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【特別座談会】『スパロボ』寺田貴信・森住惣一郎×Yostar李社長が、ひたすら「ロボットアニメ」を語り尽くす。なぜ、人はここまで「ロボットアニメ」に熱狂するのか?

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本当にひと晩語れてしまう『メガゾーン23』の話

寺田氏:
あと、『メガゾーン23』は「バイクからロボットに変形」があるのも印象深いですね。

森住氏:
バイク変形だと、どっちかっていうと『機甲創記モスピーダ』【※】の印象が強いですよね。こういう時に年表があると便利ですね。どっちが先か確認できる(笑)。

※「機甲創世記モスピーダ」
1983年から放送された、テレビアニメ。タツノコプロとアートミックが共同で企画・制作を行った。オートバイが強化服に変形する「ライドアーマー」が特徴的な要素でもある。

──『モスピーダ』が1983年、『メガゾーン23』が1985年ですね。

寺田氏:
あぁ、『モスピーダ』の方が早いんだ!
どっちもデザインは荒牧伸志さんですよね。

ただ、『モスピーダ』はロボットというより「パワードスーツ」ですから、バイク型のロボットでありながら乗り込んで変形するのは『メガゾーン23』の「ガーランド」がほぼ初めてだったと思います。うーん、なんで俺こんなにガーランド好きなんだろう……。別に空を飛ぶわけでもないのに。

森住氏:
ガーランドは「高速道路をすっ飛ばしながら変形する」ところに、ある種のリアルさがありますよね。

ロボットアニメって、まず前提として「ロボットが戦える空間」を用意する必要があるから、言ってしまえばすべてがフィクションなんですよね。ただ、ガーランドは普通に高速道路を走り、警察から逃げながらロボット形態に変形します。あの「リアルな描写から、シームレスにアンリアルな世界に入っていく」描写が、結構ドキッとしたんです。

それこそ後の『エヴァ』も、リアルな第3新東京市の街並みに、突如としてアンリアルなエヴァンゲリオンが出てきますよね。ああいう「リアルから、突如アンリアルにシフト」した高速道路のシーンは今でも覚えてますよ。

寺田氏:
あのシーンは単純に作画もすごかったし、その前に「ハーガン」が単体では変形しないところを見せてるから上手いよね。

森住氏:
あぁそうか、だからハーガンは付け替え変形なんですね。
ある意味、ガーランドとの対比を見せるためでもあったと。

寺田氏:
だからもう、「早くハーガンのプラキットが出ないかなぁ……」と思いながらこの話をしています(笑)。

もうひとつ思い出したんですが、自分は「バハムート」という単語は『メガゾーン23』で覚えました。

森住氏:
あぁ、『ファイナルファンタジー』よりも先に(笑)。

寺田氏:
そうそう、FFよりも先に「バハムートって何だろう?」と思って調べてましたから。だから、僕の「初バハムート」は『メガゾーン23』です。大体の人の「初バハムート」はFFじゃないですかね?

森住氏:
この座談会が始まる前からちょっと予想はしていましたけど、いま「やっぱりメガゾーンの話になっちゃうんだな」と改めて思っています。もう何十年も前にこの話は散々してるって(笑)。

李氏:
すいません、『メガゾーン23』の話振ったの僕ですね!

森住氏:
いえいえ! 我々はもう『メガゾーン23』の話はいくらでもできるので!
逆にあの、皆さん退屈じゃないかなって……(笑)。

寺田氏:
もうちょっと『メガゾーン23』の話が続いて申し訳ないんですけど……『PARTⅡ』で一瞬映る月の内部構造を写真で撮ったこともあったんですよ。とあるゲームで月を舞台にする時、「先人は何を考えていたんだろう?」と思って『PARTⅡ』を見返したんですが……改めて「あぁ、この設定には勝てないな!」と痛感しました。

