「ロボットアニメ」……古くは『鉄腕アトム』や『マジンガーZ』に端を発し、その後の『機動戦士ガンダム』『新世紀エヴァンゲリオン』『コードギアス 反逆のルルーシュ』など、現在では「歴史の転換点」とも言える数多くの名作を生み出してきた、アニメーションの一大ジャンルである。
そんな「ロボットアニメ」は、日本国内に留まらない人気を誇る。
ハリウッドの監督にも多大な影響を与えた『ガンダム』や『エヴァ』、フィリピンで実写化された『超電磁マシーン ボルテスV』に、ヨーロッパ諸国で圧倒的な人気を誇る『UFOロボ グレンダイザー』など……ロボットアニメの魅力と熱さは、海外にも伝播している。
そして、「ロボットアニメが好きでたまらない!」と語るのが、Yostarの代表取締役社長を務める李衡達氏。彼は中国出身でありながらも、かなりのロボットアニメ好きなのだ。過去のインタビューでは「『ザンボット3』が大好き!」と語るほどのガチっぷりを見せていたり、なぜか『アズールレーン』が『ボトムズ』とコラボしていたり……とにかく、李社長のロボアニメ愛はガチである。
そんなロボアニメガチ勢な李社長と、今回トークを交わすのは、かつて『スーパーロボット大戦』シリーズに関わっていた寺田貴信氏と森住惣一郎氏! ここに、もはや何十年とロボットアニメに関わり続けて来たであろうおふたりと李社長の「ロボットアニメを語り尽くす」座談会が実現したのだ!!
今回の記事、端的に言うと本当に「ロボットアニメの話だけ」で2時間分お送りします。読者のみなさまには、たっぷりとお三方のロボアニメトークを聞いていただこう!
もしかしたら結構レアかもしれない寺田氏と森住氏の「ロボットアニメの原体験」語りから、李社長の語る「中国のロボットアニメ事情」など……心の底からロボットアニメが大好きなお三方のトークから、「ロボットアニメの魅力」にも迫るような記事となっています。
そもそもロボットアニメが好きな方も、『メガゾーン23』ファンの方とか『エルガイム』ファンの方とか『レイズナー』ファンの方とかも楽しめる座談会になっているはずです。というか、話題に出た作品の数がもはや「大戦」と言える物量になっちゃってます。
みんな……ついてこられる!?
ぜひ、最後までお楽しみください。
余談ですが、今回の座談会は寺田さんと森住さんの大ファンだというYostarの社員さんが、『アズールレーン』の開発会社Manjuuからプレゼントされた高級なお茶を振る舞うところからスタートしました。な、なんて素敵な……。
寺田さんと森住さんの「ロボットアニメの原体験」とは
──これ、もしかして中国の本場のお茶でしょうか?
李氏:
ええ。多分1キロ10万円ぐらいのやつです。
寺田氏:
ひぇ~~!
「10万円のお茶」って……あるんだろうなとは思っていましたけど、実際に出てくるとすごいですね。こんな高いお茶、飲んだことないです。
森住氏:
そんな高いお茶なんですね!?
