日本ではリアル・タイム・アタック(RTA)、海外ではスピードランという名前で、世界中でゲームの最速クリアを目指すタイムアタックが人気となっている。日夜プレイヤーたちはゲームの穴を探し、どこかに活用できるバグがないか探し続けている。しかし、開発者たちが本来のゲーム攻略とはまったく異なるルートの映像を見たとき、はたしてどんなリアクションをするだろうか。
海外メディアIGNは、『DOOM Eternal』のスピードランを開発者が見る動画「Doom Eternal Developers React to 27 Minute Speedrun」を公開した。動画は収録当時の世界記録であるxamide氏の27分のものを使用している。なお、現在はすでに記録が更新され、同じくxamide氏の24分42秒がワールドレコードとして登録されている。
参加したのは同作を開発したid Softwareのエグゼクティブプロデューサーマーティ・ストラットン氏、ゲームディレクターのヒューゴ・マーティン氏、レベルデザインディレクターのジェリー・キーハン氏、そしてリードゲームプログラマーのエヴァン・ユーバンクス氏の4名だ。
タイムアタック開始から40秒ほどで早くも参加者の理解を超える大ジャンプを見せ、一同が絶句している。本作の開発に深く関わった彼らですら「なにが起きているのかわからない」と異口同音に語った。その後も、同様の大跳躍や壁抜けのオンパレードとなり、その度に開発者たちは笑いながらバグについて語っている。
3Dゲームのタイムアタックで数多く利用されるのは、コリジョン(衝突判定)のバグを利用した壁抜けだ。このバグは多くのゲームに存在するもので、『DOOM Eternal』でも完全に修正することは不可能だろうと、開発者たちは話している。
一方で開発者たちは、スカイボックス(ゲームマップの背景)にこのバグを利用したときにしか見られない秘密のメッセージを仕込んだり、意図しないこういった場所を通ったときのみ再生される絶対にスキップできないカットシーンを追加しようなど、大笑いしながら話している。
id Softwareの次回作にはそういった、ある種のバグ利用者への意趣返しのような楽しいイースターエッグが見られるかもしれない。
壁抜けにも利用され、『DOOM Eternal』のスピードランで高頻度で登場する、ウエポンホイールを使った大ジャンプは、高いフレームレートを要求する。これを聞いた開発陣は、グリッチの存在より、むしろゲームが高いフレームレートを出せることに満足していたようだ。
タイムアタックでは終始見たことがないようなトリックを利用したとんでもないショートカットが披露され、ほとんどの場面で開発陣は大笑いしている。せっかく作った美しい場面がスキップされることにショックを受けたり、逆に通常では良く見えない部分の作り込みを見て満足したり、バグについての所感を述べたりとゲームの開発者らしい反応がおもしろい。
また、ドゥームの要塞にある巨大なアーマーについてチラリと語るような、実際のオーディオコメンタリーのようなシーンも見られた。
なお戦闘シーンでは単純にその上手さに驚嘆しており、戦闘の難しいところをスキップしているのではなく、どのシーンで普通に闘っても強いプレイヤーが必要最低限の戦闘でゲームをクリアしていることを噛み締めていた。
スピードランとそれに利用されるテクニックを見るのは、一般の視聴者でもおもしろい物だが、開発者が見るとさらに興味深く、少し異なる視点からの所感が語られておもしろい。この動画を見れば『DOOM Eternal』の新しい側面が見えてくるだろう。
ライター/古嶋 誉幸