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ついに”お米”も作れるようになった『ファーミングシミュレーター25』の開発者インタビュー。再現度に対する徹底的なこだわりや、ユーザーからのフィードバックを反映する真摯な姿勢が見れた

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Farming Simulator 25(ファーミングシミュレーター25)』は、現実に存在する農業機械が登場する農家シミュレーションゲームだ。現実と見紛うほどの“リアリティ”が特徴となっており、農業機械は内装のデータまで細かに再現されている。

本作は2024年11月12日にPS5、Xbox Series X|S、PCに向けて発売され、PC(Steam)版では記事執筆時点で1万3385人のうち、81%から高く評価され「非常に好評」を獲得している人気作だ。

最新作である『25』ではアジアを舞台にお米が作れるようになり、日本の農業機械メーカーであるISEKIからも田植え機、コンバイン、トラクターの3機がゲーム内に登場する。

今回は、開発元であるGIANTS Softwareの開発チームのひとりであるMartin Rabl氏に『ファーミングシミュレーター25』についてメールインタビューを実施した。本作をすでにプレイした方はもちろん、“お米”を育ててみたい方も、ぜひチェックしてみてほしい。

聞き手/豊田恵吾
文/TsushimaHiro
編集/anymo

ユーザーにお米をプレゼントするキャンペーンの反響は?

──Steamのウィッシュリスト登録でお米をプレゼントするキャンペーンを開催されています。とても日本らしいプロモーションだと思ったのですが、最初にアイデアを聞かされたときはどう思われたのでしょうか? また、反響や手応えなど、関連するエピソードがあればお聞かせください。

Martin Rabl氏
アジア市場のパートナーであるSEGAからこの提案をいただいた際、とても面白いしワクワクするような企画だと感じました。日本独自の文化に合わせたユニークなアプローチでありながら、『ファーミングシミュレーター 25』で新たに加わった稲作機能にぴったりだと思いました。

このプロモーションは、プレイヤーの皆さんとの新たなつながりを築くだけでなく、稲作という重要な作物をゲーム内で忠実に再現するという私たちの取り組みを象徴するものでもあります。多くの方から大変好意的な反応をいただいており、このプロモーションを通じて多くのプレイヤーとつながりを持てたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

──アジアの稲作が『ファーミングシミュレーター25』で追加されていますが、どのように捉えていますか?

Martin Rabl氏
稲作の追加により、畦畔の作成や水の管理、専用機械の使用といった、独特で魅力的なゲームプレイ要素が実現しました。これらの新しい仕組みはリアリティを一層深め、多様な農業体験を提供します。

また、今回は2種類の稲作を実装しており、アジアでは一般的な温室での苗の育成と冠水田での植え付け、そして西洋で見られる乾いた土壌に種を植えてから田を冠水させる方法を選べます。いずれの方法も後々の水管理が求められるため、さらなる戦略性が加わります。

新機能の中でも特筆すべきは、土壌変形やGPS操作アシスト、改良されたAIヘルパー、そしてGIANTS Engine 10によるビジュアル面の進化です。

リアリティを突き詰めた本シリーズ。なぜ、毎年新作を発売できるのか?

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(画像は『Farming Simulator 25』のSteamストアページより)

──毎年新作を発売されるというのは、スポーツゲーム以外では珍しいことですし、実現するのは難度が高いことだと捉えています。本シリーズはなぜ「毎年新作を発売する」ということが実現できているのでしょうか? また、新作を手がける際にもっとも意識されていることはどのような部分でしょうか?

Martin Rabl氏
私たちはマルチプラットフォーム戦略を取っていますが、毎年リリースしているわけではありません。最新作の『ファーミングシミュレーター 25』は、PS5、Xbox Series、PC向けに開発された『ファーミングシミュレーター 22』の後継作であり、この2作のリリース間には3年の時間を費やしています。

その間、開発チームは専用ゲームエンジンの大幅な改良を行い、新しい農機、動物、作物、そしてゲームプレイ要素を追加することができました。

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(画像は『Farming Simulator 25』のSteamストアページより)

Martin Rabl氏
一方で、モバイル版も展開しており、2023年5月には『ファーミングシミュレーター 23』をNintendo Switchおよびモバイルプラットフォーム向けにリリースしました。これら2つのプロジェクトは、プラットフォームごとの技術的な違いを考慮し、別々に開発されています。

『ファーミングシミュレーター 25』には多数の新要素が盛り込まれ、3年間待ち続けたプレイヤーの皆様に新しい楽しみを提供できたので、私たちとしても非常に嬉しく思っています。

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(画像は『Farming Simulator 25』のSteamストアページより)

Martin Rabl氏
私たちの優先事項は、リアルさの追求、継続的な改善、そしてコミュニティーからのフィードバックです。リアルな農業体験を再現しつつ、新しいプレイヤーにも親しみやすいデザインを心掛けています。

実在の農機ブランドと連携し、最新の機械を導入するほか、コミュニティーの声を反映させる努力を続けています。

そして、プレイヤーの皆様を驚かせる要素も欠かしません。『ファーミングシミュレーター 25』では、初めて天候イベントを導入しました。これにより、自然災害による損失というリスクが追加されましたが、この機能はオプションであり、ゲーム設定で無効化できます。

