「今は昔に比べてロボットアニメが少ない」って実際どうなの?
寺田氏:
我々ばかりしゃべっている気がするので、李社長にもお聞きしたいんですが……さっきチラッと話が出ていた『GEAR戦士電童』もお好きなんですか?
李氏:
『電童』はかなり好きです。ちょうど2000年初頭くらいに日本のアニメが中国にたくさん入ってきて、あの時期あたりにいろいろな作品をごちゃ混ぜで見ていました。もちろんビデオもありましたし、徐々にネットも普及していきましたから、いろいろ見ましたね。
だから、僕が初めてリアルタイムで追うことができたガンダムは『∀ガンダム』かもしれないです。
森住氏:
『∀ガンダム』も99年くらいですよね。
『SEED』も2002年だし……もう時の流れが怖い……。
寺田氏:
だって、あと20年もしたら「初めて見たガンダムは『水星の魔女』です」と言う子が出てくるんだから。この歳になると、その辺が達観しちゃって……初めて会う若い人に「最初に見たウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊、ガンダムを教えて下さい」と聞いてます。こっちはだいたい見ているので、話を合わせるという。
一同:
(笑)。
李氏:
少なくとも中国の僕と同世代の人間は、昭和ウルトラマン世代だと思います。
ただ、数年後の世代だと大きく違ってくるとは思うんですが……。
森住氏:
僕は『ウルトラマン80』かな。
『80』は最終回の空港で変身しようとするシーンがすごいカッコよかったんですよね。子どもたちの前で正体がバレちゃいけない。だけど守るために変身しなきゃいけなくて……というところで、残骸の炎が燃え上がって、変身シーンを隠してくれる!
寺田氏:
『80』の最終回はいろんな意味で有名ですが、その後の『ウルトラマンメビウス』ですごく良いフォローが入っているんですよね。「思い出の先生」という回でウルトラマン80がゲスト出演し、放送当時は生徒だった人たちが大人になって「僕らのウルトラマンだー!」と……。
あれは『80』の「先生」という要素を完璧に回収した回だと思います。
李氏:
あれは神回ですね。
多分あの回を5回以上は見ました。
森住氏:
『メビウス』はその辺の評価が高いですよね。ちゃんと昔のウルトラマンを活かしていて……って、段々特撮の話にシフトしていってますけど(笑)。
──いえいえ、お三方の特撮トークもすごく聞いてみたいです。
寺田氏:
森住君って特撮はそんなに得意じゃないんだっけ?
森住氏:
そこまで得意じゃなくて……スーパー戦隊は『科学戦隊ダイナマン』くらいまでしか観ていないです。そして仮面ライダーは『スーパー1』が好きですね。ただ、そこからしばらく仮面ライダーから離れていて、いわゆる「平成ライダー」が始まってから『クウガ』や『アギト』などを観ましたね。
でも、「最近の仮面ライダーで一番好きなのはなんですか?」と聞かれると、やっぱり『仮面ライダー電王』になるかな。
寺田氏:
いや、『電王』は全然最近じゃないから!
もう15年以上前のライダーだよ!
森住氏:
うわっ、もうそんなに経ってますか!?
これさっきの『SEED』の話と同じですよ! 『SEED』を新しいガンダムだと思っていても実際は20年経っているし、『電王』を新しいライダーだと思っていても実際は15年以上経っている……。
李氏:
もう、毎年おかしくなっていきます。
『Vガンダム』は30年前ですからね!
寺田氏:
でも、もうちょっとしたらわかってくるよ。
もうね、20年前と30年前がそんな変わんなくなってくるから。
森住氏:
僕と寺田さんって4歳差ですけど、4年の差でそんなに変わるの!?
僕も結構な歳ですよ!