さすが、寺田さんが来ると待遇が違うなぁ(笑)。
──このお茶、すごく美味しいですね。
寺田氏:
まろやかな舌触りで……いやぁ、「10万円」って感じですね。
「10万円」って言われなかったら、もっと雑に飲んでます。
森住氏:
値段を言われなかったらガブ飲みですけど、僕ら庶民は「10万円」と言われると必死に味わおうとしますから(笑)。
寺田氏:
「じゅ、10万のお茶だぁ~!」って(笑)。
李氏:
我々もプレゼントじゃなかったら、基本買わないです。
一同:
(笑)。
──今回の座談会は、ご用意させていただいた「歴代ロボットアニメ年表」をご覧になっていただきながら進行できればと思います。まず最初に、お三方の「一番最初に見たロボットアニメ」をお聞かせください。
寺田氏:
やっぱり「ロボットアニメの原体験」で言うと、『マジンガーZ』になります。一応最初も見ていたはずなんですが、特に後半をリアルタイムで見ていた記憶がかなり焼き付いています。
しかも、『マジンガーZ』放送時の「超合金」などの商品展開も合わせたブームがすごかったんですよ。「ガンプラブーム」とはまた別の意味で、否応なしに盛り上がっていましたね。これ、僕と同い年くらいの人だと共感を得られると思うんですが、知らない人に話すと全く伝わらなくて……。
森住氏:
当時を知らない人からすると、もはや「知識」としての話になっちゃうんですよね。
寺田氏:
当時のポピー【※】さんが、『仮面ライダー』などでテレビ作品とおもちゃを連動させる商品展開をされていて。それを大々的にロボットアニメで行ったのが、『マジンガーZ』でした。今でこそアニメや特撮で当たり前になっている「テレビの放送と同タイミングでおもちゃが発売される」という連動も、昭和40年代からやっていたんですよね。
さらに当時はSNSなんて存在していないから、僕らにとっては「児童向けテレビ雑誌」が主な情報源でした。僕は『グレートマジンガー』は、雑誌の記事で知って。現在も特撮作品は主役ヒーローのパワーアップ形態が先に児童向けテレビ雑誌に載っていたりしますが、そういうことは僕が子供だった頃からありました。
あとは子供同士の口コミですね。しかも、当時は家に録画する機材もなかったから、『マジンガーZ』はオールウェイズリアタイ視聴ですよ。だって、そもそも録れないから……。
※「ポピー」
かつて存在した、バンダイナムコグループの玩具メーカー。『仮面ライダー』の「変身ベルト」や「超合金マジンガーZ」など、現在にも続くおもちゃを多く生み出した。
森住氏:
まず機材がなかった時代ですからね。
一般家庭にとって、ビデオはまだ高い時期だったと思います。
寺田氏:
そして「親父とのチャンネル競争」に勝たなきゃいけないんですよ。
森住氏:
親父って、大体野球か相撲見ますからね(笑)。
寺田氏:
だから、今のYouTubeなどの「何月何日から配信するから、みんなで集まって見よう」という同時視聴も、よくよく考えてみると僕らの原体験に割と近いものがあるんですよね。特定の曜日の何時何分に放送され、みんなで同じ作品を見て、学校で話をする……。
そういう一連の流れが、『機動戦士ガンダム』の頃には日常になっていました。
僕らは「ガンプラブーム」直撃世代だから、「小学校の1クラス男子全員でガンダムの話をしている」ということが本当にありました(笑)。
森住氏:
要するに、「ガンダムを見ていないと話題に入れないから見る」みたいな空気も形成されていました。ある意味、ネット社会の現代と変わっていないかも……?
李氏:
つまり、「ガンダムハラスメント」にはそれぐらいの歴史があると。
森住氏:
あー! まさにそうです! 人は一人では生きられない。
一同:
(笑)。
寺田氏:
そもそも、当時は今ほど娯楽も多くなかったですから。必然的にみんなが「それを見るしかない」みたいな空気になっていたし、今よりも染まりやすかったのだと思います。
だから僕は、マジンガーZに兜甲児がパイルダーオンした時から、ロボットアニメのファンです。そこからもう54歳になりましたけど、結局それを仕事にしていて……。そして、人から「あなたは特撮やロボットアニメをいつまで見るんですか」と聞かれることがあるんですが、
もう「死ぬまでに決まってんだろーが!!」って話ですよ!!(笑)
一同:
(笑)。
寺田氏:
だから、「ロボットアニメの原体験がマジンガーZで良かったなぁ」と思います。そこからのおもちゃの展開などをすべてリアルタイムで見れたのはラッキーだったと思いますし、それが結果として『スパロボ』の仕事に繋がりましたから。
森住氏:
僕も『マジンガーZ』は見ていたんですが、どちらかというと持っていたおもちゃは『グレートマジンガー』だったような……。
寺田氏:
君はあれか、「グレート派」か?
森住氏:
そう、単純な世代で言えば『グレートマジンガー』なんですよ(笑)。
だけど、『グレート』自体はそこまでハマったわけではなかったんですよね。
寺田氏:
じゃあ『グレンダイザー』派?