プレイヤーが大地や自然とのつながりをリアルに感じられる環境の再現に力を注ぐ。フェリーの導入も検討中

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(画像は『Farming Simulator 25』のSteamストアページより)
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(画像は『Farming Simulator 25』のSteamストアページより)

──本シリーズは動植物や大地、水といった豊かな自然の美しい描写がある一方で、農機などの人工物も緻密かつリアルに登場しています。このコントラストは本作の魅力のひとつだと思うのですが、世界の描写で意識されていることがあればお教えください。

Martin Rabl氏
デザインの観点では、プレイヤーが大地や自然とのつながりをリアルに感じられる、没入感と調和性の高い環境の再現に焦点を当てています。アメリカのマップでは「水」のテーマに焦点を当てており、大きな川がマップを横切っていますが、その雄大な川を渡るためにフェリーの導入も検討中です。

私たちの風景は、植物や建物、土壌のテクスチャー、動的な天候や照明効果を駆使してリアルさを追求しています。アジアのマップでは、近代的な都市と農村の景観を対照的に表現しました。

全体的に、農機の描写には最大限の注意を払い、実際のデザインや機能を忠実に再現しています。ブランドメーカーと緊密に連携することで、出来る限り本物に近い世界を作れるよう心がけています。

農業用語の日本語翻訳は、専門家と協力して達成

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(画像は『Farming Simulator 25』のSteam版のゲームプレイ映像より)

──オンラインでのプレイも本シリーズの大きな魅力となっています。自由度の高さから、プレイヤーはさまざまな遊び方をされていると思いますが、開発チームが驚いた遊び方のエピソードがあればぜひお聞かせください。

Martin Rabl氏
もちろんあります!

プレイヤーがオンラインセッションを通じて創造的で予想外な体験を生み出す様子を、私たちは数多く目にしてきました多くのコミュニティーがロールプレイ形式で色んな役割分担を楽しんだり、有名な農場や風景を再現する活動に挑戦していました。

このような創造性とプレイスタイルの多様性こそが、私たちのコミュニティーの魅力の一部であり、PCやコンソールでのMOD使用をサポートするオープンなゲームシステムがその基盤となっています。

──さまざまな実在メーカーブランドとコラボレーション(実名企業がゲームに参加)を行われていますが、日本メーカーとのコラボでのエピソードがあればぜひお聞かせください。

Martin Rabl氏
世界的ブランドとの提携は、非常に興味深く、実り多い経験でした。どの国においても、精密さと細部に対する情熱は共通しており、技術とその成果を愛する人々の姿勢に触れることができます。

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(画像は『Farming Simulator 25』のSteamストアページより)

──日本語は独特の言語ですので、ローカライズは非常に難度が高いと思うのですが、日本語にローカライズする際に注意されたことや、いまだから笑えるエピソードなどがあれば、お聞かせください。

Martin Rabl氏
ゲームが日本のプレイヤーに自然で臨場感のあるものとして届けられるよう、ローカライズには細心の注意を払っています。

特に農業用語に関しては、日本のプレイヤーに正確に伝わるよう工夫を凝らしています。この過程を私たちで達成するのは至難の業ですので、専門家と協力して、適切な翻訳とアドバイスをいただきながら進めています

──日本のゲームファンへ、本作の見どころを含めたメッセージをお願いします。

Martin Rabl氏
日本のFarmingファンの皆様、私たちは『ファーミングシミュレーター 25』を皆様にプレイしていただけることを心から楽しみにしております!

今作では、米作りや東アジアマップなどの新要素が登場し、日本およびアジアの農業文化に深く根ざした体験をお届けします。

ゲーム内では、リアルな農機具、美しい風景、そして詳細な天候システムが融合し、没入感たっぷりの世界が広がります。作物を育てるもよし、オンラインで協力し合うもよし、田舎の平穏を楽しむもよし。自由に、気ままに、プレイを楽しんでください。

皆様のご支援に心より感謝申し上げるとともに、皆様が作り出す独創性あふれる農場が見られることを楽しみにしております!


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(画像は『Farming Simulator 25』のSteamストアページより)

2008年に最初の作品が発売された『ファーミングシミュレーター』シリーズも、ついにナンバリングタイトルが『25』まで到達した。今回のインタビューで、制作者サイドの徹底的な”再現度”へのこだわりや、ユーザーからのフィードバックを尊重していることが改めて確認できた。

余談だが、筆者は本作に登場する農業機械のメーカーである井関農機株式会社(ISEKI)に招かれ、実際に農業機械の開発を担当している人がデータを作成し、ゲーム制作会社に送っていたことも教えてもらった。

『ファーミングシミュレーター25』に登場する機械は、まさに本物に近しいビジュアルと動きが徹底的に再現されたものであることが伺える。そこには、ゲームをプレイしたユーザーだけでなく、農業機械を扱うメーカーにフィードバックを送った農家さんたちの意見も反映されているということだろう。

ここまでリアルだと、いずれは本作で農業のイロハを学び、ゲームのコントローラーで農業を営む時代が来るのかもしれない。

ライター
MOTHER2でひらがなを覚えてゲームと共に育つ。 国内外問わず、キャラメイクしたりシナリオが分岐するTRPGのようなゲームが好き。 Divinity: Original Sin 2の有志翻訳に参加。 ゴーストオブツシマの舞台となった対馬のガイドもしている。 Xアカウント(旧Twitter)@Tsushimahiro23
副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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