マイクロソフト元幹部がかつて存在した「任天堂の買収計画」を明らかに。初代Xboxの発売前夜に同社へ向かい一笑に付されるなど、当時の記憶を語る座談会記事が公開される

 アメリカの海外メディアBloombergは、マイクロソフトの最初の家庭用ゲーム機「Xbox」の歴史をさまざまな関係者が語る記事「Xbox: The Oral History of an American Video Game Empire」(Xbox:アメリカのビデオゲーム王国の口述歴史)を公開した。

 記事ではマイクロソフトがXboxの立ち上げを前に任天堂買収に奔走し失敗したエピソードが語られており、Gameinformerなどの海外メディアが取り上げたことで大きな注目を集めている。

(画像はマイクロソフト公式ページより)

 Xboxはマイクロソフトが2001年にリリースした家庭用ゲーム機。日本では2002年に発売となった。ソニーのPlayStation 2がエンターテイメント用途としてのパソコンの地位を脅かす存在になることを危惧したマイクロソフトが、逆にリビングへの進出を狙ったハードウェアだ。

 マイクロソフトは、PS2発売とほぼ同時の2000年3月にプロトタイプ版である「X-Box」を日本でお披露目。有名な銀色のX型の筐体が話題となった(参考リンク:Game Watch)。海外でも2000年3月のゲーム開発者会議(GDC)にて、ハードウェア構成を発表し開発者向けのデモンストレーションを披露した。
 当時のゲーム機としてはパソコンにかなり近い構成になっており、専用にカスタムしたWindowsを搭載。ハードディスクドライブを搭載した初めてのゲーム機としても知られている。

 今回の座談会記事でマイクロソフトでディレクターオブサードパーティリレーションズを務めていたケヴィン・バックス氏は、Xbox発売の前夜、マイクロソフトの元最高経営責任者スティーブ・バルマー氏の指示で任天堂を訪れていたことを述懐している。
 マイクロソフトからの買収の打診を、任天堂は一笑に付したという。「誰かに1時間笑われ続けることを想像してください。そういう会議でした」と、なかなか苦い思い出だったことを氏は示唆している。

 しかし、それでもマイクロソフトは諦めなかった。2000年1月、今度は任天堂をマイクロソフトに招き、Xboxのすべての技術仕様を提供して任天堂との合弁事業を提案した。このときの売り文句は「『スーパーマリオ』のように君たちはゲーム部分ではずっと優れている。ハードは我々に任せてくれないか?」というものだったという。
 当時の任天堂の最新ハードはNINTENDO64。バックス氏は、PlayStationと比較しても彼らのハードウェアは酷く評判が悪く、ハードウェアをマイクロソフトが担当したいと説得したが、結局これもうまくいかなかったという。この際に笑われたかどうかは明かされていない。Xboxが発売された2001年、奇しくも任天堂からはニンテンドーゲームキューブが発売された。

 マイクロソフトが任天堂を買収するという噂はこれまで幾度もまことしやかにささやかれていたが、細かな点はさておき事実だった。結局それが叶うことはなかったが、ここから始まったソニー、任天堂、マイクロソフトがビデオゲーム市場でしのぎを削る様相は、20年経った今もほぼ変わらず続いている。

(画像はSteam『Halo: Combat Evolved Anniversary』より)

 また今回の座談会によれば、マイクロソフトは任天堂に先駆けてEAに買収を持ちかけたのだという。こちらも「あなた方はコンソールを作ることについて何も知らない」「ノーサンキュー」とすぐに断られてしまった。スクウェア・エニックスやミッドウェーにも同様の話を持ちかけ断られたそうだが、良好な関係を築いた例も少なくなかったようだ。

 Xboxの顔といえる『Halo』を生み出したBungieはその最たる例だ。のちにBungieはふたたびマイクロソフトから独立することになるが、『Halo』初期三部作やそのスピンオフはマイクロソフトというゲームブランドの地位を確立させたといっても過言ではない。
 2021年に買収が完了し、Xbox Game Studios傘下となる予定のベセスダゲームスタジオも良好な関係を気づいた開発会社のひとつ。当時の最新作『The Elder Scrolls III: Morrowind』は、PC版リリースのわずか1ヶ月後にXboxへと移植された。

 日本からは当時のテクモが最大のパートナーのひとつといえるだろう。『デッド オア アライブ3』『NINJA GAIDEN』をXbox向けにリリース。両作とも高い評価を得たが、『NINJA GAIDEN』はとくに海外で高い評価を受けた。

 ブルームバーグの座談会には、ゲームを開発したテクモの内部開発チーム「Team NINJA」を率いていた板垣伴信氏も参加している。氏はPCによく似たアーキテクチャを採用したXboxを高く評価しており、口頭での技術仕様などの説明を含んだ1時間の会議のあと、Xboxでゲームを作る決断をしたという。「チームの使命は世界最高の格闘ゲームを作成することでした。はPS2の4倍から6倍強力なXboxが必要でした」と当時を振り返っている。

(画像はマイクロソフト『Ninja Gaiden Black』より)

 ソニーや任天堂に遅れて家庭用ゲーム機に参入したため、マイクロソフトはXbox立ち上げには苦労したようだ。

 家庭用ゲーム機でまったく実績のなかったマイクロソフトから「ハードウェアは任せてくれ」と買収を持ちかけられた任天堂の心中も推して知るべしといったところだが、そこから3世代20年にわたり、ソニー同様にライバルとなることまで想像できただろうか。

ライター/古嶋 誉幸

ライター
一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
Twitter: @pornski_eros
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新着記事

新着記事

ユーザー協賛プロジェクト

世界征服大作戦

電ファミの記事は協賛者の皆さまの支援によって成り立っています!

世界征服大作戦とは?

電ファミのファンクラブです。ゲームを中心にしながら、ひいてはマンガやアニメなど、エンタメ全般を扱うファンクラブへの成長を目指します。主要メンバーとして、元週刊少年ジャンプの編集長・Dr.マシリトこと鳥嶋和彦氏なども参加。面白いコンテンツによる世界征服を本気で企むコミュニティです。

詳しくはこちら

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

SNSで更新情報をお届け!

カテゴリーピックアップ