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【特別座談会】『スパロボ』寺田貴信・森住惣一郎×Yostar李社長が、ひたすら「ロボットアニメ」を語り尽くす。なぜ、人はここまで「ロボットアニメ」に熱狂するのか?

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「スーパー系」と「リアル系」の違いって何?

李氏:
まぁ「ロボのカテゴリー」で言えば、『テッカマン』も「パワードスーツ」みたいな感じですよね。

寺田氏:
いや、あれはロボットでもパワードスーツでもなく、「テッカマン」です。
ウルトラマンとかでもなく、「宇宙の騎士テッカマン」です。

森住氏:
でも、そうすると「ダイアポロン」【※】がかなり微妙なラインになりそうじゃないですか?
だってあれは合体した後に中で主人公が大きくなって、ダイアポロンに内側からピタッとハマるんですよ(笑)。

※「UFO戦士ダイアポロン」
1976年から放送された、テレビアニメ。森住氏の語る通り、「主人公が巨大ロボットの体内に取り込まれた後、ロボットを鎧のように見立てて内部にハマる」という異色の描写が見られる。

寺田氏:
いや、見た目のカテゴリーとしてはパワードスーツに入るけど、ダイアポロンはスーパーロボットでしょ。

李氏:
じゃあ「バイカンフー」は何なんですかね?

寺田氏:
「バイカンフー」はスーパーロボットですよ!
そもそも、何をもって「リアル」なのか、何をもって「スーパー」なのかは曖昧なんです。少なくともフィクションに登場する以上、別にどれも「リアル」ではないし、どれも「スーパー」になります。

それこそ本当の意味での「リアルロボット」が存在するとしたら、この前モーターショーに出ていた「アーカックス」などが該当すると思います。あれこそがリアルロボットであり、アニメのロボットはすべからくスーパーロボットなんですよ!

僕らも便宜上「リアル」「スーパー」という使い分けをしていますが、僕個人の中では初代ガンダムだって「スーパーロボット」だと思っています。

李氏:
ガンダムはどう見てもスーパーロボットです!
大気圏突入はスーパーロボットそのものですよ!

『スパロボ』寺田貴信・森住惣一郎×Yostar李社長インタビュー:ひたすら「ロボットアニメ」を語り尽くす座談会_013
ツバメインダストリ株式会社が開発した「アーカックス」というロボット。人間が搭乗して操作することができ、まさに「現実(リアル)のロボット」と言えるものとなっている。
(画像はTHE ARCHAX – ツバメインダストリ株式会社より)

寺田氏:
それこそ、初代ガンダムって「教育型コンピューター」なんです。「戦闘データを基にプログラムを更新して成長する。つまり、自分自身を教育している」という。当時、その設定にシビれましたね。

しかもアッザム・リーダーに焼かれてもケロッとしてるし。

森住氏:
劇場版だと「灼熱のアッザムリーダー(第18話)」がカットされているのであまり知られていないんですが、搭載された教育型コンピューターがアムロにアナウンスしてくれるんですよね。アッザム・リーダーに送電された時に、機械音声で「全エネルギーの何%を放出中~」「攻撃エネルギー低下~」みたいに。

「ええっ、ガンダムしゃべるんだ!?」と思いましたね(笑)。

李氏:
もう、典型的なスーパーロボットじゃないですか(笑)。

寺田氏:
とにかく、便宜上は分ける必要があるけど、自分はガンダムをスーパーロボットだと思っています。ただ、「じゃあダンバインはどっちなんだ」と言われるとね……。

もちろんスーパーロボットなんですけど、自分の中では「ファンタジーロボ」のカテゴリーに入っています。

李氏:
あれは「よけるスーパー系」ですね。

森住氏:
それは「あるゲーム」の話ですよね!?

