AIR AGENCYは、アニメ『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし役などで知られる声優の藤原啓治さんが、癌のため闘病中のところ4月12日に死去したと発表した。55歳だった。
藤原啓治さんのご逝去に際しhttps://t.co/0SX0CPhjlC
— クレヨンしんちゃん【公式】 (@crayon_official) April 16, 2020
藤原啓治さんはシリアスからコミカルな役どころまで幅広くこなす声優と知られ、『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし役として知られるほか、アニメでは『ケロロ軍曹』のナレーション、ポール森山、『鋼の錬金術師』のマース・ヒューズ、『交響詩篇エウレカセブン』のホランド・ノヴァクなどが知られている。
海外映画の吹き替えでは、『ダークナイト』ではバットマンの好敵手ジョーカーを演じており、ほかにも『アイアンマン』、『アベンジャーズ』シリーズに出演している俳優のロバート・ダウニー・Jr演じるトニー・スタークの吹き替えを担当していることでも有名だ。
アイアンマン/トニー・スタークの日本語版声優として活躍された藤原啓治さんが逝去されました。
— マーベル・スタジオ[公式] (@MarvelStudios_J) April 16, 2020
世界中で愛される人間味豊かなヒーローに、日本語で生命を吹き込んでくださった藤原さん。心からの感謝と哀悼の意を表します。
藤原さんは、ビデオゲームでも主役、主役級として数多くの作品で活躍している。特に狂気的な悪役を演じることに定評があり、『戦国BASARA』の松永久秀、『ファークライ4』のパガン・ミン、『バットマン アーカム・ナイト』のジョーカー、『Call of Duty: Modern Warfare 3』のウラジミール・マカロフなど、飄々としてつかみどころがない不気味なキャラクターを演じるのが上手く、洋ゲーファンにも馴染み深い人物だった。
またRPGでは、『グランブルーファンタジー』の老兵オイゲン、『キングダム ハーツ』シリーズで「記憶したか?」が口癖のアクセル、さらに『ファイナルファンタジーXV』のアーデン・イズニア。アーデンは、のちのち物語上で重要な役であることが浮かび上がる役で、大きな存在感を発揮した。最近では『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』でミュウツー、『FINAL FANTASY VII REMAKE』のタークスのレノを演じており、アクセル、レノ、アーデンと赤毛のキャラクターが印象的だ。
藤原啓治様のご逝去を悼み、心よりお悔やみ申し上げます。
— アクアプラス (@AQUAPLUS_JP) April 16, 2020
突然の訃報にただただ驚いております。
『うたわれるもの』では藤原様ならではのキャラクターとして主人公ハクに生命を吹き込んでいただきました。
藤原様に感謝をするとともに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。https://t.co/SeWTx1IA21
主人公でヒーロー的な役どころだと『うたわれるもの 偽りの仮面』、『うたわれるもの 二人の白皇』では主人公のハクを全編フルボイスの大ボリュームで演じきったのは、記憶に新しい。同作のアニメでもハクを続投しており、人を引き付けてつつ、過酷な運命に立ち向かうハクの姿は多くのプレイヤーの心を打った。
洋ゲーの主人公では『BioShock Infinite』の主人公のブッカー・デュイットだろう。落ちぶれたのんだくれの探偵だが、少女エリザベスと出会うことによって、徐々に心を開いていった。しかし自身の過去を知るにつれ衝撃的な事実が明らかになるなど、悩み多き複雑なキャラクターを演じきっていた。
藤原さんは、2018年8月に病気療養のために当面のあいだ、休養することを発表しており、野原ひろし役などは休養中の作品は代役や後任によって代わりを務めていた。その後、2017年から体調を見つつ徐々に仕事に復帰しており、復帰後の初めての仕事は『スパイダーマン:ホームカミング』のトニー・スタークだった。
間近では、2019年10月に放映開始されたアニメ『GRANBLUE FANTASY The Animation』のシーズン2のオイゲン役で復帰。さらに藤原啓治さんがプロデュースするドラマCD「文豪シリーズ」を4月24日に発売し、同日にはその発売記念イベントに出演することを予定していたが、突然の帰らぬ人となった。なお、藤原さんは文豪シリーズでは夏目漱石を演じている。
段階的に復帰から回復に向かっていたのではないかと思われていただけに、今回の突然の訃報は業界人、ファンにとって大きな衝撃で、SNSなどでは、藤原さんを惜しむ声が立たない。
アニメ、映画、ゲームなど多方面で活躍する藤原啓治さんは、日本を代表する声優といえ、まさに才能溢れたカリスマ的な人物だった。さまざまな作品やキャラクターで大きな存在感と功績を発揮した藤原さんが亡くなったことの損失は計り知れず、しばらくは余波が続くだろう。
なお、通夜ならびに告別式は、親族のみで執り行われ、ご香典ご供花の儀は「ご辞退申し上げる」としている。
ライター/福山幸司