ゲームファンが今遊びたい過去の名作とは?“現行ハードへの移植希望タイトル”アンケート集計結果をエムツーと分析してみた

 2006年からはじまった「プレイステーション ゲームアーカイブス」、「バーチャルコンソール」といった旧作ゲームのダウンロードサービスの展開や、最近では「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」、「NEOGEO mini」などのクラシックなコンシューマーハード・アーケード筐体の復刻版の発売により、我々ゲームファンは過去のゲームハードを押し入れの奥から引っ張り出す面倒なく、往年の名作に触れる機会が広がってきている。

 「2018年9月にはNintendo Switch Onlineでファミコンゲームがプレイできたりと、近年“過去のゲームを現行ハードでプレイできる”ムーブメントになっていますが、ゲーム文化の保存・継承という意味でも大切なことですよね」──そう語るのは、「エムツー」の代表を務める堀井直樹氏だ。

 その堀井氏率いるエムツー自身が、“過去作を現行機でプレイできる”という動きを、さらに加速させているといえるだろう。

 というのもエムツーという会社は、クラシックゲームの“移植”に長けた職人集団だからだ。
 最近ではNintendo Switch版『聖剣伝説コレクション』『SEGA AGES』の開発などを手がけたが、オリジナル版の操作感・遊び心地をそのまま移植することを第一に心がけ、調整の上に調整を重ねたこだわりの移植ぶりは、クライアントからもマニアからも支持されている。
 今や「エムツーが移植を手掛けている」ことが、タイトルの品質を保証するまでになっているほどである。

 そのエムツーが2016年、自らパブリッシャーとしてブランド『エムツーショットトリガーズ』を立ち上げ、『バトルガレッガ』『弾銃フィーバロン』『魔法大作戦』といった往年の人気作を現行機に移植してリリース。
 眠れる名作を呼び覚ます事業を積極的に行っており、ゲームファンにはウレシイ限り。

 この活動は今後も精力的に続けていくというエムツーに、「あのタイトルも移植してほしい!」とゲームファンなら誰もが期待するはず。
 そこで電ファミニコゲーマー編集部は、Twitterでアンケート「エムツーに移植してほしいタイトルは?」を実施してみた。その集計結果がこちらだ。

※2017年11月14日〜2017年12月1日までに電ファミニコゲーマーのTwitterアカウントに寄せられたものを集計したものです。クリックで拡大できます。

 この集計結果は、「あのタイトルを現行ハードでもう一度プレイしたい」と願っているゲームファンの積年の思いの集約である。言うなれば “再び日の目を浴びたがっているゲームたちの怨嗟の声”を、我々編集部は直接エムツーにぶつけてみた。

 今回、話を伺ったのはエムツー代表取締役の堀井直樹氏、プランナーの久保田和樹氏、広報の駒林貴行氏の3名。結果について率直な感想をお聞きするとともに、アンケートで上位に入ったタイトルについて移植の可能性を探ってみた。
 話は、怨嗟の声(アンケート集計結果)から見えてきた「ゲームファンの移植希望タイトルの傾向」についての考察からはじまり、懐かしのゲーム談義に脱線しまくりつつも、なんと実際に商品化に向けてのアクションを起こしてくれることに……?

取材・文/RonなかJ
写真/増田雄介


左から駒林貴行氏久保田和樹氏堀井直樹氏

ゲームファンは1990年代タイトルの移植を熱望している

──“エムツーさんに移植してほしいゲーム”のアンケート結果、第1位はケイブの『エスプレイド』【※】でした!

堀井直樹氏(以下、堀井氏):
 こうしてアンケート結果を眺めると、「ガチで欲しくて投票している人」と、「ネタで投票してるんじゃないか? という人」が混ざっている印象がありますね(笑)。

駒林貴行氏(以下、駒林氏):
 上位は“ガチ狙い”だと思うんですけれどね。

堀井氏:
 とはいえ、ネタで投票している人も、別に嘘をついているわけじゃないでしょう。「これが世の中に出たら、面白いよね?」と思っているんじゃないかな。

左から駒林貴行氏堀井直樹氏久保田和樹氏

久保田和樹氏(以下、久保田氏):
 あと、単に「俺が好きだから」という気持ちは絶対あると思うんですよ。商売になるかどうかは置いといて。

──投票してくださった方々は、どのくらいの年齢層なのでしょうね。

堀井氏:
 おそらく30~40代でしょうね。上のほうはたぶん、50歳近くとか。

駒林氏:
 『エンパイアシティ:1931』【※1】を挙げている方などは40代でしょうね。『エアバスター』【※2】もそのぐらいかな。

──1990年代のタイトルが多い印象を受けました。

堀井氏:
 上位のタイトルは、1990年代後半ぐらいが多いかな。

久保田氏:
 これまでユーザーのニーズが高い1980年代のゲームは、『セガ3D復刻アーカイブス』【※1】シリーズなり、ウチの移植タイトルなりで、けっこう実現しているわけですよね。
 たとえば『グラディウスII』【※2】は今までいくつか移植されているせいか、ランキングにありませんし。

堀井氏:
 『グラディウスIII』はあるけどね。

久保田氏:
 そうそう。今まで1980年代のゲームの移植が充実してきている一方で、1990年代のゲームはまだまだ移植されていないタイトルがあるから、ニーズが高まってきているのかもしれないですね。

駒林氏:
 ユーザーが求めているのは、その辺かもしれない。

久保田氏:
 その時代は、内容的にもいろいろ模索しているゲームが多いですよね。
 格闘ゲームが全盛だった頃は、シューティングゲームは立場がちょっと弱かったし、だからこそ移植されていない作品が多いのでしょうかね。

駒林氏:
 アンケートのメイン層が30〜40代だとすると、いま一番働き盛りの方々。めちゃくちゃゲームにハマっていた1990年代を懐かしんでの投票だったのかもしれません。

久保田氏:
 そういう方々のニーズがアンケートに反映されている感じはしますね。
 くわえて、いまウチが扱っているゲームはすべて「1990年代のシューティングゲーム」ということもあって、「1990年代タイトル移植」の機運が高まっているのでしょうか。

堀井氏:
 確かに今後、1990年代のゲームは移植されるタイトルが増えるかもしれないですね。
 それにしても、『バルトリック』【※】が2票入っているのがスゴい。

 ボクもできれば移植をしたいけれど、移植しようとすると「商売になるのか?」と周りから止められるでしょうね。
 「いや、2票入ってるからイケる!」って言えるかなぁ。

久保田氏:
 ボクは止めますよ(笑)。

駒林氏:
 2票でいけるなら、『ファイティングファンタジー』【※】だって2票入っていますから、移植しましょうよ!

堀井氏:
 でもさ、「移植して欲しいゲーム」だから、投票するのは間違いではないんだよね(笑)。
 「商売が成り立ちそうな、移植して欲しいゲーム」ではないんだし。

「移植希望タイトル」1位が『エスプレイド』の理由とは?

──そんな中、『エスプレイド』が1位になったことについて、どう思われますか?

