武器や防具の購入、宿代、スキルの習得、仲間の蘇生代──。RPGの世界は、やたらとお金がかかる。
王様は「魔王を倒してまいれ!」なんて簡単に言うくせに、その軍資金は100ゴールドとひのきのぼうとか……。
「物価高騰でひいひい言ってるオレを舐めてんのかっ」と、言いたくなりませんか!?

RPGの序盤はとかく資金不足に陥りがち。クエストをこなしたり、モンスターを倒しまくったり……苦労したプレイヤーも多いのではないだろうか。
確実に実入りのある本業があったうえで、計画的に冒険をしたほうが着実なのではないかと思う。
いっそのこと、掛け持ちでアルバイトができるRPGがあったらサイコーなのに……。

へー、JRPG風アドベンチャーRPG『アーティス インパクト(Artis Impact)』なら、ダブルワークができるんだ……。
え、できるの!?
※この記事は『アーティス インパクト』の魅力をもっと知ってもらいたいハピネットさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
何をするにも金がかかるRPG。最初にすることは「バイトの掛け持ち」

『アーティス インパクト』は、暴走AIに支配された3000年後の終末世界を舞台にしたターン制RPGだ。抵抗組織「アリス(A-Lith)」の新人「アカネ」は、ゲーム開始直後、自室のベッドで目覚める。
なによりも気になるのは、主人公の財布の中身。
なんと所持金30ドル。ひ、ひもじい。

さらに、ほどなくして、アカネは無料で寝られるベッドを破壊してしまう。おかげで、1回5ドルを支払って本部のカプセルで寝起きすることになる。何度でも使える60ドルの回数券がオトクだ。
修理屋でベッドを直すこともできるが、費用は約600ドル。……払えるか!


本作では、ただ普通にプレイするだけでお金がかかる。
セーブ──はい、手数料1%。
ボスにやられて再戦──はい、75ドル。
銀行の行列に並ばなくてもいいゴールド会員──はい、1400ドル。
それなのに、敵は戦闘をしてもお金をドロップしやがらない。

金策を探して街をぶらついていると「アルバイト募集中」の張り紙を発見。コンビニと中華飯店だ。ダブルワークもできそう……これだ!
こうして、アカネの新生活がスタート。
やったよ、お母さん!落ち込んだりもするけれど私は元気です。

アカネ(RPGの主人公)の1日のスケジュールはこうである。
午前4時、起床→15キロ先の街に徒歩で出勤。
午前4時40分、街に到着→ホームレスに5ドルを寄付。
午前5時〜午後5時→コンビニでバイト。
午後6時〜午後9時→中華飯店でダブルワーク。
午後9時〜午後11時→ジムで筋トレ。入会費200ドル+1時間ごとに30ドルを支払う。
午後11時すぎ→15キロ歩いて本部へ戻り5ドル払って就寝。
計11時間労働。
あれ、なんか涙が出てきた。
永遠に続いてほしい。ちょっとした日常の出来事が楽しい

同じことの繰り返しじゃんか……。
一日のスケジュールを見て、そう思う人がいるかもしれない。ところが本作は、この永遠に続きそうなルーティンの繰り返しこそがとても愛おしい。
だって、細かいイベントが大量にぶち込まれていて、ぜんぜん飽きないんだもの。

たとえば、時給0円の配達ミッションをこなしたり、バイト先でアカネのサプライズ歓迎会が用意されていたり、謎の老人からアイテムをもらったり、火災警報器を押して警察署を水浸しにして罰金を取られたり。
さまざまな場所で巻き起こる事件に、笑い、泣き、ほっこりする。
プレイヤーは、こうした小さなエピソードを幾重にも重ねながら、この街で生活しているような感覚を味わう。

アカネが暗い性格じゃないのもいい。
彼女は美貌と怪力だけが取り柄のポンコツお姉さんなのだ。どブラックな環境でも「仕事があって幸せ」と、まるで大頬骨筋(だいきょうこつきん)を鍛えてるのかってくらい、常に笑顔だ。
そこへ、生意気で口の悪い相棒AI「ボット」が悪意にまみれたツッコミを入れる。二人のドタバタは、まるで日常もののアニメを見ているようで妙に安らいでしまう。

