『スカルガールズ』や『インディヴィジブル 闇を祓う魂たち』を開発したアメリカのスタジオ「Lab Zero Games」。Personaの愛称で知られる元アニメーターのジョナサン・キム氏が、同社のすべてのスタッフが解雇されたとの情報をTwitter上で伝えた。Lab Zero Gamesの公式アカウントや代表者からの発表は記事執筆時点でないものの、その動向に注目が集まっている。
FYI Mariel has to do this because last week Mike laid off everyone who didn't quit LZ, but hasn't agreed to a severance for them yet. https://t.co/jmnZYlkYPU
— Persona 😎 (@personasama) September 2, 2020
8月に入ってからLab Zero Gamesでは、前述のキム氏だけでなくスタジオの顔ともいえるイラストレーターのKinukoことマリエル・カートライト氏など、多数のスタッフが自主退職したことを明かしていた。その動きの中で、スタジオの所有者でリードデザイナーのMike Zことマイク・ザイモン氏のほかのスタッフへの有害な行動を取っているとの報告も浮上している。
退職したEU03と名乗るLab Zeroの元スタッフは、ザイモン氏が職場を「誰にとっても安全ではない場所」にし、くわえて氏がスタジオを離れることに合意せず、さらに強権を振るうようになったため見切りをつけたとTwitter上で報告した。
EU03氏は辞職する前、ほかの従業員もザイモン氏がスタジオの所有者としての立場を利用した虐待などを行っていたことを知り、役員会とともにザイモン氏をスタジオから切り離そうとした。しかし、ザイモン氏は自身の行動からは到底得られないような見返りを交換条件として求め、結局合意には至らなかった。
さらに、ザイモン氏は一変して立場を活かして役員会を全員解雇、Lab Zeroの全権を握ったという。もはやどうにもならないと悟ったEU03氏は、退職の道を選んだ。
An official statement from Hidden Variable and Autumn regarding Lab Zero Games and the future of Skullgirls. pic.twitter.com/4qeoN9fgRj
— Skullgirls Mobile (@sgmobile) August 25, 2020
この事態を受け、『スカルガールズ』の権利を持つAutumn Gamesと『スカルガールズモバイル』を製作するHidden Variableは、連名で退職したスタッフを全面的に支援すること、ザイモン氏ならびにLab Zeroとの関係を打ち切ることを発表。『スカルガールズモバイル』と『スカルガールズ 2ndアンコール』で今後登場する新キャラ「アニー」を含め、Lab Zeroを離れた多くの才能あるスタッフとともに開発を続けていくとしている。
一方で『インディヴィジブル』については今のところ先行き不明だ。パブリッシングは505Gamesが担当しているが、そちらからは公式の発表はない。なお、PC版は8月3日に新しいパッチをリリースしている。
当事者であるLab Zeroは公式Twitterアカウントにて、「マイク・ザイモンに対する申し立ては把握しています。公式発表は近日中に発表します」というツイートを7月に投稿してから音沙汰がなくなっている。
もともとこの問題は、6月に複数のゲームファンらが行ったマイク・ザイモン氏への性的な嫌がらせについての告発に端を発していると考えられる。その告白をしたひとりがBUNNY氏で、さまざまなコミュニティで合計150万ものフォロワーを持つ氏は、『ギルティギア』や『スカルガールズ』といった格闘ゲームから引退することを表明。もっとも大きな理由として、ザイモン氏からのあまりにも侮蔑的なセクハラを挙げていた。
海外メディアKotakuは、『スカルガールズ』トーナメントでのザイモン氏の人種差別的なジョークをコミュニティから非難されたことをあわせて報道。格闘ゲームのコミュニティでは、ザイモン氏がこういった人物であることが知れ渡っていたようだ。
Lab Zeroからの公式発表がないままのため、実際にどうなっているかは不明だ。マイク・ザイモン氏のTwitterアカウントも問題が表出した6月から更新されていない。
しかし、ゲームの権利を所有するAutumn Gamesからの公式発表、元開発者や格闘ゲームのコミュニティの人々の発言から、Lab Zeroはもはやゲームを作る能力はない可能性が高い。
公式にやめたスタッフとともに開発を続けることが認められた『スカルガールズ』は一安心といえるが、『インディヴィジブル』の先行きは不透明だ。
ライター/古嶋誉幸