『エスプレイド』タイトル画面

堀井氏:
 「今まで移植されなかったから」という理由はもちろんでしょうが、「井上淳哉さん【※】が絵を描いている」というのもあるでしょうね。『デススマイルズ』【※】もやっぱり井上さんのイラストでヒットしていましたし。

※1 井上淳哉……イラストレーター・漫画家。東亜プラン、ガゼル、ケイブなどでゲーム開発に関わったあと、2001年に退職し、漫画家として活動を始める。関わったタイトルは『BATSUGUN』、『ぐわんげ』、『怒首領蜂大往生』、『デススマイルズ』などのシューティングゲームが中心。
※2 デススマイルズ……2007年にケイブからアーケード用としてリリースされた横スクロールシューティングゲーム。ボタンで左右に打ち分けられるショット、自機のショットに応じて向きを変えるオプションの使い魔などが特徴。ケイブのスマホ用シューティングゲームアプリ『ゴシックは魔法乙女』は共通の世界観を使用している。
(画像はDEATHSMILES デススマイルズより)

久保田氏:
 それが今、スマホゲームの『三極ジャスティス』【※】に繋がっていますからね。

※三極ジャスティス……ケイブから配信中のスマホのゲームアプリ。少子化対策としてライフサイエンスを用い、工場で優良な国民を量産することに舵を切った2040年の日本が舞台。国民の量産で強い日本を掲げる「政府組織」、それに反発する「反政府組織」、混乱に乗じて活動を活発化させる「国際犯罪集団」の3勢力の戦いを描く。ゲームはアクションとシミュレーション要素がある。 井上淳哉氏は本作のアートディレクターを担当。
(画像は三極ジャスティス 公式サイト | 株式会社ケイブ – 殺りあう少女は をかしいか それは なんのための 破壊か 正義とは何か!?より)

駒林氏:
 社内に基板があるので、ちょっとプレイしてみましょうか。

『エスプレイド』の基板

久保田氏:
 『エスプレイド』といえば、縦スクロールシューティングゲームの中では、“自機=飛んでいる人間”の先駆けかもしれないですよ。

『エスプレイド』をプレイする久保田氏

久保田氏:
 この作品をきっかけに「人を飛ばしてもいいんだ」と開発側もゲームファン側も思うようになったんじゃないかな。それまではシューティングゲームは飛行機が飛んでナンボみたいなところがありましたからね。
 縦スクロールシューティングゲームじゃなかったら、『スペースハリアー』みたいに人型キャラクターが飛んでいるシューティングゲームはありましたが。

──多方向スクロールなら、カプコンの『ロストワールド』【※】がありましたね。あれは人間じゃなくて超戦士でしたっけ?

堀井氏:
 天帝に倒された人々のオーラが集まって実体化したとか……そんなだったような。

──同じくカプコンの『アレスの翼』【※】は、キャラクターに羽根がありましたっけ?

堀井氏:
 そう、あれは羽根があるんですよ。羽根がなくて飛ぶキャラクターは、当時はほとんどなかったはずです。

久保田氏:
 「エスパー能力を持つ人間だから」という理由で、そのまま飛んで戦う。そういう意味でも、発売された当初は賛否両論だったはずですよ。「戦闘機でもないのに飛ぶのか?」と。

堀井さんが愛する『ザ・グレイト・ラグタイムショー』が2位に!

久保田氏:
 個人的にちょっとビックリだったのが、17票を獲得して2位になった『ザ・グレイト・ラグタイムショー』【※】です。

『ザ・グレイト・ラグタイムショー』タイトル画面
※ザ・グレイト・ラグタイムショー……1992年にデータイーストからリリースされたアーケード用の横スクロールシューティングゲーム。フックのついた複葉機を基本的な乗り物とし、車、バイク、ウマ、巨大ロボットなどの多彩な乗り物に乗り換えて戦うことができる。

堀井氏:
 ボクも、2位に入っていることに一番ビックリしました。
 以前、『ザ・グレイト・ラグタイムショー』をやったことがないウチのディレクターの長野(敦也)【※】に、「絶対コレ人気があるよ、欲しい人がいっぱいいるよ」といっても、彼はピンと来てなかったようですが、今回のアンケートで証明されてウレシイです。

※長野敦也
エムツー所属のディレクター、長野敦也氏。『M2ショットトリガーズ』では、シリーズ全般のディレクションを担当している。

久保田氏:
 社内に基板があるので、ちょっとプレイしてみましょうか。

『ザ・グレイト・ラグタイムショー』の基板

堀井氏:
 このゲームは2人同時プレイができるんですよね。

久保田氏:
 おっと、社長自らプレイしますか(笑)。しかし、改めて見てもドット絵がスゴいですよね。鬼気迫るものがある。

『ザ・グレイト・ラグタイムショー』をプレイする堀井氏

堀井氏:
 このゲームは本当にドット絵の過剰サービスという感じがスゴくいいね。

──“フックを引っかけるアクション”は独特ですね。

堀井氏:
 画面内にあるほとんどの物にフックが引っかけられて、そのまま攻撃に使えるのが秀逸ですね。
 あと、自分が最初から乗っている飛行機を降りて、そこら辺にある乗り物に乗っても戦えるんですよ。これによって、遊び方が変わるのもいいですね。

『ザ・グレイト・ラグタイムショー』プレイ画面

 それぞれの乗り物に対して別々の攻撃方法があって、それが全部描き込んであるという職人技のゲームなんです。
 スタッフクレジットを見ると、最後にドット絵担当の方が「ゴッドフィンガー」という名前で出てくるのですが、確かにここまでの描き込みぶりなら、「ゴッドフィンガーって名乗っても許すわ」と。そうだよなって思っちゃう(笑)。

駒林氏:
 クリスマスの飾りつけをしたステージは必見ですよ。特にヤバいサンタは絶対見てほしい。

『ザ・グレイト・ラグタイムショー』に登場する“ヤバいサンタ”

データイーストタイトルに人気が集まっている傾向があるようだ

──『ザ・グレイト・ラグタイムショー』をはじめ、データイーストタイトルが複数ランクインしています。根強い人気があるんですね。

駒林氏:
 データイーストといえば、最近『レトロビット ジェネレーション 4』【※1】に収録された『エドワードランディ』【※2】もランキングに入っていますよ。

『エドワードランディ』プレイ画面
※1 レトロビット ジェネレーション 4……アーケードやコンシューマゲームのタイトルをまとめて収録しているゲーム機のシリーズ。最新の4では、アイレムやデータイーストのアーケード作品が中心に収録されている。国内では株式会社JNNEX社が販売。
※2 エドワードランディ……1990年にデータイーストからリリースされたアーケード用のアクションゲーム。1930年代のヨーロッパが舞台。大量破壊兵器の中枢になる石「プリズム」が悪用されるのを避けるため、国外に持ち出した科学者の孫娘が主人公エドワード・ランディのもとに逃げ込んだことから始まる冒険を描いている。攻撃のほかにジャンプ、ダッシュ、スライディングなどの多彩なアクションが使えるのが特徴。

堀井氏:
 個人的に大好きなタイトルなので、とてもウレシイですね。

久保田氏:
 社内に基板があるので、ちょっとプレイしてみましょうか。

──これも基板があるんですか!?

