話題に

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 韓国の放送局MBCが2月6日、娘を亡くした母親がバーチャル・リアリティの中で愛娘と出会うまでを描いたドキュメンタリー「I MET YOU」を放送した。Aju Business Dailyなどが報じた。母チャン・チソンさんが4年前に7歳で亡くなったナヨンさんと出会うシーンを中心に番組を再編集した10分間の動画が、YouTubeでも公開されている。

 動画では、ヘッドマウントディスプレイ型のVR機器を装着したチソンさんが、映像と音声で形作られた娘にふたたび出会うシーンが映しだされている。娘との再開をはたしたチソンさんは涙を流し、彼女の名前を呼び続け、手を合わせる素振りを見せた。

 映像の舞台は公園やナヨンさんが現在住んでいる場所を映像として再現したもので、後半ではバースデーケーキを囲んで誕生日を祝うシーンも確認できる。ケーキには7本のろうそくが立てられていることがわかる。

 VRなどのニュースを報じるRoad to VRによれば、ナヨンさんは7歳のときに血球貪食性リンパ組織球症 (HLH)を患い、それからわずか1ヶ月で息を引き取ったという。チソンさんは娘のことを永遠に忘れないため、彼女の誕生日を入れ墨にして遺灰入りのネックレスを身につけている。

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(画像はYouTube 「[VR휴먼다큐멘터리 – 너를 만났다] 세상 떠난 딸과 VR로 재회한 모녀 | “엄마 안 울게. 그리워하지 않고 더 사랑할게”」よりキャプチャ)

 VR内での再開が終えたあと、チソンさんは「それはきっと楽園でした。ナヨンに会えて、笑いながら私に呼びかけてくれました。短い時間でしたが、本当に幸せな時間でした。私がいつも願っていた夢が見られたのだと思います」と感想を語っている。

 このVR体験の開発にかかった時間は8ヶ月。その間にナヨンさんの体や声をVR内に再現し、モーションを実装した。最初にふたりが出会った場所は、実際の思い出の公園が元となっているという。

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(画像はYoutube「[VR휴먼다큐멘터리 – 너를 만났다] 세상 떠난 딸과 VR로 재회한 모녀 | “엄마 안 울게. 그리워하지 않고 더 사랑할게”」よりキャプチャ)

 新しい技術による新しい悲しみとの向き合い方を伝えるこのニュースは、さまざまなメディアで報じられており、YouTubeやソーシャルメディアでも多数のコメントが寄せられている。

 前述したRoad to VRのスコット・ヘイデン記者は、「テレビ視聴者のために母親と亡くなった子供を再会させるという明らかな搾取的な要因を除けば」と前置きしながら、悲劇を克服するのに役立つ有効なものかもしれないと理解を示している。

 科学と技術のニュースを報じるFuturismのクリスティン・ハウザー記者は、この技術のポジティブな面を見れば、21世紀のフォトアルバムをめくるようなものだと表現している。
 しかし、この技術を無制限に人々に与えるのではなく、心理学者の診察によって必要だと判断された人にのみ与えるような規制も必要だという考えを示している。すでに個人をバーチャルとして再現する企業の取り組みを紹介し、この難しい問題にできるだけ早く答えを出さなければならないとまとめている。

 PC Gamerのジェームズ・ダベンポート記者は、Futurismの記事を引用しつつ、故人を技術によって再現することを不安に感じる人もいるだろうが、これをディストピア的とは言えないだろうと記した。故人が生前の姿で動いて話す姿は、故人が記憶の中から少しずつ薄れていくことよりもよほどいいだろう、一方で「健康的だろうか?それは私にはわからない」と、記事の最後に記者自身の考えを示している。

 Aju Business Dailyは、チソンさんがドキュメンタリーの放映後に「私のように子供を亡くした人、親や兄弟を亡くした人のため」にブログを開設したと伝えている。20万人以上の人々が訪れたが、残念ながら現在は閉鎖されているという。同記事ではブログに掲載されていた以下の一文が紹介されている。

“3年経ったあとにこうして娘に再び会え、私は娘の死を悲しみ心を苦しませるより、もっと愛すべきだと自信が持てるようになりました。放送を見た人々がナヨンのことを覚えていてくれることを願っています。”

ライター/古嶋誉幸

ライター
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一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
Twitter: @pornski_eros

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