森住氏:
昔、『アウトランダーズ』という好きな漫画があって……それも「実は、月は異星人を攻撃するための巨大なミサイルだった」という設定になっていましたね。そして月がジェットエンジンをふかして、月ごと敵の星系に突っ込んでいく描写があったんですよ。

だから、我々の世代だと「月=武器」ですね(笑)。

寺田氏:
それで言ったら、『トップをねらえ2!』なんて地球がそのまま武器になるから。

李氏:
『トップをねらえ!』は『2』も合わせて、先々月にもう1回見ましたね。
家のBlu-rayプレイヤーを一新して「何を見ようかなぁ?」と思って(笑)。

あとは、『勇者王ガオガイガー』も見返しました。EI-01(パスダー)との戦いが描かれる数話は、かなりお気に入りですね。大体自分は、みんなで「弾丸X」に入っていくところでグッと来てしまうというか……今になって「37歳になっても泣くんだ!」と思わされました。

一同:
(笑)。

李氏:
今からテレビ版の『ガオガイガー』をすべて見るのはちょっとキツいかもしれないですけど……かなりオススメです。やっぱり、ロボットアニメは音楽も大事だなと思いますね。

森住氏:
「音楽」の話になると、やっぱり原体験としては『メガゾーン23 PARTⅡ』の最後になるかなぁ……。
あとは、『愛・おぼえていますか』のラストもすごい。

寺田氏:
そもそも、『超時空要塞マクロス』自体も衝撃的なアニメでしたね。
あれも当時は「日曜の昼からすごいアニメが始まるぞ!」みたいな煽り方で、最初にプラモデルの宣伝が出ていました。だから、僕が最初に触れたマクロスは、偉大な高荷義之さんが描いたプラモのパッケージなんです。

しかも、パッケージも飛行機に手足が生えている謎のメカが描かれていて、当時は「これは何のプラモなんだ……?」と疑問に感じていました。そこからアニメが始まり、ようやく飛行機の三段変形を見るという。さらに劇場版の『愛・おぼえていますか』のクオリティにも驚いて……あの、輝がミンメイに歌詞を渡すシーンからの……。

森住氏:
そう、あそこから何回も見返しちゃうんですよ!
それまでは結構、恋愛面でドロドロしてるんで(笑)。

寺田氏:
いや、そこからじゃない。そのちょっと前の輝とミンメイが展望台で話をして、後ろでバルキリーが「ブオーン!」と攻撃しながら入ってきて撃墜されるところも含めて見るんだよ!

森住氏:
えぇ~?
だって……自分はちょっとミンメイには「うーん……」と思うから……(笑)。

李氏:
あぁ、派閥が別れるなぁ(笑)。

寺田氏:
え、じゃあどっち派? ミンメイ派だった?

森住氏:
僕は「ミンメイ、あまり好きではない派」でした(笑)。
ただ、「憧れのアイドルと同じ空間に閉じ込められて、共同生活をする」という誰もが羨むあのシチュエーションは結構好きですね。だから、『愛・おぼえていますか』を見返す時も、序盤のワクワク生活のシーンと、ラストの歌詞を渡すシーンから見ます。

あの一番激しい戦闘シーンに、あえて「ファルセットで歌う一番静かなパート」が流れるのもまたいいんですよね。「激しいバトルをしているから激しい曲を流す」のではなく、曲の一番静かなところで、一番激しいバトルを見せているんです。あぁ、またラストシーンを見たくなってきた……(笑)。

寺田氏:
あそこもすごいけど、個人的には冒頭も好きですね。

まずゼントラーディのふたりがゼントラーディ語で会話して、そこで場面転換。そしたら真っ暗な中からなにかの光がチカチカと見えていて、自分も最初に見た時は「なんだろう?」と思いました。と思ったら、そこでド正面のマクロスが出てきて、同時に劇場版のタイトルもドドーン!!と出る。

さらにメインテーマも流れ始めて、「うわぁ、カッコイイ──!!」と(笑)。そのあとバルキリーの発進シークエンスを見せて、フォッカーが輝達に指示を出して……あの一連の流れ、大好きです。あのイントロは、多くのロボットアニメの中でもすごく完成度が高いと思います。

もうマクロスは見すぎて、ミンメイのコンサートの挨拶とか空で言えちゃうからね!