森住氏:
あぁ、たしかに僕は『グレンダイザー』の方が好きですね。
寺田氏:
僕らの世代って、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『グレンダイザー』で4年ぐらいの間ないのに、割と「何派か」の論争が起きがちなんですよね。あ、いや、もしかしたら、僕の周りだけかな(笑)。
森住氏:
ただ、『グレンダイザー』が放送されていた頃の僕って2歳なんですよね(笑)。
だからリアルタイムではなく、仕事で『グレンダイザー』を扱うようになってから、「あの3作の中ではグレンダイザーが好きかな」と思うようになりました。実際の「体験」として焼き付いているのは、幼稚園くらいの頃に見ていた『無敵鋼人ダイターン3』【※】ですね。
仕事で触れる機会もあって、『ダイターン3』は何度か見返しているんですけど……いま見ても「すごいな!」と思うのが、当時流行っていた『007』的な主人公像ですね。いわゆる熱血系で正義のために戦う主人公ではなく、どこか飄々としている……そんな「破嵐万丈」のキャラクター性がすごいんですよね。しかも「ボンドガール」みたいな感じで、周りに女性キャラが配置されています。
李氏:
たしかに『ダイターン3』は女性キャラが多いですよね。
※「無敵鋼人ダイターン3」
1978年から放送された、日本サンライズ制作のロボットアニメ。富野由悠季氏が監督を務めた。主人公の「破嵐万丈」を中心に、比較的コミカルかつエンターテイメント性の高いストーリーが描かれるのも特徴。
森住氏:
コメディもあるし、シリアスもある。
しかもロボットだけじゃなくて、主人公自身も強い!
あの「飛んでくる武器ケース」とか、すごい好きでした。飛んできたケースを開けると中にスナイパーライフルが入っていて、その場で組み立てて戦ったり(笑)。
そしてもちろん、ロボットとしての「ダイターン3」も強い。さらに戦う敵は謎めいているし、作品自体も衝撃的なラストを迎える……。
そんな初めての衝撃を受けたのが、僕にとっての『ダイターン3』ですね。いま思うと『ダイターン3』は自分がシナリオを書く時の芸風にも影響を与えていますし、やっぱり「破嵐万丈」的な主人公像を描いている気がします。
寺田氏:
えっ、そうなの!? それは初耳!
森住氏:
そうですよ!
だってハーケン【※】とかもそうじゃないですか。基本は飄々とした主人公像でありながら、女の子をはべらせて世界を救っちゃう……みたいな(笑)。
ただハーケンの場合、そこに『スペースコブラ』のイメージとかも入ってるかなと。とにかく、自分の中ではかなり「破嵐万丈的な主人公」です。
※「ハーケン・ブロウニング」
森住氏がディレクターを務めた『無限のフロンティア スーパーロボット大戦OGサーガ』の主人公。「クールでニヒルな性格」と言われている。後の派生作品にも何度か登場する人気キャラクター。
寺田氏:
万丈さんってあるゲームのせいでなんとなく「20代後半」みたいなイメージがあるけど、実は10代なんですよね……。
森住氏:
たしか18歳だったと思います(笑)。
それで言ったら『勇者ライディーン』のひびき洸だって、あれで14歳ですからね。
寺田氏:
いやいや。それはバイクに乗ってるのがおかしいだけで、他は全然普通でしょ!
森住氏:
でも、結構大人びた発言もしてましたよね?
寺田氏:
それは俺が作った『新』が付くゲームのせいだよ!
一同:
(笑)。
李氏:
当時のアニメにありがちな年齢設定ですね!
そもそも日本のアニメの中学生~高校生は。だいたい大人っぽいじゃないですか。
森住氏:
いわゆる「年相応」に考えてみると、意外と「その年齢で、そこまで勇敢に戦えなくない?」と思えてしまうという……。だから、『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジ君はある意味リアルですよね。急に中学生が戦いに巻き込まれたら、あんな風になるのが普通だと思います。
『メガゾーン23』だけでひと晩語れる
寺田氏:
逆に李さんにお聞きしてみたいんですが、主にキャラクターを取り扱ったソシャゲなどで女性キャラの年齢を20代にしてしまうと、人気に影響が出たりするんですか?
李氏:
もちろん人気への影響もあるとは思うんですが、キャラの年齢はどちらかというと「法律」に関わる問題の方が……。
森住氏:
う~ん、ちょっとセンシティブな話題な気が……(笑)。
李氏:
でも、正直「ロボット」と「美少女」は切っても切り離せない部分がありますから!