確かに本作の序盤は常にお金が足りなくてカツカツだ。まさかダブルワークまでするとは思わなかった。
でも、おかげで収支は安定し、これで晴れて魔王を倒しに出かけられるってもんだ(注:本作に魔王はいません)。
ん、まおう……?
忘れてた。本作はRPGだった!
レベル上げは不要! レトロJRPGへの愛と、現代的な遊びやすさの融合

本作は1990年代の黄金期をリスペクトした、オーソドックスなJRPGの魅力が満載だ。
見下ろしタイプのワールドマップ。
シンボルエンカウントの敵。
サイドビューのターン制バトル。
頭身の高いピクセルアートがヌルヌル動き、厨二っぽいムーブで切れ味バツグンの戦闘を展開する。
本作をあの頃のボクらがプレイしたら、間違いなく度肝を抜かれて激ハマりしていたことだろう。昔ながらのお馴染み感と新しさが同居した、グッとくる作品に仕上がっている。

面白いのは、昔のRPGにありがちな面倒な「経験値稼ぎ」が必要ないこと。強敵に敗北しても、ザコ戦を繰り返してレベル上げするなんてことはない。
ダブルワークをしながら街での生活を満喫していれば、イベントで勝手にステータスにバフを与えるスキルを獲得したり、稼いだお金で装備をアップグレードしたり、回復ポーションをしこたま買い込んだりして、なんとなく強くなっていく。
ガチガチの戦略でボスを攻略するというよりは、しっかり準備と探索をするのが重要なのだ。それでもダメなら、ポーションがぶ飲みのドーピングでゴリ押そう。

そのユルさが、自由で大雑把だったあの頃のJRPGで遊んでいるような気持ちにさせてくれる。
どうしてかと思ったら、なんと本作は『RPGツクールMV』で制作されているらしい。本作をツクールで作り上げることが、どれほど偉業か、ツクールに一度でも触れたことがある人ならわかると思う。開発者はきっと「ド変態」に違いない、もちろんいい意味で。
だってこれ、ほぼすべてのピクセルアートを書き直したうえで、超絶滑らかな独自のアニメーションを組み込んでいるのだから。

そして、本作はたったひとりの開発者の手で作り上げられているというから、さらにびっくり!
これを、どうして「変態」以外の言葉で褒められるだろうか。
ほぼ1人で作り上げた圧倒的な手作り感。ヤバすぎるこだわりで「朱色賞」を獲得

本作をプレイしていてまず感じるのは、他のタイトルでは味わうことができない、圧倒的な「手作り感」だ。
愛らしいキャラクターアートやドット絵には、レトロな温かみが感じられる。
大量にぶち込まれたイベントは、自動生成ではない。開発者が手動で、すべてのマップ、時間、進行度に合わせて、嬉々として配置している。まあ、実際に見たわけではないけれど、きっとそうだ。

そして、マップのそこらじゅうにある、プレイヤーが任意で押したり、引いたり、叩いたりできる、環境オブジェクトの数が凄すぎる。
エアコンのスイッチ、窓の開閉、ゴミ箱に設置されたクルクル回るフタ、荷物の入った麻袋に至るまで……、こんなものまで!?と思うような細かいオブジェクトにも専用のアニメーションが用意されている。
一番すごいのは、これらのインタラクションひとつひとつは、ゲームプレイそのものの面白さに大きくは寄与しないという事実。無駄に対する途方も無いこだわり。それこそが、本作に息づく手作り感の正体だと思う。

それが認められたのか、本作は2026年5月、日本最大級のインディーイベント、BitSummitの最優秀タイトルに贈られる「朱色賞」に見事輝いた。
本作を制作したのは、マレーシアの個人開発者Mas氏だ。彼は約5年の歳月をかけて、ほぼひとりで、完全独学で本作を作り上げたという。
「神は細部に宿る」ということわざがある。でも、本作をプレイして気付かされるのは「細部への偏愛が神を生む」という、その逆説的な事実だ。

『アーティス インパクト』は、とびきりに贅沢なゲームだと思う。本作をプレイすれば、きっと「無駄こそが最高に楽しい」ってことに気づくはずだ。
無駄が楽しいと知っていて、RPGの王様は小銭と使えない武器しかプレイヤーにくれないのかな?「せいぜい無駄足を踏んで楽しめよ」って意味で。いや、考えすぎか。

終末世界でバイトを掛け持ちして身銭を稼ぐRPGを探しているそこのあなた!本作なら、時給以上のプレイ体験を味わえるはず。
さらに、あの頃のワクワクと出会えるオマケ付きだ。

