7月20日に配信が開始されて以降、日本でも過去に類を見ないほどの盛り上がりを見せる『ポケモンGO』。レアポケモンが捕まえられる休日の公園には人が殺到し、都内では世田谷公園(ミニリュウが出現)や新宿御苑(ピカチュウが出現)といった名所が「ポケモンの巣」なんて呼ばれてしまうほどの人気ぶりだ。
一方で、出雲大社や大阪城などをはじめ、全国各地で「除外要請」を出す施設が続出している。こうした動きに対して、政府はどんな対応を考えているのだろうか。また、官邸は除外要請を出すのか? そもそも、『ポケモンGO』自体、政府としてはどういう見解をもっているのだろう? というのも気になるところだ。
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こうした疑問に対して、7月27日の官邸の記者会見でニコニコ生放送の記者の質問に答えて、菅官房長官が正式なコメントを発している。残念ながら大手メディアでは紙幅などの制約で発言が切り取られてしまっているので、該当箇所をあえて書き起こしてみると、以下の通りだ。
菅官房長官のコメント書き起こし
Q:
ゲームアプリ『ポケモンGO』について、最高裁が、ゲームのアイテムを入手できる場所などから全国の裁判所を除外するようゲームの開発会社に申し入れました。これに対して、駅や電車、道路、病院などと比較して、安全確保上、大きな支障がある場所ではないのにどうしてなのか、今後法規制につながっていくのではないか、という疑問や反発の声があがっています。
今回の最高裁の要請と、最高裁の除外要請による影響などについてご所見をお願いいたします。
菅官房長官:
まず、最高裁の申し出については承知していません。そのうえで一般論で申し上げれば、施設の管理者が、施設の管理権限に基づいて、施設の管理・運営上、必要な措置を取ることは当然のことであると非常に思います。その判断の一つ一つに政府としてはコメントすべきではないと思います。
ご指摘の『ポケモンGO』についてでありますけども、公共マナーや安全性など、懸念を、疑念を持たれる方もいらっしゃるということも事実です。内閣サイバーセキュリティーセンターより注意喚起を出しているところであり、スマートフォンを安全に使っていただくためにも、こうした注意点はしっかり守ってほしいと思っています。
Q:
ドローンについても様々な事件やリスクがありましたが、成長戦略においては「世界最高水準のIT社会を実現する」ことを掲げ、「ドローン」を活用した新産業の創出を打ち出しています。
今回の『ポケモンGO』を含め、これを足掛かりとして、今後現実空間を利用したゲーム、エンターテイメント市場はさらに活性化する可能性が高いわけですが、この点についてご所見をお願いします。
菅官房長官:
まず、今回日本で作られたコンテンツゲームが、エンターテインメント市場を広げて世界中の人に親しまれている。このことは非常に嬉しく思っていますし、歓迎をするということを今日まで申し上げております。
また、そこで培われたビッグデータとIoTがさまざまな産業に波及効果を及ぼす。そこは大いに期待をしていきたいと思います。Q:
以前の会見の質疑から改めて確認させていただきたいのですが、ゲーム開発会社に対して、ゲームのアイテムを入手できる場所などから官邸、公邸を除外するよう特に政府からは要請はしない、という理解でよろしいでしょうか。
菅官房長官:
従前より官邸においては、特に許可された場合を除いて写真の撮影を禁止をいたしております。また来月には、児童または生徒を対象とした、官邸及び公邸の特別見学を実施する予定であります。その中で引率者を除いてスマートフォン等、手荷物の持ち込みを禁止しております。
このように官邸及び公邸については、すでにセキュリティーの確保について適切に進めているところですので、現時点で、これに加えて『ポケモンGO』に対して特別な要請を行うということは考えておりません。
……なんというか、非常にまっとうというか、バランス感覚のある回答。少なくとも、政府として何かしら規制や除外を促すようなコメントを発する考えはないようで、あくまで「各施設の判断による」とのスタンスであった。
『ポケモンGO』にまつわるこの手の話題は、遊ぶべきではない場所でゲームをしてしまう、入っちゃいけない場所に入ってしまうなど、どちらかというと、マナーやモラルの問題に近いものが多いように思う。ただこれは、『ポケモンGO』に限らない一般常識の問題であって、スマホやアプリ全般にも言える話。ニュースメディアでは、「ポケモンGOが規制された、禁止された」といった体の言葉が踊りがちだが、爆発的な広がりを見せた結果、『ポケモンGO』がそうした問題を表面化させた/矢面に立つことになった……という見方はできそうだ。
ともあれ。政府が1タイトルに対して公の場で言及することは大変珍しいわけだが、それだけ『ポケモンGO』が社会に対して大きな影響を与えているということでもある。『ポケモンGO』のもたらす影響についても、「歓迎する」「期待したい」と、前向きなコメントが見られることから、決して政府が『ポケモンGO』を敵視しているわけではない。「Cool Japan」の名の下に、日本のアニメや漫画などのコンテンツには支援施策などが見られる国内だが、ゲームに関してはどこ吹く風。『ポケモンGO』をきっかけに、より多くの人にゲームの持つ可能性に目を向けてほしいと切に思う次第である。
ちなみに。一般人はセキュリティ上の問題でスマホ自体を官邸に持ち込めないとのこと。つまり、「官邸では『ポケモンGO』を遊ぶことすらできない」。まぁ、当然と言えば当然だが、「官邸にはどんなポケモンが?」と興味津々のポケモントレーナーにとっては、やや悲しいお報せとなってしまった。
文責/編集長TAITAI
※記事中の質疑応答が開始される30分ころから再生されます。
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