『エドワードランディ』の基板

──堀井さんは『エドワードランディ』のどのあたりがお好きなんですか?

堀井氏:
 いろいろなアクション映画のクライマックスシーンだけで構成したような演出が大好きなんです。

『エドワードランディ』プレイ画面

 このゲームは一時期、「セガサターンで出る」と言われていて、結局出なかったという不遇のタイトルでもあるので、ぜひ移植したいところです。

久保田氏:
 大きなキャラクターがワチャワチャ動き回る様子を楽しんだほうがいいですよね。

駒林氏:
 『ザ・グレイト・ラグタイムショー』に比べて、こちらはいい意味で大味なゲームですよね。

『エドワードランディ』をプレイする駒林氏

久保田氏:
 ハードの性能を考えると、相当無茶な処理をしているゲームですよ(笑)。ときどきメチャメチャ処理落ち【※】します。

※処理落ち
コンピュータの処理が追い付かず、その結果出力が遅くなること。ゲームの場合では、グラフィックの表示が遅くなり、キャラクターがコマ送りのようになることで処理落ちを実感できる。

──今のハードに移植すれば、こういう処理落ちも解消できますか。

堀井氏:
 ここまでの処理落ちは起きないでしょうね。

久保田氏:
 でも、ウチで移植するなら、あえて処理落ちはそのまま再現しますけれど(笑)。処理落ちを解消すると、ゲームの動きが速くなり過ぎてしまうことがよくあるので。

堀井氏:
 あえて処理落ちするように頑張る、と。

社内には、かなりの数のアーケード基板が保管されている

──話題に挙がったタイトルをひとつずつプレイしていったら、さすがに時間がなくなりますね(汗)。
 ところで、エムツーさんには基板がどのくらいあるのでしょう?

堀井氏:
 数えたことはないのですが……10〜15年前から個人で集めていた基板を会社に置いています。

久保田氏:
 社長のものもあるし、他の社員のものも何枚かあったり。

──皆さんで共有している感じ?

久保田氏:
 そうですね。

堀井氏:
 社員のみんな、なんだかんだ言って“イイ歳”なので、家に置いておくと、奥さんに怒られたりするんですよ。で、怒られると、会社に持って来る。

駒林氏:
 ちなみにボクは、今も現役でバリバリ基板を収集しています。大好きな『エクイテス』【※】の基板は、4枚持っています。

『エクイテス』の基板

──なるほど……って、もうプレイしなくていいですから!

『エクイテス』をプレイする駒林氏
※エクイテス……1984年にセガからリリースされた(開発はアルファ電子)縦スクロールシューティングゲーム。自機のロボット・エクイテスを操作して、敵大型戦艦・ソリッドバイオレンサーの撃墜を目指してステージを進む。武器は地上・空中用ショットとスペシャルウェポンが使用可能。地上から地下への隠し通路に侵入したり、障害物のあるところでは自動で空中を飛べたりするなど、立体的なステージ構成が特徴。

駒林氏:
 それにしても、『エクイテス』に1票入っていて、うれしいです。ボク以外にも好きな人がいたんだと(笑)。

──『エクイテス』愛が強すぎる。

『エクイテス』タイトル画面

堀井氏:
 ボクは、自分がどうしても欲しい基板は一通り買っているので、最近は手を出していませんが、筐体を買いました。

──筐体?

堀井氏:
 アメリカで買った筐体をコンテナいっぱいになるまで詰めて、日本に輸入している方がいるんですけれど、その人から買うんです。

──そんな方がいるとは。

堀井氏:
 日本で筐体を集めている方が何人かいらっしゃるんですが、そのひとりの友人に「『マーブルマッドネス』【※】の状態のいいヤツが安くオークションで出ているんだけど、これってどう思う?」とメールしたら、「落札しておきました。夏には届きます」という返信が来たことがあります(笑)。

──常人には理解できないレベル。そのぐらいの高みに達している人って、日本にどのくらいいらっしゃるのだろう……。

久保田氏:
 基板マニア自体は、そんなにいないとは思いますよ。

駒林氏:
 でも、最近Twitterで情報発信できる時代になったので、裾野が広がっている印象はあります。「買ったよー」とツイートしたら、同好者がワーッと集まるんですよね。
 そこからつながるファンどうしの情報交換で、基板を買う環境もオープンになってきているのではないでしょうか。

 これまでは“素人お断り”な感じのお店に入って、ムスッとした店員に対して伏し目がちで「○○ください」と言って買うようなイメージでしたけれど、Twitterで明示化されたので、だいぶ買いやすい環境は広がったのかな。
 これは、前職(秋葉原BEEP店長)を経験しての感想です。

──店員さんも優しくなっているのかも?

駒林氏:
 なりましたね。

BEEP秋葉原店長時代の駒林氏「客じゃないなら出て行けッ!」(※言ってません)

堀井氏:
 基本は、買った基板を個人で楽しむわけですが、上級者は行きつけのゲーセンに基板や筐体を置いてもらったりするんです。

──なんですと!?

堀井氏:
 ゲーセンで、お客さんに普通に遊んでもらうんです。ゲーセンに置いておけば、スタッフさんが日々メンテナンスしてくれるじゃないですか、それがありがたいから、という理由です。

久保田氏:
 社長もそうですよね。いまミカド(高田馬場にあるゲームセンター)に置いてあるアタリの『スターウォーズ』【※】は、社長の所有物なんです。

ミカドに設置されているアタリの『スターウォーズ』筐体。残念ながら撮影時(2018年8月27日)は調整中だった。
※『スターウォーズ』……1983年にATARIからリリースされたアーケード用のシューティングゲーム。映画「スターウォーズ エピソード4:新たなる希望」のクライマックスシーンを題材にしており、反乱軍の機体・Xウイングを操って巨大要塞デス・スターへ侵入、廃熱口からプロトン魚雷を投下して破壊を行う。ベクタースキャンで描かれたグラフィックは今でこそシンプルだが、迫力のある宇宙戦やデス・スター上での戦いが楽しめた。

──そうなんですか!? オーナーなんですね。そこのインカムは堀井さんに入ってきたり?

