2017年の東京ゲームショウ(以下、TGS)にて発表された『ROOMMANIA#203』のオマージュ作品『project one-room』の開発が凍結されていたことが明らかとなった。
報告したのはかつてフリューのプロデューサーとして『project one-room』に関わった大地将氏で、2017年に『project one-room』を実際に発表した人物だ。
大地氏は発表のあと同社を退社しており、以降はあくまで「たまたまプロジェクトの関係者と知り合いだった個人プロデューサー」という立場を取っていた。氏は今回、個人としての活動を諦めるとしている。
『ROOMMANIA#203』は2000年にドリームキャストでリリースされた人生介入型シミュレーション。プレイヤーはアパートの一室に住む神様として、平凡でさえない主人公「ネジタイヘイ」の人生に介入する。2002年にはPlayStation 2に移植され、2003年には続編『ニュールーマニア ポロリ青春』もリリースされた。
大地氏によれば、『project one-room』という企画自体は3年以上前に凍結されていたという。凍結自体は良くあることで、もしもほかの新規タイトルであれば、すんなり諦めていただろうとは綴っている。
しかし、TGSでの発表に涙を流して喜んだファンや仲間の思いを受けた氏は、「自分たちの都合だけで終わらせていい話ではない」と、まったく違う場所で『ROOMMANIA#203』のオマージュ作品プロジェクトを立ち上げるために退社したという。
それからは貯金を切り崩しながらなんとか営業を続けていたが、雲行きは芳しくなかった。さらに、新型コロナの感染拡大により社会が激変、営業活動などが一切できなくなってしまったと語っている。
また、等身大の若者の姿を描いた『ROOMMANIA#203』のオマージュ作品は、時代にそぐわないのではないかという疑念を抱えたという。企画の中の主人公は逢うマートフォンは使うし、ライブ配信をするといった現代風のイベントも起きる。一方で、マスクをせずに帰宅し、自宅では動画サイトではなくテレビを見て過ごす。
大地氏は『ROOMMANIA#203』を先鋭的なセンスでまとめられ、時代の半歩先を進んでいたクールなゲームだったと振り返っている。ポストコロナ時代を迎えた今、同じように「ステイホーム」をテーマにした5年前のゲームが、『ROOMMANIA#203』の精神的続編としてリリースされる。そのとき、ゲームが持っていた時代の半歩先を行くクールさにしびれたファンが失望しないか、と考えたそうだ。
そして、いち『ROOMMANIA#203』ファンとして、それだけはしてはならないと今回の決断に至ったのだという。そして『ROOMMANIA#203』が発売された1月27日のあと、28日に発表した。
大地氏が公開した「アレのその後につきまして」と「補足」からは、『ROOMMANIA#203』への思いと決断に至った無念さが伝わってくる。
氏はプロジェクト立ち上げ当初の目標のひとつ「オマージュ元の傑作『ルーマニア』シリーズを知ってもらう、あるいは思い出してもらうこと」自体を諦めた訳ではないという。また、ゲームに登場する「セラニポージ」のアルバムは未発表曲も含めていつか必ずリリースするとしている。
もし、あなたの家にまだ動くドリームキャストやPS2があるなら、『ROOMMANIA#203』をプレイしてみてはいかがだろうか。可能であればSNSなどで当時の思い出やプレイ動画を共有するのも、大地氏をサポートすることにつながるはずだ。
ライター/古嶋誉幸