──特撮で言うと、「『SEED』と『仮面ライダー龍騎』が同期」はよく話題に上がりますよね。
寺田氏:
90年後半~00年頃は、ガンダムも仮面ライダーも、リブートやシリーズの一新を意識していた頃ですよね。ウルトラマンは少しズレていましたけど、あの平成の初頭辺りは特に盛り上がっていたと思います。
そして、一般的には80年代が「ロボットアニメの黄金期」と言われています。なぜかというと、単純に本数が多かったから。たしか80年代中頃は地域によっては毎日ロボットアニメが放送されているような感じでした。そんな当時を「夢のようだ!」と言う人もいますが、今だってサブスクに入れば毎日ロボットアニメを見ることはできます。
この「サブスクに入れば見れる」というのは、すごい進化だと思っていて……ネットがそこまで普及していない時代に『スパロボ』を制作していて大変だったのは、やっぱり「資料集め」でした。
開発期間全体のうち、初期の資料集めにとにかく時間がかかります。今はネットを見れば昔のロボットアニメはだいたい視聴できたりしますが、『スパロボ』シリーズ初期は映像資料を集めるのに苦労しました。
森住氏:
もうどこに行ってもビデオも映像資料も見当たらなくて、最後は友達に「ビデオで録画してたやつある!?」と聞いて回っていたくらいですからね。
とにかく資料がなかった。
寺田氏:
「誰かダイターン録ってない?」と、友達に聞いていたりしました。
さらに、パソコン通信で聞いてもらったり……。
森住氏:
そう、「パソコン通信」なんです。電話線で繋いでいた頃の話ですよ(笑)。
たしか、僕は『闘将ダイモス』【※】はビデオでチェックしていました。
寺田氏:
『ダイモス』は開発現場にビデオが全巻あったと思うんだけど、実はあれって版元さんに直接フィルムから落としてもらったものなんだよ。方々にあたっても『ダイモス』だけはどうしても資料を入手することができなくて、当時の版元さんにお願いしてマスターフィルムからダビングしてもらったんです。
森住氏:
あの『ダイモス』全巻ってそういう苦労があったんだ!
今みたいに資料が豊富じゃないから、『ダイモス』のように本当に版元さんや制作会社さんに行って、「すいません、これをテープに落としてください」とお願いしなきゃいけない時代がありました。
──当時はそういう苦労があったんですね。
寺田氏:
よく「今はロボットアニメの本数が少ない」とか言われたりしますが、特に2023年から2024年はそんなことはないと思っています。むしろ、それは「どの時代と比べているんですか?」に帰結する話ですよね。映像資料集めの苦労を思い返すと、逆に「いい時代になったなぁ」とも思います。
森住氏:
いただいた年表にも書かれていますが、2010年代後半から2020年代前半でも、ロボットアニメの本数自体はキッチリ出ていますもんね。他の年代に負けないくらいの量が、今もちゃんとあると思います。
※「闘将ダイモス」
1978年から放送された、テレビアニメ。『超電磁ロボ コン・バトラーV』『超電磁マシーン ボルテスV』に続く作品でもある。主人公「竜崎一矢」とヒロインの「エリカ」による異星人同士の恋愛が描かれており、ドラマ性を重視した作劇が印象的でもある。
ガウかよぉ~~!!!
──ちなみに李さんの「初めて見たガンダム」はどれなのでしょうか?
李氏:
多分、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』【※】ですね。
その前に富野監督が書いている小説版の『機動戦士ガンダム』を読んではいましたが、おそらく映像で見たのは『ポケ戦』が初めてだと思います。『ポケ戦』は話数が少ないので、価格的にも安かったんです。
森住氏:
どちらにせよすごいところから入っていますね?
※「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」
1989年に発売されたOVA。MS同士の戦闘シーンより、人間同士のドラマが重視された作風となっており、「アル」と「バーニィ」のエピソード、クリスマスの季節を舞台にしたストーリーなど、多くのファンの心に残る作品となっている。
──『ポケ戦』は時期的にもちょうどいいかもですね。もう冬ですし。
李氏:
いや、毎年クリスマスに『ポケ戦』を見るのは流石にちょっと食傷気味ですね(笑)。この10年間、ちょっと推されすぎてると思います。
『ブレンパワード』を見たっていいんですよ!?