久保田氏:
 オーナー(笑)。インカムはミカドさんのものですよね。

堀井氏:
 当初『スターブレード』【※】だけが置いてあったミカドさんにお願いして、『スターウォーズ』を置いてもらったんです。
 というのも、ボクはその2タイトルは血筋が繋がっていると思っていまして、そのふたつが遊べる場所がどうしても必要だと感じていたからでして。

ミカドに設置されている『スターブレード』筐体。
※スターブレード……1991年にアーケード用としてナムコ(当時)からリリースされたシューティングゲーム。ゲームは戦闘機の砲手の視点で展開。次々と移り変わっていく戦場の敵を倒し、機動惑星レッドアイを破壊するのが目的。Wiiのバーチャルコンソールアーケード版は2009年に発売された。

 そこで、いざ買った後にミカドの池田さんに相談したら、快諾してもらいました。感謝しかないです。
 というわけで、『スターブレード』と『スターウォーズ』がいっぺんに楽しめるゲームセンターは、おそらく日本で高田馬場のミカドだけでしょう(笑)。

TOP5までの顔ぶれに注目。“移植されない三銃士”が上位なのはうなづける結果

──だいぶ脱線しましたが、話をランキングに戻しましょう。
 3位は『プロギアの嵐』【※1】、4位は『19XX』【※2】でした。

久保田氏:
 1位、3位、4位あたりは順当と言えば順当ですよね。

堀井氏:
 たとえば「ケイブさんのタイトルで移植して欲しいゲームは?」とゲームファンに聞いたら、『エスプレイド』と『プロギアの嵐』が上位に来るのはわかるんですよ。というのも、これまで移植されてこなかったうえに人気があるタイトルですからね。
 その一方で、ケイブさんのタイトルがトップ3の中の2タイトルを占めるという人気ぶりには改めて驚かされます。やっぱりすごいな。

久保田氏:
 その2本にくわえて、『19XX』を含めた“移植されない三銃士”がトップ5に入るのは、なんとなく納得できますよね。

──5位には『達人王』【※】がランクインしています。

※達人王
1992年に東亜プランからリリースされた縦スクロールシューティングゲーム。前作の『TATSUJIN』同様に、3種類の武器の切り替えとボムが使用できるなどの点は共通だが、敵が硬く、敵機が自機を追い続けてくるなど、全体的に難度が高くなっている。2人同時プレイも可能。

堀井氏:
 『達人王』って、普通に遊ぶと本当にひどい難度のゲームなんですよ(笑)。“一見さんお断り”というより、そもそも「お前は帰れ!」と言われているような難しさ(笑)。

 その「帰れ!」コールの嵐を突破した後に、面白いところが出てくるし、遊び方がわかればちゃんと脳汁が出るような内容になっているんですよ。

駒林氏:
 確かにあの難度はすさまじい。

久保田氏:
 『達人王』がランキングに入ったのは、Twitterの「達人王おじさん」【※】のおかげで知名度が上がったのかも。

※達人王おじさんbot
円谷プロの特撮番組「ジャンボーグA」に登場した宇宙人・エメラルド星人の画像を使いながら、何かにつけ「『達人王』をやるのだ!」と、つぶやく謎のTwitterアカウント(@emeraldseijin)。ときどきツイートに『達人王』のユルい攻略情報も織り交ぜてくる。なぜそこまで熱心に『達人王』を推すのかは不明。

堀井氏:
 古いゲームなのに、達人王おじさんの日頃の地道な布教活動のおかげで、『達人王』が身近なものになっているという。

久保田氏:
 その流れで、せっかくだしエムツーならなんかやってくれるだろうと期待して『達人王』に投票した人は、達人王おじさんと社長との絡みが見たいという変な期待もあるかもしれないですね(笑)。

堀井氏:
 ぶっちゃけた話、調整をしていない単なる移植レベルの作業であれば、終わっているんですけどね、『達人王』。

ビジネスに関係なく、常に移植作業を試みるエムツー

──……今サラリと爆弾発言があったような……え!? 発売予定のないタイトルでも移植作業をしているんですか?

堀井氏:
 タイトルは言えないんですけれど、ビジネスに関係なく「研究開発」として、単純移植のレベルまで持っていっているゲームは他にもいくつかあります。
 実際、このアンケート集計結果に挙がっている何タイトルかは、作っているものがありますね。

──そういった研究開発は、現在何タイトルくらい動いているんですか?

堀井氏:
 10タイトル以上はあるかも。
 たとえばセガの「SYSTEM24」といった「システム基板」【※】で動いているゲームを1タイトル作るついでに、同じシステム基板用のゲームを3本動かしてみよう、ということはよくあるので。

 それに、『オレたちゲーセン族』のタイトルを作っていた頃はビジネスになるかならないかは一切考えずに、昔のゲームをガンガン作っていたんですよね。なので、20~30タイトルのストックはあります。
 ただ、最近はわりと仕事が忙しいので、新たに仕込んでいる暇がなくなってはいるんですけれど。

※システム基板
プログラムの入ったROMを乗せ換えることで、複数種のソフトが動くようにしてあるアーケード用基板のこと。マザーボードと呼ばれる場合もある。ゲームごとに基板から設計しなくても済むぶん、開発・製造コストが抑えられるメリットがある。セガの「システム16」、タイトーの「F2システム」、ナムコの「システムI」など、メーカーごとに独自のシステムが用意されていた。

──せっかく移植したのなら、やっぱり発売してほしいなと、ゲームファンなら誰もが思うことでしょうね……。

堀井氏:
 そうですよね。ごくたまに、タイトルによっては突然、日の目を見ることもあるんです。
 たとえば、当時アーケード基板の枚数がそんなに出なかった『弾銃フィーバロン』をXbox360向けに移植して、ずっとお蔵入りしていたんです。
 でも、10年ぐらい経ったら、出せちゃったんですよ。感慨深いですね。

(画像は弾銃フィーバロン Xbox One版 / M2 Shot Triggersより)

 とはいえ、マイナー過ぎても難しいんですよ。ちょっと前にTwitterで「エムツーはマイナーなゲームを移植するような無茶なことをやっても商売になる」というようなつぶやきがありましたが、そんなことはないんです。

久保田氏:
 商売になるどころか、その逆ですよね。

堀井氏:
 今まで何本かそういうタイトルを作ったことがあるから、「エムツーなら何とかしてくれる」と思われているかもしれないけれど。

6位以降の気になるタイトルについて

──TOP5までのタイトルについて、コメントをいただきましたが、6位以降で気になったタイトルはありますか?

堀井氏:
 下位も含めて投票の傾向としては、「エムツーが移植する」という前提だからでしょうか、エイティングさんとかケイブさんとか、他の開発会社が誰も手を出していないメーカーのゲームが多くて、それはむしろありがたいです。

──それにしても、アンケートの結果は多種多彩ですね。

堀井氏:
 こうしてリストを見ると、やっぱり「頑張らないとな」という気持ちになりますね。

久保田氏:
 「そのタイトルを挙げたい気持ちはよくわかる」と共感できるゲームがあると、気持ちが入っちゃいますよね。シューティングゲームじゃないタイトルにもボクは情が湧いてきている(笑)。

堀井氏:
 わざわざ書いているのは、本当に「移植して欲しい」と思っているわけだしね。

久保田氏:
 もともとウチは、シューティングゲームがメインの『エムツーショットトリガーズ』だけではなくて、セガさんのタイトルをジャンル問わず多数移植しているという実績がありますから、幅広いジャンルをフォローできますしね。

6位『アウトフォクシーズ』(9票)

