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『ドラゴンボールファイターズ』が格闘ゲームの祭典「EVO 2018」を席巻。発売から半年で参加者数が1位に、同時視聴者数も過去最高を記録

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 毎年夏にアメリカで開催されている世界最大級の格闘ゲーム大会「Evolution Championship Series」こと「EVO」。今年も現地時間の8月3日から5日にかけてラスベガスにて開催され、メイン8種目を軸に多数のサイドトーナメントが彩りを添えた。
 熱狂のうちに幕を閉じたEVO 2018。もっとも注目を集めたタイトルは、発売からまだ半年ほどしか経っていない『ドラゴンボールファイターズ』だったようだ。

『ドラゴンボールファイターズ』が格闘ゲームの祭典「EVO 2018」を席巻。発売から半年で参加者数が1位に、同時視聴者数も過去最高を記録_001
(画像はドラゴンボール ファイターズ | バンダイナムコエンターテインメント公式サイト より)

 『ドラゴンボールファイターズ』は、今年2月1日にバンダイナムコエンターテインメントより発売された、鳥山明氏の『ドラゴンボール』を原作とする対戦型格闘ゲーム。
 開発は『GUILTY GEAR』シリーズで知られるアークシステムワークスが担当。ゲームエンジン「Unreal Engine 4」による同スタジオのビジュアル表現は本作でもいかんなく発揮され、原作から飛び出したかのようなアクションや必殺技描写が発売前から話題となった。全世界での累計出荷本数は200万本を突破している。

 そんな『ドラゴンボールファイターズ』にとって今年が初めての「EVO」となるが、その前人気を考慮してか、発売前となる今年1月にメイン8種目のひとつに選ばれていた。
 そして実際の出場エントリー数は、2575名で全種目中1位を記録。2位の『ストリートファイターV アーケードエディション』の2484名を若干上回る程度ではあるが、今年2月に発売されたばかりの新規IPタイトルとしては異例の記録を残した。

今年発売の『ドラゴンボール ファイターズ』も選出、世界最大の格闘ゲーム大会「EVO 2018」のメイン種目が発表

 『ドラゴンボールファイターズ』の人気を示しているのは、エントリー数だけではない。Steamなどの大型プラットフォームを解析しているサイト「GitHyp」によれば、『ドラゴンボールファイターズ』における最終日TOP8トーナメントの最高同時視聴者数は25万8705人で、Twichでの公式「EVO」放送における過去最高記録を樹立したという。
 これは「EVO 2018」に限った話ではなく、20年以上続く「EVO」の歴史上、最高の記録である。

 これは「EVO」のスケジュールが全体的に押しており、『ドラゴンボールファイターズ』のTOP8トーナメントが、本来『ストリートファイターV アーケードエディション』が配信されるはずだった北米のピークタイムに配信されていたことにも起因するだろう。
 ただし同作の視聴者数は「EVO」で突発的に増えたわけでなく、先月同じくアメリカで行われた大規模ゲーム大会「CEO」でも、もっとも視聴数が多かったタイトルは『ドラゴンボールファイターズ』である。

 「EVO」では毎年無数のドラマが生まれ、その結果がさらなるドラマを生み出していく熱狂のイベントだ。
 数字だけが意味を持つものではないが、発売から半年という異例の早さで『ドラゴンボールファイターズ』が「EVO 2018」を席巻するようなタイトルに成長したことは間違いないだろう。

 この急成長のもっとも大きな要因として考えられるのは、『ドラゴンボール』という、すでにユニバーサル言語と呼んでも差し支えないほどの圧倒的知名度を持つ作品を題材にしている点にある。

 一般に格闘ゲームは作品の内容や駆け引きを知らなくても観戦しやすい部類のジャンルではあるものの、普段ゲームに触れていない層には最低限のシステムの解説などが必要な場合が多い。
 もちろん『ドラゴンボールファイターズ』にも、「超ダッシュ」「Sparking!」といったシステム的な理解を求められる箇所もある。