「クリスマスプレゼントだろ!!」って。
寺田氏:
『ポケ戦』のあのサンタバルーンの商品が出てますからね。
『ポケ戦』を知らない人が見ると「何、このサンタ人形?」と思うかもしれませんが、もうこっちは「バーニィ達が命を懸けたバルーンなんだぞ!」と。
森住氏:
「ガンダムに勝つために、練りに練った作戦のひとつなんだよ!」みたいな(笑)。
寺田氏:
でも、『ポケ戦』はガンダムを知らなくても楽しめるのが大きいよね。
初見でも十分に「なんかすげえロボットと戦わなきゃいけない」ことは伝わります。
李氏:
ひとつの作品として十分に完結されていますし、感動もバッチリあります。「ガンダムの入り口」として全然アリだと思います。少なくとも、僕は『ポケ戦』がガンダムの入り口で良かったと思います。
寺田氏:
『ポケ戦』を最初に見ると、ザクのイメージが変わりますよね。
あとは、「ハイゴッグ」もすごい。『ポケ戦』を見たあとにファーストで「ゴッグ」を見ると、結構衝撃かもしれないです。ガンダムのハイパーハンマーを受け止めますから(笑)。
李氏:
「さすがゴッグだ、なんともないぜ!」
森住氏:
なんかジオン軍のMSって、水陸両用がやたらあるんですよね(笑)。
寺田氏:
リアタイ当時によく思っていたんですが、『ガンダム』以前は毎週違う敵ロボットが倒されるアニメを見ていたから、敵役としてずっと同じ見た目のザクしか出てこない状況に、正直がっかりしていました。
赤いザクは強いけど、緑のザクはいつもボコボコにされて……そう思っていた矢先に、青いグフが出てきて、大きく形の変わったドムが出てきて、さらにデカい爪のズゴックが海から出てくる! だからズゴックが出てきた時、「これだよ!これが見たかったんだよ!!」と。
森住氏:
ズゴックやゴッグも含め、ジオンの水陸両用MSはちょっとスーパーロボットの敵っぽい(笑)。
李氏:
もう、ズゴックはまんま怪獣じゃないですか。
あれはもはや「機械獣」ですよ。
森住氏:
ゴッグはお腹からビーム出してましたからね!
基本的にみんな手に持つライフルとかから発射していたのに、ゴッグはいきなりお腹からビームを出し始める。「アイツ、ずいぶん毛色が違うなぁ」みたいな(笑)。
寺田氏:
あれは良かったよ……!
リアタイ当時、「きたあああ!!」と思っていました。
だから、僕の周りだとズゴックの人気がすごかったんです。まずプラモデルの出来もいいし、劇中で「シャアが乗った」こともズゴック人気に拍車をかけました。その上で当時のガンプラブームもあって、アッガイだろうがゾックだろうが、なんでもいいからガンプラがほしかった。そんな中で手に入れたアッガイが、ものすごく輝いて見えた!
──ズゴックのガンプラはそもそも大人気で買えなかったということですか?
寺田氏:
いや、当時はもっとすごくて……これはあくまで私が住んでいた地域の話ですが、まず「お店のガンプラの発売日」が知らされます。我々はその日にお店に行って並ぶんですが、店員さんが箱から順番に「はい、これ」と渡してくるんです。つまり、実際に受け取るまでどのガンプラを買えるかわからないんです。
森住氏:
懐かしい……!
──ええっ、実質ランダム式じゃないですか!
寺田氏:
だから、お金をいくら払うかも実際に渡されるまでわかりません。
当時、僕はグフがほしかったんです。そして、お店の積んであるガンプラの箱の中にチラッとグフが見えているんですね。ようやく自分の番が回ってきて、「やった!グフだ!」と思ったら、店員さんに「はい、あなたはガウね」とガウを渡されて「ガウかよぉ~~!!!」って(笑)。
一同:
(笑)。