堀井氏:
 『アウトフォクシーズ』【※】が入っているね。このゲームは、バンダイナムコエンターテインメントさんがOKなら、いつでも移植をやりたいタイトルです。

 でも、殺し屋の子どもふたり組がバンバン人を殺すようなところは、CERO的にたぶんダメなのかな(笑)。

久保田氏:
 「子どもふたり組VS.猿」みたいな展開もありますからね(笑)。あのゲーム、ボクも好きです。

駒林氏:
 これまで『アウトフォクシーズ』は一度も移植されていないので、このためにアーケード基板を買うマニアもいるくらいですよ。

9位『アンダーカバーコップス』(6票)はじめ、アイレムタイトル

──上位はシューティングゲームが多いかと思いきや、『アンダーカバーコップス』【※】などのアクションゲームも健闘していますね。

堀井氏:
 『アンダーカバーコップス』はボクも欲しいです。

──現状、スーパーファミコン版ぐらいしか出ていないですね。

堀井氏:
 あれはけっこう頑張った移植でした。

駒林氏:
 ゲームボーイ版ではスゴロクになっていましたっけ。

久保田氏:
 『エムツーショットトリガーズ』を手がけている我々に向けてのアンケートだから、シューティングゲームの移植希望が多いのはわかります。そんな中、アクションゲームがここまで上がってきたのはスゴいですね。

堀井氏:
 TOP10に入った唯一のショットボタンなしゲームですよ。これは熱いですね。
 アイレムさんが、この電ファミさんの記事をご覧になられて、その気になった場合は「ボクらがお手伝いしますよ」とアピールしておこう。

久保田氏:
 「ほらほら、上位に入っていますよ」と(笑)。同じアイレムさんの『R-TYPE』【※】シリーズを差し置いて、ここまで上位に食い込むとは。

駒林氏:
 アイレムタイトルなら、他にも『X MULTIPLY』【※1】『イメージファイト』【※2】が2票獲得していますね。

──『R-TYPE』といえば『R-TYPE LEO』【※】が入らなかったのが意外にも思えますけれど、ゲームファンは移植希望を諦めちゃったのでしょうか。「RETRO BIT GENERATION 4」に入ってはいますが……。

久保田氏:
 ええ~……諦めて欲しくないな。

堀井氏:
 曲もカッコいいし、あのゲームは何とかして欲しい。
 ボクらが「何とかして欲しい」と言ってしまったら、ゲームファンの皆さんは絶望するかもしれないけれど(笑)。ここは「何とかするわ」ぐらい言っておきましょうか。

すでにいろいろなハードに移植されているタイトルもランクインしているのはなぜ?

久保田氏:
 逆に『R-TYPE』に1票しか入っていないのはビックリですよ。もっと投票されるかなと思ったけど。

堀井氏:
 これまでにも、いろいろなハードで移植されているからだろうね。

久保田氏:
 いろいろなハードへ移植されているタイトルは、やはり得票が少ないですね。『ファンタジーゾーン』【※】もウチがやっているから票がないし。

※ファンタジーゾーン……1986年にセガからリリースされたアーケード用の横スクロールシューティングゲーム。7つの惑星にある前線基地とボスを撃破し、最終ボスを倒すことが目的。敵を倒すと手に入るお金を使って、ラウンド途中に現れるショップでパワーアップアイテムを購入できるのが特徴。
(画像はSEGA AGES 2500 シリーズ Vol.33 ファンタジーゾーン コンプリートコレクションより)

堀井氏:
 『RAYFORCE』【※】もそう。セガサターン時代に移植されていたよね。

久保田氏:
 『RAYFORCE』はスマホゲームでも出ていますからね。
 “これまで移植されたことがあるにもかかわらず、投票がある”というタイトルは、やっぱり現行ハードでも遊びたいということなんでしょうかね。
 『ダライアス外伝』にも票が入っていますけれど、これもセガサターンで出ていますし。今度『コズミックコレクション』にも入りますから。

──過去に移植されてはいるけれど「エムツーさんに、より完成度の高いものを作って欲しい」という要望なんでしょうか。

久保田氏:
 PS2の頃に作っていたゲームを、現行ハードでもう1回作って欲しいという要望はけっこうありますよ。

堀井氏:
 とはいえ、このアンケートの中には、すでに移植が決まっているものもありますね。
 エムツー開発・セガ発売のNintendo Switch版『SEGA AGES』で『サンダーフォースIV』【※】が出ますし。発売日は9月予定です。

※サンダーフォースIV……1992年にテクノソフトからメガドライブ用としてリリースされた横スクロール型シューティングゲーム。ゲームの大まかなシステムは『III』とほぼ同様だが、『III』よりも自機のスピード調整がしやすくなっている(4段階に変更可能)。
(画像はSEGA AGES サンダーフォースⅣ|SEGA AGES(セガエイジス)|セガアーカイブス|セガより)

駒林氏:
 同じく『ゲイングランド』【※】Nintendo Switchで出ますので。こちらは発売日は未定ですが。

※ゲイングランド……1988年にセガからアーケード用としてリリースされたアクションシューティング。未来世界のレジャー施設・ゲイングランドが舞台。施設に閉じ込められた人々を救うために、40以上のステージに待ち受けるロボット兵を倒す。武器と攻撃方法の異なる20人のキャラクターが使用できる。
(画像はSEGA AGES ゲイングランド|SEGA AGES(セガエイジス)|セガアーカイブス|セガより)

堀井氏:
 これらタイトルの移植は、セガさん側から「やりたい」と言って、我々に開発を任せてくださったんです。

駒林氏:
 さすがセガ! って感じですよね。

9位『アームドポリス バトライダー』(6票)

──『バトルガレッガ』を開発した、ライジングさんの『アームドポリス バトライダー』【※】も挙がっています。

堀井氏:
 発売するかはさておき、これも単に移植するだけなら実はもう終わっているんです。調整やアレンジはしていないですけどね。

──またサラリと……マジですか(笑)。

堀井氏:
 『バトライダー』は、コースの分岐などいろいろな要素があって、それらを網羅したガジェットを考えたり企画を立てたりしようとすると、ものすごく大変になりそうなので、単なる移植で止まっています。

久保田氏:
 移植するときに一番ネックになりそうなのが、『バトルガレッガ』よりも処理が重くなることです。
 『バトルガレッガ』の後に出たゲームなので、演出も含めてさらに処理が重くなることをやっている。そうなるとハードの性能的にも、いろいろと苦労するだろうなと。

堀井氏:
 『バトライダー』は『バトルガレッガ』と同じ基板で動いているんですけれど、基板の性能をより引き出した処理をしているんですよ。

久保田氏:
 『バトルガレッガ』移植の際も、高速化のためにはけっこう苦労しましたから、それ以上の処理が必要な『バトライダー』だと、もっと開発が辛いだろうな。

──と言いますと?

久保田氏:
 『バトルガレッガ』もそうなんですが、1990年代後半のアーケードゲームの移植をウチがやると、PS4の処理性能をギリギリまで引き出そうとしてしまうんですよ。

堀井氏:
 “引き出す”というよりは、性能を全部使わせていただいてから、液晶モニターとPS4という環境でプレイしたときの手触りを、ゲームセンターの筐体にあるブラウン管でプレイした感覚に近づけようとしているんです。

 そういう意味では、ハードの使い方としてはものすごくゼイタクなんですよね。そこまで手触りを気にしなければいいのかもしれないのですが、逆に言うとすごく手触りを気にしているからこそ、ゲームファンの皆さんに遊んでいただけていると思うので。

久保田氏:
 そこは外せないですよね。

堀井氏:
 そういえば、先日「スタンフェスト」【※】というフランスのイベントに駒林と行ってきたんです。そこで1日あたり3~4回ぐらいの頻度で「『バトライダー』を移植して欲しい」とゲームファンに声を掛けられましたよ。

※スタンフェスト(Stunfest)……毎年フランスで開催されている大規模なゲーム総合イベントのこと。格闘ゲームの大会開催をメインに、シューティングゲームやアクションゲームの実演プレイなども行われている。
(画像はStunfest – Festival des cultures vidéo-ludiquesより)

──なぜ堀井さんにお願いするのでしょう?

