6月に正式サービスが始まったRiot Gamesの5対5FPS『VALORANT』にて、ベータ版でチートを使ったユーザーの一部で「正式サービスが始まってもBANの状態が継続されている」ことが報告されている。彼らの嘆きの声を海外メディアKotakuが報じている。
— Anti-Cheat Police Department 🕵️ (@AntiCheatPD) June 2, 2020
この騒動について、Riotのアンチチートシステムを開発するマット・パオレッティ氏は、クローズドベータテストでチートを検出されてBANされたアカウントはハードウェアID(HWID)で管理されているため、そのアカウントは正式サービス後もBANされたままだとしている。“大部分”のチーターは正式サービスでBANが解除されるが、アカウントは作り直さなければならない。
一方で“大部分”の中には含まれないチーターも存在し、上記のツイート画像のように正式サービス後もHWIDが検知され、ものの数試合でBANされてしまうユーザーもいるようだ。パオレッティ氏によれば、数回試した程度であれば許されるが、継続的なチート利用者はそのままBANの状態が継続されるという。
Sorry, no second chance for cheaters. pic.twitter.com/iNTy1cVSzA
— nicolo (@niiicolo) June 2, 2020
クローズドベータ期間中、Riotは『VALORANT』からまず約9000、次いで1600、合計で1万アカウントのチーターを排除したことを伝えている。Riot GamesのCEOであるニコロ・ローレント氏は、軽い気持ちでチートを使ってしまったと反省し、BAN解除を嘆願するメッセージを送ってきたユーザーに対して「チーターに二度目のチャンスはない」と突き放したツイートの投稿も話題となった。
前述の通り、どうやら二度目のチャンスを与えることは許容したようだが、全てのユーザーが許されたわけではない。HWIDによるBANの実施が広く周知されれば、軽い気持ちでチートを使うような例は減ることが期待できる。
チートがゲームを破壊することを理解し、誠実に遊ぶ多くのプレイヤーが笑顔になれそうなニュースだが、アンチチートソフトウェアはそういったプレイヤーであっても、必ずしも歓迎されないことも確かだ。
『VALORANT』に同梱されているセキュリティソフト「Vanguard」も、導入当初は「裏でこそこそと動いてユーザーの情報を収集しているのではないか」とする非難の対象となった。Riot Gamesが中国の巨大企業であるTencentとつながりが深いことから、陰謀論を唱える声はさらに大きくなっていった。
Riotはこの声に応える形で、Vanguardアンチチートをタスクトレイに常に表示し、任意に動作の停止やアンインストールができるようにすることを発表。ただし、Vanguardアンチチートがアンインストールまたは停止中はゲームができないようになっている。
アンチチートソフトウェアによるゲームの保護と、それに対する反発は『DOOM Eternal』へ「Denuvo Anti-Cheat」が導入された際にも巻き起こった。パフォーマンスの低下やゲームの動作が不安定になるといった報告もあり、レビュー爆撃に発展。わずか数日で『DOOM Eternal』はDenuvo Anti-Cheatを削除すると発表した。
ほとんどのプレイヤーはチートに頼らず楽しく遊んでおり、痛くない腹を探るような行為への反発は十分に理解できるものだ。マルチプレイゲーム開発でもチート対策のリソースは小さくないため、チーターがいなければそれらが全て本来のゲーム開発に注がれていたかもしれない。
Riotに限らずマルチプレイゲームデベロッパーはチーターの継続的な排除を行い、それを周知することで、プレイヤーとの信頼関係を構築していくことが急務となるだろう。
ライター/古嶋誉幸