フィンランド出身で東京に在住しているゲーム開発者のアモス・ソリ氏は、自身が制作するコメディーサウナシミュレーション・ミステリーホラーゲーム『Sauna 2000』のKickstarterプロジェクトを開始した。目標は1万ドル(約107万円)。
15ドル(約1600円)以上の支援で『Sauna 2000』本編が報酬となるほか、最も高額な500ドル(約53400円)の支援では「自分がゲームに登場する権利」など、複数のランクで異なる報酬が用意されている。
『Sauna 2000』は、本場であるフィンランドのサウナ文化を一人称視点で楽しめるホラーゲームである。舞台は2000年、夏のフィンランドだ。主人公はサウナで体を温め、キンキンに冷えたビールを楽しむためにコテージへと向かっている。しかし、途中で事故を起こしてしまい、ビールは台無しに。さらに悪いことに、コテージは泥棒に入られ、家の物を洗いざらい盗まれてしまっていた。
プレイヤーは近隣住人の助けを借り、サウナのために薪を割ったり、主にビールとソーセージを売るという食料販売車で買い物をしたりと、フィンランド式のサマーバケーションを楽しむことができる。
一部分だけを見れば平和に見える場所だが、辺り一帯に広がる森のなかには、なにか別の気配がある。住人たちは一様に口をつぐむが、耳をすませば悪魔のささやき声が聞こえてくるはずだ。身も心も温めるサウナを出た後は、ビールで体を冷やすとともに、恐怖で肝も冷やすことになる。
ソリ氏が『Sauna 2000』を思いついたのは、フィンランドのデベロッパーであるRemedy Entertainmentの作品『Control』を、東京のアパートにてプレイしている最中だったそうだ。
大変寒いフィンランドだが、寒い国だけに建物の断熱はしっかりとしており、寒く暗い朝でも下着でコーヒーを飲むことができるのだという。それに比べると東京のアパートは寒い。
氏は同じフィンランド人が作った『Control』をプレイしながら故郷を思い出すが、作中にサウナが無いことに気がついてしまう。ゲームをクリアした頃、レトロなグラフィックのゲームを作る「HauntedPS1」のコミュニティと出会い、そこで心にぽっかりと空いた“サウナの穴”を埋めるための天啓を得る。
そんな開発経緯から、本作はフィンランド人から見たフィンランドの文化が描かれる点が大きな特徴だ。Kickstarterプロジェクトの概要には「フィンランドに行かずにフィンランド式サウナを試す、生涯に一度のチャンスです」と書かれており、前述の食料販売車や薪を自分で割ってまで夏にサウナを楽しむ文化は、フィンランドになじみがなければ初めて知ることかもしれない。
ソリ氏が製品版を制作しようと思ったのは、複数のクリエイターがPlayStation1風のグラフィックで作ったホラーゲームを集めたデモ作品集『Haunted PS1 Demo Disc 2020』に収録されている『Sauna 2000』の体験版がきっかけだ。
『Sauna 2000』の体験版は高い評価を得て、ソリ氏自身も「サウナシミュレーション」という独自のジャンルが生み出すゲーム世界の虜になった。ただし、製品版としてリリースするにあたっては、ゼロから作り直すことが最善と判断したという。スクリプトで制御され台本通りに進む体験版とは違い、製品版はさまざまな登場人物が追加され、より柔軟に進行するサンドボックス形式のゲームプレイになっているという。
とはいえ、ゲームの雰囲気を知るには『Sauna 2000』の体験版を遊ぶのがいいだろう。体験版を遊んで気に入ればKickstarterプロジェクトを支援して、製品版『Sauna 2000』の開発を応援してみて欲しい。
ライター/古嶋誉幸