堀井氏:
 我々のPS4版『バトルガレッガ』をプレイしたゲームファンなのでしょうね。「あれがリリースできたんだから、次は『バトライダー』だよね」という感じで。

 あとは、ケイブの矢川(忍)さん【※】自身にものすごくネームバリューがあるので、ゲームファンからメールで「“矢川トリロジー”を出してくれ」と要望をいただいたこともあります。

※矢川忍
株式会社ケイブに所属するプログラマー。上に挙がったタイトルのほかに、他社のものも含めると『サマーカーニバル’92烈火』、『鋳薔薇』、『むちむちポーク!』などの制作にも関わっている。

──矢川トリロジーとは?

堀井氏:
 ボクも「何だろう?」と思いつつそのメールを読み進めていったら、『バトルガレッガ』、『バトライダー』、『バトルバクレイド』【※】の3作は「俺たちが考える矢川トリロジーだから、それを出してくれ」とあったんです。

 1本ずつ作るとけっこう時間がかかるし、トリロジーとしてまとめるとなるとさらに大変だけれど、「そんなことも、いつかはやりたいよね」とは思いました。

久保田氏:
 そのトリロジーにも入っているので、やっぱり『バトライダー』を熱望している方々はすごく多いですね。

堀井氏:
 社内にも『バトライダー』を遊びたいと思っている人いっぱいいるじゃん。

久保田氏:
 まあボクもそうですし。個人的にアーケード基板を持っていますから(笑)。ちなみに「バージョンA」を持っていて、社長は「バージョンB」を持っています。「A、Bが揃ったから、移植も大丈夫だね」と社内で話をしています(笑)。

KONAMIの『〜ReBirth』シリーズも人気

堀井氏:
 『GRADIUS ReBirth』【※】を投票していただいたのはウレシイです。画面比率16:9の『グラディウス』は本当に作ってみたいと思っていますので、「KONAMIさん! ご連絡お待ちしています」という感じです(笑)。

久保田氏:
 Wiiウェアの『〜ReBirth』シリーズが全部挙がっていますね。ウチが開発しているのをご存じの方が投票している気がする。

堀井氏:
 『ドラキュラ伝説 ReBirth』【※1】が上のほうにいるね。『魂斗羅 ReBirth』【※2】も入っているなあ。

──Wiiウェアを買おうと思っても、すでにポイントのチャージができなくなってしまった【※】ので、他の機種でも出してほしいというところなんでしょうね。

※Wiiウェアを買おうと思っても、すでにポイントのチャージができなくなってしまった
2018年3月27日に、Wiiショッピングチャンネルでソフトの購入に使うためのWiiポイントが追加できなくなっていることを受けての発言(ソフトの配信自体は2019年1月31日まで行われる)。バーチャルコンソールもWiiショッピングチャンネル内にあるので、同様にポイントを追加して購入することができなくなっている。

久保田氏:
 今から買おうと思っても買いづらい状況ですよね。皆さん、そういう状況も踏まえて“ナイスなタイトル”を挙げますね。

『アレスタ』シリーズはエムツーが版権を持っているので何とかしたい

堀井氏:
 まだ発表にはなっていないけれど、他の会社が移植をやるんじゃないかなと思えるゲームも多いね。『アレスタ』【※】シリーズは、自社版権なので何とかしたいな。

久保田氏:
 『アレスタ』単体のほかに、『アレスタ』シリーズとしても、投票していただいている(笑)。

堀井氏:
 我々が納得いくところまでは完成していないのですが、『アレスタ』は今年30周年ですから、何か頑張りたいなとは思っていますよ。

エムツーは、なぜSteam版を作らないのか

──Steam対応希望として、もうすでにPS4でのリリースを発表している『ケツイ』に1票入っています。

堀井氏:
 やっぱりSteamで欲しいという方は、一定数いらっしゃいますよね。

(画像はケツイ Deathtiny 〜絆地獄たち〜 / M2 Shot Triggersのスクリーンショット)

駒林氏:
 その傾向は、海外だともっと顕著ですね。

久保田氏:
 YouTubeにアップロードしている『エムツーショットトリガーズ』のPVについているコメントは英語だらけで、だいたいSteamについて触れているんです。「なぜSteamじゃないんだエムツー?」みたいな。

堀井氏:
 パソコンだとハード環境がバラバラだから、それに対してきちんとサポートができるかどうかですよね。
 Windows7ならまだなんとかなるのですが、Windows10にした瞬間に遅延の問題が出て、まだ納得のいく解決策がないんですよ。そこがいずれ解決できたら、力を入れたいですけどね。

久保田氏:
 特にシューティングゲームになると遅延が厳しいので、Steam版はずっと唸りながら研究しています。そんなボクはパソコンの多様な画面解像度のことを考えるだけで、ちょっと気持ち悪くなります……。

 しかもパソコンの場合は、最終的にアーケード筐体に入れて遊ぼうとする人もいるそうで、そういう環境までサポートするの? みたいな話になってくる(笑)。

堀井氏:
 たとえば、筐体にパソコンを入れて遊びたい人は、2ドル追加料金を払うとブラウン管の解像度に対応できるようになるとか(笑)。

久保田氏:
 特別モードみたいなね。そういうことも頑張ればサポートできなくはないですけれど、Steamで遊びたい人の中で“わざわざ筐体で遊びたい人”は一握りでしょうから(笑)、まずは一般のゲームファンがどういう環境なのかをリサーチして作っていかないといけないですね。

 ほかにも、改造されがちなパソコン用ソフトゆえ、我々がいつもやっているランキングでズルをされないための対策も考えないといけないですし……やっぱり、ある程度線引きは必要だと思うんですけれど、そういう課題がすごく多いですね。

Nintendo Switch版の『エムツーショットトリガーズ』は研究中

──先ほどから『エムツーショットトリガーズ』の話題が出ていますが、ずばり、Nintendo Switch版の『エムツーショットトリガーズ』はありえるのでしょうか?