一同:
(笑)。

森住氏:
1機置いとけば20機ぐらい全滅させるやつのカテゴリーですね。
でも、被命中率が4~6%もあれば落ちますけど(笑)。

寺田氏:
『スパロボ』を作っている時に「これはロボットじゃないのに……」と言われたことがあるんですが、そういうことを深く考えていない場合もあって。森住君が来る前は「ミンキナーサを出せないか」【※】とか言ってたんです。だから、「ロボットか、それに近しい物が出ていれば」というスタンスなんですが、最近はそうでもないですね。

ただ、もちろんロボットならなんでもいいわけではなく、基本的に「攻撃をするためのロボットがいて、戦う敵がいる」ことは大前提です。そこがないと、戦う理由がないですから。でも、戦う理由がない作品も最近の『スパロボ』には出てますけどね。

※「ミンキナーサ」
1982年に放送された『魔法のプリンセス ミンキーモモ』……の、第31話に登場するロボット。今作と一部スタッフが共通する作品のパロディ的なノリで登場したロボットでもある。『スーパーロボット大戦X-Ω』にて、『スパロボ』への参戦を果たしている。

『スパロボ』寺田貴信・森住惣一郎×Yostar李社長インタビュー:ひたすら「ロボットアニメ」を語り尽くす座談会_014

「V-MAX」って実は必殺技じゃなくて「〇〇装置」なんです

寺田氏:
さっきから「ファーストガンダム」の話題が何度も出てますが、ここら辺の熱量を語っても、最近の30代の方ってそもそもファーストを見てない可能性があるんですよね。僕がファーストを熱く語っても「すいません、SEEDからです」と言う人が多くて……(笑)。

でも、冷静に考えると『SEED』も20年前なんですよね。

李氏:
いや、『SEED』からは遅すぎるー!
せめて『Gガン』【※】くらいから入ってほしい。
僕の周りには『Gガン』派がふたりいますよ!

※「機動武闘伝Gガンダム」
1995年から放送された、テレビアニメ。各国を代表する格闘家がガンダムを用いて戦う「ガンダムファイト」が描かれており、戦争が描かれることの多かった「ガンダム」シリーズの中では異色の作品だった。魅力的なキャラクターや熱いストーリー展開などもあり、今もなおファンに愛されている作品。

寺田氏:
『Gガン』の1話が放送された当時、自分はバンプレストにいたんですが……会社に行くと『Gガン』の事前資料が置かれていて、流石に驚きましたね。だけど、よくよくスタッフを見てみると、今川監督だし、キャラデザも島本和彦先生が協力されていたので、「大丈夫そうだ」とは思いました。

そして1話のシャイニングガンダムを見せられた時点で……最高でしたね。さっきも「ナディアチョイス」の話をしましたが、当時は「Gガンはちょっと……」と言う人がいて。そんな時は「俺が選んだGガンの詰め合わせを見てください」と説得しました。

以前、島本先生が描いた『超級!機動武闘伝Gガンダム』を見つつ、もう一度テレビ版を見返したんですが……たしかに重要じゃない回もありながら、やっぱり『Gガン』は深いんですよね。

当時リアルタイムで追っていた時も、「東方不敗が亡くなったあと、どうやって盛り上げるんだろう?」と思っていたんですが……最終回が凄かった。

李氏:
まぁ、45話も実質的に「もうひとつの最終回」と言ってもいいというか……。

寺田氏:
45話は何回見ても泣いちゃいます。ドモンが「師~~~匠~~~~!!」と叫び、これまでの思い出がフラッシュバックするところで、こっちも「あぁぁ~~っ!!」と(笑)。

李氏:
少し前まで、Yostarの近くにガンダムカフェの秋葉原店があったんです。前に食事に行った時、店内で『Gガン』が流れていました。しかも、ちょうど師匠との決戦のところが(笑)。