森住氏:
たしかに。『破邪大星ダンガイオー』とか、衝撃的でしたからね。
『マジンガーZ』の頃から女性キャラや女性型のロボットは出ていますけど、いきなりパイロットがハイレグだったのは流石に『ダンガイオー』がパイオニアだと思います。
李氏:
しかも3人! 眼福でした。
森住氏:
特にあの辺のOVAは、「テレビで放送されるアニメに比べて、レギュレーションが緩い」こともありましたから。それこそ『ダンガイオー』や『冥王計画ゼオライマー』なども、結構セクシャルな描写が盛り込まれていましたよね。
李氏:
あと、『メガゾーン23』【※】も結構エロい。
森住氏:
ああ、そうでした!(笑)
『メガゾーン23』もまさにそうですね!
※「メガゾーン23」
1985年に発売されたOVA作品。ある特殊な状況下で、「1980年代」という時代の中に閉じ込められた少年少女の戦いが描かれる。衝撃的なストーリーや設定などで、今もファンからの評価が高い。後に、直接的な続編となる『メガゾーン23 PART II 秘密く・だ・さ・い』も制作された。
寺田氏:
僕と森住君はこれだけ長く仕事しているのに、微妙に世代がズレているんですよね。だから、「好きなロボットアニメ」が意外と重ならないんです。ただ、『メガゾーン23』だけはガッチリ重なっています。というか、『メガゾーン23』だけでひと晩語ったことあるよね?
──ひと晩もですか!?
森住氏:
もう20年くらい前に、『メガゾーン23』のDVDボックスが発売されたんです。それで寺田さんに「買いましたよ」と伝えて、別にふたりで中身を見るわけでもなくDVDボックスを目の前に置いたまま、ずーっと『メガゾーン23』の話をして(笑)。
寺田氏:
そう、特に中を見るわけでもなく、目の前に置いたままで(笑)。
「なんで俺たちひと晩ずーっとメガゾーンの話してんの!?」と。
簡単に言うと、『メガゾーン23』は「80年代」という時代そのものを、ある空間に封印している話なんですけど……あの頃の時代を切り取ったような感覚が、今もリアルに残っているんですよね。
李氏:
僕もあの作品は、相当好きですね。
まさしく寺田さんがおっしゃったように、自分が日本に来る前にイメージしていた「最もパーフェクトな日本のイメージ」は、間違いなく『メガゾーン23』のあの感じだと思います。
寺田氏:
もちろんいま『メガゾーン23』を見ると古い部分はあるんですけど……だってしょうがないんですよ、劇中でそういう設定なんだから! 劇中のセリフでも「いまが一番いい時代だから」と言っていましたけど……こうしてリアルにおっさんになって、「そうだよなぁ~!!」と。
一同:
(笑)。
森住氏:
「いやぁ~秋葉原も昔のほうが良かったよな~!」みたいな話しちゃって(笑)。
寺田氏:
そういう意味では、『メガゾーン23』は時間が経てば経つほど、あの世界観や設定が現実とリンクするものになっていきますよね。
ネタバレになってしまいますが……『メガゾーン23』は巨大な宇宙船の中に東京23区をそのまま再現して、戦争で滅びた地球から人類が脱出していたという話です。そして、その宇宙船の中で暮らしている人たちは、その事実には全く気付いていない。完全に「ディストピア」ものですね。
そんな中で、「この世界はおかしいんじゃないか?」と気づく人々もいたりして……でも空港から外国に行こうとすると、何者かに無理矢理眠らされて、偽の記憶を植え付けられたりするんです。そんな設定に当時中学生だった自分は、「カッコイイ……!!」と大興奮していました。
森住氏:
ある意味、後々のSF作品で扱われたりする「偽の記憶」などを30年前のOVAで描いていたりするんですよね。
李氏:
『メガゾーン23』の設定はすごく先進的ですよね。2000年前後に公開された『マトリックス』などに近いことを、あの時代にやっています。
寺田氏:
出てくる敵も正体不明だったんですが、実は地球から脱出した人類だったわけですし、『PARTⅠ』のラストで「ここで終わってどうすんだよー!?」と苦しむところまでワンセットというか……(笑)。
李氏:
そこはもう、OVAですから(笑)。
寺田氏:
そこから絵柄の変わった『PARTⅡ』を見て、「え!?」と思ったり……。かなりテイストが違うから、「PARTⅠとPARTⅡどっちが良いか論争」に発展したりします。
でも、どっちもいいんですよ!