堀井氏:
 発売するかどうかはさておき、Nintendo Switchでの動作テストは行っています。ただ、処理速度と遅延の問題がまだ解決していないんです。

 いろいろな人から「エムツーさんはすぐに作れる能力があるんだから、ガジェットとか遊び方にこだわっていないで、もっと早いスピードと安い値段で、ポンポン出したほうがビジネス的には正しいと思うよ」と散々言われるんですよ。まぁ、「それはそうだよね」とは思うんですが。

久保田氏:
 「そうだよね」とは思うんだ(笑)。

堀井氏:
 だってそうじゃん! でも、言われている理屈はわかるんですよ。
 たとえば、想定の半額にして3倍のペースで出して、ハードの勢いがあるうちに何十本出せるかに挑戦したほうがいいのかもしれません。でも、それをいざ行動に移そうとしても、どこか納得できずに体が動かなくなるんです。

 それと、先ほど「遅延の問題」と言いましたが、これは“コントローラーによる遅延”ではないですよ。以前インターネット上で、「Nintendo Switchのコントローラーは操作に遅延がある」と発言していた人がいましたが、ボクはその点については反論をしたくてしょうがなかったんです。
 「ちゃんと作れば、キビキビと動きますよ」と。「遅延がある」と主張しているゲームファンの方々でさえも、タイムラグを感じさせないくらいのものは作れるんです。

久保田氏:
 Nintendo Switch版の『サンダーフォースIV』が、まさにそうですよね。

堀井氏:
 2018年4月14、15日に開催された「セガフェス2018」で『サンダーフォースIV』を実機で展示したのは、「遅延が起きないことを証明できる」と思ったからです。
 というわけで、Nintendo Switch版の『エムツーショットトリガーズ』を出すとしたら、『サンダーフォースIV』と同等の操作感になるレベルまで完成度を上げないと出したくないんですよ。

 そこが今、一番悩ましいところです。旬のハードであるNintendo Switchで、ゲームファンの皆さんが遊ぶものを積極的に探しているからこそ、今すぐに提供したいのですけどね。
 今後、もし正式にリリースが出たときは、「ついに納得の行くところまでたどり着いたんだな」と思ってもらえれば幸いです。

──それまでは「まだ具体的な発売時期は言えない」ということですね。

堀井氏:
 とりあえず「Nintendo Switchでもやっていますよ」という発表だけは、ここでやっておきたい(笑)。

 任天堂さんの欧州から来た方と、ボクはわりと仲良くさせていただいているんですけれど、その方に「エムツーさん、Nintendo Switchでも何か作ってくださいよ」とNintendo Switchの発売前からお声がけいただいていたのです。
 「それならいっそ、Nintendo Switchのローンチに『バトルガレッガ』を出せないかな」と思っていたぐらいですから。

──実現したら、インパクトがあったでしょうね。

堀井氏:
 やりたかったのですが、やっぱり納得のいくところまで仕上げられなくて……。まぁ、別ラインで走っていた『聖剣伝説』が、タイトではありましたが納得のいくところまで調整できて、リリースできたのはよかったですね。

 ところで、ここでゲームファンの皆さんにお聞きしたいことがひとつありまして。
 ゲームによってハードにかかる負荷が違うので、調整にかかる時間によっては、リリースタイトルを当時リリースされた順番どおりに出せる保障がないのですが──それゆえに、調整が終わったタイトルから順に出すのは“アリでしょうかナシでしょうか”?

 個人的に美しいと思うのは『バトルガレッガ』から出すことだと思っているのですが、それが正しいのかどうか悩んでいて……。

──美学の問題なんですね。

堀井氏:
 いくつかあるタイトルのうち、「こっちだったら先に出せるよ」という提案が社内から挙がってくるんだけれど、それでいいのかが悩ましいんです。

──なるほど。堀井さんのお悩みについては、電ファミニコゲーマー編集部のTwitterアカウント宛にご意見をお寄せいただきましょう。

堀井氏:
 発表はしていないけれど相談はできるということは、今のネット社会だとありなんじゃないかなと思うんです。
 今回の電ファミさんのアンケート結果はすごかったですから。こうやって希望タイトルが並ぶと壮観なんですよ。ただ、「なんで『アルペンレーサー』が入っているのか」と思ったりはするけれど(笑)。

駒林氏:
 気持ちはわかるけど、数あるレースゲームのなかでもこれが来たのはちょっとビックリですよね。

ナムコの基板「SYSTEM22」のタイトルは、移植されていないゲームの宝庫

──アンケート結果の中で、コンシューマーハードの性能的に移植が無理そうなのはありますか?

堀井氏:
 時間さえあればなんとかなるのばかりだとは思うんだけれど。

久保田氏:
 実機のハードがないからはっきりしたことは言えませんが、現行ハードならどれもいけそうですね。

堀井氏:
 でも、遅延とか遊び心地とか、そのあたりの対策まで含めて全部やろうとすると大変なぐらいだよね。

久保田氏:
 そもそもコントローラーでしか遊ぶ手段がないとなると結構難しいですね。レースゲームは一番わかりやすくて、「アクセルとペダルをどうするの」というところからまずはじまるので。
 まあ、そういうコントローラーもありますけどね。ないものだと、やっぱりその操作の再現性が厳しいんですよ。

──操作系で言うとアンケートに挙がっている『メタルホーク』【※】とか?

久保田氏:
 これも難しいですね。ゲームの中身自体の移植は大丈夫だと思うんですけど、筐体の傾きとか操縦桿の操作はどうしようもない。だから、我々が3DSの『セガ3D復刻アーカイブス』でやっていたような、ああいう体感らしさを少しでも出すしかないですね。

──ダンボール製のコントローラーを付けるのはどうでしょうか(笑)。

久保田氏:
 『Nintendo Labo』でJoy-Conにはいろいろな使い道があることが立証されましたから、特殊なインターフェイスで遊ぶゲームは、確かにNintendo Switch向きかもしれないですよね。

堀井氏:
 あれを任天堂がやっているのが本当にすごいと思いますよ。ダンボールの型紙配布とかやっていいのかなと(笑)。それが良いなら、移植ができる体感ゲームって一気に増えると思うんだけどな。
 でも、壊れたらどうするんだろう……。ダンボールだし、また作ればいいのか(笑)。

久保田氏:
 1票入っている『アルペンレーサー』【※1】なんかも、足用のコントローラーが必要なので、操作方法が根本的に解決できるなら、大型の体感ゲームには出て欲しいタイトルが多いですよね。
 従来のコントローラーで操作する場合はどうするんだろう、というゲームが本当に多いので。『サイバーサイクルズ』【※2】なんかもアンケートに挙がっていますね。

駒林氏:
 それにしても、みんな「SYSTEM22」【※】好きだなー(笑)。

※SYSTEM22
ナムコが開発したアーケード用システム基板のひとつ。1993年の『リッジレーサー』~1996年の『エースドライバー・ビクトリーラップ』まで、7本のゲームが発売された。

久保田氏:
 『アルペンレーサー』と『サイバーサイクルズ』は「SYSTEM SUPER22」で、移植はされていないですね。SYSTEM22と「SYSTEM SUPER22」【※】は、移植されていないゲームが多い。SYSTEM22の『リッジレーサー』も、PS版は家庭用向けにアレンジされているため、アーケード版の完全移植とはちょっと別物ですし。

 SYSTEM21だとWiiのバーチャルコンソールアーケードで『スターブレード』とか、意外とあるんですよ。SUPERじゃないほうのSYSTEM22が、そのままの内容で移植されているゲームはないですね。

※SYSTEM SUPER22
ナムコが開発した「SYSTEM22」をベースに、グラフィック性能の向上をはかったアーケード用のシステム基板。1995年の『サイバーサイクルズ』~1997年の『アルマジロレーシング』まで、11本のゲームが発売された。

