ソフトウェア開発のプラットフォーム「GitHub」にて、最初期のインタラクティブフィクションのゲーム『Zork』の1977年版ソースコードが公開された。
The 1977 source code for ZORK has been recovered from MIT tapes and released on github. I cloned the repository at https://t.co/wcmA27eJvd and the official MIT github set is at https://t.co/JnZsyYDfff pic.twitter.com/E9yEuNuKIC
— Jason Scott (@textfiles) May 7, 2020
『Zork』は、いわゆるコマンドを入力する形式のテキストアドベンチャーゲーム。キーボードで「ランプ とる」、「きた いく」、「みず くむ」など、基本的にテキストを入力してゲームを進めていく。ゲームの目的は、地下迷宮に広がっている数々の宝物を地上に持ち帰り、所定の場所に集めることである。挿絵はなく、テキストだけを読みながら進めて行く。
最初期のアドベンチャーゲームは基本的に上記のような仕組みになっているが、当時のビデオゲームはアクションやシミュレーションのジャンルが全盛期だっただけに、謎を解きながらテキストで情景豊かに描写される世界を自由に探索するテキストアドベンチャーは、まったく新しいジャンルのゲームとして衝撃を与えた。
開発したのはティム・アンダーソンやマーク・ブランクなどのメンバーを中心としたマサチューセッツ工科大学の学生グループだ。1975年末から1976年初頭に発表されたと推定されるアドベンチャーゲームの始祖『Colossal Cave Adventure』に衝撃を受けた彼らは、自分たちでも似たようなゲームを作ることを決意し、1977年に一通り動作させるまでにいたり、1979年に完成させる。
なお開発途中のバージョンは『Dungeon』として流通しており、初期の『Zork』は『Dungeon』としても知られている。その後、拡張して商用化したものを1980年に『Zork』として発売した。『Dungeon』ならびに『Zork』の基本的な骨格は『Colossal Cave Adventure』をかなりの部分で踏襲しているが、『Zork』は「ランプ とる」などの構文を解析するのが優秀だったのに加えて、ボリュームや謎解きの歯応えが好評で、コモドール64などさまざまなプラットフォームに移植され、長らく愛されたタイトルとなった。
なお、日本でも1980年代初頭にはIT関係者やPCゲーマーを中心に、雑誌などの紹介で『Zork』は口コミ的に知られていたタイトルであった。
I've uploaded the entirety of source code of all Infocom text adventures/interactive fiction to Github. https://t.co/p0K8MRKoTN If you don't understand ZIL, and you probably don't, read this instruction manual. https://t.co/H8nl1fxWcv
— Jason Scott (@textfiles) April 16, 2019
今回、ソースコードが公開されたのは1977年まで開発され一時的に完成した『Zork』の大元となるソースコードだが、昨年には1980年以降の『Zork』シリーズのソースコードも公開されている。
このソースコードは、マサチューセッツ工科大学が1973年から1990年代のAI研究などのファイルを含む「Tapes of Tech Squareコレクション」として公開していたファイル群のなかから抽出された。今後、ゲーム歴史家など研究者の一助となるだろう。
なお、日本語版『Zork』は、1991年に『ゾークI』としてPC98で発売しているが、こちらは現在では入手困難である。
『ZORK I』はグラフィックとシステムを刷新した実質的なリメイク作品で、音楽家の古代祐三氏などが携わった日本人による独自開発タイトルである。1980年代初頭には日本人も憧れた『Zork』、気になった人はプレイしてみてはいかがだろうか。
ライター/福山幸司