だから、ご飯を食べ終わっても「これは神話だから、見終わってから帰りましょう」と。

『スパロボ』寺田貴信・森住惣一郎×Yostar李社長インタビュー:ひたすら「ロボットアニメ」を語り尽くす座談会_015

寺田氏:
『Gガン』はガンプラなどのおもちゃ販促的にも「出てくる機体を全部ガンダムにすればいいんじゃないか?」という発想があるんですよね。あの「ガンダムが大量に出てくる」という基盤を確立したのは大きいと思います。放送当時は反発したガンダムファンもいましたが、今となっては『Gガン』が好きな人は多いでしょう。

森住氏:
そこから『ガンダムW』で、今のシリーズにも繋がる「複数の少年たちがガンダムに乗る」というフォーマットが確立されましたから。

寺田氏:
その辺りはどっちも1話が楽しかったなぁ!
『Gガン』1話の「出ろー!ガンダーム!」に「ええーっ!?」と驚いていたら、今度は『ガンダムW』1話の「お前を殺す」で「ええーっ!?」と(笑)。

森住氏:
その「ええーっ!?」と驚かせる“掴み”が大事ですよね!
というか、冷静に考えると1話のヒイロは自分のミスで見つかってるんですよね。リリーナに見られたあと、いきなり学園に潜入してきて、パーティーの招待状をビリっと破って「お前を殺す」と。「お前、随分勝手だね!?」と思っていました。

──「デデン!」ですね。

森住氏:
そうそう、「デデン!……じゃねえよ!」って(笑)。

李氏:
「デデン!」はもう、ネタの始まりですよ(笑)。

森住氏:
やっぱり『Gガン』で「ガンダムって自由なんだ!」という型破りを行い、『ガンダムW』で「複数のガンダムが主人公機として登場して当たり前、敵もガンダムで当たり前」というフォーマットを完成させたのが、やっぱりすごいですよね。

李氏:
『ビルド』シリーズより相当前に「ガンダムは自由」を宣言してますから。

寺田氏:
それを1年くらいで変えちゃったから、『Gガン』と『ガンダムW』はすごいと思います。スポンサーさんの意向があったかもしれませんが、1年であそこまでガラっと変えるのはなかなかに難しいです。

李氏:
あ、出た。一番嫌いな単語。
「スポンサーさんの意向」

一同:
(笑)。

森住氏:
そこはもうしょうがないです!
その言葉が好きな人なんていません!(笑)

寺田氏:
でも、これは重要なんですよ。お金を持っている人が「ならば俺がスポンサーになってやる」と名乗りを上げて制作が進む場合もありますから。

李氏:
僕は今でも夢見ていることがあって……過去に戻れるんだったら、『蒼き流星SPTレイズナー』【※】の完全版が見たいんですよ! OVAで一応「完結」はしているけど、その間も含めた「完全版」が見たい!

さっき『メガゾーン23』でも話しましたが、僕は塩沢さんの演じる変態が大好きなんです。だから完全版で、ル・カインが「落とされるところ」のプロセスを見たいんです! 「ザカール」も超かっこいい!

※「蒼き流星SPTレイズナー」
1985年から放送された、テレビアニメ。アメリカとソ連の冷戦が宇宙にまで拡大した1996年が舞台となっている。主人公機「レイズナー」の「意思と人格」が描かれることが特徴でもある。放送時は当初の予定を果たせず打ち切られてしまったが、後に完結編となるOVAが発売された。

森住氏:
たしかに、『レイズナー』は……(笑)。
でも、あの「V-MAX」の設定は熱かったですよね。

李氏:
あれはほぼ「トランザム」じゃないですか?

森住氏:
あれって、どちらかというと「なにがなんでもパイロットを戦域から脱出させるための装置」です。だからV-MAXはピンチの時にしか発動しなくて、戦域から逃げるためにどんな障害物でも蹴散らせるパワーを発揮するんです。ただ、そんな風に作ってしまったせいで「え、これで体当たりしたら強くね?」と気づかれるという。

トランザムはそもそもがパワーアップするためのシステムですが、V-MAXは元々脱出用なんですよね(笑)。その「あべこべさ」が良いというか……「本来の使い方じゃない」という部分にロマンを感じていました。

寺田氏:
だから、「V-MAXって必殺技じゃないんだけど」って言われたことが……。

一同:
(笑)。

森住氏:
いや、劇中の時点で「V-MAX発動!」って敵に突っ込んでるじゃないですか!(笑)

明らかに攻撃するポーズで敵に突っ込んでるでしょ!