堀井氏:
 SYSTEM22が活躍していた頃は、まだ日本のビデオゲームのVDP【※】がほぼ世界一の性能でしたから、華がありますよね。

※VDP:
Video Display Processorの略称で、コンピュータの映像出力を行うプロセッサのこと。

久保田氏:
 技術の最先端がアーケードゲームだった最後の時代ですね。当時はSYSTEM22とセガの「MODEL2」【※】が戦っていた時代。

※MODEL2
セガが開発したアーケード用システム基板のひとつ。セガ初の3Dポリゴン基板「MODEL 1」の後継機であり、3Dポリゴンにテクスチャーマッピングを施すことで更に表現が強化されている。 MODEL2で動くゲームとしては『デイトナUSA』『バーチャファイター2』などが有名。

堀井氏:
 SYSTEM22に積んでいるVDPは、ナムコさんの内製なのですが、NVIDIAにも負けない技術をお持ちだったと言ってもいい。むしろこれを見て、NVIDIAが設立されたんじゃないかとさえ思えるぐらい(笑)。

久保田氏:
 そういえば、昔『レイブレーサー』【※】のPC版が出るって言われたのに中止になっちゃいましたよね。

堀井氏:
 「パワーVR」【※】で出る予定だったね。

※パワーVR
イギリスのビデオロジック社(現:イマジネーションテクノロジーズ社)が開発したグラフィックチップ。古くはパソコンのPC-98シリーズ用として提供されたほか、後年では同系統のチップ(PowerVR2)がドリームキャストに搭載された。

久保田氏:
 PC-9821で出るって言うからパソコンを買ったのに、そのまま頓挫して終わっちゃった(笑)。結局未だに移植されてないんですよ『レイブレーサー』。だから基板を買っちゃいましたけど。人気が高い作品なんですけどね。

堀井氏:
 まあ、そういう体感ゲーム系の移植もアンケート結果に多い気がしますが、それはやっぱりセガさんの体感ゲームを移植してきたウチだからでしょうね。

アンケート結果を元に、本気で移植タイトルの商品化を検討しよう

堀井氏:
 なんか放談になっちゃってますけど、大丈夫ですか(汗)。

久保田氏:
 まとまらないですよコレ。このリストだけでずっと語っていられるぐらいですもん。

──そろそろ終電がなくなるので、このへんで……この中から本気で移植タイトルの商品化をしていただけるとウレシイです。電ファミの企画発! ということで、ぜひお願いできないでしょうか?

堀井氏:
 そうですねぇ……『エスプレイド』が1位なので、順当に行けばそこから検討すべきなのですが、現在このタイトルの版権はケイブさんではなくアトラスさんがお持ちですから、そもそも「移植OK」をもらえるかどうかはまだわかりません。

 ということで、『エスプレイド』のほかに15位ぐらいまでの中から、思い入れもあるタイトルを中心にいくつか選ばせてもらって、並行して動いてみたいですね。

久保田氏:
 1本に絞ってダメになると痛いので、保険を用意しましょうということですね(笑)。

堀井氏:
 2位の『ザ・グレイト・ラグタイムショー』と、同じデータイーストタイトルで13位に入った『エドワードランディ』については、本気で動きたいです。

──この3本、ぜひご検討お願いいたします!

駒林氏:
 あ! 個人的には1票入っていた『エクイテス』も検討したいです。

堀井氏:
 では『エスプレイド』『ザ・グレイト・ラグタイム・ショー』『エドワードランディ』の3本+αとして『エクイテス』が移植候補ということで、メーカーさんに移植交渉をしてみます。

久保田氏:
 交渉がうまくいけばいいですが、最悪「1本も出ない」という可能性もありますので、ご了承ください(笑)。(了)


 というわけで、皆さんに投票していただいた約500票以上(複数回答可)のアンケートの中から、『エスプレイド』、 『ザ・グレイト・ラグタイムショー』『エドワードランディ』『エクイテス』の4本について、版権元のメーカーさんと移植交渉を行うことになった。

 いずれも人気があることを版権元には伝えるつもりだが、実際に交渉をしてみるまで結果はわからない。最悪、全部のタイトルが移植できない可能性もある(もちろん全部移植できる可能性も?)。
 エムツーさんの動きがありしだい、また電ファミでレポートしたいと考えているので、読者の皆様にはしばらくお待ちいただきたい所存だ。

【プレゼントのお知らせ】

【あわせて読みたい】

 

『魔法大作戦』や『バトルガレッガ』…眠れる名作オールドゲームを現行ハードへ――“移植”の匠集団「エムツー」に聞いたゲーム保存事情【移植希望タイトル募集!】

 ついには自らがパブリッシャーとなって、数々の名作を眠りから覚ますというエムツー。これは、オールドゲーマーにとって、とても喜ばしいことである。……とはいえ同じ業界である華やかりしソーシャルゲームのような需要とは縁遠い、地味な事業と言わざるを得ない。だが、それを承知で彼らはクラシックゲームを移植し続けている。

 「自分が好きなモノは、きっと他の誰かも好きだから」

 聞き手には、同じくエムツーに所属する駒林貴行氏(BEEP秋葉原店・元店長)を迎え、ゲーム愛に満ちた彼らの言葉から、移植仕事人の素顔に迫る。

関連記事:

マニア垂涎! ゲームのレアなお宝がゴロゴロ。中古ショップBEEPの巨大倉庫にはゲームの歴史が眠る…元ファミ通・名物編集長と行ってみた

貴重なレゲー1万本と雑誌を収集するフランス没落貴族!?→自宅に凸して数奇な人生を聞いたら、ただのガチゲーマーだった件【NPOゲーム保存協会:探訪レポ】

インタビュアー、ライター
おはようからおやすみまで、ゲームのことを考えたり考えなかったりしながら暮らしているフリーランスのライター・編集者。
「電撃Nintendo」を中心に長年ゲーム雑誌の仕事をしていますが、最近は他ジャンルのお仕事もいただいています(取材もの中心)。
エムツーさんはアーケード用の筐体と基板がどっさり揃った、ある意味ゲーマーが夢見る職場ですね。
会社に取材でおじゃまして「ここはゲーセンかな?」と思ったのは初めてです。
私もアーケード筐体と基板を何枚か持っていますが、これだけの量はなかなか揃えられません。
これだけ基板があるなら、そのうち「ゲームセンター・エムツー」を開店するのではなかろうかと妄想します(もしくはVRで)。
インタビュアー、ライター
「電撃セガサターン」、「電撃PS2」、「電撃オンライン」、「電撃レイヤーズ」、「iモードで遊ぼう!」、「mobileASCII」、「デンゲキバズーカ!!」と数々の媒体を渡り歩いて来た40代ファミコン世代の編集者。好きなハードは「ファミコンバージョンのゲームボーイミクロ」。
Twitter : @nkjdfng
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
電ファミのDiscordでこの記事について語ろう!

関連記事

SNSで話題の記事

新着記事

新着記事

連載・特集一覧

カテゴリ

ゲームマガジン

関連サイト

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