植松さんに質問コーナー
松尾:
視聴者の皆さんから聞きたいことを質問もらってみたりします?
加藤:
事前に募集した質問があるので、それにお答えいただきながらコメントを待ちたいと思います。
217:
「植松さんへ。ご自身以外の好きなゲーム音楽はなんですか? ファミコン、スーファミ、最近の問わずにけっこうです」とのことです。
植松:
ボクも全部のゲーム音楽を知ってるわけじゃないですからね、好みで。最近は坂本(英城)さんのやっていることが気になるかな、ノイジークロークの。あと、個人的に崎元(仁)クンの音楽はボクは好きかも。
あとはね……ゲーム音楽って、最近同じようなモノしかないのがつまんないんですよ。今すごいちゃんとしたエンターテインメントになっているんで、すぐれた音楽がいっぱい流れてるんですけど、ゲーム音楽独特の発展の仕方ってのが今、どうなっちゃってるんだろうという。そういうのが置き去りになってるような気がする。
みんながみんな、ちゃんとした曲を書いて、ちゃんとしたスタジオで録音して、それがゲーム中に流れるのがいいとされているけど、そんなんじゃなくって、もっと冒険する人がいてもいいと思う。
手作り楽器だけでゲーム音楽を1本作ってもいいわけじゃないですか。たとえば明和電機さんと協力して「このゲームで使っている音楽は全部手作りです」っていう人がいてもいいと思うんですよ。そういう遊び心のある発想のゲーム音楽がもっと出てこないもんかなーっていう気がしますね。
ボクがどっかのゲームソフトハウスの社員だったら、今そういうことやりたいですね。
加藤:
音楽がアヴァンギャルドでゲーム性もそれに引っ張られていくということがもっとあってもいいかもしれませんね。
植松:
あってもいいと思います。ボク、『太陽のしっぽ』って、もっと続編いっぱい作るべきだと思いましたもんね。あんなアヴァンギャルドなゲームがもっとあってもいいと思うんですけど。
加藤:
そうですよね。ああいうのもっとあってもいいですよね。
植松:
一方で『パラッパラッパー』みたいな音ゲーにもボクはショックを受けて。初めてゲームがオタクのものじゃなくって1つ洗練されたエンターテインメントに足を踏み入れた第1作目だったと思うんですね。
映像から音楽からゲームの企画からすべてが「何者かが仕組んでる、これは」という、つまりエンターテインメントを知っている人が仕組んでるっていう。
あそこまで印象深いの、最近ないですしね。ああいう尖ったのが、もっと出てくると面白いかなぁ。
加藤:
あれは音楽が中心だったわけですもんね。
植松:
あれは今聴いても面白いですよ。
松尾:
「作曲した曲の中で、一番のデキだと思うのはなんですか?」
植松:
いやー、いっぱいあるんすよ。自分で言うなって(笑)。でもボク、けっこう「チョコボ」っていいなーと思う。
加藤:
チョコボ大好きです。
植松:
シンプルで短くて楽しい曲にできたなぁ。
加藤:
なんであんな曲作れるのか、わかんないですもん。
植松:
石井浩一クンの描いたチョコボが、お尻振りながらピョコピョコ動いてる絵を見て……。
加藤:
それに音をあてようと思って?
植松:
お尻ピョコピョコ振ってる曲を作ろうと思いましたね。
加藤:
「奥さんとの出会いは何ですか?」
一同:
(笑)
217:
いきなりすごい質問が来ましたね。
加藤:
奥さんとの出会いは聞いてもいいんですか?
植松:
別にいいけどつまんないですよ。東急ハンズで働いてたんですよ。東急ハンズの革製品売り場で働いていて、そこにボクの大学の先輩が勤めてたんですよ。それで知り合ったという。
松尾:
「『アクトレイザー』の話を聞かせてください」。逸話としては残ってますけどね。
植松:
あれはほんとですよ。『FFIV』をスーファミで初めて作ってる頃に、『アクトレイザー』に感動して、今まで完成していた曲の音色を録り直しました。「これじゃダメだ」って言って。
松尾:
古代(祐三)さんですよね。
植松:
『アクトレイザー』の曲、久々に聴いたんですよ。音色、大したことないんですよ。
加藤:
(笑)
植松:
ボクは何にショックを受けたかというと、たぶん音色じゃなくて音楽にショックを受けたんですね。でも今から全曲書き直すわけにはいかないから、音色だけでも変えようと思って……正直に白状すると。
松尾:
『アクトレイザー』もインパクトすごかったですからね。
植松:
オープニング画面でいきなりホルンとかが鳴るんですよ。ファミコンの頃だとホルンなんか出るわけないじゃないですか。スーファミでホルンの音が鳴ったときに、あのリアルさにね……こりゃすごいなと。古代クンって、その前からパソコンのゲームで有名だったんだけど、この人すごいなーって。
加藤:
「曲の中で一番時間のかかったものはなんですか?」
植松:
なんでしょうね。やっぱセフィロス(「片翼の天使」)なんか、かかったんじゃないですかね。毎日ちょっとずつ作ったフレーズを溜めて。
加藤:
2、3週間溜めたやつを……。
植松:
そうですね。それぐらいかかったと思いますね。
加藤:
それを組み合わせる時間は短かったんですか。
植松:
いや、それもけっこうかかりますよ。こっちがこっちかなー(並べ替えする手振り)とか。あと、それを並べ替えたあとに、のりしろを上手く……あたかも自然に作ったかのように聴こえるように考えていかなきゃならないじゃないですか。
加藤:
トータルではどれぐらいだったんですか。
植松:
どうだろう。1カ月ぐらいかかってるんじゃないですかね。毎日8時間ずつで1カ月かかったわけじゃなくって……。
加藤:
ちょっとずつちょっとずつですね。では、「『FFVI』のオペラシーンについて」。
植松:
あれは、チャレンジはチャレンジだったんですけど、当時『FF』の1作目が出たときにすぎやまこういち先生の事務所の方から電話かかってきたんすよ。で、「『ファイナルファンタジー』の音楽を作ってる人と話がしたい」っていうんで「ボクですー」って言ったら「すぎやま先生がたいへん褒めてました。これからもがんばってください」って。ボクは「えー!いたずら電話か!?」と驚きました。
一同:
(笑)
植松:
でもそのあとゲームが『II』 、『III』と出るうちに、本人から直接電話がかかってくるようになったんですよ。「町の曲は良かった。でもあの曲はこうこうこうでイマイチだったな」とか。『VI』くらいまでは先生、必ず電話してきてくださったんですよ。『IV』のオペラシーンは「オペラを使うってアイデアは悪くないけど植松クン、あれオペラ何も知らずに書いただろ」って言われて「すいません。知りませんでしたー」と謝ったら「何で一言相談してくれなかった」って言われた。
加藤:
なるほどー。
217:
そろそろ時間となってしまいました。ということでいかがだったでしょうか?
植松:
いや、すごい楽しかったです。
217:
ほんとはあと6時間くらいやりたいんですけどね。
植松:
ボク、ロックの話題だったら朝までいけますよ。
加藤:
朝までロックやりたいっすねー。
植松:
岡宮(道生)も呼んで。
加藤:
じゃ、ちょっとゼヒそれやりたいと思います。
植松:
また呼んでください。ありがとうございました。