李氏:
僕もどっちも好きです!
森住氏:
どっちも好きですけど……僕は『ダンガイオー』が大好きなので、平野(俊貴)さん作画の『PARTⅠ』が好きかな!
寺田氏:
あとは、『メガゾーン23』って当時のロボットアニメにしては珍しく、主人公のライバルが特に大負けすることもなく「ひたすらカッコいいだけ」で終わるんですよね。しかも、声が塩沢兼人さんで。
森住氏:
あのライバルもすごかったですね。
最後まで決着がつかなかったし、むしろ主人公を圧倒してましたから。
李氏:
「B.D.」ですね。あの変態(笑)。
森住氏:
あの辺の「あれ? 敵の方がカッコよくない?」遺伝子は、後の『機甲戦記ドラグナー』のマイヨ・プラートに受け継がれていったのだと勝手に思ってるんですが(笑)。
寺田氏:
もう、『メガゾーン23』の話をすると本当に一晩語れる。
あとは……「矢作ぃ~~~?」
寺田氏・森住氏:
「「誰だよ、知らねえなぁ!」」
一同:
(笑)。
李氏:
僕はBGMと歌を聞くために、2~3年に1度は『メガゾーン23』を見返してますね。
森住氏:
あぁ、曲の話! 特にラストシーンがいいんですよね!
寺田氏:
俺は「ハートタウンで……」から入る『PARTⅠ』の「淋しくて眠れない」派かな。
森住氏:
えぇ!? 「秘密く・だ・さ・い」の方が上ですよ!
『PARTⅡ』はあれで街が吹っ飛んでいく、滅びの美学がいいんですから!!
寺田氏:
それは「言わずもがな」じゃん。
『PARTⅠ』で矢作省吾が去って行く時の、あの歌がいいんだって!
森住氏:
いやいや、まずは「秘密く・だ・さ・い」に触れてからでしょう!
ただ、『PARTⅠ』ラストの「ボロボロに負けてしまった主人公がトボトボと去っていく」というシーンは、やっぱり当時は衝撃的でしたね。「主人公がここまでボコボコにされて、そのまま終わっちゃっていいんだ!?」というか。
個人的には、後の劇場版『銀河鉄道999』で鉄郎が線路の上を歩いているシーンに、ちょっと重なるところもあったりして……。
寺田氏:
ちなみに、『メガゾーン23』はリアルタイムで見てた? 後から見た口?
森住氏:
いや、僕の場合はリアルタイムじゃなくて、後からレンタルで見ました。
ビデオレンタル店でバイトしてた時に見たような。
寺田氏:
俺、当時にリアルタイムで見たんだよ。映像ソフト発売直後に。
あの当時、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』【※】がとても衝撃的な完成度で……仲間内で「次は何を見ようか?」という話になった時、「この『メガゾーン23』が結構すごそうじゃない?」と。そこで誰かがお金を出すことになったんですが……結局友達が買ってくれました。
しかも当時のOVAって、1万5000円くらいしたはず。
今の価格で言うと、多分3万5000円は超えていると思います。
そこから『PARTⅠ』を見終わったのはいいけど……あのラストで「えっ、これって続編あるんですよね……!?」とめちゃくちゃ不安になりました。だって、続編については何も言ってくれないから!(笑)
※「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」
1984年に公開されたアニメーション映画。テレビアニメ『超時空要塞マクロス』の劇場用作品であり、ハイクオリティな映像表現などを含め今もなお多くのファンから愛されている。
──ちなみに、当時の寺田さんのように「誰かがお金を出して仲間内でOVAを見る」のは割と普通のことだったのでしょうか?
寺田氏:
いや、おそらく自分の周りが特殊だったのだと思います。
当時の中学生で1万5000円を出すのは、かなり大変だったかなと。
森住氏:
僕らの時代だと、「格闘ゲームの基盤をみんなで買おう」みたいなイメージですかね。
たしかに一度買ってしまえば順番待ちもせずに『スト2』とかを遊べるけど、5~10万単位の買い物は学生には辛すぎる。だからみんなで1万円ずつ出し合って、買ったりしていました。寺田さんのOVAは、そういう「格闘ゲームをやりまくりたい!」と思った人が基盤ごと買ってしまうのにちょっと近いかもしれないですね。