『スパロボ』寺田貴信・森住惣一郎×Yostar李社長インタビュー:ひたすら「ロボットアニメ」を語り尽くす座談会_007

ちゃんと「全部見る」と、解脱の具合が違う

寺田氏:
この『愛・おぼえていますか』のオープニングの一連の流れに並ぶとしたら、もう鉄板になっている『トップをねらえ!』の「第7ハッチが開いてます!」「なにぃー!?」からデンドンデンドンデンドン……のところかなと。

余談ですが、この間『エヴァ』は見ているけれどそれ以外の庵野さんの作品は見たことがない女性の知り合いに「庵野さんの他の作品が見たい!」と言われて……。真っ先にオススメしたのが『トップをねらえ!』でした。そしたらもう……見事にハマって。

まず女性だから、序盤の展開がそんなに気にならなかったらしく、そこからの2話ぐらいから「このアニメって真面目な話なんですか?」と言い出して、もうこっちはニヤニヤしっぱなしでしたね。そして3話で「スミスって死んじゃったんですか!?」と(笑)。

そこから4話辺りで「このあとの話がどうなるか読めない!!」とか言ってて、そのまま最終話を見終えたら「最高です!」と言っていました。ちょうど3時間くらいあれば最終話まで見ることができるから、パパっと見たい時に『トップ』はピッタリなんですよね。

李氏:
そう、『トップをねらえ!』は長さがちょうどいいんです。だから、午後にちょっと暇つぶしでロボットアニメを見たいんだったら、『トップ』か『ポケ戦』だと思います。

僕は『トップ』だと第5話の合体シーンが大好きです。あと、アニメの中でバスタービームを発射する時って、実は「バスタービーム!」って叫んでないんですよ。だから、代わりにテレビの前の僕が「バスタービ──ム!!!」と叫びながら見てます(笑)。

寺田氏:
でも、みなさん『トップをねらえ!』はサブスクとかで一気に見てるでしょ?
僕はリアルタイムで追ってましたからね。

李氏:
あー! それはキツいなぁー!

森住氏:
キツいキツい!!

寺田氏:
僕はOVAが発売される度に見てました。ただ、1話の段階で後半の片鱗はほとんどなかった。そして2話辺りから、「ウラシマ効果」の話などで「よし、もうこの作品は(いい意味で)大丈夫だな」と確信を持てました。そこから1話ずつ追いかけていったから、『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』も……。

森住氏:
あぁ! それいま言おうと思ってた!!
僕ら世代はどちらかというと今川監督版『ジャイアントロボ』をリアルタイムで追いかけてたから、『トップ』よりもそっちで「次が出なぁ──い!!」の気持ちを味わってるんですよね!(笑)

寺田氏:
いや、それを言ったら『ふしぎの海のナディア』【※】だってすごいよ。『ナディア』もずっとリアルタイムで追ってたし、最終回の放送が時勢の影響などで延期したんです。

その延期を経たあとに見た最終回で……超泣きました。
だから、いま最終回を見てもあの頃を思い出しちゃいますね。

森住氏:
僕、『ナディア』は「南の島」編で脱落した人間でした。
なぜかナディアのネガティブな部分が妙に出てきちゃって……

一同:
(笑)。

※「ふしぎの海のナディア」
1990年からNHKにて放送されたテレビアニメ。ジュール・ヴェルヌによる小説『海底二万里』『神秘の島』を原案としている。総監督を庵野秀明氏、キャラクターデザインを貞本義行氏が務めた。

寺田氏:
でも、あの南の島編を耐えた先にある残りラスト4話は本当に神回だから、南の島編までしっかり見ると「解脱具合」が全然違うんだよ。あと、南の島編にもラストの伏線になる回があって、それが面白いんだって!