李氏:
もう勘違いしまくってますよ!

──割と「V-MAXと言えば一番強い技」みたいなノリですよね(笑)。

森住氏:
そう、みんなの認識がもう「必殺技」なんですよね。

寺田氏:
ちなみに、個人的にレイズナーの一番強い武器は「カーフミサイル」だと思ってます。あれには一撃必殺の威力があるはず。まあ、『スパロボ』だとそうでもないんですが……。

森住氏:
そのカーフミサイルが「ただのミサイル」みたいに扱われて、一方の「脱出装置」が敵を貫通して何十機も撃墜していきますからね(笑)。

李氏:
いや、おかしいと思いますよ。脱出装置って、BGMすら変わるんですか!?
しかも「READY!」って反応もするじゃないですか。逃げるためにここまでやるの?

森住氏:
最初はV-MAXが勝手に発動するから、エイジが「なんなんだレイズナー! お前の奥にいるのは何だ!」と疑っていましたね。そこから銃を突きつけて「お前ごとぶっ壊してやるぞ!」的に脅したら、フォロン(レイズナーに搭載されたOS)が出てきて……。

そこからエイジと和解した後は、「V-MAX発動!」「READY!」とか言ってますよね(笑)。どうしても「これ脱出装置だよね!?」と思ってしまうんですが、あれが好きなんですよ。

寺田氏:
いや、最初のV-MAXは正しい使い方だったんだよ。初回は本当にその通りエイジを守るために「脱出装置」として使ったんだけど、あれが段々「必殺技」になっていくのが……(笑)。

森住氏:
そうか、元々はエイジを守るためにフォロンが勝手にV-MAXを発動させて、敵をぶち抜きながら逃げていったんだ。そこからフォロンを問い詰めてあのパワーが「V-MAX」だということがわかって、味を占めたエイジが必殺技として使い始めると(笑)。

『スパロボ』寺田貴信・森住惣一郎×Yostar李社長インタビュー:ひたすら「ロボットアニメ」を語り尽くす座談会_016

寺田氏:
「V-MAX」って発動する時に青いほわほわした光が出てるじゃないですか。実はあれ、人間に無害なんですよ。だからあのオーラで人を包んで戦域から脱出させることもできるんです。とにかく、V-MAXは便利に使えますね。

森住氏:
だから最初の頃って、レイズナーがV-MAXを発動しても特にポーズも取らず青い光に包まれて飛んでいくだけなんですよね。ただ、後半になるともう「V-MAX発動!」と言いながら例のポーズを取りだして……「もう発動ポーズだよね、それ!?」と(笑)。

寺田氏:
でも、実は『レイズナー』本編だと言うほどV-MAXって使ってないんだよ。『スパロボ』でV-MAXをクローズアップしてからみんな必殺技扱いしてるけど、ちゃんと見るとそんな毎回は使ってないからね!?

──それで言うと、YF-21の「リミッター解除」がゲーム内では武装として使えたのも印象深いです。

森住氏:
どうしても劇中で使用されている技や武装が少なかったりすると、何度も映像を見返して「これ技として使えないかな?」的な探し方をすることはありますね。

寺田氏:
でも、YF-21は背中にエンジンが搭載されています。つまり、リミッター解除で手足を切り離しても飛べるわけで……作中でガルドがああいう使い方をしているから最後の必殺技に見えるんですが、もしかしたら普段でも「ハイ・マニューバ・モード」として使えるかもしれませんね。

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
編集
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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