ゲームデベロッパーのCCP Gamesは、宇宙を舞台にしたMMORPG『EVE Online』にて、10月に「FWST-8」で起きた14時間にわたる大戦争「FWST-8艦隊戦争」がギネス記録に認定されたことを発表した。新たに認定された記録は以下のふたつ。
・マルチプレイヤービデオゲームにて最大規模のPvPバトル(8825人)
・マルチプレイヤービデオゲームのPvPバトルにて最大の同時接続数(6557人)
「FWST-8艦隊戦争」は、2014年の「B-R5RBの大虐殺」および2018年の「9-4RP2包囲戦」の規模を超えて、新たなギネス記録となった。
「FWST-8艦隊戦争」はどのようにして起き、そして終結したのかは、『EVE Online』公式ブログにて深く解説されている。もともとは、Goonswarm連邦を中心にした「the Imperium連合」と「Money Badger連合」と呼ばれる勢力による、2016年の戦いに端を発する。
この「Money Badger連合」は、もともとは「Lowsec Voltron」と呼ばれる集団から生まれた組織だった。「Lowsec Voltron」は、とある資源惑星の支配権を巡って争っていた複数の勢力が中心となって結成された勢力だ。個々の勢力は小規模だったが、それまで戦争では負けを知らない超大国である「the Imperium連合」による資源衛星への侵略を機に、対立を乗り越えて同盟を結んだ。
同盟を組み生まれた「Lowsec Voltron」は、力をあわせて帝国連合を支配宙域から追い出すことに成功する。しかし、物語はここで終わらなかった。「the Imperium連合」の支配を嫌うひとりの非常に裕福なプレイヤーが、「Lowsec Voltron」に入団する者を募るために高額の雇用契約を発行。
さらなる勢力拡大を経て、彼らはやがて「Money Badger連合」、あるいは単に「連合」と呼ばれる一大勢力へと成長していく。
「Money Badger連合」の目的は「the Imperium連合」をあらゆる宙域から追い出すことだ。ここから「the Imperium連合」と「Money Badger連合」の戦いは、宇宙を揺るがす大戦争へと発展していく。
『EVE Online』の世界である「ニューエデン」北部の広大な地域を占領していた「the Imperium連合」は、「Money Badger連合」との2016年の戦争を経て領地を失い、宇宙の勢力図から姿を消すことになる。
とはいえ、じつは「the Imperium連合」が勢力図から消えたのはこれが初めてではない。信じられないほどの回復力をもつ彼らは、消えるたびに新たな領地を得て復活してきた歴史をもつ。
今回も例に漏れることなく、今度は「デルベ」と呼ばれる地域を中心にしたニューエデンの西側にある広大な地域を支配する勢力として華々しく復活することとなった。
そして2017年に入り、復活した「the Imperium連合」の支配地域のすぐ近くに、「TEST Alliance Please Ignore」(以下、TEST)と呼ばれる勢力が拠点を移す。
「TEST」はかつてthe Imperium連合と強固な同盟関係にあったが、関係がほころび2013年に「Fountain戦争」と呼ばれる大戦争を勃発、対立が決定的となった。2016年に「TEST」は「Money Badger連合」の一員として、ニューエデン北部から帝国連合を追い出す戦争にも大きく貢献した勢力だ。
「the Imperium連合」と「TEST」の緊張は続いたが、「遊びでの戦いは許されるが相手の領土を奪い取るような戦い」を禁じる不可侵条約を締結。その間に「the Imperium連合」は支配地域のインフラを整え、ニューエデン北部を支配していた2016年のころと同じかそれ以上の勢力へと成長した。
一方の「TEST」は、腰を落ち着けた地域で「ブレイブ・コレクティブ」を含む強力な他勢力と同盟関係を結び、「レガシー連合」と呼ばれる一大勢力を形成する。
それからしばらく、情勢は緊張をはらみながらも落ち着いた状態が続いた。だが、2020年に入りふたたび大きな戦乱が訪れるのではという噂がささやかれ始める。そして「レガシー連合」の指導部が2020年6月、両同盟の不可侵条約を破棄することを発表し、噂は現実のものとなった。
こうして、ようやく今回ギネス記録を取った「FWST-8艦隊戦争」の話に入る。対立勢力は「the Imperium連合」と、「PAPI」と呼ばれる勢力。「PAPI」には「Money Badger連合」から多くの勢力が引き続き参加している。
不可侵条約が破棄され、7月に入るころにニューエデンはふたたび戦火に包まれる。数週間の戦闘のすえ、「PAPI」は「帝国連合」の本拠地であるデルベへと侵攻。
そして10月5日、「PAPI」はこの戦争を勝利で終わらせるため、デルベの海岸堡に「キープスター級」超弩級宇宙城塞の建造を開始した。超大型主力艦を停泊できる難攻不落のキープスター級が完成すれば、the Imperium連合のインフラを攻撃するための最大の前哨基地として機能する。
この海岸堡の支配権を巡る数日間の戦いが、計14時間、約9000人のプレイヤーが参加した「FWST-8艦隊戦争」へと発展してく。
「PAPI」によるキープスター級建造へのチャレンジも2度にわたり、最終的に合計6746隻の戦艦と1隻のキープスター級が破壊され、主力艦362隻が消滅。約1.4兆ISK(日本円で約200万円に相当するゲーム内通貨)に相当する資産が破壊され、その中で7050億ISK(約100万円に相当するゲーム内通貨)の資産が完全に失われることとなった(参考記事)。
この戦争の結末ははたしてどうなったのかは、じつはまだ分からない。戦争はまだ続いているのだ。
「FWST-8艦隊戦争」のあと、なんとかキープスター級を建造に成功した「PAPI」だったが、「the Imperium連合」の猛反撃によりやはりキープスター級は轟沈。10月18日に5度目のキープスター級建造へ挑戦し、ついに「YZ9-F6」にて建造に成功させた。戦争は新たな局面へ入ったと報告されている。
ライター/古嶋誉幸