でも、全話見られない人のために、「これだけ見ればナディアがわかる」という僕の「ナディアチョイス」が存在してるんです。要するに、全39話の中から要所要所の話数だけ選んだんです。

そして『ナディア』を見たことがなかった人に、この自分流の「ナディアチョイス」を見せたところ、「別にナディアはそんなに嫌な子じゃなくない?」と言っていて。

森住氏:
そりゃそうだよ!
あの島までは割といい子なんだから!

寺田氏:
もうわかったって(笑)。

この「解脱具合が違う」で言うと、『伝説巨神イデオン』【※】も該当します。『接触篇』と『発動篇』だけを見て、「イデオン見ました!」と言う人がいるんですが……それはそれでいいんですけど、テレビ版を全部見た上で劇場版に行くと、解脱のレベルが段違いなんだって!

※「伝説巨神イデオン」
1980年から放送されたテレビアニメ。富野由悠季氏が監督を務め、いろいろな意味で衝撃的なストーリーが描かれることから、今もなおファンの間で語り継がれる作品となっている。後に劇場版の『接触篇』『発動篇』の2作が制作された。

李氏:
それは超わかりますね。
僕も大学2年生の頃、完璧な状態で『イデオン』のエンディングを見たくてテレビアニメ版から見始めました。そして、その時並行で見ていたアニメが『GEAR戦士電童』でした。つまり、『イデオン』と『電童』を交互に見ていたんですよね。

──すごい食べ合わせですね(笑)。

李氏:
全38話の『電童』は1週間かからずに、一気見くらいの勢いで見終わりました。
だけど、『イデオン』はちょっと辛かった。頑張っても1日に2話くらいしか見れなかったです……。胃が痛くなる内容ですし、絵柄も当時のクセが強い。

そしてハッキリ言ってしまうと、僕はカーシャの性格が凄く苦手なんですよね(笑)。
ただ、テレビ版を見終えて劇場版の2作まで見た時に、「これは傑作だな」と納得しました。

寺田氏:
僕は『イデオン』もリアルタイム勢でしたね。テレビ版の最終回を見た時は「えーっ!?」と衝撃を受けましたし、そこから劇場で完結すると聞いて見に行ったら、一応ライバルキャラだった「ギジェ」の最期を『発動篇』の冒頭で見せて……「あんまりだ!」と。

その後に、人気ゲストキャラだった「キッチ・キッチン」の首がタイトルバックで飛ぶとか……。

森住氏:
そうそう! 「ヒロインの首が飛んでいくところがシールドグラスに映っている」って、今考えても「どういう発想なんだ!?」と思いますよね。天才ですよ!(笑)

寺田氏:
まずヒロインの首が飛んで、湖川(友謙)【※】さんの超煽りパースで「バッフ・クランめぇ──!!」と叫んでからタイトルが出る……あんなのロボットアニメで見たことないって!

それこそ『発動篇』でイデオンは「コスモ、あの光なにかなぁ?」「わかんねえけど撃っちまえ!」みたいな感じで、本当に亜空間にいる敵をぶち抜いたりしますからね。いろいろあってカーシャが「そうよ、みんな星になってしまえ!」と言ったら、マジで星にしてるし。

※「湖川友謙」
アニメーター、キャラクターデザイナー、アニメ演出家などを務める湖川友謙氏。『宇宙戦艦ヤマト』シリーズや『銀河鉄道999』といった松本零士氏のアニメ作品の作画監督、『伝説巨神イデオン』や『戦闘メカ ザブングル』などの富野由悠季氏のアニメ作品のキャラクターデザインを手がけた。

『スパロボ』寺田貴信・森住惣一郎×Yostar李社長インタビュー:ひたすら「ロボットアニメ」を語り尽くす座談会_008

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
編集
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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