インターネット上の有志が集まり、さまざまな情報を自由に編集できるWiki。書籍に対して信頼性で若干劣る反面、速度や深度において頼りがいがある。Wikipediaによると、「Wiki」の語源はハワイ語で「速い」を意味する「wikiwiki」だという。有志が集まるため上手くいけば下手な書籍よりも信頼でき、情報も早い夢のデータベースにもなる。
そんなWikiは、ゲーム開発者にとっても強い味方だ。海外では、『Grim Fandango』や『Broken Age』を開発したDouble Fineを率いるティム・シェーファー氏が、さまざまなファンサイトやファンWikiに感謝を表明した。
それに呼応して、『Call of Duty』シリーズや『Dishonored』シリーズなどトリプルAタイトル開発者を含む多くの開発者が、TwitterにてファンWikiをどう利用したことがあるかを共有している。
ティム・シェーファー氏:「あらゆるファンサイトやファンwikiには感謝しています。ファンであることだけでなく、自分たちのゲームに関する情報を見つけるのを助けてくれています。ゲーム開発者がどのくらいの頻度で、あなたのサイトから自分のゲームについてのプレゼンを行うために引用しているか知っているでしょうか。私はよくやっていますよ。」
ティム・シェーファー氏:「プレゼンだけではありません。続編を作っていて、何かがオリジナルと一致しているかどうかを確認したいときは、私のかび臭くて、散らかっていて、あるいはzipドライブに入れられたアーカイブよりも、ファンサイトから情報を得た方が早いです。:)」
I just want to thank fan sites and fan wikis everywhere. Not just for being fans, but for helping us find information about our own games. I wonder if you know how often game developers pull from your sites to make presentations about their own games. I know I do it A LOT.
— TimOfLegend (@TimOfLegend) February 4, 2021
I just want to thank fan sites and fan wikis everywhere. Not just for being fans, but for helping us find information about our own games. I wonder if you know how often game developers pull from your sites to make presentations about their own games. I know I do it A LOT.
— TimOfLegend (@TimOfLegend) February 4, 2021
リードオープンワールドデザイナーとして『サウスパーク』のビデオゲームに携わったというアンドリュー・ドヴィキ氏や、EA Motiveでナラティブデザイナーをしているサンドラ・デュバル氏もシェーファー氏に同意。
デュバル氏は「ファンWikiがなければ『Dishonored 2』はなかったでしょう(笑)」と、ゲーム開発にファンWikiが役立ったことを明かしている。氏は『Dishonored 2』と『Dishonored: Death of the Outsider』の開発にリードナラティブデザイナーとして参加。初代『Dishonored』が発売されたあとにArkane Lyonに入社しているので、続編からストーリーに関わっているようだ。続編のストーリーを作るにあたり、初代のファンWikiは大いに役立ったのだろう。
ファン活動といえばストーリー考察。『Assassin’s Creed Valhalla』にナラティブディレクターとして参加したダービー・マクダビッド氏は、ファンの考察が「私たちのストーリーや伝承のどの側面が明確に伝えられているか、そしてどの疑問が曖昧または不完全であるかを理解するのに、つねに役立ちます」と伝えた。
「くわえて、今まで重要だと思っていなかった細かい部分にも気づかせてくれます」と、ファン活動からインスピレーションを受けていることも認めている。
Adding to this, fan wikis have always helped me figure out what aspects of our stories and lore have been communicated clearly and what questions are still obtuse or incomplete. And they often re-inspire me with small details I never considered important. https://t.co/eYrJvEIxEu
— Darby McDevitt (@DarbyMcDevitt) February 5, 2021
Ubisoft Massiveで3Cデザイナーとして働くフレデリック・タイランダー氏は、「DPS計算機や装備構築支援サイト、コミュニティマップもです」と、ファンの活動を大いに活用させてもらっていることを語っている。Massiveは『Tom Clancy’s The Division』シリーズを開発しているスタジオ。
3Cデザイナーとは「キャラクタ-、コントロール、カメラ」の3要素をデザインする、ゲーム開発では重要なポジションだ。それだけに、戦闘やゲームプレイ進行などゲーム全体にも気を配っているのだろう。
『レゴ』ビデオゲームを製作するTT Gamesにてライター職などで働くTessadactyl氏は、『LEGO Star Wars』や『LEGO MARVEL’s Avengers』など、同社がさまざまなフランチャイズとコラボするためにWikiは重要だと語っている。
『スターウォーズ』のファンWiki「ウーキーペディア」、『マーベル』の「Marvel wiki」などがなければ「迷子になってしまいます」と、IPに対する幅広い知識をファンWikiに助けられていることを明かした。
ファンの活動が立派に制作者に還元され感謝されているというのは、ファンにとってもうれしいことではないだろうか。無数のクリエイターたちの「ファンWikiありがとう」という声は、Tim Schafer氏のツイートの引用ツリーを見ると無数に語られている。
ライター/古嶋誉幸