 しかし『ドラゴンボールファイターズ』には、「孫悟空がかめはめ波を撃つシーン」を見れば、かなりの割合の人類が理屈抜きで理解できるという強みがある。そのことは観戦のハードルを”下げる”どころではなく、ハードルそのものを根底から壊すパワーを持つと言えるだろう。
 天津飯がセルに勝てば自然と興奮するし、バーダックがフリーザと戦っていればアドレナリンの放出は止まらない。
 世界共通言語まで裾野が広がっているコンテンツを競技シーンに耐える対戦型ゲームとして落とし込んだ『ドラゴンボールファイターズ』は、疑いなく大成功したキャラクターゲームのひとつでもある。

 ただし「EVO」での成功の裏にあるのはそれだけではない。発売から半年という短い期間ながら、eスポーツシーンには欠かせない”ドラマ要素”が上手く形成されていたことは、見逃してはいけない要因だろう。
 特にグランドファイナルのカードとなったSonicFox選手Go1選手による因縁は、見るものに非常にわかりやすいドラマを感じさせる要素となっていた。

 「EVO」から遡ること半年前、『ドラゴンボールファイターズ』の発売直後から、日本ではGo1選手がほぼ最強との呼び声が高く、一方でSonicFox選手はアメリカで腕前をふるっていた。
 そして2月後半に開かれた大会で、Go1選手が「SonicFox、次はお前だ」と優勝コメントを残す。それを受ける形でSonicFox選手はTwitterで応酬。さらにWinterBrawlでSonicFox選手が「Go1、お前はもう死んでいる」と日本語で発言。

 以降、『ドラゴンボールファイターズ』が生まれた日本の最強プレイヤーと、「EVO」のホームであるアメリカの最強プレイヤーが対立するという、わかりやすい因縁へと続く道が始まった。
 冷静沈着で守備型のプレイスタイルのGo1選手と、着ぐるみで入場するのが代名詞になっているエンターテインメント性が強い攻撃型のプレイスタイルのSonicFox選手は好対照であり、万人にわかりやすい構図でもあった。

※「『ドラゴンボールファイターズ』のアメリカ対日本、すごくいいストーリーラインだね」。『スマッシュブラザーズ DX』部門で優勝したスウェーデンのプロゲーマー・Leffen選手のツイート。

 3月のFinalRoundではGo1選手が勝負強さを発揮し、SonicFox選手を下して優勝したものの、その後のCombobreakerではSonicFox選手が勝利。また、「EVO」決勝直前には、そのふたりによるエキシビションマッチが開催され、Go1選手が勝った。
 明確なライバルとして、その勝敗に注目が集まる関係性になっていったのだ。そして決勝戦では、SonicFox選手が見事ホームの「USAコール」を得て優勝をはたした。

 ひとつの局面の分析として、「「EVO 2018」は『ドラゴンボールファイターズ』が席巻した大会だった」という言い方は、おそらく許されるのだろう。しかし2月の発売から半年の現在、『ドラゴンボールファイターズ』では発売当初の爆発的な勢いが見られないのも事実だ。
 コミュニティ内で生まれたドラマ、また配信時間など、今回はいくつかの幸運な要素に恵まれたが、運営の努力を惜しめば忘れ去られる可能性もある。『ドラゴンボール』という世界共通言語を持つ本作が、どのように人気を維持し、さらなるドラマを生み出していくのか? EVO以降での動向に注目したい。

文/Nobuhiko Nakanishi
編集/ishigenn

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ライター
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Nobuhiko Nakanishi
大学時代4年間で累計ゲーセン滞在時間がトリプルスコア程度学校滞在時間を上回っていた重度のゲーセンゲーマーでした。 喜ばしいことに今はCS中心にほぼどんなゲームでも美味しく味わえる大人に成長、特にプレイヤーの資質を試すような難易度の高いゲームが好物です。
編集
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ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn

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